がんの治療費|知っておきたい公的保障と保険適用外の治療法

がんになったら治療費がかかるとは言いますが、実際どれくらいの治療費が必要なのか気になると思います。

国立がん研究センターがん対策情報センター「年齢階級別罹患リスク(2013年)によると、男性は62%、女性は46%の確率でがんになるといわれています。このように、がんは私たちの身近に潜む病気です。

がんになったら治療費だけでなく、治療のために働けなくなったり何かと余分な出費がかさみます。

そこで今回はがんの治療費がいくらかかるのかお伝えしたいと思います。

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保険の教科書 編集部

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1.がんになった時の治療費はいくらかかるか?

全日本病院協会の「平均在院日数(疾患別)」「年間医療費(重症度別)」によると、2019年時点での主要ながんの平均入院治療費と治療費自己負担額は以下の通りです。

※平均入院費用自己負担額は、3割負担として計算しています。

■がん入院日数・平均入院費用(2019年)

平均入院日数 平均入院費用
(実額)
平均入院費用
自己負担額
(3割負担の場合)
胃の悪性新生物 16.6日 953,595円 286,079円
結腸の悪性新生物 14.3日 924,594円 277,378円
直腸の悪性新生物 15.3日 1,022,965円 306,890円
気管支および肺の悪性新生物 14.7日 855,040円 256,512円

なお、健康保険には、高額療養費制度があります。1ヶ月の医療費の自己負担額(70歳未満なら3割負担)が一定額(限度額)を超えたら、差額を負担しなくてよいという制度です。

自営業の国民健康保険でも、会社員の健康保険でも利用できる制度です。

もちろんがんの治療も給付対象です。

※参考「高額療養費制度とは?医療保険より前に知っておきたい活用のポイント

2.がん治療の入院日数は17.1日間

がんになった場合の金銭的なダメージは、治療費の負担ばかりではありません。

がん治療を受けている期間、働けず、収入が得られなくなることもあります。

参考までに「がん治療の入院日数」のデータをご覧ください。厚生労働省の『平成29年(2017年)患者調査の概況』のデータを抜粋したもので、各年度時点のがん治療における平均入院日数を示しています。

1996年には平均で46日間と1ヶ月以上がん治療で入院するのが平均でしたが、2008年には平均23.9日間まで短くなりました。そして2017年では17.1日と、がん治療のための入院日数は短期化している傾向にあります。

しかし、このように入院日数が短期化しているとはいえ、入院している期間、給与が支給されないのは非常に大きなダメージです。

仕事ができなくなったら傷病手当金を活用する

会社員や公務員の場合、がんになって仕事ができなくなっても傷病手当金を活用すれば、ある程度カバーすることができます。連続3日間欠勤すれば、4日目から傷病手当金を受け取れます。期間は1年6ヶ月です。

傷病手当金の受給要件

  • 業務外の事由による病気やケガによる療養の休業であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続3日間を含み4日以上の仕事に就けなかったこと
  • 休業期間に給与の支払いがなかったこと

自営業の人など国民健康保険に加入している場合は傷病手当金はありません。建設業などが加入する国民健康組合が運営するものであれば、傷病手当金を受け取れます。

※参考「傷病手当金とは?支給額と支給期間と押さえておきたい申請の方法

3.健康保険対象外の出費

健康保険で注意しなければならないのは、対象外となる費用です。全額自己負担しなければなりません。具体例として以下のものがあります。

  • 差額ベッド代(少人数部屋を利用する際の室料、平均約6,155円/日)
  • 食事療養費の負担分
  • 病室でのテレビ代
  • 先進医療の技術料
  • 薬価基準収載前の承認医薬品の投与
  • 保険適用前の承認医療機器の使用など

※参考「差額ベッド代とは?入院費用を抑えるために知っておくべき基礎知識

4.先進医療の治療費はどれくらいか?

4.1.先進医療とは?

厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた治療方法のことで、現状は健康保険等の適用対象となっていないが、適用が検討されている段階のものです。

先進医療を受けられるのは、厚生労働大臣が定める医療施設に限られ、「技術料」が全額自己負担となります。

2021年5月現在では、84種類の先進医療があります(厚生労働省HPより)。先進医療の治療は、主にがん治療において高額になるケースが多くなっています。

4.2.先進医療の治療費はどれくらいかかるか?

先進医療を使用すると、技術料が保険適用外になるので、先進治療費は全額自己負担となります。通常の診療・検査・投薬・入院料等については、保険適用になります。

先進医療の技術料は、先進医療を受ける病院や種類によって異なります。

たとえば、総医療費100万円、うち先進医療に係る費用(技術料)が20万円だった場合、その20万円は全額が自己負担となります。

残りの80万円(診察・検査・投薬・入院料)は公的な保険の適用範囲となり、高額療養費制度を利用することができます。

結果、自己負担となる費用は最終的に以下の通りです(※)。

  • 先進医療の費用(技術料):20万円
  • 高額療養費制度適用後の自己負担額:80,100円+(80万円-26.7万円)×1%=85,430円
  • 合計:285,430円

※被保険者世帯の平均的な月収を28万円~50万円とします。

5.最先端の「自由診療」は全額自己負担

健康保険等の対象とならない治療方法を「自由診療」といいます。

たとえば、がん治療に有効な治療は、世界中で開発されていますが、日本で承認されるまでは時間がかかります。もし未承認の抗がん剤の治療を受けたい場合、健康保険等が適用されません。

「先進医療」にもなっていない場合は、「自由診察」で全額自己負担で治療を受けることになります。しかも、一連の治療の中で健康保険の対象となる治療を併用した場合、それも含めて全額が自己負担になってしまいます。

本来ならば健康保険が適用されるはずの治療費まで、全額自己負担になってしまうのです。

そうなると、治療費の負担は数百万円~数千万円になってしまうこともあります。

自由診療をカバーするがん保険が登場

そこで、最近は、特にがん保険で、自由診療もカバーする保険が登場してきています。

  • 自由診療の抗がん剤治療等を受けたら保険金を受け取れるタイプ
  • 保険診療、自由診療を問わずどのような治療を受けても実費を受け取れるタイプ

詳しくは「がん保険とは?知っておきたい必要性と種類・内容と選び方」をご覧ください。

まとめ

がんに限ったことではありませんが、病気やケガをした時は、公的医療保険制度をフル活用することが大切です。

高額療養費制度を使えば、1ヶ月の自己負担は大きく減らすことができます。また。傷病手当金では、治療期間が長くなり、収入が減少したときでも、一定の保障を受けられます。

とはいえ、がんになると健康保険がきかない先進医療や自由診療という治療を選択する場合もあるでしょう。

そういった経済的なリスクをカバーしたい場合は、がん保険はとても有効な手段になります。


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