相続税をゼロに近づけるための生前贈与の6つの活用法
- 2021年5月20日更新
2015年1月に相続税の基礎控除の額が引き下げられ、相続税が課される人の割合は、国税庁の調査によれば2倍になったと言われます。
特に影響があるのは、都市部の中心に一戸建てやマンションをお持ちの方です。念願のマイホームのローンの支払いを終えたら、今度はお子様に相続税の負担がかかるかもしれないというのでは、たまったものではありません。
実は、相続税対策には、早期に財産を移していく「生前贈与」が有効です。ケースによっては、相続税をゼロにすることも可能でしょう。
そこで、今日は、今からできる生前贈与の6つの活用法をお伝えしたいと思います。これをお読みになって早期に実行することで、相続税を1円でも抑えることに役立つはずです。
ぜひとも最後までお読みになってお役立てください。
保険の教科書編集部
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目次
はじめに|生前贈与を上手に使うと相続税を減らせる
相続税をゼロに近づけるための生前贈与の5つの活用法生前贈与は基本的に贈与税の対象で、しかも税率が相続税よりも高くなっています。
なぜなら、
- 相続:亡くなったことによる財産の移転
- 贈与:生きている間の財産の移転
なので、相続税を免れるために、生きている間に財産を移すということが行われやすいからです。
ただし、贈与の中でも一定のものについては、贈与税がかからないか、安くなっています。それを活用することで、生きているうちに財産をお子様に移すことができます。
贈与税がかからない=相続税もかからない
ということです。
そこで、今回は、生前贈与の中でも、現時点(2021年3月現在)で活用できる以下のものについてお伝えします。
- 暦年贈与(贈与税の基礎控除)
- 相続時精算課税
- 贈与税の配偶者控除
- 住宅資金贈与
- 教育資金贈与
- 結婚・子育て資金の贈与
これから、それぞれの制度をどういう場合に活用すべきかについて説明していきます。
1.暦年贈与|最も簡単でおすすめできる方法
まず、一番最初に考えていただきたいのが、「暦年贈与」と呼ばれる、贈与税の基礎控除の制度です。
1年あたり110万円以下の贈与については贈与税がかかりません。納税申告も不要です。そして、贈与税がかからないということは、相続税もかからないということです。
なお、相続開始前(=自分がこの世を去る前)の3年以内に暦年贈与をした場合、その価格は相続財産に含まれ、相続税の対象となります。
したがって、贈与税の基礎控除(暦年贈与)を利用すると、
110万円×(贈与年数-3年)
の額について贈与税・贈与税がかからないことになります。
他の生前贈与と別枠で活用できる
しかも、暦年贈与は、この記事でお伝えする他の方法のうち、相続時精算課税以外の方法は全て併用できます。
しくみが簡単で利用しやすいので、第一に考えていただきたい方法です。
富裕層だと暦年贈与を活用しないほうが良いケースも
ただし、落とし穴がないわけではありません。それは、上でお伝えしたように、贈与税の税率が相続税よりも非常に高く設定されていることです。
【相続税の税率】
【贈与税の税率】
そのため、ご家族に生前贈与して暦年贈与(年110万円分)の枠を活用するよりも、素直に相続時まで待ってご家族に相続税を支払ってもらう方がお得な場合があります。
たとえば、巨額の資産をお持ちの方は、年間110万円の暦年贈与(贈与税の基礎控除)の枠を活用しても効果が限られています。そこで、贈与税と相続税を通じてトータルで、最終的にどの程度の節税の効果が上がるかどうかを判断する必要があります。
その計算方法については詳しくは、「暦年贈与で相続税を減らすのに絶対に押さえたい3つのこと」をご覧ください。
2.相続時精算課税
相続時精算課税とは、合計2,500万円までの贈与については贈与の時点では贈与税がかからず、相続の時点で初めて相続財産に含まれて相続税がかかるという制度です。
この制度の特徴は、相続時にどれだけ値上がりしていても、相続税がかかるのは贈与の時の価格だということです。
たとえば、2,000万円の土地を贈与して、相続の時点で3,000万円になっていたとしても、相続税がかかるのは、贈与時の価格の2,000万円です。
逆に、「現金2,500万円」のような、贈与の時と相続の時とで価値が変わらないものについては、あまり意味がありません。
暦年贈与と相続時精算課税制度はどちらか一方しか選べない
暦年贈与と相続時精算課税制度は、両方を適用できるわけではありません。
贈与される方が、どちらを使うか選ぶことになります。
ただ、実際にどちらを選ぶべきか迷うことが多いでしょう。
主な判断基準は、その財産が値上がりする見込みのある財産、あるいは収益が出る財産(不動産・株式など)であることです。
また、上でも述べたように相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人数」という非課税枠がありますが、この枠を活用するなどして相続税が発生するか否かによってもかわります。
まとめると、主に以下のような場合は、相続時精算課税制度が向いています。
■相続人に相続税が課せられる見込みが高い場合
値上がりする見込みがあるか、収益を生む財産を贈与したい
■相続人に相続税が課せられる見込みが低い場合
1度に贈与したい財産の額が110万円を超え、なおかつ暦年控除の非課税額(年間110万円)をコンスタントに利用する予定がない
逆に、一度に贈与する額が暦年控除の非課税額(年間110万円)以内で、コンスタントにこの枠を利用できる見込みが高ければ、暦年控除が向いています。
詳しくは「相続税評価額最大80%割引!これだけは知っておきたい小規模宅地等の特例」をご覧ください。
3.贈与税の配偶者控除
配偶者の方と結婚して20年以上であれば、配偶者に自宅の土地建物を贈与すると「配偶者控除」の対象となります。
控除してもらえる金額の上限は2,000万円で、この額までは贈与税がかかりません。
また、これは土地建物の一部、つまりたとえば、土地建物の価格が4,000万円の場合にそのうち2,000万円についてだけ贈与することもできます。
ただし、注意点が2点あります。
まず、登録免許税と不動産取得税がかかってきます。
また、敢えて相続まで待って、「小規模宅地等の特例」の適用を受けて相続税を軽くするという選択肢もあります。
4.住宅資金贈与
住宅資金贈与の制度は、子・孫に対し、住宅を購入する等の目的でお金をあげたら(贈与したら)、贈与を受けた子・孫の側で、一定の金額までは贈与税がかからないというものです。
住宅資金贈与の制度の適用条件
2021年12月31日までに、以下の3つの条件を全てみたせば認められます。
- 父母・祖父母(直系尊属という)から住宅を手に入れる等のための資金を受け取った
- 受け取ったお金で翌年3月15日までに自宅の新築・購入・増改築等を行った
- 翌年3月15日までに居住を始めた、またはその日以後すぐに居住することが確実
つまり、お子様・お孫さんがお金を受け取るだけではなく、そのお金できちんとすぐに住宅を新築・購入・増改築し、きちんと住むことが要求されています。
省エネ住宅にするとよりお得
購入・新築・増改築しようとする住宅が、以下の3タイプのいずれかにあてはまれば、非課税枠がより大きくなります。
- 断熱材を使用していて冷暖房の効率が良いなど、二酸化炭素(温室効果ガス)の排出を抑えるのに役立つ構造の住宅(省エネ住宅)
- 耐震構造(揺れに耐える)・免震構造(揺れが軽減される)の住宅
- 高齢者等のためバリアフリー構造で一定の基準をみたしている住宅
これらの住宅はいずれも、国の政策の実現に役立つものなので、税金が優遇されているということです。
非課税枠の額については、下の図をご覧ください。
5.教育資金贈与
30歳未満のお子様・お孫様に対して、教育資金として1,500万円までのお金を一括で贈与すると、贈与税が非課税になります。「教育資金贈与」と呼ばれます。
2023年3月31日までの贈与に適用されます。
ただ、もともと、教育資金を贈与すること自体は非課税です。なぜなら扶養義務の範囲内のことだからです。
では、それと別に教育資金贈与の制度を利用するメリットはなんでしょうか。
以下の3つです。
- 自分がこの世を去った後の分の贈与まで非課税になる
- お子様・お孫様がお金を別の用途に使ってしまうリスクが少ない
- 使い切った分については税金が一切かからない
自分がこの世を去った後の分の贈与まで非課税になる
上でお伝えしたように、もともと、教育資金を贈与すること自体は非課税です。
ただし、それは、自分が生きている間に限ってのことです。
その点、教育資金贈与は、1,500万円までならば、この世を去った後の分まで贈与しておくことができるのです。
お子様・お孫様がお金を別の用途に使ってしまうリスクが少ない
贈与したお金については、信託銀行等との間で「教育資金管理契約」を結ぶことが必要です。
支出できる用途・上限額は、以下のように決められています。また、領収証等を保管しておかなければなりません。
したがって、お子様・お孫様が、お金を別の用途に使ってしまうリスクが少ないのです。
学校・幼稚園等のため(上限1,500万円)
- 入学金・入園料、授業料・保育料、施設設備費
- 入学試験・入院試験の受験料
- 在学証明・成績証明等の手数料
- 学用品の購入費・修学旅行費・学校給食費その他必要な費用
学習塾・習い事のため(上限500万円)
- 習い事(学習塾、サッカー教室、ピアノ教室等)の月謝
- 習い事の先を介して購入した物品の代金
- 習い事のための施設使用料
- 通学定期代
- 海外留学のための引越しに伴う渡航費
- 国内の遠方の学校への進学のための引越しに伴う交通費
使い切った分については税金が一切かからない
お子様・お孫様が30歳になるまでの間に使い切った分については、贈与税がいっさいかかりません。
ただし、30歳を迎えた時点で使い切れなかった分については、改めて贈与税がかかることになります。
6.結婚・子育て資金の贈与
20歳~49際のお子様・お孫様に結婚資金・子育て資金としてまとまったお金を贈与すると、贈与税が非課税になります。
2023年3月31日までの贈与に適用されます。
- 結婚資金+子育て資金:1,000万円まで
- 結婚資金のみ:300万円まで
教育資金贈与と似た扱いがされる
結婚・子育て資金の贈与の扱いは、教育資金贈与と似ています。
まず、金融機関に預け、きちんと結婚資金・子育て資金として管理される状態におかなければなりません。
また、お子様・お孫様がお金を引き出して結婚資金・子育て資金として使った場合、領収証等の資料をとっておき、金融機関等に提出しなければなりません。
意味があるのはお孫様に対する贈与だけ
ただし、大きく違う点が一つあります。それは、結婚・子育て資金の贈与は、自分が生きている間に使い切れなかった部分に相続税が課税されてしまうということです。
図で比べてみましょう。
まず、教育資金贈与は、お子様・お孫様が30歳になる前にお金を使い切れば、自分がこの世を去った後の分まで非課税になります。
しかし、結婚・子育て資金の贈与は、自分がこの世を去ってしまえば、まだお子様・お孫様が49歳以下でも、その時点で残っている額に相続税が課されてしまうのです。
このことからすれば、結婚・子育て資金の贈与は、メリットが少ないことになります。
なぜなら、こういった資金を親が子・孫に出す場合、必要に応じて支出すればそれだけで非課税になるからです。
もし、しいて結婚・子育て資金の贈与の活用のメリットがあるケースを挙げるとすれば、遺言でお孫様にある程度の遺産を引き継がせようとしている場合(遺贈)だけです。
どういうことかというと、孫は原則として相続人ではありませんので、相続税が課税される場合には相続人より20%多く課税されます。「2割加算」と言います。
ところが、お孫様に結婚・子育て資金の贈与を行った場合は、この2割加算が適用されずに済むのです。
つまり、自分がこの世を去る前にお孫様が使い切れなかった分は相続税が課税されますが、「2割加算」が適用されないのです。
したがって、お孫様にまとまった財産を遺贈をしようと考えている場合には、結婚・子育て資金の贈与を活用すれば、相続税の節税になります。
まとめ
相続税を減らすのに役立つ可能性のある6種類の生前贈与について、それぞれの活用法や向き不向きを、整理してお伝えしてきました。
特に、まず最初に活用を考えていただきたいのは暦年贈与です。ただし、これは相続時精算課税との併用ができませんので、その点は注意が必要です。また、富裕層の方だと、敢えて暦年贈与を活用せず、相続まで待った方が良い場合もあります。
「相続時精算課税制度」と「配偶者控除」は、土地の相続対策として活用する場合には、相続時に相続税が抑えられる「小規模宅地等の特例」と比べてみて、お得な方を選ぶことをおすすめします。
子・孫の世代への贈与が優遇される「住宅資金贈与」「教育資金贈与」「結婚・子育て資金の贈与」は、それぞれどんな場面で活用するのが効果的なのか見極めた上で活用されることをおすすめします。
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