法人で生命保険を検討するときに「いくらまで」加入できるのか考えたことはありませんか。
実際に、経営者の方が法人保険を活用して、退職金の準備や事業保障を確保するときに加入できる生命保険の保険金額は思っている以上に大きなものとなることもあります。
ただ単に生命保険に加入の限度があるということだけならば、なにも問題はないのですが、会社として備えたい保険金額をより多く確保しなければならないときや、法人保険を活用してお金を貯めていくときなどには、これからご紹介するポイントを知っておかないと思うように法人保険に加入できなくなってしまうこともあります。
わかりやすくポイントをまとめましたので、是非最後まで読んでいただければと思います。
また、最後にはより多くの保険料を損金算入させながら会社の資産を増やしていきたい向けに、ちょっとしたテクニックもご紹介いたしますので是非参考にしてください。
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はじめに
生命保険の保険金の加入限度額のポイントは以下の3つです。
- 年齢・役職
- 年収・年商
- 保険会社ごとの『他社通算』の考え方の違いを踏まえて加入の順番を決める
この3つのポイントはこれから大きな保障額の保険を検討する方にとって非常に大切なポイントになりますので、これから1つずつご説明していきます。
1. 年齢・役職
生命保険の保険金額は、年齢・役職でも決まります。
例えば、保険会社A社の生命保険の保険金額は
- 20~24歳では、6000万円まで
- 25歳~34歳では、3億円まで
となっています。
24歳取締役と25歳取締役では、同じ取締役でも加入できる生命保険の保険金の限度額は24歳では6000万円まで、25歳では3億円までと2億4000万円も差が出てしまいます。
また、年齢は同じでも役職によって加入できる保険金額はことなります。
例えば、B社では25~34歳までの代表取締役社長は5億円・取締役では3億円となっています。
なので、25歳の代表取締役社長と25歳の取締役では、年齢は同じ25歳でも加入できる生命保険の限度額は異なります。
このように、年齢と役職で生命保険の加入限度額は変わってきますので、生命保険を掛けたい保険の対象(被保険者)の年齢・役職で、いくらまで加入できるのかは確認しておくべきです。
しかし、ここまではあくまで年齢・役職での生命保険の保険金の加入限度額を示したものなので、その限度額の中でさらに加入限度を定めているルールがありますので、これからご説明していきます。
2. 年収と年商
生命保険の死亡保険金額は、年商と年収によって決まります。
例えば、A社の生命保険(死亡保障)は法人で加入する場合
『保険金の加入限度額=年収の20倍あるいは年商まで』
となっています。
ここで、年収2000万円・年商2億円の社長が経営者保険に加入する場合は
保険金の加入限度額は
年収の20倍では、2000万円×20倍=4億円が保険の加入限度額で
年商は2億円なので、保険の加入限度は2億円なので、
今回A社での生命保険の加入限度額は年収の20倍である4億円ということになります。
保険会社によっては、生命保険の保険金の加入限度額は、『年収の20倍かつ年商まで』というルールであれば、年収2000万円・年商2億円の法人であれば、
年収の20倍は4億円であっても、年商は2億円なので、加入限度額は2億円ということになります。
このように保険会社によってルールは異なりますので、あらかじめ確認しておくことが大切です。もしも、4億円の死亡保険金額が会社を守るためにどうしても必要ということであれば、A社で加入しなければ大きな保険金額は確保できませんので、A社を選ぶべきということになります。
ここまで、年齢・役職で定められた保険金額の加入限度額の中で、さらに年収・年商で加入できる保険金額が決まるということが分かったと思います。
ここからはさらにもう1つの条件があり、この条件が、実際に生命保険に加入するときに一番大切な部分になってきます。
3. 保険会社ごとの『他社通算』の考え方の違いを踏まえて加入の順番を決める
ここまでご説明してきたのは、生命保険会社1社ごとの保険金の加入限度額でしたが、実は複数社の生命保険に加入するときは『他社通算』の条件があります。
例えば、A社では保険金額7億円まで加入できて、B社では保険金額5億円まで加入できるという決まりがあるとします。
もし、両社の基準で、他社と通算した加入限度額が
だとすると、A社に先に申込をした方が良いのです。
どういうことかというと、A社で7億円、B社で5億円、同時に申し込んだ場合を考えてみましょう。
A社とB社で合計保険金額12億円となりますので、B社は通算条件12億円までなのでOKですが、A社は通算条件10億円までなので、通らないことになってしまいます。
そこで、加入する順番を工夫すれば、A社もB社も加入できることになります。
まずA社に先に加入して、契約を成立させます。その後に、B社の申し込みをすれば、通算条件を満たしているためB社も加入できます。
A社は1度契約が成立しているので、後にB社で加入してもA社の契約がなくなってしまうということがないかのです。
このように、『通算』の条件までしっかりと理解して、1社ずつ順番を付けて加入しなければ、希望の保険金額を確保できなくなってしまいます。
生命保険会社には、生命保険業界全体で加入額を照らし合わせるシステムがあり、他社の保険金額にもリンクして条件をクリアしているかの確認が入るようになっていますので、保険金額での誤魔化しはできません。
よって、よくあるパターンでは、すでに加入していた生命保険の存在を忘れており、新規でも加入だけに気を取られて、希望の保険金額を確保をできなかったということがあります。
しっかりと現在の加入内容を把握した上で、生命保険を追加で加入するにはどの順番で、どの保険会社で加入するのかを決めるようにしましょう。
なお、年収・年商を大きく偽って保険金の支払い限度額を上げようとすると、生命保険会社からの確認がある場合もあるので、あまりにもかけ離れた年収を報告することは極力やめておきましょう。
おまけ|加入限度額の範囲内で保険料の額を大きくしたい場合は…
限られた保険金の加入限度額の中で、より多く保険料を支払えるようにする方法は
「特定疾病保障特約」などの死亡保険以外でのオプションを付加すること」です。
保険料を損金算入させながら退職金の積み立てを短期で行いたい場合などは、保険金の上限額が少ないので、あまり大きな保険料にすることができずがっかりされる経営者の方もいらっしゃいます。
しかし、「特定疾病保障特約」などの死亡保障以外の特約を付加していくことで、同じ保険金額でも特定疾病の保障にもなるので、その分の保険料が上乗せされています。
解約返戻率が若干落ちる場合もありますが、税負担を減らすためにより多くの保険料を支払いたいのであれば、そういう選択肢もあります。
まとめ
加入限度額はまず、年齢・役職と、年収・年商により決まります。また、複数の保険会社を活用してより多くの保険金額を確保することも可能です。
ただし、複数の保険会社で加入するときは、保険会社ごとに、他社と通算した場合の加入限度額の基準が違いますので、それぞれの違いを押さえた上で、加入する順番に注意しましょう。
また、損金を大きくして税負担を減らしたいなど、限られた保険金額の中でより多くの保険料を設定したい場合は、『特定疾病保障特約』等を付けることで、保険料が大きくなることもあります。