逓増定期保険の経理処理|キャッシュをより多く残せるしくみ

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逓増定期保険は、法人向けの生命保険の中でも、短期間で税金の負担を抑えながら、必要な資金を効率よく積み立てるのに役立つ保険です。ただ、本当にそんな効果があるのか気になるところだと思います。そして、どういうしくみでそうなるのか、まずは経理処理から知りたいとお考えになると思います。

しかし、本やウェブサイトで逓増定期保険の経理処理を調べてみると、多くは通達の長い文章を紹介していて理解しにくく、しかもなぜそういう扱いがされているのかもよく分からないのではないでしょうか。

逓増定期保険には「1/2損金」「1/3損金」「1/4損金」がありますが、経理上なぜそういう扱いになるのか、その時に損金にならなかった部分(「1/2損金」なら残り1/2、「1/3損金」なら残り2/3、「1/4損金」なら残り3/4)が最終的にどういう扱いになるのか理解しておくと、より有効に活用できます。

この記事では、逓増定期保険の経理処理について、最もよく活用されている「1/2損金」のタイプにスポットを当てて、イメージしやすいように分かりやすくお伝えします。なお、「1/3損金タイプ」「1/4損金タイプ」も理屈は同じと考えていただいて結構です。

この記事をお読みになれば、逓増定期保険の経理処理、そして税務について理解が深まり、より有効に活用するのに役立つと思いますので、最後までお付き合いください。

1.保険料を支払う段階の経理処理

1.1.保険料の経理処理|「1/2損金」は実は前半だけ

逓増定期保険を活用して必要な資金をより多く積み立てる方法の詳細は『逓増定期保険で会社のキャッシュをより多く残す4つの活用法』をご覧いただくとして、まずは、保険料を支払う段階での経理処理についてお伝えします。

保険料の経理処理は、タイミングによって違います。具体的には保険期間の前半60%の期間と、後半40%の期間とで、扱いが違うのです。

たとえば、契約期間が20年間とすると、前半12年間と後半8年間で扱いが違います。

なぜそんなややこしいことになっているかというと、保険料が保険期間を通じて一定で上がらないためです。どういうことなのか詳しく説明します。

まず、保険期間を通じて、保険の対象者(被保険者)が亡くなるリスクは一定ではありません。人が亡くなるリスクは若いうちは低く、年を取るごとに高くなっていきます。したがって、本来、同じ保険金を受け取るためのコストである保険料も、最初は低く、後になるにしたがって高くなっていくはずなのです。

ましてや、逓増定期保険は保険金の額が段階的に増えていきます。亡くなるリスクが増加するだけでなく保険金額までもが増加していくとすれば、本来、保険料はなおさらどんどん高くなっていくはずです。

〈本来の保険料のイメージ〉

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ところが実際には、逓増定期保険は保険料がずっと同じで値上がりしません。それはなぜかというと、保険料がどんどん値上がりしていくのは加入者にとってあまり好ましいことではないためです。そこで、保険料を全期間一定にするために、保険期間の前半の間、保険会社が後半の保障に充てるお金を預かっておくしくみにしているからです。これを「前払保険料」と言います。

〈保険料が一定であるしくみのイメージ〉

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したがって、厳密に言えば、保険期間の前半の保険料は全額が純粋な意味での保険料ではありません。以下の2種類のお金が混じっています。

  • その時に万一のことがあった場合に備えた純粋な意味での保険料(支払保険料=費用)
  • 将来の保険料を前もって保険会社に預けて積み立てておくお金(前払保険料=資産)

ただ、会計上、これを厳密に区別して計算するのは非常に難しいです。そこで、以下のように考えます。

【前半60%の期間】

  • 1/2はその時点の保障を受けるための「支払保険料」(費用)
  • 1/2は将来の保障のため積み立てる「前払保険料」(資産)

【後半40%の期間】

  • 保険料全額はその時点の保障を受けるための「支払保険料」(費用)
  • 積み立てておいた「前払保険料」を取り崩して各年に振り分ける「支払保険料」(費用)

〈逓増定期保険の保険料の損金算入イメージ〉

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この処理方法は通達で定められています。しかし、表現が非常に難解ですので、ここでは敢えて引用しません。興味のある方は国税庁のサイトの『法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて』をご覧ください。

「1/2損金」は実は前半のうちだけということです。そして、最後まで解約せずに加入していれば、トータルでは全額損金ということになります。

ただし、逓増定期を活用する場合、解約返戻金の返戻率のピークは前半の「1/2損金」の期間内に訪れるので、その間に解約するのが定石になっています。また、実際も、「1/2損金」の期間内に解約しないケースはほとんどないと言っていいでしょう。だからこそ逓増定期保険は「1/2損金」と呼ばれているのです。

1.2.具体例|A生命の逓増定期保険の契約例

以上のしくみについて、A生命の逓増定期保険の契約例で具体的に見てみましょう。

【A生命の逓増定期保険の契約例】

  • 契約年齢:55歳
  • 保険期間:20年(75歳満了)
  • 保険料:4,668,850円/年
  • 返戻率のピーク:10年後(3%(44,940,000円)

この契約例で、前半12年間と後半8年間とに分けて説明します。

1.2.1.前半12年間(20年の前半60%の期間)

まず、前半60%の期間の保険料の経理処理は非常に重要なので、しっかり押さえておいていただきたいと思います。なぜなら、逓増定期保険を活用するほとんどの場合、前半60%の期間中に解約返戻金の返戻率のピークが来て解約するからです。

前半60%の期間の経理処理は、

  • 1/2はその時点の保障を受けるための「支払保険料」(費用)
  • 1/2は将来の保障のため積み立てる「前払保険料」(資産)

というものです。

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このように、現金・預金という資産が4,668,850円減少します。そして、1/2の2,334,425円が支払保険料として費用になり、残りの1/2の2,334,425円は前払保険料として保険会社に預けるものなので資産に計上されます。

その結果、費用である2,334,425円が損金に算入されます。これが「1/2損金」です。これによって、保険料を支払う段階では税金の負担が軽くなります。これをさして「節税」という表現をされることがあります。

しかし、その表現では正確ではありません。なぜなら、後で解約して解約返戻金を受け取る時に、その使い道がないと、その年度に税金を納めなければならなくなってしまうからです。

このことについては後ほど「2.解約返戻金を受け取る段階の経理処理」で詳しくお伝えします。

1.2.2.後半8年間(後半40%の期間)

次に、後半40%の期間の経理処理は以下の通りです。

  • 保険料全額はその時点の保障を受けるための「支払保険料」(費用)
  • 積み立てておいた「前払保険料」を取り崩して各年に振り分ける「支払保険料」(費用)

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このように、後半8年間の保険料は全額が支払保険料、つまり、保障を受けるための費用です。そして、それでは足りないので、事前に前半12年間に前払保険料として保険会社に預けて積み立てておいたお金(資産)合計28,013,100円を、8年間に分けて3,501,676円ずつ支払保険料として費用に計上していきます。

つまり、この段階になれば、保険料を支払うと1.75倍の額が損金に算入されていくことになります。「1.75倍損金」です。そのため、極端な話、気付かないうちに大赤字を出してしまうことも考えられます。

ただし、ほとんどの場合、実際にこの処理がされることはほとんどないと言って良いでしょう。なぜなら、逓増定期保険は1/2損金の期間、つまり前半60%の期間のうちに解約返戻金の返戻率がピークを迎えるので、ふつうはそのタイミングで解約してしまうことになります。後半40%の期間にさしかかる頃には返戻率は非常に低くなってしまうため、そこまで解約しないということはほぼ考えられません。

したがって、実際にこの「1.75倍損金」の処理がされることはほとんどありません。また、この処理をしなければならないはめに陥るのは好ましいことではありません。

2.解約返戻金を受け取る段階の経理処理

次に、解約返戻金を受け取る段階での経理処理についてお伝えします。なお、上述のように、逓増定期保険は前半60%の期間のうちに解約返戻金の返戻率がピークを迎えるので、ほとんどそのタイミングで解約してしまいます。したがって、ここでは、ピークで解約した場合についてのみ説明します。

A生命の逓増定期保険で見てみましょう。

【A生命の逓増定期保険の契約例】

  • 契約年齢:55歳
  • 保険期間:20年(75歳満了)
  • 保険料:4,668,850円/年
  • 返戻率のピーク:10年後(3%(44,940,000円)

この契約では、加入10年後に解約返戻金の返戻率のピークを迎え、その時の返戻率は96.3%、解約返戻金の金額は44,940,000円です。

この時に解約し、解約返戻金44,940,000円を受け取ると、経理処理は以下のようになります。

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解約返戻金44,940,000円を受け取るとその分、現金・預金という資産が増加します。

ただし、解約返戻金の一部は、保険会社に保険料の1/2を「前払保険料」として預けて積み立ててきた合計23,344,250円の資産が姿を変えて戻ってくるものです。したがって、その分だけ前払保険料という資産がなくなります。

そして、解約返戻金から前払保険料を差し引いた21,595,750円は収益としてとらえます。これが税務上、雑収入として益金に計上されます。

したがって、そのままだとこの21,595,750円には税金がかかります。法人実効税率30%として計算すると、6,478,725円の税金を支払わなければなりません。せっかくそれまで保険料の1/2を損金に算入して税金の負担を軽くしてきたのに、最後の最後に税金を取られてしまうのでは、保険を活用する意味が損なわれてしまいます。

それを避けたいのであれば、解約返戻金を受け取ったのと同じ年度に、この21,595,750円の益金と同じくらいの損金を計上する必要があります。

つまり、解約返戻金を受け取った時の使い道についてしっかり予定を立てておく必要があるということです。

まとめ

逓増定期保険の経理処理について、イメージしやすいように具体例を用いるなどして説明してきました。

逓増定期保険は、保険料を支払う段階では一部を損金にして税負担を軽くすることができます。しかし、解約返戻金を受け取る段階では多額の益金が計上されてしまうので、ここでその益金と同じくらいの損金を計上しないと、そこまで税負担を軽くしてきた意味が損なわれてしまいます。

ご自身の会社のニーズに合った逓増定期保険を選ぶ時に必要な視点は、損金にできる額や解約返戻金の返戻率のピーク時の高さだけではありません。

保険料を支払う段階と解約返戻金を受け取る段階のそれぞれの経理処理を理解した上で、将来を見据えて最も有効な保険を選び、有効活用していただきたいと思います。

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出岡 大作

出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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