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よく、中小企業の経営者の方から、「会社の業績は好調。資金さえあれば事業を拡大してさらなるキャッシュを稼ぎ出せる自信がある。あとは銀行から融資を受けるだけ。それなのに銀行がなかなかお金を貸してくれない…銀行は中小企業には冷たい…」といった話を耳にします。
しかし、かたや、同じ中小企業でも金利1%台、中には1%未満という、大企業と遜色ない金利で銀行から多額の融資を引き出している会社が存在するのも事実です。
ひょっとして、銀行の融資担当者に対する効果的なアピールの仕方や、付き合い方を知らないばかりに損をしていないでしょうか。だとしたら、本当にもったいないことだと思います。
銀行から好条件で融資を引き出すのに成功している経営者の方々の話を聞くと、それができるかできないかというのは本当にちょっとした違いだけなのだと感じます。
この記事では、実際に銀行から低い金利で融資を受けている中小企業の若手経営者の方や、銀行で融資の実務を担当した経験のある方から聞いた話を基に、銀行の融資担当者に上手にアピールする方法と、少しでも低い金利で借りるためのノウハウを、10の戦略にまとめてお伝えします。
保険の教科書編集部
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目次
あなたが銀行融資を有利な条件で受けたいのであれば、まず、融資担当者の心を動かす必要があります。
そのためには、融資担当者がどのようなことを考え、行動する人々なのか、ということを理解する必要があります。
銀行に勤務したことのある人が口を揃えて言うのは、銀行の内部は過酷な競争社会だということです。あまりにえげつなくてここには書けないような話もたくさん聞いたことがあります。
銀行ではどこでも、多かれ少なかれ、融資の実績がその人の評価に直結する一方、融資が焦げ付いたりした場合には即、大きなマイナス評価に繋がり、下手をすると出世コースから外されることになるという実態があるようです。
そのため、融資担当者は、いつも、以下の2つのことで頭がいっぱいと言ってよいと思います。
銀行の体質を皮肉った格言で「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」というものがあります。いくらか誇張された表現だとは思いますが、まさに、これこそが、上に指摘したような心理の表れです。
そのような融資担当者の心理を理解することが、融資を上手に引き出す戦略を組み立てる第一歩です。
これから、以下の10の戦略についてお話ししていきます。
これらは、「欺くため」のテクニックではありません。あくまでも、上手にアピールしてあなたとあなたの会社を正当に評価してもらい、良好な関係を築き上げ、長くつきあっていくための「戦略」です。
銀行の融資担当者が何を考え、どう行動する人々なのか、何を求め、何を回避しようとしているのか、その人物像と思考回路を思い浮かべながら、最後まで読み進めていただきたいと思います。
あなたは、銀行にアピールしようとするあまり、決算書上の利益を大きく見せようとしていないでしょうか。利益を先に出し、損を先送りするといった決算対策ならぬ「決算『書』対策」をしてはいないでしょうか。
もしそのようなことをしているとしたら、長期的にみてかえって逆効果です。キャッシュフローが減り、事業資金が減ってしまうからです。
キャッシュフローが減れば、事業に回すお金が減ってしまい、そのぶん業績も上げられなくなります。その結果、銀行へのアピールの材料を減らしてしまうことになります。
そうなるくらいなら、しっかりと決算対策をして、キャッシュを温存した方が良いはずです。
こう書くと、「決算対策をしたら決算書上の利益が少なくなってしまうではないか」と疑問に思われるかも知れません。
そこでおすすめしたいのが、融資担当者との交渉を、決算対策をする前に済ませ、融資を取り付けておくということです。
決算対策をする前、営業利益がたくさん出ていて損出しをしていない段階で、資料を提示して「こんなに利益が出ていますよ、安全ですよ、経営は安定していますよ、ただこれから決算対策をします」と説明すれば、銀行から良い条件でお金が借りられるようになるはずです。
決算対策は、融資を取り付けた後でやればよいのです。
実際、銀行だって、決算書だけを見て融資するわけではありません。むしろ疑ってかかっているといっても過言ではありません。
決算書だけでなく、会社の経営者であるあなたが信用できるか、キャッシュフローが潤沢にあるか、事業に将来性があるか、といったこと全てを見て、融資すべきか否かを判断するのです。
つけ加えておきますと、銀行の融資担当者は融資したことが実績になるので、むしろ会社の経営状態やキャッシュフローが良ければ融資を決めたいはずなのです。
しかし、意外と、税理士等の専門家でも、そのような発想を持っていない人が多いのです。
「融資の交渉は決算期の前に」
是非、試してみていただきたいと思います。
融資担当者は、決算書以上に、経営者がどんな人物なのかをじっくり見ています。
いろいろな方向から問いかけをして、融資した場合にきっちり返済してもらえる人なのか、という視点でテストをしてくるのだと思ってください。
そのお眼鏡にかなうためには、普段から、会社の現状をリアルタイムで的確に把握し、説明できるようにしておく必要があります。その際、客観的な資料を示すことも重要です。
たとえば、収益モデルはどのようなものか、それは今後も長続きするものなのか、今後の見通しと課題は何か、といったことまで、質問されたことに淀みなく答えることができれば、「この社長は冷静に現状を把握していて経営能力があるな」という印象を与え、信頼を得ることができます。
なお、これは、融資担当者に対するアピールという意味だけでなく、普段の経営にとっても重要なことだと言えます。
融資担当者は、リスクのにおいに敏感です。
貸し倒れのリスクが少しでもある会社への融資は回避したいと考えています。
したがって、リスクをとらない堅実な経営を行っている、あるいはリスクヘッジをしっかり行っているということを会話の中にさりげなく散りばめておくと、安心してもらえます。
堅実な経営を行っていることをアピールしたければ「私は臆病だから毎年利益がきっちり出ていないとイヤなんです」といった言葉が効果的です。
また、リスクヘッジをしっかりしていることをアピールしたければ、「キャッシュだけは豊富にキープするようにしています」といった言葉が効果的です。
ただし、あくまで、客観的な裏付けがあることが大前提です。
融資担当者は、着実に収益を上げられるビジネスモデルを好み、リスクを嫌います。
したがって、自社の収益モデルが手堅く、長続きするものであることをアピールできれば、好印象を与えられます。
融資担当者が好む話の一例として、「積み上げ式」の収益モデルがあります。
たとえば、これは複数の経営者から聞いた話ですが、「HPでの集客を行っていて現状、訪問数が●人に対し収益が●円。現在もコンテンツの拡充とマーケティングの効果で訪問者は増え続けている。訪問者と収益の関係は正比例の関係で推移しており、訪問者数が■倍に増えれば収益も■倍になる見込みである」といったことを、具体的なデータ・数値を提示しながら説明するのです。
こういった「積み上げ式」等の手堅い収益モデルをアピールすれば、それは融資担当者の心に響きます。
融資担当者は、融資を滞りなく返済してもらえるかということを重視しています。
銀行の融資は長期スパンで行われるので、将来にわたって経営状態が安定しているに越したことはありません。そのため、融資担当者は、経営者がどういう長期的な見通しを持っているのかを確認しようとしてきます。
その際に、将来のビジョンを、具体的な数字の裏付けを示しながら明確に語ることができれば、「この人はちゃんと先のことまで考えている」という印象を与えることができ、プラスにはたらきます。
「この会社はどうやら融資しても安全だ」というイメージを持ってもらうためには、あなたがあらゆる質問に対してスムーズに答えることが大切です。
これはある意味「小手先」のことなので、バカバカしいとお思いになるかも知れませんが、意外に大切なことです。
2020年の東京オリンピックの誘致が成功した理由は、その是非はさておき、ひとえに「プレゼンの力」だったとも言われています。
融資担当者は、あなたの受け答えに少しでもあやふやな点や雑な点があると、それだけで不安を抱くものです。
融資を有利な条件で引き出せる材料はたくさんあるのに、ただアピールの方法が上手ではないというだけで、融資を受けられなかったり有利な条件で借りられなかったりして損をするのはもったいないことです。
プレゼンがどうしても苦手だという方も、普段から、人前で理路整然と話せるよう訓練しておきましょう。
これは、どちらかと言えば、「貸してもいい」ではなく「貸したい」と思ってもらう方法、あるいは、より有利な条件で融資を引き出すための方法です。
融資担当者は、貸し倒れのリスクを嫌います。ということは、逆に、貸し倒れするリスクがきわめて低い会社、つまり、極端に言えば、キャッシュフローが豊富であり余っているような会社にこそ、低い金利で、多額の融資をしたいと考えていると言えるでしょう。
ということは、本音では融資が喉から手が出るほどほしいと思っている場合でも、それを表面上は見せない方が良いでしょう。
むしろ「将来はともかく、今はキャッシュがたくさんあるので借りる必要はない」という素振りを見せた方が、融資担当者は「融資したい」「他の銀行に取られたくない」と考えるはずなのです。
そう思ってもらった上で、会社の現状と将来の見通しについて客観的な数字を示しながらよどみなく説明することができれば、「将来の事業拡大をお考えなら、今から借りておきませんか。金利を低くしますから」といった具合に、融資を有利な条件で引き出しやすくなるでしょう。
他社がどのような条件で借りているのかという情報は、できるだけ集めておきましょう。大企業なみの1%台で借りている会社や、中には1%未満で借りている会社もあります。そういう情報を集めておくと、だいたいの相場がなんとなく分かるようになります。
融資担当者との交渉の中で敢えて「●社は▲%で借りている」といった情報を出す必要はありませんが、相場を知っておくことは、交渉において有利です。
金利の相場が分かっていれば、たとえば、「もう少し金利を低くしてくれないならば他の銀行にします」と言ってみるなど、強気に出ることもできるでしょう。
会社は、起業した最初のうちは、銀行から融資を受けるのに信用保証協会に保証してもらう保証付融資を活用せざるを得ません。
しかし、業績を着実に上げていき、銀行との信頼関係がある程度できてくれば、信用保証協会付きでないプロパー融資を受けられるようになります。
そして、プロパー融資が受けられるようになったら、徐々にプロパー融資にシフトしていき、できるだけ早い時期に保証付融資を外していくことです。
プロパー融資の比重が高くなればなるほど、銀行からの信用も高まっていきます。そうなれば、より多くの銀行が融資したいと申し入れてくるようになり、金利の交渉を有利に進めることができるようになります。
最後にお伝えしたいことは、「戦略」というのは憚られるかも知れません。
それは、銀行ないし融資担当者とコミュニケーションを密にとり、信頼関係を築くことが大切だということです。
銀行とのつきあい方も、取引先や顧客や従業員との関係と全く同じです。
普段からキャッシュを無駄遣いすることなく潤沢にしておくよう努め、銀行に対して業績や財政状態を包み隠さず丁寧に説明し、新規事業や大規模な設備投資の計画がある場合でも、懸念事項が発生した場合でも、その都度、予め率直に相談してみることです。
そうして、地道に信頼関係を構築しておけば、金利を引き下げる交渉もしやすくなります。
また、仮に何か不測の事態があなたの会社を襲った場合でも、銀行は、簡単には見捨てないものだと思います。
この記事を作成するために、実際に銀行から1%台の低い金利で融資を受けている中小企業の経営者の方の話や、銀行で融資を担当した経験のある方の話を聞き、その思考方法を探りました。
そして、その中から、銀行融資を有利な条件でより多く引き出すために何が必要なのかというエッセンスを抽出して、分析を加えてまとめてみました。
その過程で、私は、一番重要なことは、普段から経営者として取り組むべきことに地道に取り組んでおくことだという印象を受けました。
この記事で紹介した戦略は、いずれも、極端な話、小手先のテクニックにすぎません。背後に業績等の数字を伴った客観的な裏付けと、経営に対する真摯な姿勢がなければ、結局は使いものにならないものです。
逆に言えば、そういった取り組みを普段から行っているならば、あとは小手先の問題だけということになります。つまり、銀行の融資担当者がどういったことを考えているのかということを把握し、そこに寄り添う姿勢を見せるだけで、有利な条件で融資を受けられる可能性がこれまでよりも高くなることと思います。
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