中小企業等事業再構築補助金の最新情報(2021年7月)


コロナウイルス禍が長引く中、事業の再構築を試みる中小企業・中堅企業を対象とした補助金の制度が実施されています。「中小企業等事業再構築補助金」です。
2021年7月2日に第2回の公募が締め切りとなりましたが、今後さらに3回程度の公募が予定されています。「中小企業等事業再構築補助金」は、コロナ禍のダメージから立ち直り、会社を維持存続、成長発展させようとする企業にとっては、著しく役立つ制度と言えます。
今回は、中小企業庁が公開している資料等をもとに、制度の概要と最新情報を解説します。
なお、公募要領の内容には変更または追加などある可能性があります。第3回以降で応募する場合は、必ず最新の公募要領をご確認ください。
1.中小企業等事業再構築補助金とは
1.1.中小企業等事業再構築補助金とは
中小企業等事業再構築補助金(以下、事業再構築補助金)は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応するために事業転換・事業再構築を行う中小企業等を支援する補助金です。
2020年度第三次補正予算で定められている「中小企業等事業再構築促進事業」によって実施されるものです。
対象となる企業は、簡単に表現すれば、「コロナ禍により事業に行き詰まっており、打開のために何かしら新しいアクションを起こそうとしている中小企業・中堅企業」です。
1.2.申請要件
事業再構築補助金の申請には以下の3つの要件を満たしている必要があります。
- 売上高の減少:2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している
- 事業再構築計画の策定と取り組み:新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編などの事業計画を経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組んでいる
- 事業計画の達成の蓋然性:事業計画で、補助を受ける事業の終了後3~5年で付加価値額の年率3.0%以上増加、または従業員1名あたり付加価値額(※)の年率平均3.0%以上増加の達成が見込める
※付加価値額:営業利益、人件費、減価償却費を足したもの
畑違いの分野の事業に新たに挑戦する場合も、業態の変更・転換等の場合も、幅広くカバーするものと言えます。
1.3.事業計画の策定
事業再構築補助金を受給できるかどうかは、事業計画の審査に基づいて決定されます。したがって、事業計画の中で、計画達成の蓋然性が高いことを、客観的資料に基づいて説得的に示す必要があります。
事業計画の策定に際しては、専門家の力を借りるのも有益な方法です。
1.3.1.事業再構築の類型と要件
事業計画は事業再構築指針に基づいて策定します。
事業再構築指針では事業再構築の類型として以下の5つが定められています。
- 新分野展開
- 事業転換
- 業種転換
- 業態転換
- 事業再編
そして、それぞれに以下の要件が定められています。
①新分野展開
- 製品等の新規性要件
- 市場の新規性要件
- 売上高10%要件
②事業転換
- 製品等の新規性要件
- 市場の新規性要件
- 売上高構成比要件
③業種転換
- 製品等の新規性要件
- 市場の新規性要件
- 売上高構成比要件
④業態転換
【製造方法の変更の場合】
- 製造方法の新規性要件
- 製品の新規性要件
- 売上高10%要件
【提供方法の変更の場合】
- 提供方法の新規性要件
- 商品等の新規性要件 または 設備撤去等要件
- 売上高10%要件
⑤事業再編
- 組織再編要件(事業再編類型のみ)
- その他の事業再構築要件
1.3.2.審査項目
公募要領によると、事業計画は以下の4つの点で審査されます。
- 補助対象事業としての適格性:補助対象の要件を満たすか(付加価値額が年平均3%以上増加する計画なのか)
- 事業化点:事業として成立するのか
- 再構築点:事業再構築指針に沿った取り組みであるか
- 政策点:政府目標に合致しているか
それぞれについて簡単に解説を加えます。
①補助対象事業としての適格性
まず、補助対象事業の要件を満たしているかです。
つまり、計画がそもそも「付加価値額が年平均3%以上増加する」ことを目指しているかという点が確認されます。
たとえば「年平均2%以上増加」だったらその時点でアウトです。
②事業化点
次に、事業化点は、事業として本当に成立するのかどうかです。
判断のポイントは以下の通りです。
- 事業を行う体制が整っているか
- 金融機関からの資金調達計画が明確になっているか
- 市場分析(需要、競合他社の調査など)が十分かつ客観的になされているか
- 売上や費用対効果の試算が客観的なデータに基づいているか
- 既存の事業とのシナジーがあるか
③再構築点
再構築点は、計画が事業再構築指針に沿った取組みであるかが問われます。
判断のポイントは以下の通りです。
- 事業再構築指針の5類型いずれかにあてはまるか
- 過去に同様の事業を行っていないか
- 事業再構築をする必要性・緊急性があるか
- 事業者の持っている資源の最適化がはかられているか
④政策点
政策点では、事業計画が国の政策に合致しているかが問われます。
計画が、国や地方の経済成長に資するか、国の推進する事業との親和性があるか、ということです。
判断のポイントは以下の通りです。
- 先端技術を活用しているか、それが国の経済成長に貢献しうるか
- 新型コロナウイルスの打撃から回復するために有効な投資であるか
- 地域での雇用創出や経済成長につながるか
1.3.3.加点項目
2021年の緊急事態宣言の影響を受けた事業者には、審査における加点が認められています。加点が認められる要件は、以下の2つです。
- 2021年の緊急事態宣言の影響を受けたことにより、2021 年 1 月~6 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々年)同月比で 30%以上減少していること。
- 上記①の条件を満たした上で、2021 年 1 月~6 月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同月に受給した協力金の額を上回ること。
また、これとは別に、「EBPM」への継続的な情報提供を行うとした場合も、加点が行われます。
「EBPM」とはEvidence Based Policy Making(証拠に基づく政策立案)の略称で、経験ではなく合理的根拠に基づく政策立案をすすめる、国の取り組みです。
1.3.4.事業計画書の形式
事業計画書はWord 等で作成し、これを申請時にPDFに変換して添付します。フォーマットは自由です。
ボリュームは最大15ページ以内です。ただし、補助金額1,500万円以下の場合は10ページ以内にしなければならないとされています。
2.どれくらい補助を受けられるか
事業再構築補助金では、どれくらいの補助を受けることができるでしょうか。
「中小企業」向けと「中堅企業」向けとで制度設計が異なります。それぞれについて説明します。
2.1.中小企業向けの補助金
まず、ここで言う中小企業とは、中小企業基本法で定義されている中小企業と同じです。
詳しくは「中小企業とは?定義と大企業と比べたメリットまとめ」をご覧いただくとして、表にまとめると以下の通りです。

これには小規模事業者、個人事業主も含まれます。
そして、中小企業向けの補助金には「通常枠」と「卒業枠」があります。それぞれについて説明します。

2.1.1通常枠|ふつうはこちら
コロナ禍で業績が悪化し、なんとか元の水準に戻したいという企業向けです。特別な事情がなければ、この通常枠に応募することになると考えられます。
受けられる補助金の額は、
100万円~6,000万円(補助率2/3)
です。
2.1.2卒業枠|アグレッシブな事業者はこちら
「卒業枠」は、補助金を受けるのをきっかけに、規模拡大をめざす企業向けの枠です。
事業計画において、
- 組織再編(M&Aなど)
- 新規設備投資
- 海外進出(グローバル展開)
のいずれかを行って、次に紹介する「中堅企業」へ成長しようとしている中小企業が対象です。
受けられる補助金の額は通常枠よりも大きく、
6,000万円超~1億円(補助率2/3)
です。
通常枠と異なり、最初から400社限定と件数が決まっており、狭き門となっています。
その理由は、コロナ禍で業績が悪化したにもかかわらず、業績の回復のみならず事業の拡大まで目指すことが、きわめて難しいからです。
逆に言えば、そのようなアグレッシブな中小企業にとっては、大きなチャンスを与えてくれるものと言えます。
2.2.中堅企業向けの補助金
中堅企業は、中小企業よりも規模が大きいが大企業に達しない企業をさします。
中小企業庁のパンフレットによると、中堅企業とは「資本金10億円未満または従業員数が2,000人以下」であり、中小企業に該当しない企業です。
中堅企業向けの補助金には「通常枠」と「グローバル枠」があります。それぞれについて説明します。

2.2.1通常枠
中堅企業向けの通常枠は、中小企業向けと同様、コロナ禍で業績が悪化し、なんとか元の水準に戻したいという企業向けです。
受けられる補助金の額は、
100万円~8,000万円(補助率1/2(4,000万円超は1/3))
です。
中堅企業は会社の規模が中小企業よりも大きいので、補助金の上限が高く設定されています。しかし、その反面、もともとの基礎体力も高いので、補助率が低くなっています。
2.2.2グローバルV字回復枠
グローバルV字回復枠は、コロナ禍で悪化した業績を回復させてさらに海外進出(グローバル展開)まで目指すアグレッシブな中堅企業向けのものです。
補助金の額の上限が高い代わりに、条件が厳しくなっています。つまり、基本的な考え方の方向性は、先ほどお伝えした中小企業向けの「卒業枠」と似ています。
以下の条件を全てみたす必要があります。
- 売上高の減少:直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高よりも15%以上減少している
- 事業計画達成の蓋然性:事業計画で、補助を受ける事業の終了後3~5年で付加価値額の年率5.0%以上増加、または従業員1名あたり付加価値額(付加価値額)の年率5.0%以上増加の達成をめざす
- グローバル展開:海外進出を行う事業である
また、受けられる補助金の額は、
8,000万円~1億円(補助率1/2)
です。
補助金の額が高額な代わりに、補助率が低くなっているのは、中堅企業のもともとの基礎体力の高さにかんがみてのことです。
2.3.「緊急事態宣言特別枠」
この「緊急事態宣言特別枠」は、第3回公募(7月末申請開始予定)では除外される方向です。したがって、簡単に述べるにとどめます。
緊急事態宣言特別枠は、2021年の緊急事態宣言により深刻な影響を受けた中小企業等を対象に、地域・業種を問わず、通常枠より補助率の高い補助を行う特別枠です。
従業員数に応じて100~1500万円の補助を行う枠です。
3.申請手続
事業再構築補助金の申請手続はオンライン申請のみです。
以下の4つのステップで行います。
なお、GビズIDエントリーアカウントでは電子申請システムを利用できません。
また、GビズIDプライムアカウントの発行に時間がかかることから、事業再構築補助金の申請では、即日発行可能な「暫定GビズIDプライムアカウント」での申請が可能になっています。
しかし、採択後の手続では「GビズIDプライムアカウント」が必須なので、並行して申請する必要があります。
4.補助対象経費・精算について
次に、事業再構築補助金での補助対象経費と、精算について説明します。
4.1.補助の対象となる経費の範囲
事業再構築補助金で補助対象となる経費は、事業拡大につながる資産への、それなりの規模の投資である必要があります。対象外になるのは、例えば飲食代・家賃・通信費などです。
また、証拠書類によって「必要性があること」「金額が妥当であること」を明確に確認できなければなりません。
補助対象となる経費は、大きく以下の二つに分けることができます。
- 新規事業にかかる諸費用
- 既存の事業の廃止・縮小にかかる諸費用
具体的には以下の通りです。ハード面、ソフト面を整備し、事業を軌道に乗せ、維持するためのありとあらゆる費用が幅広く対象となります。
- 建物建築・改修費
- 設備費
- システム購入費
- 外注費(加工、設計等)
- 研修費(教育訓練費等)
- 技術導入費(知的財産権導入にかかる経費)
- 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
- クラウドサービス利用料
4.2.事前着手について
原則、経費として認められるのは、交付決定を受けた日付以降に契約または発注を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものとなります。
しかし、事務局から事前着手の承認を受けた場合には、2021年2月15日以降に発生した経費についても補助対象とすることが可能です。
とはいえ、事前着手が承認された場合であっても、事業計画が確実に採択される訳ではありません。
また、第3回公募以降、対象期間の運用について見直しが行われる場合があります。
4.3.補助金の精算について
4.3.1.原則は後払い
補助金が受け取れるのは、原則として事業終了後です。つまり精算は後払いです。
具体的な流れとしては、補助事業終了後に事業報告書を提出します。
そして、報告書に基づき補助金額が確定され、補助金が支払われることになります。
4.3.2.概算払い
なお、事務局が必要と認めた場合には「概算払い」を受けられることがあります。
概算払いとは、事業終了前に概算(およその金額)で支払われ、金額が確定した後で精算する方法です。
概算払いの申請ができるのは1回のみです。
4.3.3.返還が必要な場合
受け取った補助金を返還しなければならなくなる場合があります。
まず、事業報告を怠った場合です。補助事業を完了した後も、以降5年間、事業について報告する義務があります。報告を行わなかった場合、補助金を返還しなければなりません。
また、事業計画通りの成長を達成できなかった場合、卒業枠・グローバルV字回復枠では、通常枠の補助上限額との差額分を返還することになります。
これに対し、通常枠では、計画を達成できなかったとしても、補助金を返還する義務はありません。
5.中小企業等事業再構築補助金の活用例
では、事業再構築補助金にはどのような活用例が考えられるでしょうか。
最初にお伝えしたように、事業再構築補助金の趣旨は、「コロナ禍により事業に行き詰まっており、打開のために何かしら新しいアクションを起こそうとしている中小企業・中堅企業」を支援することです。
したがって、対象となる「事業再構築」に含まれるのは、新分野への挑戦、業態転換、事業・業種転換など、現状打開のためのあらゆる取り組みです。
5.1.公的資料で紹介されている具体例
経済産業省・中小企業庁の資料をもとに、具体例を3つ紹介します。
【製造業の例】
航空機部品を製造していたが、コロナ禍の影響で需要が減少した
⇒既存の設備を撤去・廃棄し、ロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立ち上げる
【アパレル販売業の例】
店舗で営業していたが、コロナ禍の影響で客足が遠のき、売上が減少した
⇒店舗を縮小し、ネット販売事業、サブスクリプションサービス事業に業態転換した。
【レストラン業の例】
コロナの影響で客足が減り、売上が減少した
⇒店舗での営業を廃止し、オンライン専門の持ち帰り・宅配サービスを開始した。
5.2.採択例
事業再構築補助金の第1回公募では22,231の申請があり、その内8,016の申請が採択されました。約36%の採択率ということになります。ここでは通常枠・卒業枠・グローバルV字回復枠それぞれの採択例を紹介します。

①通常枠
- タクシー会社が食品デリバリー事業へ参入(旭川中央交通×ローソン)
- 会社の不動産を利用したコインランドリー事業
- 音楽教室がオンライン音楽レッスンサービスを構築
②卒業枠
- 過疎地域におけるドローンを利用した配送事業
- オンラインで完結する事業承継およびM&Aプラットフォーム事業
③グローバルV字回復枠
- 自社商品の通信販売での中国市場開拓
6.中小企業向け優遇税制との併用
事業再構築補助金は、国からの他の補助金とは併用できないものの、中小企業向けの優遇税制との併用は可能です。
つまり、補助金を受け、さらに税金も抑えられるということです。
中小企業向けの優遇税制で代表的なものは、機械・設備等の資産を購入した場合に、以下のどちらかを選べるという特例です。中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制により認められています。
- 購入代金全額を一気にその期の減価償却費として計上する(即時償却)
- 通常の減価償却の他に、初年度に税額控除を受けられる
詳細は「即時償却とは?基本のしくみと活用を検討する際のポイント」をご覧ください。
即時償却で人気がある資産としては、コインランドリー、太陽光発電設備(一部のタイプ)などがあります。
まとめ
中小企業等事業再構築補助金は、コロナ禍のダメージから立ち直ろうとする中小企業・中堅企業を幅広く支援しようとするものです。
業種等の限定は特に付されておらず、かつ、補助の対象となる経費は、既存事業の廃止・縮小、新規事業にかかるありとあらゆる費用です。
また、中小企業向けの優遇税制(中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制)と併用でき、補助金を受けつつ税負担を抑えることもできます。
ただし、事業計画を達成できることを、客観的資料に基づいて説得的に示す必要があります。事業計画の策定に際しては、専門家の力を借りるのも有益な方法です。
なお、公募要領は細かく改訂が行われています。応募にあたっては必ず最新の公募要領をご確認ください。



