生命保険の死亡保険金は、一家の大黒柱に万が一のことが起こった時に、残された家族にとって、その後の生活の当てとなる大切なお金です。
そして死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税を徴収される対象となっています。
しかし、残された家族の生活がかかっているので、国は死亡保険金の相続税の軽減措置として以下の3つの制度を用意しています。
- 死亡保険金の非課税枠
- 基礎控除
- 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
これらの3つの制度を知っているのと知らないのとでは、場合によっては支払う相続税額を大きく減らせる時もあります。そこで、この記事では、これらのすべてを詳しく解説させていただきます。
大事な保険金を、しっかりとご家族で管理できるようになるためにも一度はじっくりと目を通して見ていただければと思います。
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保険の教科書 編集長。2級ファイナンシャルプランナー技能士。行政書士資格保有。保険や税金や法律といった分野から、自然科学の分野まで、幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
はじめに
死亡保険金の相続税対策を行う前に、まずは相続税の一般的な計算方法や計算の順番をおさえておくことが必要です。そこに関しては、「相続税の計算方法|マスターするための5つのステップ」で詳しく説明させていただいておりますのでご確認ください。
死亡保険金の相続税の計算の順番は以下の通りです。
- 遺産総額を算出する ←「死亡保険金の非課税枠」はココ!
- 基礎控除額を差し引いて課税対象となる額を確定する ←「基礎控除」はココ!
- 各人の法定相続分に基づく相続税額を算出し、合計する
- 3の合計額を、各人が実際に相続した遺産の割合で割りあて直す
- 各人ごとに税額を増額・減額して最終的な相続税の額を確定 ←「配偶者控除」はココ!
死亡保険金の相続税対策において、この順番を入れ替えて計算することはできません。上述のように非課税枠、基礎控除、配偶者控除の順番で計算する必要があることを覚えておいてください。
それでは詳しく解説していきたいと思います。
1.死亡保険金には大きな非課税枠がある
1.1.「500万円×法定相続人数」の額は非課税
冒頭でお伝えした通り、死亡保険金は相続財産ではないのですが、「みなし相続財産」として相続税がかかることになっています。
なぜならば、「死亡保険金」は被相続人が保険料を支払った結果だとも言えるからです。そのため、相続税との関係では、被相続人自身が積み立てをした財産と同じだと考え相続税の課税の対象とするのです。
ただし、「死亡保険金」「死亡退職金」の2つは、もともと遺族の生活を守るものなので、普通に相続税を課すのは酷というものです。
そのため、「500万円×法定相続人数」の額については非課税という扱いになっています。たとえば、法定相続人が妻と2人の子の合計3名だったとすると、
500万円×3名=1,500万円
の控除を受けることができます。つまり、この1,500万円は非課税となるということです。
このように、法定相続人1名あたり500万円までの死亡保険金額については非課税です。上のケースでは、死亡保険金額が1,500万円の生命保険に加入しておけば、相続税が1円もかからなくなるのです。
これは是非、生命保険に加入を検討している方にも知っておいていただきたいことです。
補足.死亡保険金で相続人たちの間の争いを未然に防ぐコツ
余談ですが、死亡保険金は遺産相続をめぐる遺族間の争いを防ぐ効果もあります。
一般的に相続の際に対象となる財産は、何も金銭などの分割しやすいものだけではありません。家や土地、車、自社株式などの平等に分けることがムリなものもたくさんあります。
そんな時、生命保険の保険金を受け取っておくと、便利なのです。
なぜなら、死亡保険金は相続財産ではありません。指定された受取人が独り占めすることができる財産です。ここがポイントです。
例えば相続財産が、家と土地だけだった場合を想定してみましょう。家と土地は処分しない限り財産として分割することはできません。そこで相続人のうち長男が、この家と土地を相続することになりました。
この場合、当然、他の兄弟(相続人)は何も受け取れないことになってしまいます。
この場合、長男は、他の兄弟の相続分を食ってしまうことになるので、その分のお金を支払ってあげる必要があります(「代償交付金」と呼ばれます)。
この代償交付金用の資金として、死亡保険金が役に立つのです。生命保険に加入して、受取人を長男に指定しておけば、長男は死亡保険金を他の兄弟への「代償交付金」に充てることができるというわけです。
これも覚えておくと良いでしょう。
2.基礎控除の枠もある
生命保険の死亡保険金で税制上配慮してもらえるのは、上述した「非課税枠」だけではありません。
相続税の計算では、あなたの遺族の生活を守るのに必要最低限の額については遺産総額から差し引くことになっています。
これが、「基礎控除」と呼ばれるものです。
基礎控除の額は、以下の計算式で算出します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
法定相続人については詳しくは、「法定相続人とは?必ず押さえておくべき5つのポイント」で説明していますので、ご確認ください。
あなたの法定相続人が配偶者と2人の子の合計3名ならば、基礎控除の額は、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
ということになります。
したがって、あなたの遺産の総額(課税価格)が4,800万円を下回っていれば、相続税がかからないということになります。
極端な話、あなたの資産が6,300万円だったとします。
そのうち現金1,500万円を「一時払い終身保険」の保険料に充てると、遺産総額(課税価格)が4,800万円になり、基礎控除で相続税がゼロになります。
「一時払い終身保険」は、ざっくり言ってしまうと、保険料を一度に全額払い込んだら、その保険料の額がほぼそのまま死亡保険金になるタイプの保険です。
詳しくは、「シニア必読!一時払い終身保険の3つのメリットと2つのデメリット」をお読みください。
3.配偶者の税額軽減(配偶者控除)を上手に活用する
3.1.配偶者控除とは
死亡保険金の税金の負担を軽くできる制度は、「非課税枠」「基礎控除」だけではありません。
配偶者の生活を守るという一点にフォーカスした「配偶者控除」(正確には「配偶者の税額軽減」)もあります。
これは、各相続人の相続税の額が一応決まった後で、配偶者について改めて税金の額を計算し直すものです。
具体的には、
①法定相続分の額 ≦ 1億6,000万円 の場合
実際に相続した財産の額が1億6,000万円以下ならば非課税
②法定相続分の額 > 1億6,000万円の場合
実際に相続した財産の額が法定相続分の額以下ならば非課税
ということになっています。
したがって、死亡保険金を1,500万円を超えて設定した場合でも、受取人を配偶者に指定しておけば、この「配偶者控除」によって、相続税をゼロにすることもできるというわけです。
3.2.配偶者から子への相続(二次相続)に要注意!
こう説明すると、
「ならば、配偶者の取り分を極限まで多くしておけば、配偶者も子も相続税をゼロにできるじゃないか!」とお考えになるかもしれません。
しかし、そうはうまくいきません。
というのは、その後、配偶者から子への相続(第二次相続)の時に、改めて相続税がかかるからです。
したがって、配偶者の取り分を大きくすればするほど、後で、子の代の相続税の負担が重くなってしまうというリスクがあります。
しかも、基礎控除の枠は、あなたが死亡した時の相続では
3,000万円+600万円×3名(配偶者と子2人)=4,800万円
ですが、その後に配偶者が死亡した時の相続では
3,000万円+600万円×2名(子2人)=4,200万円
となり、基礎控除の額が600万円少なくなってしまいます。
それを考えると、配偶者の取り分を極端に大きくして相続税をゼロにできたとしても、その後にかえって子の代で損をしてしまうリスクがあるのです。
「配偶者控除」は、あくまでも、遺された配偶者の生活を守るため、配偶者の相続税の負担を最大限軽くしてあげるという制度です。
したがって、その目的に沿った活用をするにとどめておくのが良いでしょう。
まとめ
生命保険の死亡保険金にかかる相続税の負担を抑えるのに役立つ3つの制度「死亡保険金の非課税枠」「基礎控除」「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」についてお伝えしてきました。
「非課税枠」だけがクローズアップされがちですが、その他の2つの制度についても十分に理解したうえで、効率の良い相続税対策を立てていただけたらと思います。
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