ドクターの皆様は、いつか独立しようと考えることも多いかと思います。そして独立開業をした場合には、まずは個人診療所として独立し、数年後に診療所の経営も軌道にのったころ、医療法人への「法人化」を考えだすことでしょう。
法人化を決断するにあたっては、特に節税や福利厚生の充実、退職金の準備ができるなどのメリットを考慮にいれて法人化にするケースもあります。先ずは法人化のメリットを簡単にご説明いたします。
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私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。
1. 医療法人化の三つのメリット
医療法人化するメリットは、三つあります。
- 課税を抑えられる。
- 退職金など老後の準備もできる。
- 資金調達がしやすくなる。
まず、家族に医療法人の理事報酬を支払うことで課税を抑えることができます。
給与を理事長一人に集中させてしまうと課税額が大きくなります。
しかし、理事長の給与を抑えて家族に分散すると、家族単位で見た場合の収入は同額でも課税額は小さくすることができます。これは、医療法人だからこそできるテクニックですね。
次に、退職金の準備ができるようになることもメリットだと考えています。
そのためには生命保険を使うのですが、保険料のうち全額、または半額は医療法人の経費から払うことができるため、支払い額以上の退職金が得られる場合もあります。
ただし保険の種類や税法も日々変化しておりますので、情報収集が必要です。
最後に、資金調達です。医療法人を経営すると、事業の拡大にともない大きな設備投資が必要になってきます。
そのような時は。医療法人が借主になり、理事長が保証人になることで、事実上一人でも資金調達ができるようになります。
第三者に保証人を依頼しなくても良いという点は、心理的にも大きなメリットでしょう。
2. 医療法人のデメリット
次に医療法人のデメリットをお伝えします。書類完備や経理の手間が増えたり、社会保険と厚生年金への加入義務があったりなど、いくつかありますが、極端な話、それらは、そこまで大した話ではありません。
最大のデメリットは、法人のガバナンスの脇が甘いと、自分自身が、除名・解任されご自身の病院・診療所から去らなければならない状況に置かれるリスクがあるということです。
実際に、自分自身で手塩にかけて育ててきた医療法人を、ガバナンスの甘さが理由で、追い出されてしまった方も何名かいらっしゃいます。
非礼を承知の上で、お伝えさせていただくと、このような法人のガバナンスに対して、無知なドクターは少なくないと思います。
3. 二つの医療法人
医療法人には、社団たる医療法人と財団たる医療法人の二種類があります
社団は「一定の目的をもった人の集団で設立される法人」です。財団は人が「一定の目的のために財産を寄付しその運営をするために設立される法人」です。ほとんどが社団医療法人となります。
4. 個人事業主と医療法人の税務
開業医は「所得税法」、医療法人は「法人税法」が適用されます。
所得税の税率は、所得によって5%~45%と開きがあり、税金対策も限られます。
しかし、医療法人は税金対策の面で、はるかに柔軟性あります。特定の利益水準を超えると法人成りした方が税金計算上は有利となります。
5. 開業医・医療法人の損害保険と生命保険
開業医・医療法人には、賠償損害や人的損害、財産損害のリスクがあります。リスクを整理し安心して事業を展開するにはどんな保険が必要なのかを理解しておく必要があります。
ここでは、それぞれリスクと、その解決策である保険商品をご説明いたします。
賠償リスクと損害保険
1. 賠償損害のリスクへの備え|施設賠償責任保険
病院施設、設備、機器等の不備や、業務活動の上でのミスが原因で、第三者に傷害を与えた場合等(建物の火災によって患者が死亡した場合等)に、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険です。
2. 医師賠償責任保険
医療上の過失により患者の身体や財物に損害を与えた場合に、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険です。
医師や歯科医師が対象である一般の医師賠償責任保険、日本医師会会員が対象である日本医師会の医師賠償責任保険があります。
3.看護師賠償責任保険
看護師が間違って他人を傷付けた場合等、その看護師等に対して補償金を給付することによって被る損害や、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険です。
資金リスクと生命保険
1. 役員退職金の準備
医療法人を設立すると、院長やその配偶者は退職時に特別功労金や退職慰労金の受けることが出来ます。
そして、死亡退職については、本人か遺族が医療法人から特別功労金、死亡退職慰労金、弔慰金、などを受取ることが可能です。
これらの勇退と死亡の両方の退職につき、生命保険を活用することができます。
2. 医業保障資金の準備
経営者たる理事長が万一死亡した場合に、借入金の返済資金のような、医業継続のための資金を準備できます。
つまり、医療機器の購入や病院の建設等のために医療法人が金融機関から借入を行っている資金は、万一、理事長が死亡した際には返済が必要となります。
借入金相当額の生命保険に加入することで、支払財源を確保できます。
3. 福利厚生
養老保険等の福利厚生保険に加入することで、従業員の見舞金制度、退職金制度、弔慰金制度の充実を図ることができると共に、人材を確保することにもつながります。
まとめ
今回は、勤務医様や法人化を考えている方へ基本的な情報を提供させていただきました。
法人化にはさまざまなメリット・デメリットがございますが、計画的経営計画を作成し、考えられるリスクを洗い出しリスクをヘッジし、より法人化にするメリットを最大限生かし開業に向けて進んでいただければと思います。