現在、「出資持分」がある医療法人を設立することは不可能になっています。
これは医療法の改正により、非営利性が徹底されたためです。
結果、「社団たる医療法人」では、出資金ではなく「基金」を集めることによって運営資金を調達します。
ただし、気を付けなければいけないのが法人税等です。
法人税等は資本金の額によって扱いが違うことがあるため、資本金の金額がいくらかというのは、税務計算においてとても重要になります。
では、医療法人における「基金」は、資本金として扱われるのでしょうか。
今回は医療法人に出資されたお金の考え方について解説していきます。
これから医療法人に関わろうとしている人は、しっかり把握しておきましょう。
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1.出資持分と基金
元々、社団たる医療法人は「出資持分のある」法人と「出資持分のない」法人の両方を設立することができましたが、2007年の法改正以降、「出資持分のない」法人しか新たに設立できなくなりました。
「出資持分」とは、株式会社の「株主」が持つ権利のようなもので、「出資者=社員」が退社する際に、出資した分の金額の払い戻しが受けられるというものになります。
2007年の法改正により、医療法人は「出資」というかたちで資金調達をすることができなくなってしまったのです。
その代わりに、医療法人は「基金」というかたちで資金調達を行うことができるようになりました。
2.「基金」は資本金にあたるのか
では、「基金」は税法上どんな扱いがされるのでしょうか。
会社の「資本金」と同じ扱いなのか否かによって、法人税の課税上、大きな違いがあります。
結論から言うと、「基金」は資本金として扱われることはありません。
つまり、「出資持分」のない医療法人は、資本金が0円なのです。
結果、法人税等の税額計算に大きな影響を与えることになります。
3.「基金」が資本金でないことによる影響
「基金」が資本金でないことによって、法人税等に大きな影響が出てきます。
それぞれ見ていきましょう。
3.1.法人税の場合
法人税の課税対象となる所得金額を計算する際に、「資本金」の額によって変わってくることがあります。
たとえば、寄付を行った時に損金算入できる額には限度がありますが、その限度額を計算する基礎に「資本金」の額があります。
しかし、「基金」は「資本金」には含まれません。
3.2.法人住民税の場合
地方税である法人住民税。
資本金の違いにより大きな影響が出てくるのが「均等割」です。
均等割は個人住民税における均等割と意味合いは同じで、住民税の基本料金として定められている金額です。
法人の場合は、「資本金」等の額と従業員数によって金額が変わり、具体的な金額は自治体ごとに定められています。
例えば、東京に本社等の主たる事務所が存在する場合で、資本金5,000万円、従業員数50人以下の医療法人と「基金」によって5,000万円集めた従業員数50人以下の医療法人を比較してみましょう。
まず、会社で資本金5,000万円、従業員数50人以下の場合、均等割額は18万円になります。
対して、医療法人で「基金」が5,000万円、従業員数50人以下の場合、「資本金」が0円なので、均等割は7万円です。
均等割は毎年定額がかかることを考えると、この差は大きいのではないでしょうか。
3.3.消費税
新設法人で「資本金の額又は出資の金額」が1,000万円以上の場合、新設法人の消費税納税義務免除の特典を受けられませんが、「基金」は「資本金の額又は出資の金額」ではありませんので、基金が1,000万円以上でも特典を受けられます。
まとめ
医療法人の資本金について、考え方を紹介してきました。
医療法人は出資者が配当等を受けることができない、「出資持分」のない法人しか設立できなくなりました。
より非営利性が増した分、「基金」が資本金として扱われないことによって、税負担が軽くなっています。特に法人住民税の均等割は、定額で数万単位の変化があるため、経営上有利に働くでしょう。
これから医療法人を設立したいという人は、「基金」の仕組みをしっかりと把握しておきましょう。