特定医療法人とは?税制上のメリットと注意点まとめ

医療法人にとって、法人税の優遇が受けられる制度の1つに「特定医療法人制度」と呼ばれるものがあります。

特定医療法人として認定されれば、軽減税率が適用されるなどのメリットが得られます。

しかし一方、特定医療法人として承認されると、かえって収益を得る方法等が制限されてしまうことも多く、申請する際にはメリットとデメリットを比較することが大切です。

今回は特定医療法人になることのメリットとデメリット、特定医療法人として認められるための手続等、基本的な情報を紹介します。医療法人の法人税を抑える方法を探している方は、ぜひご参考にしてください。

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保険の教科書 編集部

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1.特定医療法人とは

特定医療法人の制度は、簡単に言えば、公益性の高い医療を行っている一定の医療法人に対し、法人税の税率を軽くするなど、税制上の優遇措置を与えるというものです。

似たような制度に、「社会医療法人」と呼ばれるものもありますが、社会医療法人は医療法を根拠としているのに対し、特定医療法人は租税特別措置法を根拠にしているという違いがあります。

特定医療法人として認めてもらうためには、以下の条件をみたさなければなりません。

かなり細かく定められていますが、簡単に言うと、営利よりも公益を追求する目的が強く、経営が透明であることです。

  1. 財団、又は持分の定めのない社団の医療法人であること
  2. 理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの(役員等)のそれぞれに占める親族等の割合がいずれも3分の1以下であること
  3. 設立者、役員等、社員又はこれらの親族等に対し、特別の利益を与えないこと
  4. 寄付行為・定款に、解散に際して残余財産が国、地方公共団体又は他の医療法人(財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めがないものに限る)に帰属する旨の定めがあること
  5. 法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記録又は記載している事実その他公益に反する事実がないこと
  6. 公益の増進に著しく寄与すること
  7. 役職員一人につき年間の給与総額が、3,600万円を超えないこと
  8. 医療施設の規模が告示で定める基準に適合すること
  9. 各医療施設ごとに、特別の療養環境に係る病床数が当該医療施設の有する病床数の100分の30以下であること

2.特定医療法人になるメリット

次に、特定医療法人に承認されることで得られるメリットをお伝えします。

2-1.法人税の軽減税率

特定医療法人の最大のメリットは、19%の軽減税率が適用されることです。通常の法人税率は23.2%なので、4.2%低くなります(国税庁HP参照)。

法人税だけでなく、道府県民税や市町村民税の「法人税割」も法人税額をもとに計算されるので、法人税率が低くなることで、これらの税額も軽減されるというメリットがあります。

2-2.軽減税率以外のメリット

出資持分(平成19年の医療法改正前に成立した医療法人において、医療法人に金銭などの出資を行った者が持っているもの)がある経過措置型医療法人が出資持分の定めのない医療法人に移行する際、通常は清算所得課税などが発生します。しかし特定医療法人への移行では法人税と所得税、贈与税がかからないので、移行に必要な負担を抑えられます。

3.特定医療法人として承認してもらうための手続

特定医療法人の承認を申請するためには、寄附行為か定款のコピー3部と、以下の書類を3部ずつ用意し、税務署に提出します。そうすると、国税庁に送られて審査されます。

  • 特定医療法人としての承認を受けるための申請書
  • 申請時の直近に終了した事業年度に係る厚生労働大臣の定める基準を満たす旨の証明書
  • 申請者の医療施設等の明細票
  • 申請者の附帯業務等の明細表
  • 承認要件を満たす旨を説明する書類
  • 役員等に関する明細表
  • 特殊関係者の施設の利用等に関する明細表

これらの書類のうち「申請時の直近に終了した事業年度に係る厚生労働大臣の定める基準を満たす旨の証明書」以外の書類は、国税庁HPからダウンロードできます。

手続書類の提出は随時受け付けています。しかし提出する時期によっては、提出日を含む事業年度から法人税率の特例の適用が受けられない場合があります。

4.特定医療法人制度のデメリット

特定医療法人に承認されると法人税が軽減されますが、同時に多くの条件が課せられます。承認の申請を検討する際には、どのような制限を受けるのかも把握しておきましょう。

ここでは特に注意が必要な点を紹介します。

4.1.役職員の給料総額が制限される

特定医療法人に承認されると、役職員1人につき年間給与総額が3,600万円以下に制限されます。

4.2.収入に制限が設けられている

特定医療法人は高い公益性が求められますので、基本的にあまり多くの利益を追求してはいけないことになっています。

詳しくは以下の通りです。

  • 全収入の8割が社会保険の対象となる診療による収入であること
  • 自費患者に対し請求する金額は、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること
  • 医療診療収入が、医師や看護師等のスタッフの給与、医療サービスの費用等、患者のために直接必要な経費の額の1.5倍以内であること

そのため、一般の医療法人に比べて収入が伸ばしにくいという特徴があります。

4.3.同族による管理ができない

特定医療法人は高い公益性が求められており、いわゆる同族経営は基本的に許されません。

そのため、以下の条件が課せられています。

  • 理事、監事、評議員それぞれの人数のうち、親族が1/3以下であること
  • 設立者・役員等・社員とその親族等に対し、特別の利益を与えないこと

まとめ

特定医療法人は、高い公益性が求められる代わりに、法人税の税率が19%に軽減されるなどの優遇措置が受けられます。そして、そのための基準はかなり厳しくなっています。

19%という法人税の軽減税率は医療法人を運営していく上で大きなメリットとなりますが、良い点ばかりに目を向けず、一般的な医療法人とは異なる配慮が必要になることも覚えておきましょう。今回お伝えした情報をきっかけに、より詳細な情報を収集して、この制度への理解を深めましょう。

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