相続税対策ができる!二世帯住宅の活用法と注意点
- 2021年9月7日更新
ここをお読みの方は、二世帯住宅を建てることが相続税対策として有効だという話を聞いたことがあることでしょう。
たしかに、それは一面で当たっている部分があります。しかし、本当に有効なのかというのはケースバイケースです。また、二世帯住宅と言っても、ライフスタイルの異なる別の世帯が一つ屋根の下に住むことに変わりはなく、トラブルを避けるために事前の配慮が必要です。
この記事では、二世帯住宅で相続税対策をする具体的方法と、注意点について、分かりやすくお伝えしていきます。
保険の教科書編集部
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目次
1.二世帯住宅の活用の前提・「小規模宅地の負担軽減措置」とは
1-1.多くのケースで活用できる「小規模宅地の負担軽減措置」
二世帯住宅で相続対策をするのに活用するためには、その前提として、「小規模宅地の負担軽減措置」という制度を知っておく必要があります。
この特例は、あなたの自宅建物とその敷地を配偶者、または同居の子が相続する場合に適用されます。
敷地(特定居住用宅地)のうち、330㎡以下の部分については、相続税法上の評価額が20%と扱われます。つまり、80%も差し引かれます。
「小規模」といっても330㎡を「坪」「畳」の単位に換算すると「100坪」、「199畳」にもなります。
かなりの広さなので、多くの宅地がこの条件をみたし、相続税の節税になります。
1-2.「小規模宅地の負担軽減措置」で相続税がゼロになるケース
この「小規模宅地の負担軽減措置」を活用すると、極端な場合、相続税を全く支払わなくても良いこともあります。
どういうことかというと、たとえば、以下のケースをみてみましょう。
- 遺産総額:6,000万円
- うち自宅の敷地の評価額:1,500万円
- 法定相続人:配偶者と子2人(合計3人)
- 配偶者と子2人が同居している
この場合、敷地の相続税法上の評価額は、1,500万円の20%の300万円と扱われます。その結果、相続税の課税価格の総額は、4,800万円ということになります。
そして、相続税には基礎控除があり、基礎控除の額は
3,000万円 + 600万円×法定相続人数
です。
このケースでは法定相続人が配偶者と子2人の合計3人なので、基礎控除額は4,800万円なので、この時点で相続税がゼロにできます。
二世帯住宅を活用した相続税対策は、この「小規模宅地の負担軽減措置」を活用するのです。
2.二世帯住宅の敷地は丸ごと「小規模宅地の負担軽減措置」の対象になる
「小規模宅地の負担軽減措置」は、建物が1つで、その建物と敷地の所有権が1人のものでさえあれば、その敷地全体に適用されます。
建物の中が完全に2つに仕切られていて、玄関が別々で、世帯間で完全に行き来ができなくなっていたとしても、です。
したがって、あなたの所有する土地の上に、あなたの所有名義の、中が完全に独立した二世帯住宅を建て、片方にあなたと配偶者が住み、片方に子の家族が住むことにすれば、配偶者と子が相続する時に相続税を80%減らすことができるのです。
3.何があっても互いのライフスタイルを尊重する覚悟と配慮が必要
親夫婦と子の夫婦が「同居」すると、多かれ少なかれ、摩擦を引き起こすリスクを伴います。世代が異なるだけでなく、ライフスタイルや考え方が異なる以上、それは当然のことと言えましょう。
特に、子の配偶者との関係は、傍から見ればささいなことでもナーバスになってしまいがちなものですから、十分に注意する必要があります。
「自分は嫁いじめ(婿いじめ)など絶対にしないし、若い世代に理解があるから大丈夫」と思っている人ほど、子の夫婦との関係が回復不可能なまでにこじれてしまう可能性があります。そうなっては、取り返しがつきません。
したがって、二世帯住宅を建てる場合は、できれば、内部が完全に仕切られていて行き来できず、プライバシーが確保されているタイプが望ましいといえましょう。
しかし、そうしたとしても、「一つ屋根の下」で暮らしていて行き来が容易で、互いのライフスタイルが見えやすい以上、そのリスクはある程度つきまといます。
したがって、単に「相続税対策」のみを目的として二世帯住宅を活用することは、おすすめできません。
何があっても互いの世帯のライフスタイルに干渉せず、尊重するという覚悟と配慮が必要でしょう。
また、建物や敷地の維持管理や使用方法・順番といった最低限のことについて取り決めをしておく必要もあるでしょう。
まとめ
相続税対策として、あなたの土地にあなたの所有する二世帯住宅を建てて片方に子の世帯を住まわせ、「小規模宅地の負担軽減措置」の適用を受ける方法について説明してきました。
この方法によれば、自宅の敷地の330㎡までは相続税の額が20%に抑えられ、基礎控除も合わせると場合によっては相続税がゼロになります。
しかし、他方で、二世帯住宅を建てるのであれば、子の世帯のライフスタイルを尊重するために事前の取決めだけでなく、不断の努力が必要になります。そして、その努力は、相続税対策のコストとして決して小さくないということを、心に留めておく必要があるでしょう。
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