税務署はこうして見つける|国税局査察部「マルサ」の手口と脱税の実態

「少しらいの売上なら申告しなくてもバレないだろう」「現金で受け取って、自宅に隠しておけば誰にも分からないはずだ」事業を経営していると、魔が差して、このような考えが頭をよぎることがあるかもしれません。

しかし、その考えは極めて危険です。国税当局、特に「マルサ」の愛称で知られる国税局査察部の調査能力は、私たちが想像するレベルをはるかに超えています。彼らは、単なる税金の申告漏れを指摘するだけでなく、「脱税」という犯罪を立件し、検察庁に告発することを目的とした、国税組織最強の捜査機関です。

この記事では、2024年度に国税庁が公表した脱税事案を基に、近年狙われやすい業種の変化、脱税者が用いる古典的、かつ驚くべき手口、そして、それを暴き出す国税局査察部「マルサ」の恐るべき調査手法について、その実態を詳しく解説していきます。これは、脱税を推奨するものでは断じてなく、そのリスクがいかに大きいかを知り、健全な経営と資産防衛意識を高めていただくためのものです。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1.通常の税務調査と「マルサ」の強制調査は何が違うのか?

まず、通常の「税務調査」と「マルサの調査(査察調査)」の違いを理解しておく必要があります。

  • 通常の税務調査:所轄の税務署の職員が行う、いわば「任意調査」です。事前に調査日時などの通知があり、日程調整も可能です。目的は、申告内容の誤りを是正し、正しい納税を促すことです。
  • マルサの査察調査:国税局の査察部(マルサ)が行う「強制調査」です。これは、裁判官が発行した令状を持って行われ、納税者の意思に関係なく、ある日突然、強制的に実施されます。関係書類の押収も可能で、その目的は、悪質な脱税行為を刑事事件として立件し、検察庁に告発することにあります。マルサが動くということは、単なる申告ミスではなく、「犯罪」として捜査されていることを意味します。

マルサの調査対象となるのは、一般的に、脱税額が1億円を超え、かつ、その手口が悪質であると判断された事案です。2024年度(2023年4月~2024年3月)にマルサが着手した件数は98件、告発した脱税総額は82億円に上ります。

2.近年狙われやすい業種とその背景

かつて、脱税が多い業種といえば、建設業や不動産業、あるいは現金商売の飲食店などが代表的でした。しかし、近年、その傾向に変化が見られます。2024年度の公表事案で特に目立ったのは、以下のような、インターネットを介した新しいビジネスモデルです。

  • SNSアフィリエイター
  • 動画配信者(ライバーなど)
  • ネットオークション・フリマアプリの販売者

これらの業種が狙われやすい背景には、いくつかの理由があります。一つは、個人で手軽に始められるため、事業者自身に「納税しなければならない」という意識が希薄なケースが多いこと。また、投げ銭(スパチャ)や広告収入など、売上の発生形態が多様で、取引の実態が掴みにくいと思われていることも一因です。しかし、国税当局は、プラットフォーマーへの情報提供命令などを通じて、これらの取引情報も確実に把握しています。「個人間のやり取りだからバレない」という考えは、もはや通用しません。

3.税務署はこうして見つける!脱税の手口と調査手法

脱税の古典的かつ最も多い手口は、売上の一部を申告せず、得た現金を隠すことです。では、脱税者はどこに現金を隠し、マルサはそれをどうやって見つけ出すのでしょうか。

現金の隠し場所:屋根裏から漬物樽まで

マルサが過去に発見した現金の隠し場所は、私たちの想像を絶します。

【図表】過去に発見された主な現金の隠し場所

これらの場所は、一見すると「まさかこんな所に」と思うかもしれません。しかし、マルサの調査官にとっては、全てが想定内の捜索範囲です。

調査官の恐るべき情報収集術と心理戦

マルサは、令状を持って家宅捜索に入る(いわゆる「ガサ入れ」)ずっと前から、対象者の行動を徹底的に内偵しています。

  • 物理的な監視:調査官は、対象者の自宅や会社を長期間にわたって張り込み、日々の行動パターン、接触する人物などをすべて記録しています。いつ、どこへ行き、誰と会ったか、すべて見られているのです。
  • ゴミの分析:驚くべきことに、対象者が出したゴミ袋を合法的に回収し、その中身を徹底的に分析します。レシートの切れ端、メモ書き、取引の痕跡などから、申告されていない取引や、隠し資産に繋がる情報を掴むのです。
  • 心理的な揺さぶり:調査当日のヒアリングでは、巧みな心理戦が繰り広げられます。「現金はどこにもありませんね?」と問いかけられた際、人間は無意識のうちに、隠し場所の方向へ一瞬、視線を送ってしまうことがあります。調査官は、その微細な目の動きや、声の震え、表情の変化を決して見逃しません。

銀行口座の動きから不正を見抜く

預金口座の動きも、不正を見抜くための重要な情報源です。特に、以下のようなパターンの入出金は、注意深く見られます。

  • L字型:売上入金が積み重なった後、ある日突然、まとまった金額が一気に引き出されるパターン。「その大金は何に使ったのか?」という疑問が生じます。
  • 稲妻型:入金されると、すぐにほぼ同額が出金され、常に口座残高が低い状態になっているパターン。「口座に残らないお金は、どこへ消え、何に使われているのか?」と、資金の流れを徹底的に追跡されます。

密告・タレコミの存在

国税庁のウェブサイトには、脱税に関する情報提供を受け付ける専用の窓口(タレコミサイト)が設置されています。「元従業員による内部告発」や、「取引関係のもつれによる密告」など、具体的な証拠を伴う信憑性の高い情報が寄せられた場合、それが査察調査の端緒となるケースも少なくありません。

4.脱税はなぜ「割に合わない」のか

様々な手口を駆使して税金を免れようとしても、国税当局の調査能力の前では、いずれ発覚する可能性が極めて高いと言えます。そして、脱税が発覚した場合の代償は、計り知れません。

  • 重い追徴課税:本来納めるべきだった税金に加え、申告漏れに対するペナルティである「過少申告加算税」や「無申告加算税」、そして悪質な隠蔽行為に対しては、最も重い「重加算税(最大40%)」が課されます。さらに、納付が遅れた日数分の「延滞税」も加わります。
  • 刑事罰:マルサによる告発は、刑事事件として扱われます。「ほ脱犯」として有罪判決が下されれば、懲役刑や罰金刑が科され、前科がつきます。
  • 社会的信用の失墜:脱税事件は、ニュースなどで実名報道されることもあります。そうなれば、取引先や金融機関、顧客からの信用は一瞬にして失墜し、事業の継続そのものが困難になるでしょう。

まとめ

国税局査察部「マルサ」の調査は、私たちが考える以上に緻密で、科学的です。現代のビジネス環境においては、SNSやネット取引を含め、お金の動きは必ずどこかに痕跡を残します。「これくらいならバレないだろう」という安易な考えが、最終的に事業と人生そのものを破綻させる引き金となり得るのです。

重要なのは、違法な「脱税」と、合法的な「節税」を明確に区別することです。税法のルールを正しく理解し、専門家である税理士と相談しながら、認められた範囲内で賢く税負担を最適化していくこと。それこそが、経営者が取るべき、唯一かつ最善の資産防衛策と言えるでしょう。

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