起業したての経営者が、サラリーマン時代とのギャップを感じるものとして挙げられるものの一つに、法人としての会計処理があります。
法人税等、法人にかかる税金は、基本的に「収入から必要経費を引いた利益」を基に算出されます。
その上で、必要経費に関しては、何を計上していいかわからない、という人も多いのではないでしょうか。
今回はそんな法人の経費について解説していきます。
どのような費用が経費になるか、十分に理解し、今後の決算に備えましょう。
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1.経費は会社の支出
そもそも経費とは何なのか、という部分について説明します。
一般的に世間で経費(必要経費)と呼ばれているものは、法人の経理処理における「損金」に含まれます。
基本的には、その年度内で発生した費用のみを経費として扱うことができます。
中には経費計上が制限されているものや、条件がつけられているものもあるため、経費の種類・内容を把握しておくことは重要です。
2.法人で扱われる経費の種類
経費は大きく分けて、経営者のプライベートと「一体化しているもの」と「そうでないもの」に分けることができます。
それぞれに分けて見ていきましょう。
2.1.社長のプライベートと一体化しているもの
①家賃や水道光熱費
自宅を事務所として利用している場合、家賃や水道代、光熱費などの一部を経費として扱うことができます。
家賃は「自宅内で事業に使用しているスペースの面積」や、「自宅で仕事した平均時間」などから経費分の金額を計算することが可能です。
応接間を設けるなどして、生活用のスペースと事業用のスペースを明確に区分けしておかないと、税務署への説明が難しくなってしまうので注意しましょう。
また、社長含め役員の住んでいる賃貸物件を、会社名義で法人として契約することで、少なくとも家賃の50%を会社の経費として計上することが可能です。
参考:「知って得する!役員社宅で節税するメリット」
水道光熱費も事業に使用した時間分を経費にできますが、基本的にガスや水道は事業に関連して利用することは少ないので、経費にすることは難しいでしょう。
②消耗品費
事務用品や社用車のガソリンなど、消耗品にかかった経費が該当します。
基本的に価格が10万円以内、または使用可能期間が1年未満であれば経費として計上が可能ですが、中小企業の場合は、使用可能期間が1年以上であっても、30万円未満の資産までは経費にすることが可能です。
パソコンやタブレットなどの購入費もこの項目に含まれ、あくまで事業用であれば経費にできます。
③接待交際費
数ある経費の中で、最も話題に上がりやすいのが接待交際費ではないでしょうか。
接待交際費には、取引先等に対する接待費用や贈答品の代金が含まれます。
実は接待交際費は基本的に損金として扱われません。
しかし、一定の条件を満たせば損金に算入できます。
詳しくは「損金の基本|法人税法上、損金に算入できるモノとタイミング」をご覧ください。
④自動車等
自動車は社用車として法人名義で購入することで、会社の経費として扱うことができます。
社用車の購入費用は後述する減価償却費に含まれるため、経費計上におけるルールが少々複雑です。
参考:「自動車の減価償却で知っておくべき3つのポイント」
2.2.その他の経費
基本的に事業に関連した出費は、経費に落とし込むことが可能です。
代表的なものとしては、書籍等の資料や商品の配送にかかった費用、サービスを利用した際の手数料などが挙げられます。
①一部の税金
一部の税金は経費として扱うことができます。
経費として扱うことのできる税金には、
- 事業税
- 固定資産税
- 消費税
- 自動車税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
などがあります。
②旅費交通費や通信費
旅費交通費には、出張の際に発生する電車賃等の移動費、宿泊代などが該当します。
SuicaやPASMOに代表される電子マネーを使用した場合も、履歴との照合が取れれば経費計上が可能です。
個人用と事業用を分けておくと、申告の際にスムーズに証明できるでしょう。
通信費には、電話代や請求書送付の際にかかる切手代、インターネットのプロバイダ料などが該当します。
こちらも可能なら個人用と事業用に分けて持っておくと、税務署への説明がしやすいです。
また、出張に関する法人特有の制度として、出張手当というものがあります。
出張手当は、会社としても出張する当人としてもメリットが大きいので、多くの会社で導入されています。
詳しくは「出張手当|会社も個人も節税になるしくみと4つのポイント」をご覧ください。
③寄附金
会社が寄付した寄付金の内、
- 国又は地方公共団体に対する寄附金
- 財務大臣が指定した寄附金
については経費計上が可能です。
しかし、
については、経費にできる金額に上限が設けられているため、注意が必要です。
④損害保険料等
損害保険料や地震保険料、自動車保険料などが該当します。
国民健康保険料や国民年金保険料は該当しないので注意しましょう。
⑤修繕費
店舗や社用車、製造装置等の機械を修理する際にかかる費用が該当します。
あくまで修繕にかかる費用であり、機能の改善やアップグレードにかかる費用は減価償却費として扱われます。
⑥従業員に対する支払い
従業員に対する給与や賃金、賞与の支払いや、福利厚生費などが該当します。
退職金や、まかない等の食事、制服などを支給した場合も、この項目の経費として扱うことが可能です。
ただし、社長や役員に支払われる給与や賞与については例外で、原則経費として認められません。役員の給与金額を大きく設定することで、必要以上に経費を多くすることが出来るからです。
従業員と同じように毎月給与を受け取っており、なおかつこの金額が妥当なものであれば、役員の給与であっても経費計上することが可能です。
福利厚生費については、従業員の健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料、労災保険料、雇用保険料などのうち、会社側で支払っている分が該当します。
近年、福利厚生の拡充は外部へのアピールポイントとして重視されている部分でもありますので、経費計上できることを覚えておくと良いでしょう。
⑦外注工賃
会社の営業に必要な名刺や封筒、ロゴのデザインなどを外注して作成してもらった場合の工賃等が該当します。
会社のサイトの構築費や、意外なものだと会社名や商品名についても、外注であれば経費計上が可能です。
2.3.経費計上の方法が特殊なもの
以下に挙げるものは、経費形状の方法が少々複雑です。
基本的には、出費した段階ですぐに会社に利益をもたらすのではなく、後々になってじわじわ効いてくるようなものは、数年に分けて経費計上をするという考え方になります。
①減価償却費
1回購入すれば長年にわたり収益を生み出す資産を「減価償却資産」と言い、経費計上が可能です。
一般的に大型の機械や自動車などの乗り物、工具や治具などが該当しますが、これらの経費計上については少々特殊なものになっています。
「減価償却資産」は時が経つにつれ、その価値が減っていくものとして扱われるのです。
賃貸の築年数が増えるにつれて、家賃が下がってくるのをイメージすれば分かりやすいと思います。
減価償却資産が経年によって価値を減らしていくのであれば、その減っていく分を何年かに分けて経費として計上しよう、というのが減価償却費の基本的な考え方です。
計上の方法としては、定額法と定率法という2通りが存在し、定率法の方が、早期にたくさんの経費を計上できるようになっています。
詳しくは「減価償却とは?節税と資金繰りで圧倒的に得するための基礎知識」をご覧ください。
②繰延資産
会社の創立・開業にかかった創立費や開業費、製品の開発にかかった開発費など、支出した年度以降も効果が続き、収益に長期的な影響を与えるものが該当します。
繰延資産も計上方法が特殊で、支出した年度だけでなく、何年かにわたって損金に算入されます。
まとめ
いかがでしたか?
経費は必要以上に税金を払わないために、しっかりと把握しておくべきものです。
各種経費の特徴や、計上できるものを理解し、正しい申告を行いましょう。