為替リスクを避けたい経営者へ:トラック・オペレーティングリースの仕組みと活用法

決算期が近づき、予想以上の利益が出そうな場合や、不動産の売却などで一時的に大きな利益が出た場合に、その利益を圧縮(繰延べ)するための節税策として「オペレーティングリース」の活用を検討する経営者の方は少なくありません。

特に航空機を対象としたオペレーティングリースは、数千万円から億単位の損金を初年度に作れる可能性があるため、効果的な利益繰延べ手段として知られています。

しかし、従来の航空機や船舶を対象としたオペレーティングリースの多くは、海外でドル建てなどで運用されるため、「為替変動リスク」が伴います。出資時よりもリース期間終了時の為替レートが円高に振れた場合、想定していた分配金が目減りしたり、元本割れしたりする可能性があるのです。近年の為替相場の不安定さを考えると、このリスクを避けたいと考えるのは当然でしょう。

そこで注目されているのが、国内の運送会社を主なリース先とする「トラック・オペレーティングリース」です。国内での運用が基本となるため、為替リスクを回避しながらオペレーティングリースの節税メリットを享受できる可能性があります。

この記事では、オペレーティングリースの基本的な仕組みをおさらいしつつ、トラック・オペレーティングリースの特徴、メリット・デメリット、そしてどのような場合に活用が有効かについて解説します。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

1. オペレーティングリースとは?~利益繰延べの仕組み~

基本的な仕組み(資産賃貸借と減価償却)

オペレーティングリースは、航空機、船舶、コンテナ、トラックといった比較的高額な資産(リース物件)を、投資家(多くは法人)が出資して購入し、それを実際に使用する事業者(航空会社、海運会社、運送会社など)に一定期間賃貸(リース)する取引です。

投資家は、リース期間中に事業者から支払われるリース料を収益として受け取ります。 税務上のポイントは、投資家(出資者)がリース物件の所有者として「減価償却」を行える点にあります。

特にリース取引に関する会計基準・税務基準を満たすオペレーティングリース(賃貸借処理されるリース)の場合、リース期間よりも法定耐用年数が短い資産(例:中古資産など)を活用したり、定率法を採用したりすることで、リース期間の初期、特に初年度に多額の減価償却費を計上できる場合があります。

主なメリット(初年度損金算入、将来の利益との相殺)

この仕組みにより、投資家(出資者)は、出資した年度に大きな損金(減価償却費)を計上し、課税所得を大幅に圧縮することが可能になります。これは、あくまで利益を将来に「繰り延べている」状態ですが、突発的な利益が出た年度の税負担を軽減する効果があります。

リース期間が終了すると、リース物件は市場で売却され、その売却代金から諸費用を差し引いた残りが投資家に分配されます。この分配金は益金(収益)となるため、将来の費用増や利益減少が見込まれる時期に受け取るように計画すれば、繰り延べた利益と相殺することも可能です。また、多くの場合、出資金のほぼ全額(場合によっては100%超)が戻ってくることが期待されます。

対象資産の例と特徴比較

オペレーティングリースの対象となる資産は、中古市場でも価値が下がりにくいものが適しています。

  • 航空機: 代表的な対象資産。投資額は1口3,000万円~5,000万円以上と高額。リース期間は7年~10年以上と長め。多くはドル建て。
  • 船舶: 航空機と同様に高額(1口3,000万円~)。リース期間は6年~10年程度。ドル建てが多い。
  • コンテナ: 比較的少額(1口1,000万円~)から投資可能。リース期間は5年~7年程度。ドル建てが多い。

これらの定番資産に加え、近年「トラック」を対象としたオペレーティングリースが登場し、注目を集めています。

2. トラック・オペレーティングリースとは?

仕組み(投資家→トラック購入→運送会社へリース)

トラック・オペレーティングリースは、投資家(出資者)から集めた資金でSPC(特別目的会社)などがトラックやトレーラー、軽車両などを複数台購入し、それらをパッケージとして国内の運送会社にリースする、という仕組みが一般的です。

投資家は、運送会社から支払われるリース料を原資とした分配金を受け取り、リース期間終了後には車両の売却代金を受け取ります。基本的なスキームは航空機など他のオペレーティングリースと同様です。

投資イメージ例

具体的な投資イメージ(一例)は以下のようになります。

  • 投資単位(一口): 1,000万円~
  • リース期間: 4~5年程度
  • 分配金の支払い: 年1回など(案件による)
  • リース対象車両: トラック、トレーラー、ダンプ、軽バンなどを複数台組み合わせたパッケージ(合計数十台規模になることも)
  • 損金計上(節税効果): 初年度(例えば半年後までに)約40%、次年度に約25%など、初期に損金算入割合が高い設計が多い。
  • 出資金回収率(満了時): 100%~104%程度(元本回収+αのリターン)を目指す案件が多い。

3. トラック・オペレーティングリースのメリット(vs 航空機等)

トラック・オペレーティングリースには、従来の航空機などを対象としたリースと比較して、以下のような独自のメリットがあります。

メリット①:比較的少額から投資可能

航空機や船舶リースが最低でも3,000万円程度からの投資となることが多いのに対し、トラックリースは1口1,000万円程度から提供されている案件が多く、比較的手を出しやすい金額設定となっています。これにより、より多くの中小企業が節税策の選択肢として検討しやすくなります。

メリット②:投資期間が比較的短い

航空機リースの期間が7年~10年以上と長期にわたるのに対し、トラックリースは4年~5年程度と、投資期間が短い案件が多いのが特徴です。オペレーティングリースに出資した資金は、原則としてリース期間が満了するまで拘束されます(中途解約不可)。投資期間が短いことは、資金の拘束期間が短縮され、将来の資金計画が立てやすくなるというメリットにつながります。

メリット③:為替変動リスクがない

これがトラック・オペレーティングリースの最大のメリットと言えるかもしれません。航空機や船舶、コンテナリースは、国際的な取引が中心となるため、多くの場合ドル建てで運用されます。そのため、出資時とリース期間満了時の為替レートの変動(特に円高ドル安)により、円ベースでの受取額が目減りしたり、元本割れしたりするリスクが常に伴います。

一方、トラックリースは、基本的に国内の運送会社をリース先とする国内完結型の取引であるため、為替変動の影響を受けません。為替リスクを避けたいと考える場合には、非常に有力な選択肢となります。

4. トラック・オペレーティングリースのデメリット・注意点

メリットがある一方で、トラック・オペレーティングリースにも以下のようなデメリットや注意点が存在します。

デメリット①:商品(案件)数がまだ少ない

航空機リースなどに比べると歴史が浅く、市場規模もまだ小さいため、提供されている商品(投資案件)の数が限られています。「決算が近いので急いで損金を作りたい」と思っても、タイミングよく希望する条件の案件が見つからない可能性があります。

デメリット②:元本割れリスク

為替リスクはありませんが、他のリスク要因による元本割れの可能性はゼロではありません。

  • リース先の倒産リスク: リース先である運送会社の経営状況が悪化し、倒産した場合、リース料収入が途絶え、最終的な車両売却額も想定を下回り、元本割れする可能性があります。
  • 中古車市場の変動リスク: リース期間終了時のトラックなどの中古車市場価格が、想定よりも下落していた場合、売却代金が減少し、元本割れにつながる可能性があります。(ただし、近年は物流需要の高まりや新車不足などから中古トラック市場は比較的安定しているとも言われます。)

デメリット③:事故・盗難リスク

航空機などに比べると、トラックや軽車両は交通事故や盗難のリスクが高いと言えます。もちろん保険には加入しますが、保険でカバーしきれない損害が発生する可能性も否定できません。

注意点:中途解約は原則不可

これは他のオペレーティングリースと同様ですが、一度出資すると、リース期間が満了するまで原則として中途解約はできません。したがって、投資はあくまでも当面使う予定のない「余裕資金」で行うことが大前提となります。

5. トラック・オペレーティングリースはどんな企業・状況におすすめ?

これらのメリット・デメリットを踏まえると、トラック・オペレーティングリースは特に以下のような企業や状況に適していると考えられます。

  • 一時的な利益の繰延べをしたい: 不動産の売却益が出た、他のオペレーティングリースの償還益(満了に伴う利益)が発生した、予想外に業績が好調で多額の利益が出そうだ、といった場合に、その利益を次期以降に繰り延べるための節税策として有効です。
  • 為替リスクを避けたい: ドル建てなどの外貨建て商品のリスクを避け、円建てで安定的に運用したい場合に適しています。
  • 比較的短期間での資金回収を望む: 資金が長期間拘束されるのを避けたい、4~5年程度の期間で投資を完結させたい場合に適しています。
  • 1,000万円程度の投資額から検討したい: 航空機リースほどの高額な投資は難しいが、ある程度の規模で利益繰延べを行いたい場合に適しています。

6. (補足)トラックを借りる側のメリット

投資家(出資者)だけでなく、トラックをリースで利用する運送会社側にもメリットがあります。例えば、購入に比べて初期費用を抑えられる、車両の維持管理(メンテナンスや車検など)の手間やコストをリース会社に任せられる場合がある、リース料を経費として計上できる、といった点です。借り手側のメリットや需要が存在することも、このビジネスモデルが成り立つ上で重要です。

まとめ

トラック・オペレーティングリースは、従来のオペレーティングリースが持つ「減価償却を利用した利益の繰延べ効果」に加え、「比較的少額から投資可能」「投資期間が短い」「為替リスクがない」といった独自のメリットを持つ、新しいタイプの節税・投資スキームです。 特に、近年の不安定な為替相場の中で、為替リスクを回避できる点は大きな魅力と言えるでしょう。

一方で、案件数の少なさや、リース先の信用リスク、中古車市場の変動リスク、事故・盗難リスクといったデメリットも存在します。また、原則として中途解約ができないため、余裕資金での投資が大前提となります。

突発的な利益への対応策として、あるいは為替リスクを抑えた利益繰延べ手段として、トラック・オペレーティングリースは有効な選択肢となり得ます。ただし、投資である以上リスクは伴いますので、商品の仕組みやリスクを十分に理解し、必要であれば税理士などの専門家にも相談の上、慎重に検討することが重要です。

この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。具体的なスキームや事例などを知りたい場合に、参考にしてください。

 

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