がん保険の必要性を60歳より前と後に分けて考える


がん保険はテレビCMやインターネット広告などで盛んに宣伝されていますが、がん保険に入るべきかどうなのか、なかなかイメージが付かないと思います。
がん保険が必要か否かは、どのくらいの確率でがんになるかや、がんの治療期間はどのくらいかなどのことをふまえ検討することが必要です。
この記事では、がん保険の必要性について、60歳の前と後に分けて解説しています。その上で、最後にどんながん保険を選ぶべきかも簡単に紹介しています。
1.がん保険の必要性は60歳の前と後で分けて考える
仮にがん保険に加入したとしても使う可能性が低ければ意味がない、という考え方もあります。
ここではまず、がんになる確率をもとに、がん保険の必要性について考えてみましょう。
がんになる確率は、一般に定年を迎えることが多い60歳までと60歳以降で大きく異なるので、60歳前後に分けて検討します。
1.1.【前提】国の保障制度では経済的負担をカバーしきれない
日本では治療費が高くなってしまった場合、病気や怪我で働けなくなった場合の国の保障制度が充実しています。
これらの保障制度があるために、がん保険が必要ないと考える方もいるでしよう。
年齢を分けて必要性を考える前提として、これら国の保障制度についてまとめておきます。
結論から言うと、特にがんの治療が長期にわたった場合を中心として、これらの制度では経済的な負担をカバーできない可能性が高いです。
以下でその理由を解説します。
1.1.1治療が長期化すると国の保険がきいても医療費がかさむ
治療費が高額となり経済的な負担が大きくなり過ぎないように、日本では高額療養費制度が設けられています。
この制度を活用すると、所得により定められた1ヵ月間の医療費の上限を超えた分は、後から払い戻しを受けることが可能です。
一例として、家族4人のご家庭でお父様(年収400万円)が働いている場合に、医療費の上限がどのくらいになるかみていきましょう。
この場合は、自己負担が必要となる医療費の上限は以下の式によって求められます。
80,100+(医療費-267,000)×1%
この式にあてはめると、医療費の合計が150,000円だったとしても、自己負担すべき金額の上限は82,430円となり、それを超えた分(67,570円)が払い戻されます。
上限が82,430円であれば、治療が1~2ヵ月の短期ですむなら、それほど大きな負担ではないかもしれません。
しかし、高額療養費制度を使う月数が合計12ヶ月となると、単純計算して総額約100万円になります。
さらに病院までの交通費なども別に必要となります。
家計にとっては大きな負担となるでしょう。
1.1.2.働けなくなって収入が減る
会社員・公務員等であれば、業務外の病気や怪我で働けず給料がもらえなかったり下がったりした場合に、その分の所得を保障してくれる傷病手当金を利用できます。
支給額はおよそ給料の2/3なので、毎月40万円の給料をもらっていた方であれば、傷病手当金の制度によって約26万円受け取ることができるのです。
ただし、治療が短い期間ですめば、それほどの負担でないかもしれませんが、1年を超えるような長期の治療が必要になった場合は、治療費の負担と相まって、経済的負担が重くのしかかってきます。
しかも、傷病手当金の対象は上述の通り社会保険加入者に限られるので、自営業者・個人事業主はこの制度を使えません。
以上より、国の公的保障だけでは、がんになった場合の経済的負担をカバーしきれない可能性が高いと言えます。
1.2. [60歳より前]がんになると経済的ダメージが大きい
がん情報サービスの『最新がん統計』によると、30歳男性が定年を迎える60歳までにがんになる確率は7.4%、30歳女性の場合は11.8%とのことです。
男性の場合は、働き盛りの時期におよそ14人に1人、女性の場合はおよそ8人に1人はがんになる可能性があるのです。
人によってとらえ方は違うかもしれませんが、このように60歳以前にがんになる確率は、高いとは言えないものの決して無視できません。
あわせておさえておきたいのは治療にかかる期間についてです。
メットライフ生命の調査によると、5割以上の患者はがん治療が半年未満の短期ですんでいます。
その一方で同調査の中でも見逃せないのは、患者の約25%(約1/4)が1年以上の長期治療を受けている点です。
つまりがんの治療期間は個人差があり、短い場合が多いものの、1年以上の長期となる可能性も決して低くないということです。
特に働き盛りの世代でがんにかかり、1年以上の長期治療が必要となってその間働けず収入も得られなかったらどうでしょうか。
上でお伝えしたように、収入減をカバーする制度として傷病手当金がありますが、それでは2/3しかカバーできません。
しかも、治療費についても、高額療養費制度で1か月あたりの自己負担額が限られていたとしても、治療期間が長引けば、経済的なダメージはきわめて大きくなります。
嵐の櫻井翔さんが登場するテレビCMの中で、20代でがんにかかり1年半仕事を休み貯金がほぼ底をついた、という方の話が紹介されています。
若い方でも、この話は決して他人事ではないのです。
なので、60歳以前は、大きな経済的ダメージを受けるリスクをカバーするため、がん保険に入っておくことをおすすめします。
1.3. [60歳以降]がんになる確率が高くなり治療費がかさむ
次に60歳以降の方についてがんになる確率をみていきましょう。
60歳男性が20年後の80歳までにがんになる確率は41.1%、60歳女性が80歳までにがんになる確率は23.8%と、それ以前と比較して格段に高くなります。
老後の蓄えが限られる中で、がんになって治療しなければならなくなった場合、家計への負担もその分大きくなると想定されるので、がん保険があったほうが安心です。
2. 貯蓄が十分にあればがん保険は不要?
それでは、使いきれないぐらいの資産がある方で、どれだけ大きな出費があっても全く大丈夫という方はどうでしょうか。
そこまでいかずとも、「数千万円の貯蓄があるから何とかなる」とお考えの方もいらっしゃると思います。
それは間違いとまでは言えません。事実、私も一時期、お金持ちは保険はいらないと考えていました。
しかし、最近、様々ながん医療に関するニュースをチェックする中で、その考え方が変わりました。
がん治療は世界中で治療方法が日々進化しています。そして、最先端の治療を受けようとすれば、お金がいくらでもかかるのです。
極めつけは、公的な健康保険がいっさい適用されない自由診療です。あっという間に何千万円もかかるということもありえます。
いくらお金に余裕があっても、数千万円単位の出費は大きいはずです。
3.どんながん保険がおすすめか
これまで見てきたように、がん保険は多くの人にとって必要となる保険です。
それでは、どのような保険に加入するべきでしょうか。
簡単に言うと、最新のがん治療の事情にマッチした保険がおすすめです。
近年のがん治療は手術が日帰りとなることが多かったり、抗がん剤や放射線による治療も入院せずに治療を受けたりして、長期の入院が強いられるということは少なくなりました。
そのため医療保険のように、入院1日あたりいくらの給付金がもらえるタイプであると、かかる治療費に比べ受け取れる金額が少なくなってしまうことがあります。
3.1.使い道が自由な診断給付金がもらえる「一時金タイプ」
そこで、一番おすすめなのは、がんと診断されたら100万円などの一時金がもらえる保険です。
このタイプであれば、入院の有無や日数は関係ありません。
しかも、一時金であれば使い道は自由なので、日帰りの手術代にも抗がん剤や放射線での治療費にも利用することができます。
3.2.治療ごとにお金を受け取る「治療ごと受取タイプ」
もう1つのおすすめは入院・通院を問わず、抗がん剤治療や放射線治療など、あらかじめ定められた治療を受けた際に月額10万円などのお金がもらえる保険です。
このタイプは、がんになった人が受ける可能性が高い特定の種類の治療に絞ってピンポイントで保障をしているため、保険料が抑えられるメリットもあります。
3.3.先進医療があるとなおよい
これらに先進医療と呼ばれる高度かつ保険適用外となる治療を受けた際に給付金がもらえる先進医療特約をつけます。
例えばがん治療に効果があるとされる陽子線治療は平均で約280万円にもなりますが、先進医療特約をつければ月額100円程度で、先進医療を受けた際の治療費を通算1,000万円~2,000万円程度まで保障してもらうことが可能です。
保険会社によっては、「一時金タイプ」と「治療ごと受取タイプ」と「先進医療特約」が全てパックになった手厚い保障のがん保険もあります。
補足|自由診療でもなんでも保険金を受け取れる「定期がん保険」も
上でお伝えした「一時金タイプ」「治療ごと給付タイプ」のがん保険は、いずれも、保険期間が一生涯で、保険料が上がらない「終身がん保険」に多いものです。
これに対し、保険期間が5年で自動更新の「定期がん保険」があります。
更新ごとに保険料が上がるというデメリットはありますが、その代わり、どのような治療を受けても、治療の実費がほぼ全額保障されます(入院時の差額ベッド代、食事代等はのぞきます)。
健康保険の適応外である最先端の治療「自由診療」も、保障されます。
先ほど、自由診療を受けると数百万、数千万円かかる可能性があるとお伝えしましたが、そういった治療を受けた場合も、保障されます。
保険料は20代~30代の若いうちは月1,000円前後ですが、5年ごとに上がっていきます。特に男性は40代半ば以降、値上がりの幅が大きくなっていきます。
「定期タイプ」にも様々なプランがありますので、保険料を無理なく支払い続けられるかどうかを考えて加入するようにしてください。
最もおすすめなのは「一時金タイプ」「治療ごと受取タイプ」の終身がん保険で一生涯の保障を確保しておき、働きざかりの間、「定期がん保険」で保障を万全にするという活用法です。
まとめ
がんになると治療が長期化する可能性があったり、治療の期間の収入が減ったりして経済的な負担が大きくなってしまうことがあります。
その負担をカバーするためにも、多くの人にとってがん保険は必要です。
この記事を参考にがん保険の必要性について改めて見直していただければ幸いです。
またがん保険を選ぶ際には、基本的には保障が一生涯続く「終身がん保険」で、まとまった一時金を受け取れる「一時金タイプ」、または、受けた治療によってあらかじめ決められた給付金を受け取れる「治療ごと受取タイプ」、あるいはこれら2つが合体したタイプをおすすめします。
その上で、自己負担が高額となる先進医療の費用を保障してくれる先進保障特約を付けることをおすすめします。
「定期がん保険」はどのような治療を受けても実費をカバーしてくれるという利点がありますが、5年ごとに保険料が上がるので、保険料を払い続けられるか慎重に検討した上で加入する必要があります。なお、「終身がん保険」で一生涯の保障を確保した上で、働きざかりの間だけ保障を万全にするため「定期がん保険」をプラスする選択肢もあります。




