雑所得の税金|公的年金等とそれ以外で変化する課税方法

雑所得とは、様々な所得が定められている中、そのどれにもあたらない所得を取り扱うために存在する類型です。

特に年金が雑所得にであり、税金が課せられるということに驚く人も多いのではないでしょうか。

課税される税金については、公的年金等とそれ以外で大きく違いがあります。

今回はそんな雑所得の種類や算出方法、税金の計算について解説していきます。

思わぬ所得が雑所得として扱われている場合もあるので、良く確認しましょう。

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保険の教科書 編集部

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はじめに:雑所得とは

所得には、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・譲渡所得・一時所得・山林所得・退職所得が存在します。

雑所得は、上記のいずれにもあたらない所得です。

大きく分けて、公的年金等に当たるものと、それ以外に分けられます。

公的年金等は老後の生活資金という重要な役割をもっているため、雑所得の中でも特別に扱われており、税金が軽くなるような処置が取られています。

ここからは公的年金等とそれ以外の雑所得に分けた上で、それぞれの特徴や税金の計算方法などを見ていきましょう。

1.国民年金・厚生年金などの公的年金等について

老後の資金として重要な役割をもつ国民年金・公的年金などは、受け取る当人にとって重要なお金と言えます。

なので、それ以外の雑所得と算出方法に違いがあり、より多くのお金が手元に残るようになっています。

また、受給権利者に不幸があった場合に、遺された家族に給付される遺族年金も公的年金等と言えますが、課税対象には含まれません。注意しましょう。

1.1.公的年金等にかかる雑所得の計算方法

先に述べたように、国民年金をはじめとする公的年金等は老後の生活費等に当たるため、重要なお金です。

よって、他の雑所得よりは税金が軽くなるような計算方法が使用されます。

公的年金等の雑所得は、以下の計算式と速算表をもとに算出されます。

公的年金等に対する雑所得の金額=(a)×(b)-(c)

【公的年金等に対する雑所得の速算表(2021年分以後)※1】

公的年金等雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が1,000万円以下の場合※2
年金を受け取る人の年齢 (a)公的年金等の収入金額の合計額 (b)割合 (c)控除額
65歳未満 (公的年金等の収入金額の合計額が60万円までの場合は所得金額はゼロとなります。)
60万円超130万円未満 100% 600,000円
130万円以上から410万円未満 75% 275,000円
410万円以上770万円未満 85% 685,000円
770万円以上1,000万円未満 95% 1,455,000円
1,000万円以上 100% 1,955,000円
65歳以上 (公的年金等の収入金額の合計額が110万円までの場合は、所得金額はゼロとなります。)
110万円超330万円未満 100% 1,100,000円
330万円以上410万円未満 75% 275,000円
410万円以上770万円未満 85% 685,000円
770万円以上1,000万円未満 95% 1,455,000円
1,000万円以上 100% 1,955,000円

(参照元:「国税庁公式サイト」)
※1:2020年分以前は参照元の国税局公式サイトをご覧ください。
※2:公的年金等雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が1,000万円を超える場合は参照元の国税局公式サイトをご覧ください。

たとえば、65歳で公的年金等雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が500万円/年、公的年金が350万円/年の場合、公的年金の雑所得は以下のようになります。

3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円

基本的には公的年金等の雑所得とそれ以外の雑所得、給与所得や事業所得などを合算して、所得税と住民税を算出します。

一方、たとえば65歳未満で70万円/年の年金のみの収入がある方は、公的年金の雑所得は以下のようになります。

70万円-60万円=10万円

この場合、基礎控除額(48万円)を下回るので確定申告は不要となり、所得税がかかりません。

2.公的年金等以外の雑所得について

公的年金等以外の雑所得には、以下のようなものがあります。

基本的に、事業として行えるようなものを事業以外で行なった場合、雑所得に分類されることが多いです。

具体的には貸付利子による儲けや物品のレンタル料金、保有期間5年以内の山林資源による利益などになります。

もちろんこれらは事業で行なっていた場合、事業所得に分類されるので注意しましょう。

ここからは公的年金等以外の雑所得の中でも、特殊なものを紹介していきます。

①割引債の償還差益

割引債の償還差益は「金融類似商品」と呼ばれるものです。

基本的に雑所得は、他の所得と合計されて税金の計算を行うのですが、「金融類似商品」は「分離課税」で扱われ、個別に税率をかけることで税金を計算します。

金融類似商品は計算された所得に、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税率かけた金額を源泉徴収税として納めることになります。

割引債の償還差益は金融類似商品の中でも特殊で、源泉徴収税を納めた後、更に税率15%(他に地方税5%)分を納付する必要があります。

これは2016年から改定された法律によるもので、元々は割引債が発行された時に源泉徴収税を納めることになっていたものを、償還時にまとまて納めるようにした、というイメージです。

②国税や地方税の還付加算金

還付加算金も雑所得として扱われます。

しかし、還付金自体は払いすぎた金額が戻ってきたものとみなされるため、課税対象にはなりません。注意しましょう。

③生命保険を年金払いで受け取った場合

生命保険金を年金払いで受け取った場合、初年度に相続税または贈与税が課税され、2年目以降、年金の一部が雑所得として課税されます。

その理屈は複雑なので、詳しくは「保険金の税金|種類ごとに違う保険金の課税・非課税」をご覧ください。

④金銭や動産を貸した際の利子や儲け

いわゆる貸付利子による儲けや、物品のレンタル料金なども雑所得です。

金融業者が得る利益については事業所得として扱われます。

2.2.公的年金等以外の雑所得の計算方法

公的年金等以外の雑所得は以下のように算出されます。

  • 公的年金等以外の雑所得の金額=総収入額−必要経費

必要経費とは、受け取り時に生じた事務手数料などです。

受け取り時の必要経費を差し引いた純粋な利益に対して、税金が発生するという考え方ですね。

公的年金と比べ、公的年金控除がない分、金額が大きくなってしまうことが用意に想像できるでしょう。

公的年金等の雑所得で説明したように、給与所得等、他の所得と合算した上で所得税と住民税が算出されます。

一つ注意しなければならないのは、雑所得の赤字は他の所得から差し引くことができないということです。

つまり、雑所得で赤字になっても所得税や住民税が安くなることはないということになります。

まとめ

雑所得は、その性質から種類も多く、それぞれ条件によって他の課税方法が適用されるなど、細かい注意点があるため、自身が受け取る雑所得になり得るものが条件に当てはまっていないか、よく確認しましょう。

また、雑所得の算出方法には、公的年金等の場合とそれ以外の場合で異なります。

公的年金等は、老後の生活に関わる重要なお金であるため、控除が設けられていたりと、税金による負担が軽くなるような配慮がなされています。

さらに、公的年金等と他の雑所得の収入金額によっては、確定申告の対象から除外されます。

税負担を軽くするために公的年金以外の雑所得より細かいルールが定められているので、注意しましょう。

年金が関わってくる以上、雑所得はすべての人が関わる所得であると言えます。

計算が少々複雑な部分もありますが、しっかりと把握して、手元に残る金額を想定できるようにしておきましょう。

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