相続税対策に生命保険を活用する方法を徹底解説
- 2022年7月1日公開
2015年の税法改正によって増税された相続税。
相続税は、これからも引き上げられる可能性があります。
また、遺産相続には税金以外にも様々な問題があり、特に準備をせずにその時を迎えてしまうと、大きなトラブルになってしまうかもしれません。
そんな遺産相続でのいざこざを事前に防ぐために、生命保険が活用できることはご存知でしょうか?
今回は相続税やその他の相続時の問題に対する生命保険の活用方法についてお話ししていきます。
なるべく円満に、より多くの金額を家族に遺すためにも、相続税と生命保険の関係性についてしっかりと理解しましょう。
保険の教科書 編集部
最新記事 by 保険の教科書 編集部 (全て見る)
- 火災保険は自転車保険代わりになるか?補償内容と違い - 2024年11月15日
- 注文住宅の価格について|予算の相場はどれくらいか - 2024年11月14日
- 法人設立費はどこまで経費化できるか?その範囲と限界 - 2024年11月13日
目次
1.生命保険に対する相続税の課税ルール
基本的に生命保険金は「みなし相続財産」として、相続税の課税対象です。
しかし同時に、「500万円×法定相続人数」の非課税枠が設けられています。
例えば被保険者に配偶者と1人の子供がいれば、保険金のうち1,000万円が非課税になるわけです。
実際この非課税枠がどのように働くか、具体的に見ていきましょう。
家族構成:夫婦・子供1人の場合
まず、相続税には基礎控除額が定められています。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」という式で計算します。
上記の家族構成で、夫が死亡した場合、相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×2=4,200万円となります。
夫の相続遺産が5,200万円だった場合、相続税が課税されるのは、
- 5,200万円−4,200万円=1,000万円
です。
もし、相続遺産のうち1,000万円が生命保険金だった場合、生命保険の非課税枠と基礎控除をあわせ、全額が非課税になります。
結果、基礎控除4,200万円とあわせて、5,200万円の相続遺産全てが、課税の対象から外れることになるわけです。
一方、相続遺産に生命保険が含まれていなかった場合は、通常通り1,000万円が課税されることになります。
このように、生命保険の非課税枠を有効に使うことで、効果的に節税対策を行うことが可能です。
2.相続対策に生命保険を活用するメリット
先述した非課税枠によって、生命保険が相続税対策に活用できることができることがわかりました。
それ以外にも、相続にかかる様々な問題を生命保険で解決することができます。
2.1.相続税の納税資金を確保できる
生命保険は、契約時に保険金の受取人を指定するため、遺産相続の協議対象から外れます。
受取人の指定は複数人可能なので、遺言と同じような扱い方が可能です。
また、相続税の支払いは現金一括が原則ですが、土地などの大きな不動産や事業用の資産、経営者の自社株式などを相続し現金が相続されなかった場合、相続税の支払いが出来ず問題になることがあります。
そういった問題も、現金以外の資産を相続する人に、生命保険金として現金を遺すことが出来れば回避することが可能です。
もし、財産として現金があまりないようでしたら、状況によっては現金以外の財産を売り、そのお金をもとに一時払い終身保険などに加入するのも良いでしょう。
一時払い終身保険であれば、年齢が高くても加入することが可能なので、現金以外の財産を相続する予定の人を受取人にして契約すれば、上記のような問題をスムーズに解決できるでしょう。
詳しくは「一時払い終身保険の2つの活用法と、円建て・外貨建ての比較」をご覧ください。
2.2.遺留分対策として活用できる
原則、誰にどのような遺産が相続されるかは、被相続人の遺言などによって自由に決定することが可能です。
しかし、それによって相続遺産の割合に大きな偏りが出てしまうと、大きな問題になることがあります。
例えば被相続人に愛人がいたとして、遺言によって遺産も多くがその愛人に相続されることになっていた場合、普通なら遺産を受け取れるはずだった配偶者や子供には、大きな不満が残るでしょう。
仮に自分がその立場だったら、納得できませんよね。
そのような事態を防ぐために、法律では配偶者や子供などの一定範囲の「法定相続人」は、一定の割合の遺産を必ず相続できる、という制度が作られました。
それが「遺留分制度」です。
実は相続遺産が土地などの大きな不動産や事業用の資産、経営者の自社株式だった場合、この制度が問題になることがあります。
例えば、既に妻に先立たれている夫に子供が長男、次男と2人いて、現金の蓄えはあまりなく、土地を持っているとしましょう。
基本的に、土地は簡単には分割することが出来ません。
遺産相続の際、遺言によって長男に土地が相続されることになっていた場合、次男は「遺留分制度」により、長男が相続した土地の価値の半分を請求することが出来ます。
もし長男に現金の蓄えがない場合、次男からの請求分を支払うことが出来ません。
状況によっては土地を手放すことも考えなければなりません。
そんな問題を解決してくれるのが生命保険です。
まず、生命保険金は法律上、相続遺産としては含まれません。
遺産相続に生命保険を取り入れることによって、相続遺産を少なくすることができ、結果として、遺留分を少なくすることができます。
また、後述するようにまとまったお金が、生命保険金として短期間で受け取れるため、そのお金で遺留分を支払うこともできるのです。
このように、生命保険を利用すれば、遺族間の争いを未然に防ぐことができます。
2.3.まとまったお金を短期間で受け取れる
銀行などの預金は、名義人が亡くなると「相続財産」という扱いとなり、遺産分割の協議が落ち着くまで、動かせなくなってしまいます。
協議中は財産の所有権が宙に浮いた状態になってしまうので、それまでは金融機関が守ってくれているということですね。
協議が落ち着き、いざ引き出そうというとしても、「遺産分割協議書」や「相続人の印鑑証明」、「戸籍謄本」などの各種書類を準備しなければならず、また、手続きが完了した後も、口座が使えるようになるまで相当な時間がかかります。
生命保険金は、受取人が請求手続きをすれば1週間程度で指定の口座に振り込まれます。死亡時には葬儀代や身辺整理の費用など、まとまったお金が必要となりますが、生命保険を活用することで、資金の調達をスムーズに行うことができます。
まとめ
生命保険は万一の際の保障や、自身が死亡した後の整理費用に充てられるだけでなく、遺産相続の際に起こるであろう様々な問題を未然に防ぐことにも活用できることが理解できたでしょうか。
まず、生命保険には課税の対象ではありますが、非課税枠が設けられています。
非課税枠を上手に利用することで、遺された家族により多くのお金を残すことが可能です。
また、相続遺産は現金だけではありません。土地などの不動産や事業による資産、自社株式なども含まれます。
相続税は現金以外の遺産にも容赦なくかかってきますので、生命保険を上手く活用して、遺された家族のために納税資金を確保しておきましょう。
生命保険は遺留分対策にも利用できます。
もし相続遺産が簡単に分割できるようなものではなく、配偶者や子供などに対して、大きく偏った相続をすることになってしまった場合は、生命保険を活用して、遺留分の請求に応じられるような現金を遺してあげましょう。
生命保険金は短期間で受け取れるのも大きな特徴です。
上記のような問題をスムーズに解決できるよう、生命保険の相続に関するメリットをしっかり理解し、スムーズな遺産相続に備えましょう。
相続税対策・生前贈与の活用をお考えの方へ
【無料Ebook '21年~'22年版】知らなきゃ損!驚くほど得して誰でも使える7つの社会保障制度と、本当に必要な保険
日本では、民間保険に入らなくても、以下のように、かなり手厚い保障を受け取ることができます。
- ・自分に万が一のことがあった時に遺族が毎月約13万円を受け取れる。
- ・仕事を続けられなくなった時に毎月約10万円を受け取れる。
- ・出産の時に42万円の一時金を受け取れる。
- ・医療費控除で税金を最大200万円節約できる。
- ・病気の治療費を半分以下にすることができる。
- ・介護費用を1/10にすることができる。
多くの人が、こうした社会保障制度を知らずに民間保険に入ってしまい、 気付かないうちに大きく損をしています。
そこで、無料EBookで、誰もが使える絶対にお得な社会保障制度をお教えします。
ぜひダウンロードして、今後の生活にお役立てください。
関連記事
-
相続税対策と生命保険|一時払い終身保険、生前贈与と保険の合わせ技など
相続税は2015年の税法改正以降、課税対象となる人が大幅に増え、今まで以上に人々の関心を集めるようになりました。 家や土地をはじめ、相続遺産が多い富裕層であるほど、真剣に相続税対策に取り組む必要が出てきます。 そこで、生命保険を使ったスキームが
-
不動産小口信託受益権を活用し相続対策と資産運用を同時に行う方法
相続または生前贈与においては、現金そのままの形よりも不動産にした方が、相続税・贈与税の負担は抑えられます。 中でも「不動産小口信託受益権」のスキームを利用することで、不動産収入を得ながら、同時に相続税の節税を行うことが可能です。また、小口化して分割し
-
2015年の税法改正によって増税された相続税。 相続税は、これからも引き上げられる可能性があります。 また、遺産相続には税金以外にも様々な問題があり、特に準備をせずにその時を迎えてしまうと、大きなトラブルになってしまうかもしれません。 そ
-
小規模宅地等の特例|相続税評価額を最大80%抑える活用のポイント
相続する土地の評価額が高い場合、相続税も高額となり、相続人に大きな負担となることがあります。 特に都心部など地価価格が高額な地域にお住まいの方の場合、自宅の土地建物に多額の相続税が発生し、大きな負担になることも考えられます。 しかし、「小規模宅地等の特
-
あなたは、遺留分、つまり相続人の最低限の相続分が受け取れなくなっており、そのことについてフォローもしてもらえない状態で、遺留分減殺請求について調べていることと思います。 遺留分減殺請求権は、遺留分が受け取れない場合、つまり遺留分の全部または一部が他の
-
生前贈与をした場合、贈与税がとられ、相続税より高くつく場合が多くなっています。 ただし、上手に使うと、かえって節税できることもあります。 ここでは、生前贈与で税金を節税できる3つのケースについて解説しています。 贈与・相続したい財産が手元
-
あなたは、ご家族にかかる相続税の負担を軽くしてあげたいとお思いになり、そのための対策として、「暦年贈与」の活用をお考えになっているのではないかと思います。 暦年贈与(贈与税の基礎控除)は端的に言えば、年間110万円まで贈与した、つまり無償で譲り渡した
-
法定相続分は、遺言等が残されていなかった場合に、各相続人が遺産を相続できる割合です。 円満な相続のためには遺言を残していただくことを強くおすすめしますが、そのためには、遺言がない場合の法定相続分についてしっかり理解しておくことがスタートとなります。
-
あなたは、相続税の負担を軽くするための制度の一つとして、「基礎控除」の枠の活用を考えていることと思います。 基礎控除の枠は、基本的には法律で固まっているもので、あなたの意思で増減できないものです。なので、その範囲をはっきりさせておくことは、相続税対策
-
あなたは、ご自身に万一のことがあった場合の相続の際の遺産の分け方をどうしようかとお考えになって、「寄与分」についてお調べになっていることと思います。 寄与分は、言ってみれば、ご家族の中に、あなたの事業の成功に貢献した方とか、あなたの病気療養や介護の世