「資産移転」?「節税」?逓増定期保険5つのポイント

※この記事で紹介している法人保険の保険料の損金算入割合等に関する税務上の扱いに関する記載内容は、国税庁の現行の通達に定められたルールを前提としております。

2019年4月11日に国税庁が新たなルールの案を公表し、今後意見公募(パブリックコメント)の手続を経て、正式に新ルールによる運用が行われることになっております。

新ルール案の内容については「法人保険(いわゆる節税保険)の販売停止に関する国税庁の新ルール案の解説」で分かりやすく解説しておりますので、ご覧ください。

決算直前の「節税対策」として、逓増定期保険等の生命保険が有効だと言われています。

「節税」という表現が適切かどうかは別として、保険料支払段階で税負担が軽減されるのは事実です。また、法人の生命保険には、税負担の軽減だけでなく、他の金融商品にはない、非常に魅力的な側面があります。そのため、私自身も活用しています。

今回の記事では、多くの経営者の方が選ばれている逓増定期保険について、活用する上での5つのポイントをお伝えします。

逓増定期保険は、上手に活用すれば、退職金の積み立てや万一のリスク補てん等、会社のキャッシュを守り、増やすのに役立ちます。

逓増定期保険を活用した「決算対策」「節税対策」などをお考えになっている経営者の方は、ぜひ読み進めてみて下さい。

1.貯蓄に似た機能がある逓増定期保険

逓増定期保険は、契約時の保険金額が年を経るごとに一定金額まで増加していく保険です。

そして、適切なタイミングで解約すると、先払いした保険料が解約返戻金として戻ってくるという特殊なものです。

全額損金、2分の1損金、3分の1損金といったタイプがありますが(詳しくは『逓増定期保険の損金の3つのタイプを最大限に活用するポイント』をご覧ください)、最もメジャーなのは2分の1損金タイプです。

ここで、2分の1損金タイプの保険の例を見てみたいと思います。以下の図はある会社の損益計算書と貸借対照表です。

毎年の保険料が1,000万円であれば、2分の1の500万円は「支払保険料」という費用になり、残りの500万円が「前払保険料」という資産として貸借対照表上に載っていきます。10年後には、貸借対照表には保険料積立金が5,000万円貯まります。

 

PL

この保険は契約から10年で100%が戻ってくる設計となっていて、解約すれば解約返戻金は1億円になります。

そして、そこから前払保険料5,000万円を差し引いた5,000万円が、一気に帳簿上に現れることになります。

10年後のBS

この5,000万円は、雑収入として益金に算入されます。したがって、同じ年度に5,000万円の費用のかかる設備投資等の支出があれば、この益金が一気に現れることによって、赤字を避けることができるのです。

2.出口戦略が最も重要

たとえば、将来大きな取引先が倒産して、売掛金が回収できなかった場合などは、保険の解約返戻金のうち益金に計上される部分の額で損失を補い、相殺し、黒字化することも可能です。

また、社長に万が一の事故が起こってしまった場合には、保険という保障でリスクがカバーされます。

ただ、こういった万が一のトラブルがあるとは限りません。したがって、何事もなかった場合にまとまった損金を計上するような使い道、つまり、出口戦略を考えておくことが重要です。

たとえば、解約する年度に、役員の退職金や設備投資など、大きな支出をして損金を計上スレば、同じタイミングで解約返戻金による益金が計上されるため、損金と相殺できます。そして、その分については解約益が課税されずに済みます。

このように、必要に応じて解約すれば、大きな損失を計上してしまうリスクを避けることができるという魅力的な側面を持っています。

3.数年後に解約返戻率のピークを設定できる

逓増定期保険は加入後の短い期間で解約返戻率が一気に上昇するのが特徴です。

契約時から数年間は、解約返戻金額を低く設定し、4~10年でかけた保険料総額の95%程度を受け取ることができるような形が多いです。

性別・加入時の年齢にもよりますが、100%を超える解約返戻率になる場合もあります。

ここで、解約返戻率がどのように上昇していくかという例を見てみてください。

これは40歳男性が保険金額1億円の逓増定期保険に入った場合の年間保険料と解約返戻率の推移です。

40歳男性逓増定期保険

5社の商品を比較しています。短期間で解約返戻率が高くなることがわかると思います。

4.解約返戻金の9割程度までスピーディーに貸付を受けることができる

解約しなくとも、急にビジネスチャンスが訪れるなどして資金が必要になった場合、保険を有効に継続しながら資金を貸し出す「契約者貸付」の制度があります。

この制度を利用すると、銀行融資と違って面倒な手続をする必要はなく、1週間程度で、解約返戻金の9割程度まで、3%程度の金利で貸付を受けることができます。

このように保険でありながら銀行預金のような方法で活用することも可能です。

5.よく「実質全額損金と同様の効果を出せる」と言われている方法とは?

よく「実質全額損金と同様の効果を出せる」と言われ、実際に利用されている方法として、法人から個人へ資産を譲渡する方法があります。

詳しくは『逓増定期保険名義変更プランのしくみと3つの注意点』をお読みください。

これは、解約返戻率のピークを迎える前に契約を法人から個人に譲渡し、解約返戻率ピーク時に個人で一時所得として受け取るという、いわば実質的に法人の資産を個人に移転してしまうようなスキームです。

そうすることによって、企業側は、「資産計上額総額-解約返戻金額」の額を損失として計上することができてしまいます。なので、実質全額損金と似たような効果が得られることになります。

しかも、これまでは、名義変更を受けた個人の側で、解約返戻金を受け取った年に納税申告をする際、所得(一時所得)の計算として、解約返戻金の額(収入金額)から保険料全額を「必要経費」として差し引いて申告することが行われてきました。

たとえば、返戻率が100%の場合、保険料総額を差し引けば、課税対象となる所得金額は0円となります。

しかも、少しばかりの所得金額が発生したとしても、「一時所得」なので、以下のように税負担が軽くなります。

  • 一時時所得の金額=収入金額-必要経費-一時所得控除額(50万円)
  • 課税の対象となる金額=一時所得の金額 × 1/2

これは、会社の側で保険料の1/2を損金として計上し、しかも名義変更で最終的に実質全額損金になるような処理ておきながら、個人の側でも保険料全額を必要経費にしてしまうので、ほとんど脱税です。

しかし、今後は、「個人の側で保険料全額を必要経費にする」ということができなくなります。

なぜなら、平成30年度以降、保険会社に対し、法人加入した保険が個人に名義変更された場合、生命保険金等の支払調書に「保険金等の支払時の契約者の払込保険料等」を記載する義務が課されたからです。これにより、逓増定期保険の名義変更プランのメリットは大幅に失われています。

 

また、その他にも、「租税回避」として否認される可能性があるなど、税務リスクが高まっており、積極的にはおすすめできません。もしどうしても検討されるのであれば、きちんと税理士等の専門家に相談して慎重に判断する必要があります。詳しくは『逓増定期保険名義変更プランのしくみと3つの注意点

まとめ

逓増定期保険は、全額損金、1/2損金、1/3損金といったタイプがあり、税負担を軽減する機能と、貯蓄に似た機能があります。

将来大きな取引先が倒産して、売掛金が回収できなかった場合などは簿外に貯めておいた保険の解約返戻金で損失を補い、黒字化することが可能です。

解約しなくとも、資金が入用になった場合、保険を有効に継続しながら資金を貸し出す契約者貸付制度があります。この制度を利用すると、解約返戻金の9割程度までの金額であれば、3%程度の金利で貸付を受けることができます。

また、社長に万が一の事故が起こってしまった場合には、保険という保障でリスクがカバーされます。

経営者が企業を毎年黒字にするのはたやすいことではありませんが、このように損益のコントロールができる保険は、経営者にとってとても使い勝手が良い金融資産です。

逓増定期保険はさまざまな使い方がありますが、税務的なリスクを伴う方法が提案される場合もありますので、税理士に相談しながらぜひ一度法人保険の活用を検討してみて下さい。

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長谷川桂介

長谷川桂介

今まで10年以上、法人や個人の資産運用に従事。また保険だけでなく投資や節税、資金調達など法人の財務に関する実務をこなしてきた企業財政のエキスパート。
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