不動産小口信託受益権を活用して相続税・贈与税を大幅に節約する方法

資産を多く持つ人にとって、大切な資産を家族にどのように引き継ぐかは、いつの時代でも悩ましい問題です。

もし、何も対策をしていなければ、多額の相続税を支払う必要がでてきたり、相続人間で争いが起きてしまうこともあります。そのため、大きな資産を持つ人にとって相続対策は必須ですが、相続対策は基本的に相続する側の人が行うことはできず、相続される側の人しか行うことができません。

また、相続対策は十分に時間をかけて行うことで、より効果的な対策をすることができます。

そのため、相続される本人が、自分が亡くなった後に問題が起きないように、早めに相続対策を始める必要があります。

ここでは、家族へ資産をスムーズに引き継ぐのに有効な「不動産小口信託受益権」をご紹介します。

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保険の教科書 編集部

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1.不動産小口信託受益権とは

不動産小口信託受益権とは、不動産から発生する賃料等を受ける取る権利を小口に分けて販売されている金融商品です。

小口から不動産に投資できるという点では、REIT(リート)とも似ています。しかし、REITの場合、不動産を投資対象としているものの、分類としてはあくまで有価証券です。これに対して、不動産小口信託受益権は不動産そのものへの投資と同様に取り扱われます。

そのため、相続・贈与時も税計算上、有利な不動産と同じ取り扱いを受けることができます。

1-1.不動産小口信託受益権のしくみ

不動産小口信託受益権は、以下のようなしくみの金融商品です。

①不動産小口信託受益権の商品を企画した会社が当初受益者として不動産を購入

②当初受益者は購入した不動産を信託会社に信託し、代わりに信託受益権を受けとる

③信託会社が不動産をテナントに賃貸(管理は不動産管理会社に委託)

④当初受益者が信託受益権を不動産小口信託受益権として投資家に販売

⑤信託会社はテナントから受け取った賃料を配当として投資家に分配

この不動産小口信託受益権のスキームについては、商品によって細かな違いがありますが、共通するのは、当初受益者が現物の不動産を購入後、信託会社に信託し、受け取った信託受益権を小口にして投資家に販売して賃料が配当というかたちで投資家に支払われるという点です。

2.不動産小口信託受益権が節税になるしくみ

不動産小口信託受益権は相続税・贈与税の計算上、不動産と同じ扱いとなります。そして、不動産は相続税・贈与税の計算上、現金などに比べて有利とされています。どのような点で有利なのか、まず、相続税・贈与税の計算の方法を簡単におさえておきましょう。

2-1.相続税・贈与税の計算方法

相続税・贈与税は下記のような方法で計算します。なお、今回は大まかなイメージをお伝えするのが目的のため、細かな部分は省略しています。

相続税の計算

まず、相続税の計算ですが、下記の式で「課税遺産総額」を算出します。

課税遺産総額 =相続財産の価格-基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)

上記の課税遺産総額を相続人の数で割ると「法定相続分に応ずる取得金額」が決まるので、下記の表にあてはめることで相続税額が算出します。

出典:国税庁ホームページ

例えば、1億4,200万円の銀行預金を持つAさんが亡くなったとします。2人のお子さんが相続人だとすると、

この場合、基礎控除は「3,000万円+600万円×2人」で4,200万円になります。すると課税遺産総額は1億円ということになりますので、2人のお子さんはそれぞれ5,000万円ずつを相続することになります。

これを上記の表にあてはめると「5,000万円×20%-200万円」で相続税はそれぞれ800万円ということになります。つまり、2人合計で1,600万円の相続税を支払う必要があります。

贈与税の計算

続いて贈与税の計算方法になります。先ほどの相続税の事例のように、相続時に多額の相続税が発生してしまうのを避けるために、生きている間に「生前贈与」をしておくという方法も考えられます。

贈与税については、まず、1月1日から12月31日までの1年間の間に贈与された財産の価格を合計します。その贈与財産を元に次の式で計算します。

贈与税=贈与財産-基礎控除(110万円)×税率

税率については、次の表になりますが、祖父から孫への贈与、父から子への贈与の場合で贈与を受ける側が20歳以上の場合は特例税率が適用されます。

【一般税率】

【特例税率】出典:国税庁ホームページ

先ほどの相続税の例と同じ事例で計算した場合、子供2人にそれぞれ5,000万円ずつ贈与したとすると、贈与税は以下のようになります。

贈与財産5,000万円-基礎控除110万円=4,890万円

4,890万円×55%-640万円=贈与税額2,049万円

贈与税は贈与額が多くなるにつれて税率が上がる累進課税になっていますので、何の対策もせずに5,000万円を単に贈与した場合、一人あたり2,049万円もの贈与税を支払うことになります。

暦年贈与の場合

一度に贈与すると、多額の贈与税がかかってしまうので、毎年少しずつ贈与していく暦年贈与というかたちで贈与する方法もあります。

例えば、5,000万円を10年かけて子供に移転する場合、毎年500万円ずつ贈与していく必要があります。

この場合の贈与税を計算すると以下のようになります。

贈与財産500万円-基礎控除110万円=390万円

390万円×15%-10万円=48万5千円

年間48万5千円の贈与税がかかります。

これを10年間続けると485万円の贈与税となり、2人合計で970万円の贈与税を支払うことになります。

2-2.不動産小口信託受益権の場合

以上の事例では、銀行預金を相続・贈与した場合で計算しましたが、不動産小口信託受益権を相続・贈与した場合、どのようになるか見てみましょう。

冒頭で述べたように、不動産小口信託受益権は相続税・贈与税の計算上、不動産として取り扱われます。そして、不動産は相続税・贈与税の計算上、実際の取引価格よりも安い「路線価」「固定資産税評価額」といった価格で計算されます。

例えば、土地の場合、相続税・贈与税の計算上、「路線価」が使われますが、「路線価」は実際の取引価格の8割程度の評価額となっています。また、建物については、「固定資産税評価額」が使われますが、こちらは実際の取引価格の7割程度の値段となっています。

また、賃貸用不動産の場合、計算上、土地、建物ともにさらに評価額が下がります。その結果、賃貸用不動産を投資対象としている不動産小口信託受益権の評価額は販売価格の20パーセントから30パーセント程度にまで減らすことができます。

この仕組みを利用して、銀行預金の代わりに不動産小口信託受益権を相続・贈与することで、相続税・贈与税の計算の基礎となる相続財産を圧縮することができる結果、相続税・贈与税を安く抑えることができるのです。

3.不動産小口信託受益権を活用した相続対策の具体的事例

続いて、不動産小口信託受益権の実際の商品例を見てみましょう。

こちらはある販売会社が販売していた不動産小口信託受益権の商品です。

不動産小口信託受益権 A案件
【案件概要】
募集金額 12億円
信託期間 10年
想定配当利回り 2~2.5%(予定)
申込単位 1口500万円(2口/1,000万円以上)
分配日  年2回 (6月/12月)

【物件概要】
物件①
中央区マンション
物件所在地 東京都中央区
種類 共同住宅
構造 鉄筋コンクリート造 地下1階 地上13階
延床面積 800㎡

物件②
新宿区マンション
物件所在地 東京都新宿区
種類 共同住宅
構造 鉄筋コンクリート造 地上3階
延床面積 450㎡

この商品は、東京都中央区にある単身向けマンションと東京都新宿区にあるマンションの2物件を1つの受益権として組成した不動産小口信託受益権です。

この不動産小口信託受益権は1口500万円ですが、これを活用することで、相続税・贈与税を大幅におさえることができます。

例えば、1億4,200万円の銀行預金を持つAさんが、相続税対策のために2人の子供に財産を移転したいと考えたとします。

まず、1億4,200万円のうち、4,200万円については、「2-2.相続税・贈与税の計算方法」で見たように基礎控除の範囲内なので、相続税はかかりません。

残りの1億円についてですが、もし何も相続対策をせずに2人の子供が相続した場合、合わせて1,600万円の相続税がかかります。また、毎年500万円ずつ10年間かけて生前贈与した場合、2人合わせて970万円の贈与税が発生します。

そこで、500万円の現金を贈与する代わりに不動産小口信託受益権を2口購入して、それを2人の子供にそれぞれ贈与します。

すると、この贈与は不動産の贈与と同じ扱いとなるため、贈与税の計算上、1口あたりの評価額は140万円にまで下がります。

この場合の贈与税を計算すると

140万円-基礎控除110万円×税率10%=3万円

となり、1口あたりの贈与税は3万円で済んでしまいます。

これを10年間繰り返すことで、1億円の財産を2人の子供に移転するのにかかる贈与税は合計60万円に抑えることができます。現金を毎年贈与した場合に比べて贈与税を910万円も節約することができます。

4.不動産小口信託受益権を活用した相続対策のメリットと注意点

これまで見てきたように、不動産小口信託受益権は相続税・贈与税を節約することができる点が最大のメリットですが、他にもいくつかメリットがあります。

4-1.不動産小口信託受益権のメリット

毎年配当というかたちで安定した賃料収入が得られる

不動産小口信託受益権は運用期間中、保有不動産を賃貸に出します。そのため、賃料収入が配当というかたちで毎年分配されます。配当利回りについては居住用物件を対象とした商品の場合、2パーセントから2.5パーセント程度となります。

小口に分けられるので、相続争いを予防することができる

1口500万円程度に分割されているため、複数の相続人がいた場合でも500万円単位で均等に分けることができます。これが現物の不動産だと、共有になってしまったり、売却してから金銭で分配というかたちになるため、相続で揉める可能性があります。

4-2.不動産小口信託受益権の注意点

物件価格下落のリスク

不動産小口信託受益権は10年程度保有したあと、最終的に不動産を売却して金銭が分配されます。売却時に物件価格が下落していた場合、売却時の分配金が購入価格を下回ることになります。ただし、毎年2パーセント程度の賃料の分配金を受け取ることができますので、10年間で20パーセント以上の値下がりがない限り、節税効果を考えると損になることはありません。

予定どおりの配当を得られないリスク

ただし、配当に関しては信託不動産の賃料収入に依拠していますので、空室や賃料の下落により、想定どおりの配当が得られない場合もあります。この点については、運営会社の過去の商品の実績についてきちんと説明を受けると同時に、購入予定の不動産小口信託受益権の運営がうまくいくことの見通しについての説明を受けるなどして、疑問点を全て解消しておくことで対処するとよいでしょう。

最期の3年間は暦年贈与のメリットが受けられない

また、相続開始から3年以内にされた贈与は相続税の課税対象になります。そのため、不動産小口信託受益権を贈与してから3年以内に亡くなった場合、相続税から贈与税分が控除された金額が課税されます。

しかし、4年以上前の贈与分についての土地の評価額の引き下げの効果は変わらないので、メリットが損なわれるといっても部分的なものといえるでしょう。

税制変更のリスク

そして注意しておきたいのが、信託期間中に相続税・贈与税の税制変更があった場合です。税制については、毎年のように何かしらの変更が行われていますので信託不動産の評価額の計算方法が変更される可能性もゼロではありません。ただし、このようなケースで過去の年度にまで遡って課税されたケースは今のところありません。

こうした注意点があることを認識したうえで実践されることをお勧めいたします。

まとめ

不動産小口信託受益権を発行している会社は何社かあります。

住居用不動産を対象にしているものや、オフィスビル、ホテルなどを対象としているものなど、いくつかの種類があります。それぞれの投資対象に応じて収益性や空室リスク、売却時の価格などに特色がありますので、比較をしたうえで購入するとよいでしょう。

相続税対策でお悩みの方へ

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・生前贈与をしたいが、贈与税が多くて困っている
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もしも、相続対策でお悩みのことがあれば、どんなことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。


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