社長の老後資金5000万円を作る!節税しながら効率よく準備する5つの方法

かつて話題になった「老後2,000万円問題」。しかし、昨今の物価上昇や社会保険料の負担増、長寿命化を考慮すると、ゆとりある老後を送るためには「5,000万円」程度の資金が必要だとも言われています。

皆様は、ご自身の老後資金をどのように準備されていますか?「役員報酬を上げて、個人の預金でコツコツ貯めている」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その方法は税務的な観点から見ると、実は非常に効率が悪い場合があります。役員報酬として受け取る段階で、所得税・住民税、そして多額の社会保険料が引かれてしまうため、手元に残るお金が目減りしてしまうからです。

そこでおすすめしたいのが、「退職金」として受け取ることをゴールに見据え、会社の経費や所得控除を活用して積み立てていく方法です。退職金は「退職所得」として扱われ、給与所得に比べて税制面で非常に優遇されています。

今回は、社長の老後資金5,000万円を目標に、節税メリットを最大限に活かしながら効率よく資金を積み立てる5つの方法(企業型DC、小規模企業共済、iDeCo、はぐくみ企業年金、経営セーフティ共済)について、詳しく解説します。

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社長の資産防衛チャンネル編集チーム

社長の資産防衛チャンネル編集チーム

本記事は社長の資産防衛チャンネル編集チームで執筆、税理士法人グランサーズが監修しています。編集チームは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持つメンバーで構成されています。

社長の老後資金、役員報酬で貯めるのは損?

まず、なぜ役員報酬で貯蓄するのが効率的ではないのか、その理由を簡単に整理しておきましょう。

役員報酬を増やすと、個人の所得税(累進課税で最大45%)、住民税(10%)、そして社会保険料(約30%、労使折半)の負担が重くのしかかります。額面を増やしても、手取りは思うように増えません。

一方、「退職金」として受け取る場合、以下の税制優遇が適用されます。

  1. 退職所得控除:勤続年数に応じた大きな控除枠がある(勤続20年超なら1年あたり70万円など)。
  2. 2分の1課税:控除後の金額をさらに2分の1にしてから税率をかける。
  3. 分離課税:他の所得と合算されず、低い税率から計算される。
  4. 社会保険料がかからない:退職金には社会保険料がかかりません。

このように、退職金は「税金や社会保険料を極力抑えて手元にお金を残す」ための最強の手段の一つです。この退職金の原資を、いかに会社の経費や所得控除を使って効率よく積み立てるかが、社長の資産防衛の鍵となります。

ここからは、具体的な5つの積立方法を見ていきましょう。

1.企業型DC(企業型確定拠出年金)

まず検討すべきなのが、「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。これは企業が掛金を拠出し、役員や従業員が自ら運用商品を選んで運用する私的年金制度です。

制度の概要と掛金

企業型DCは、従業員だけでなく役員も加入可能です。掛金の上限は月額55,000円(他の企業年金がない場合)です。掛金の拠出方法には、会社が全額負担する「会社拠出」、従業員が上乗せする「マッチング拠出」、そして給与の一部を掛金か受け取りか選べる「選択制」などがあります。最近では、従業員のライフプランに合わせて選択できる「選択制」を導入する企業も増えています。

メリット:トリプル節税効果と運用益非課税

企業型DCには、3つの段階で税制メリットがあります。

  1. 拠出時:会社が負担する掛金は全額損金(経費)になります。個人の給与とはみなされないため、個人の所得税・住民税・社会保険料もかかりません。
  2. 運用時:通常、投資信託などの運用益には約20%の税金がかかりますが、企業型DCでの運用益は全額非課税です。複利効果を最大化できます。
  3. 受取時:一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、税負担を大幅に抑えられます。

老後資金5,000万円へのシミュレーション

例えば、月額上限の55,000円を25年間積み立てたとします。元本だけで5.5万円×12ヶ月×25年=1,650万円になります。

これを年利3%で運用できた場合、最終積立額は約2,500万円。もし年利8%で運用できたとすると、約5,200万円にもなります(金融庁シミュレーション参考)。もちろん投資にはリスクがありますが、全額損金で積み立てられ、運用益も非課税である点は、内部留保で貯めるよりも圧倒的に有利です。

注意点

  • 原則60歳まで引き出しができません。
  • 導入時や維持に手数料がかかります(導入一時金や月額手数料など)。
  • 運用商品は自分で選ぶため、元本割れのリスクは加入者が負います。

2.小規模企業共済

次におすすめなのが、中小機構が運営する「小規模企業共済」です。これは小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度です。

制度の概要と掛金

掛金は月額1,000円~7万円の範囲で自由に設定でき、増額・減額も可能です。加入条件は、常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主や会社役員などです。一度加入すれば、その後従業員が増えても継続可能です。

メリット:個人の所得控除と貸付制度

  • 全額所得控除:掛金は全額が個人の「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。役員報酬が高い社長にとっては、所得税・住民税の節税効果が非常に大きいです。
  • 実質的な会社経費化:掛金相当額を役員報酬に上乗せして支給し、その分を個人で小規模企業共済に支払う形にすれば、会社側は報酬(損金)として処理しつつ、個人側は所得控除で税金を相殺できるため、実質的に会社の経費で個人の退職金を積み立てる効果が得られます。
  • 貸付制度:積立額の範囲内で、低金利で事業資金を借り入れることができます(契約者貸付)。

注意点

  • 20年未満の任意解約は元本割れ:任意解約の場合、掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満だと、戻ってくる解約手当金が掛金総額を下回ります。
  • 掛金減額のデメリット:掛金を減額すると、減額した部分は運用されず放置される扱いとなるため、運用効率が下がります。

3.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ)は、個人が任意で加入する私的年金制度です。企業型DCがない場合や、併用が認められている場合に加入できます。

メリット:誰でも使える強力な節税制度

  • 全額所得控除:掛金は全額所得控除の対象です。
  • 運用益非課税:企業型DCと同様、運用益に税金がかかりません。
  • 受取時の控除:退職所得控除や公的年金等控除が使えます。

企業型DCとの併用枠の拡大(予定)

これまで、企業型DCに加入している場合、iDeCoの掛金上限は月額2万円などの制限がありました。しかし、令和7年度税制改正大綱などの流れでは、この併用枠が拡大され、企業型DCとiDeCoを合わせて月額6万2千円(企業型DCの掛金等を控除した残額)まで拠出可能になる方向で調整が進んでいます。これにより、社長個人の節税と資産形成の枠がさらに広がることになります。

注意点:受取時の「10年ルール」への変更

iDeCoと会社の退職金を両方受け取る場合、退職所得控除の調整ルールに注意が必要です。2025年以降の税制改正により、iDeCoの一時金を受け取ってから会社の退職金を受け取るまでの期間制限(重複期間の調整)が、従来の「5年」から「10年」に延長される見込みです。受取時期の戦略をしっかり練る必要があります。

4.はぐくみ企業年金(確定給付企業年金)

「はぐくみ企業年金(福祉はぐくみ企業年金基金)」は、近年導入企業が増えている確定給付企業年金(DB)の一種です。

制度の概要とメリット

従業員(役員含む)が、自身の給与の一部を掛金として積み立てる「選択制」が一般的です。

  • 掛金上限が大きい:給与の20%(上限100万円など基金の規定による)まで設定できる場合があり、企業型DC(月5万円)よりも大きな金額を積み立てられます。
  • 社会保険料の削減:掛金分は給与とみなされないため、所得税・住民税だけでなく、社会保険料の算定基礎からも除外されます。これにより、会社と個人の双方で社会保険料の負担を減らすことができます。
  • 受取の柔軟性:企業型DCやiDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、はぐくみ企業年金は、退職時や休職時(育児・介護など)にも一時金として受け取れる柔軟性があります。
  • 元本保証:DB(確定給付型)のため、原則として元本が保証されます(予定利率による運用)。運用リスクを負いたくない方に向いています。

注意点

  • 元本保証の裏返しとして、企業型DCのような大きな運用リターンは期待しにくいです。
  • 積立不足が発生した場合、会社が補填するリスクがゼロではありません(制度設計によります)。

5.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

最後は、本来は連鎖倒産を防ぐための制度ですが、退職金の原資作りとしても優秀な「経営セーフティ共済」です。

制度の概要と活用法

  • 掛金全額損金:掛金は月額5,000円~20万円(年間最大240万円)で、全額を法人の損金に算入できます。
  • 40ヶ月で100%戻る:加入期間が40ヶ月(3年4ヶ月)以上あれば、解約時に掛金全額が戻ってきます。
  • 簿外資産化:積立金は貸借対照表に乗らない「簿外資産」としてプールできます。

退職金原資としての出口戦略

解約して戻ってきたお金(解約手当金)は、法人の益金(利益)として計上されます。そのままでは法人税がかかりますが、この解約のタイミングに合わせて「役員退職金」を支給することで、益金と損金(退職金)を相殺できます。つまり、税金を払わずに会社にお金を貯めておき、必要な時に退職金として個人に移転できるのです。

注意点

積立上限は800万円までです。また、解約後2年以内の再加入時には掛金を損金算入できないという制限が2024年10月から導入されましたので、解約のタイミングは慎重に検討する必要があります。

まとめ

社長の老後資金5,000万円を準備するためには、単に役員報酬を増やすのではなく、会社の制度を活用した「節税積立」が圧倒的に有利です。

  1. 企業型DC:運用益非課税と全額損金を活かして積極的に増やす。
  2. 小規模企業共済:個人の所得控除を最大化しつつ手堅く積み立てる。
  3. iDeCo:個人の非課税枠を使い切る。
  4. はぐくみ企業年金:社会保険料も削減しつつ、柔軟な受け取りを確保する。
  5. 経営セーフティ共済:法人で簿外資産を作り、退職金支払時の原資とする。

これらの制度は、それぞれ特徴やメリット、リスクが異なります。会社の状況や社長の年齢、ライフプランに合わせて最適な組み合わせ(ポートフォリオ)を組むことが、最短でゴールに到達する秘訣です。「自分の会社にはどの組み合わせがベストか知りたい」「具体的な導入シミュレーションをしてほしい」という方は、ぜひ専門家である税理士にご相談ください。

この記事で解説した内容は、以下の動画で税理士がより詳しく解説しています。具体的なシミュレーションや最新の制度改正情報も紹介していますので、参考にしてください。

 

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