個人事業主の方は、毎年、年度末になると、確定申告の準備に頭を抱える方も多いのではないでしょうか。
特に独立したてで、初めての確定申告が迫っている方は、確定申告というものがなぜ必要なのか、いまいち分からないかも知れません。
確定申告は税金に密接に関わっています。
個人事業主は一般的な会社員が納税している「所得税」や「消費税」「住民税」に加え、「個人事業税」という税金も納税する義務があります。
今回は個人事業主が納める税金の種類と算出方法、そして控除について、特に所得税と個人事業税に重きを置いて紹介します。
特に、必要以上に多くの税金を払わないために、税負担を軽減する各種控除等の種類や内容をよく理解しましょう。
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1.個人事業主が納める税金の種類
個人事業主が納めなければならない税金は、以下の4つです
このうち、所得税・住民税と個人事業税は所得にかかる税金で、様々な控除の制度があります。所得税と住民税は共通する制度が多いので、この記事では主に所得税と個人事業税について解説します。
2.所得税について
所得税はその名の通り、「所得」に課せられる税金です。
住民税も同じく所得に課せられる税金なので、税率以外の考え方はほぼ同じです。
会社員も支払っているものなので馴染みのある税金だと思いますが、実際の算出方法となると意外と知らない人が多いのではないでしょうか。
所得とは、「収入から必要経費を引いたもの」です。
つまりは実際の経常利益に当たるものと考えて良いでしょう。
納付時期は3月15日までとなっており、基本的に確定申告を済ませてすぐに納付する形となります。
期間が短いため、あらかじめある程度計算した上で用意しておかないと痛い目を見ることになります。
2.1.所得税の計算方法
所得税の計算方法は、下記の通りです。
所得税率と課税控除額は、課税所得額に応じて下記の表のように変化します。
また、課税所得金額は、
で算出されます。
つまり、純粋な所得から各種控除分が引かれた上で、税額の計算が行われるということです。
所得税の控除については確定申告の申告方法が深く関連してきます。
2.2.所得税の各種控除
所得税の各種控除には下記のような種類があります。
- 基礎控除
- 青色申告特別控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 障害者控除
- 勤労学生控除
- 寡婦・寡夫控除
- 寄附金控除
- 地震保険控除
- 生命保険料控除
- 小規模企業共済控除
- 社会保険料控除
- 医療費控除
- 雑損控除
今回はこの中でも控除額が大きい基礎控除と青色申告特別控除に重きを置いて説明していきます。
①基礎控除
基礎控除とは所得税、住民税に存在する控除で、誰でも一律で適応されるものです。
他の控除のように、一定の要件が存在しないのが最大の特徴です。
所得税の場合、基礎控除額は38万円と定められています。
②青色申告特別控除
個人事業主が受けられる大きな恩恵の一つが、青色申告特別控除です。
青色申告特別控除は確定申告時に青色申告することで受けることができる控除で、10万円控除と65万円控除の2種類が存在します。
青色申告は記帳方法によって、簡易簿記・現金式簡易簿記・複式簿記の3種類に分かれ、65万円控除を受けることができるのは、この中で最も複雑な複式簿記での記帳です。
その他の記帳方法でも10万円控除を受けることができますが、個人事業主の方は是非複式簿記に挑戦しましょう。
青色申告は青色申告特別控除の他にも、3年分の純損失を繰り越して申請することができたりと様々な恩恵があるので、個人事業主の方には青色申告をおすすめします。
2.3.具体的な所得税の算出シミュレーション
所得税の計算方法と各種控除について理解したところで、一度具体的な数値で計算してみましょう。
条件は下記のようにします。
- 収入:600万円
- 経費:100万円
- 各種控除:基礎控除38万円、青色申告特別控除65万円
上記条件の場合、課税所得額は、
600万円−100万円−48万円−65万円=387万円
課税所得額が387万円なので、上記表より、所得税額は20%、控除額は427,500円となり、所得税額は
387万円×20%−427,500円=346,500円
となります。
実際にはその他の控除が入るため、もっと税負担が抑えられると考えられます。
もう一つのパターンとして、青色申告をしていなかった場合を見てみましょう。
- 収入:600万円
- 経費:100万円
- 各種控除:基礎控除48万円
上記条件の場合、課税所得額は
600万円−100万円−48万円=452万円
課税所得額が452万円なので、上記表より、所得税額は20%、控除額は427,500円となり、所得税額は
452万円×20%−427,500円=476,500円
となります。青色申告を複式簿記で申請している場合と比べると、13万円の差が生じてしまいます。
青色申告を行うだけで、相当な節税ができるということです。
3.個人事業税について
個人事業税は個人事業主に課せられる税金です。
所得税や消費税のような国税ではなく、住民税と同じく地方税に分類されます。
個人事業税の納付時期は基本的に8月と11月の2期に分かれています。(地方によっては一括払いを選択できる場合もあります。)
3.1.個人事業税の計算方法について
所得税の計算方法は、下記のようになります。
- (収入 − 経費 − 専従者給与等 − 各種控除)×個人事業税率=個人事業税額
個人事業税率は業種によって変化します。
所得税との違いとして、専従者の給与等が項目として含まれているのが特徴です。
3.2.個人事業税の各種控除について
個人事業税に関連する控除は下記の2種類です。
それぞれ見ていきましょう。
①事業主控除
所得税に適用される基礎控除のように、全ての個人事業主に一律で適用される控除です。
控除額は290万円となっており、営業期間が1年未満の場合は控除額が月額割されます。
この控除があるため、個人事業税は事業所得が290万円以下の場合は支払う必要がありません。
②繰越控除
前年度以前からの純損失の繰越による控除です。
青色申告者で3年以内に赤字の年度がある場合や、白色申告者で震災等による損失があった場合、譲渡損失による控除などが該当します。
3.3.具体的な個人事業税の算出シミュレーション
個人事業税の計算方法と各種控除について理解したところで、上記の所得税の算出シミュレーションと同じような条件で個人事業税を計算して見ましょう。
以下の条件で計算します。
- 収入:600万円
- 経費:100万円
- 業種:IT事業(税率5%)
- 事業専従者:0人(専従者給与等0円)
- 各種控除:事業主控除290万円
この場合、個人事業税額は
- (600万円―100万円―0円ー290万円)×5%=105,000円
となります。
個人事業税は控除が2種類しかないため節税が難しく、収入から経費を引いた額(事業所得)が大きくなればなるほど膨大になっていきます。
事業で一定の収入を得ることが出来たら法人化したほうが良いといわれる所以はここにあります。
法人事業税は損金として算入することが可能な為、個人事業税よりは節税がしやすくなっています。
まとめ
個人事業主に課される税金の中でも、特に計算が複雑になる所得税と個人事業税について紹介してきました。
双方ともに大きな特徴として、多額の控除が挙げられます。
恩恵を最大限受けられるよう、控除や計算方法をしっかりと理解し、確定申告に備えましょう。