役員退職金を損金にするために必ず押さえたい3つのポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
a0002_hi00018

経営者・役員の方にとっては、ご自身の退職金をいくら支給していいのか、ということは大きな関心事だと思います。

なぜなら、役員退職金は、損金に算入できる額の上限が決まっているからです。

ただ、重要なのはそれだけではありません。決められた手続を踏まないと、そもそも損金として認められないので、手続もきちんと押さえておく必要があります。

また、意外と見落としがちですが、役員退職金を損金に算入するタイミングが選べるということも重要です。なぜなら、営業利益が大きい年度に計上できれば、赤字のリスクを防ぐことができ、しかも節税にもなるからです。

この記事では、役員退職金を損金として処理する上で押さえておきたい3つのポイント、つまり、損金にいくらまで算入できるかの計算方法、どのような手続が必要なのか、どの年度の損金に計上できるか、といったことに関するルールを分かりやすく説明します。

1.役員退職金はいくらまで損金算入できるか

1.1.全額損金にできなくてもいいなら退職金はいくらでもいい

まず、役員退職金を支出したらいくら損金にできるかという話をします。

役員退職金の額自体には法的な縛りはありません。いくら支給しても、それは会社の意思決定の問題です。オーナー企業であれば、「●●円支給する」という内容の株主総会議事録を作れば良いだけです。

しかし、それと、いくらまでなら会社の損金にできるかは別の問題です。つまり、税務上は、損金に算入できる額が限られています。

なぜかというと、そうしないと、本来ならば税金を支払った後で利益から配当金として役員に支給すべきなのに、「役員退職金」の名目で損金にされてしまうおそれがあるからです。

したがって、極端な話、「別に全額損金にならなくてもいい。たくさん受け取りたい。」とお考えになるのであれば、損金算入限度額など気にする必要はありません。

特に、社長一人だけで実質個人事業主と同じだったり、家族だけで経営していたりするのであれば、そういうケースも多いと思います。

しかし、家族以外の人が経営に携わっていたり、従業員をある程度の数雇っていたりする場合には、損金算入限度額の範囲内にとどめておくのが無難です。そうしないと「会社の私物化」と言われてしまうリスクがあるからです。

そして、もし全額を損金処理したいのであれば、損金算入限度額についてのルールを押さえておかなければなりません。

1.2.最重要なのは、同業・同規模の他社より高すぎないこと

ただし、損金算入限度額のルールはカチッとしたものがあるわけではありません。法令によれば「不相当に高額な部分の金額」は損金に算入されないということになっています。そして、その具体的な基準としては

  1. 役員が会社で何年働いたか
  2. 退職してきちんと引退するか、「院政」を敷くか
  3. 同じ業種・同じくらいの規模の会社ではいくら支払われているか
  4. その役員が会社にどの程度貢献したか

等を総合的に考えて判断することになっています。

こう書くと、かなりややこしく感じられてしまうと思います。

しかし、これら全てが同じくらい決定的なわけではありません。

この中で最も要注意なのは、「3.同じ業種・同じくらいの規模の会社ではいくら支払われているか」です。

どういうことかというと、「1.役員が会社で何年働いたか」と「4.その役員が会社にどの程度貢献したか」というのはほぼイコールと言って良いし、在任年数はすぐ分かります。また、「2.退職してきちんと引退するか、『院政』を敷くか」というのは不透明です。つまり、後継者が頼りないことが分かってすぐに現役復帰せざるをえないことだってありえます。そんなことは退職する時は知りようがありません。

したがって、最も決定的で、注意が必要なのは、「3.同じ業種・同じくらいの規模の会社ではいくら支払われているか」なのです。

1.3.他の会社との比較に最も使われている「功績倍率法」

そして、そのメルクマールとしてよく使われているのが「功績倍率法」という方法です。

まずは、計算式をご覧ください。

役員退職金額 = 最終報酬月額 × 役員としての在任年数 × 功績倍率

この中で、「功績倍率」というのがポイントです。「功績倍率」とは何かを厳密に突き詰めると非常に難しく、大変なことになってしまいますが、ご安心ください。そこまでは必要ありません。

ここでは、最もシンプルな必要最低限の知識だけお伝えします。

1.3.1.功績倍率を自分で調べて計算する必要はない

功績倍率の求め方は、理屈としては、「自分の会社と同業種・同レベルの規模の会社の『役員退職金の額』、『最終報酬月額』、『役員としての在任年数』を上の計算式にあてはめてみて、功績倍率がいくらなのか逆算する」という方法です。

しかし、これは非常に難しいでしょう。なぜなら、他の同業種・同レベルの規模の会社がいくら退職金を出しているのかというのを調べるのはただでさえ難しいし、しかも1社分だけでなく何社分も集めるとなおさら難しいからです。

では、どうすれば良いでしょうか。実は、一応の相場があります。

1.3.2.功績倍率の相場

以下は、よく使われている功績倍率の一例です。

  • 社長 3.0
  • 専務 2.5
  • 常務 2.5
  • 平取締役 2.0
  • 監査役 2.0

たとえば、あなたが社長で、最終報酬月額が100万円、役員としての在任年数が20年だとすると、役員退職金として損金算入できる額は、

100万円(最終報酬月額)×20年(在任年数)×3.0(社長の功績倍率)=6,000万円

ということになります。

功績倍率を上記の程度にしておき、後で述べる「退職慰労金規程」にきちんと定めておけば、税務署から文句を言われるリスクは低いと考えていただいてけっこうです。

2.役員退職金を支払うための手続

2.1.株主総会の決議をして議事録を残しておく

役員退職金を損金に算入するには、きちんと法律の手続にのっとって支給したものでなければなりません。

会社法上、役員退職金を支払うためには、株主総会の決議が必要ということになっています。オーナー企業で株主が1人しかいない場合でも、形式だけでも株主総会を開き、決議内容を議事録に記載して残しておく必要があります。

そうしないと、会社法上違法な支出になってしまい、もちろん、損金算入も認められません。

決議の内容は、原則として、金額・計算方法について具体的に決める必要があります。

ただし、どんな場合も必ずきっちり金額・計算方法の詳細まで決議しなければならないわけではありません。例外があります。

取締役会が設置されている会社の場合、株主総会決議で総額だけ決めて、誰にいくら支払うかの決定を取締役会の決議に任せることができます。

2.2.退職慰労金規程を整備しておく

株主総会決議(あるいは取締役会決議)をする際、最も重要なのは、退職金の計算方法の基準です。

その基準としては、上述の通り、功績倍率法が最も有効です。そして、これを明文で「退職慰労金規程」として定めておくことをおすすめします。

そうすれば、税務調査が入った時に、きちんとした基準にしたがって支払ったということの証拠になります。

3.役員退職金の損金算入のタイミングは選べる

意外に見落としがちなことですが、役員退職金の損金算入のタイミングが選べるということです。

具体的には以下の2つのどちらかです。

  • 役員退職金を決める株主総会の決議をした事業年度
  • 会社が役員退職金を実際に支払った事業年度

%e6%90%8d%e9%87%91%e7%ae%97%e5%85%a5%e3%81%ae%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0

これを知っておけば、損益のタイミングをうまく調節するのに役に立ちます。

たとえば、今期は利益が少なそうだが次の年度はある程度出そうだといった場合、今期のうちに株主総会決議で退職金を決めておき、次の年度に支給するといった具合です。

まとめ

役員退職金を損金として処理するのに必要な3つのポイント、すなわち「役員退職金を損金に算入できる限度額」「役員退職金を損金にするため必要な手続」「役員退職金を損金算入できるタイミング」についてお伝えしてきました。

いずれも、知っておいてきちんと押さえないと、損金算入が認められなかったり、損金に算入する意味が損なわれてしまったりします。

最低限、この記事で説明した内容をきちんと押さえておき、役立てていただきたいと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
会社の現金を今までより30%多く残す!法人保険の具体的活用術

会社が軌道に乗って利益が出てくるようになったとき、取られる法人税の額に驚いたことはないですか?

会社のキャッシュは自分自身で守ることができます。30%多く残すというのも現実的な話です。たとえば、以下のようなことも可能です。

  • ・ 損益計上のタイミングを調整しながら資金を30%以上多く準備する
  • ・ 同じキャッシュで従業員の退職金を45%以上多く準備する
  • ・ 合計800万円を全額損金にして、利益を繰り延べ確保する

本書では、より多くのキャッシュを残すための法人保険の活用法を、71ページにわたって具体例をもとに詳しく解説しています。

是非ダウンロードして、今後の会社経営にお役立て下さい。


無料Ebookを今すぐダウンロードする

出岡 大作

出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
保険の教科書の購読はSNSが便利です。