※(2020年10月17日追記)この記事における法人保険の保険料の税務上の扱い、契約例に関する記載内容は、旧ルールを前提としております。最新のルールについては「法人保険の損金算入ルールを分かりやすく解説します」をご覧ください。また、新ルールを踏まえた法人保険の最新の活用法については「法人保険|会社のお金の問題解決に役立つ最新6つの活用法」をご覧ください。
いつかはやってくる引退に向けて、会社を良い状態で引き継ぐために、後継者に円滑に自社株を引き渡したいという経営者の方は多いのではないでしょうか。
さらに、相続税についても事前に十分対策をしておきたいという方は多いのではないでしょうか。
今回の記事ではオーナー社長が会社を円滑に後継者に引き渡すために重要な、相続税の納税資金の準備、および円滑な株式譲渡のための事前対策についてお伝えします。
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私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。
1.オーナー社長の相続・事業承継対策
たとえば当初1,000万円で立ち上げた会社も、利益を積み上げて剰余金が積みあがっていくと、自社株の評価は上がっていきます。
中小企業であればオーナー社長1人が株主の場合も多く、自己資本が2億円という評価になるケースも珍しくありません。
引退し、後継者である親族に事業承継しようとしたとき、問題になるのは株式譲渡と相続税です。
オーナー社長が死亡した時、オーナー社長の現金や有価証券、不動産など個人資産に、自社株も時価評価して相続財産に合算され課税されます。
相続、事業承継対策ができていない場合、納税資金不足などで、自社株そのものを売却し、経営権を他人に渡すという結果にもなりかねません。
そのため、相続税の納税資金の準備、および円滑な株式譲渡のための事前対策が重要です。
2.相続税はどれぐらいかかるか?
相続税額の算出方法は、各人が相続などで実際に取得した財産に直接税率をかけるわけではありません。
正味の遺産額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた残りの額を「課税価格」と言います。
そして、その課税価格から、民法に定める相続分によりあん分した額に税率を乗じます。この場合、民法に定める相続分は基礎控除額を計算するときの法定相続人の数に応じた相続分により計算します。
実際の計算に当たっては、民法に定める相続分(法定相続分)によりあん分した額を下表に当てはめて計算し、算出された金額が相続税の基となる税額となります。
詳しくは国税庁の相続税のページをご覧ください。
3.生命保険を活用して納税資金を準備する
相続発生時の相続税額を予測し、それに見合う生命保険に加入しておくことで、相続税の納税資金を準備することは可能です。
死亡保険金は遺族の生活に必要な財産という事で、優遇措置として500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。
生命保険の控除額により相続財産の評価額を下げることができます。
遺産のほとんどは不動産で現預金は少ないといった場合、突然多額の相続税を納付しなければならないケースがあります。
通常相続財産は、遺産分割協議が終わるまで凍結されてしまいます。そのため、受け取るためには相当時間がかかります。
生命保険であれば複数の受取人を指定することもできますので相続財産を分割しづらいときに活用できます。また受取人を指定することで遺言と同じ効果が得られます。
また、生命保険の死亡保険金なら受取人が書類を用意するだけで通常1週間程度で受け取ることができます。
4.高額な退職金支給による自社株対策
自己資本が2億円相当にも膨らんだ会社であれば、自社株式の株価が高くなってしまい、株の移転に多額の資金が必要になります。
そこで、自社株の対策として次のステップが検討されます。
- 社長の勇退時に大きな退職金を支払い、それによって純資産が下がる
- 自社株式の評価減
- 社長から事業承継者への株の移転(譲渡、贈与)
- 自社株式の買い取り(金庫株化)
ほとんどの中小企業では、内部留保は少なく、社長の高額な退職金を何の手だてもなく支払えるような状況にありません。
そのため、「全額損金の定期保険」「長期平準定期保険」「逓増定期保険」などの法人生命保険を用いて退職金の対策を節税とともに行うと効果的です。
全額損金の定期保険については、「全額損金の保険のメリット・注意点と知っておきたい2つの活用法」をご覧ください。
長期平準定期保険は「長期平準定期保険の2つのタイプの目的別の活用法と注意点」をご覧ください。
逓増定期保険は「逓増定期保険とは?基本のしくみと本当の活用法・選び方のポイント」をご覧ください。
高額な退職金の支給によって株価が下がることで、後継者が株式を取得するために必要な費用が下がるというメリットがあります。
後継者は自社株取得のために資金を必要としますが、現経営者の生命保険金をうまく活用することで資金を円滑に準備するも可能です。
詳細は税理士やファイナンシャルプランナーに相談してみてください。
まとめ
オーナー社長の会社を円滑に後継者に引き渡すためには、相続税の納税資金の準備、および円滑な株式譲渡のための事前対策が重要です。
生命保険を活用すると、大きな相続税を準備し、後継者が自社株取得を円滑に行える場合があります。
これから相続税の増税も控えていますので、増税を念頭において対策を進めるのをおススメします。