法人向け養老保険4タイプそれぞれのしくみと活用法

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企業経営者の皆様は、「養老保険で退職金準備」とか「養老保険で福利厚生」とか「養老保険で『節税』」といった話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、養老保険は、「定期保険」や「終身保険」といった他の生命保険と違い、あまり耳慣れない保険だと思います。また、4つのタイプがあるとされており、それぞれ利用目的や税法上の扱いがかなり違います。しかも、どのタイプがどのように役に立つのか、どのタイプがよく利用されているのか、といった実態が分かりにくくなっている傾向があります。

この記事では、法人向け養老保険4タイプそれぞれのしくみとその実態、つまり有用性・実用性、税負担の軽減といった点について、利用目的と税法上の扱いに着目して分かりやすくお伝えします。

はじめに|法人向け養老保険とは

養老保険のしくみ|定期保険との比較で理解する

  • 定期保険|死亡の場合のみ保険金が支払われる
  • 養老保険|死亡してもしなくても必ず保険金が支払われる

法人向け養老保険についての説明の前に、普通の個人向け養老保険の説明を簡単にしておきましょう。

養老保険を理解するには、最もシンプルな生命保険のタイプである「定期保険」と比較するのが分かりやすいと思います。

「定期保険」は、被保険者が死亡した場合に遺族等の保険金受取人に死亡保険金が支払われるものです。被保険者が満期まで生きていた場合は何も支払われません。つまり、純粋に死亡保障だけを目的とした保険です。

定期保険の図

これに対して、養老保険は、被保険者が死亡した場合に死亡保険金が支払われる点は定期保険と同じですが、被保険者が満期まで生きていた場合には、満期保険金が支払われます。

つまり、被保険者が死亡した場合の遺族の生活を保障するのと、被保険者が生きていた場合の老後の生活資金を準備することを、一つの保険で同時に兼ねることができてしまうわけです。いつかは必ず保険金が支払われることになるため、保険料は定期保険よりも割高です。

なお、こういった違いをさして、定期保険は「死亡保険」、養老保険は「生死混合保険」と言われたりします。

養老保険の図

他に、養老保険の特徴としては、満期までに解約すれば解約返戻金が受け取れることと、契約者貸付が受けられることがあります。

解約返戻金の額は、最初は低いですが、満期に近付くにつれ高くなっていき、最終的にはそれまで支払った保険料の総額の満額に近い金額になることもあります。

契約者貸付は、その時点での解約返戻金の90%程度の金額を、低金利で借りることができます。

「法人向け」の養老保険には4つのタイプがある

法人向けの養老保険も、被保険者が満期までに死亡してしまった場合と生存していた場合の両方を保障する点、解約返戻金が受け取れる点、契約者貸付が受けられる点は、一般の養老保険と一緒です。特に、解約返戻金や契約者貸付の制度は、法人の事業活動にとって非常に有益なものです。

しかし、法人向けの養老保険は、保険金の受取人をどうするかによって、4通りのタイプに分けられます。そして、この4つのタイプは、それぞれに利用目的や税法上の扱いが違います。

はじめに|4つのタイプ

ただ、実態として、現時点で加入できる商品は、一番上の「事業保障+福利厚生プラン」と上から3番目の「福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)」がほとんどで、「純粋福利厚生プラン」と「純粋節税プラン(逆ハーフタックスプラン)」は扱われなくなってきています。その理由は後で説明します。

これから、それぞれの利用目的と税法上の扱いについて、順を追って説明していきます。

1.「死亡保険金受取人:法人/満期保険金受取人:法人」のタイプ|事業保障+福利厚生プラン

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1-1.利用目的|会社の事業保障と被保険者の退職金

死亡保険金の受取人と満期保険金の受取人がどちらも法人になっているタイプは、被保険者に万一のことがあった場合は死亡保険金を法人の事業の保障に充てることになります。そして、何事もなかった場合は満期保険金を被保険者への退職金の財源に充てることが多いものです。

「被保険者が死亡した場合の事業保障目的で加入する」→「何事もなかったらお金を返してもらって、福利厚生の一環として被保険者の老後の資金に充てる」ということです。

これは、法人の事業保障と、被保険者の福利厚生を一つの保険で同時に兼ねるものといえます。なので、仮に「事業保障+福利厚生プラン」と名前を付けておきます。ただ、一般的な呼び方ではありませんのでご注意ください。

1-2.「事業保障+福利厚生プラン」の税法上の扱い

純粋事業保障プランの税法上の扱い

「事業保障+福利厚生プラン」は必ず法人が保険金を受け取ることになります。つまり、保険料は、法人自身が受け取る保険金のために積み立てるものであり、全額が資産に計上されます。

次に、法人が死亡保険金を受け取った場合は、死亡保険金でも満期保険金でも、保険金からこれまで支払った保険料の総額を差し引いた金額が「雑収入」として益金に算入されます。

そして、満期保険金の場合は、それをそのまま被保険者の退職金に充てれば、同じ金額が損金に算入されます。

なお、被保険者が退職金を受け取った場合には「退職所得」として所得税が課税されますが、これは、退職金の資金が養老保険の満期保険金でなくても同じことです。

2.「死亡保険金受取人:被保険者の遺族/満期保険金受取人:被保険者」のタイプ|純粋福利厚生プラン

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2-1.利用目的|被保険者とその家族(遺族)の生活を保障する

このタイプは、純粋に被保険者とその遺族のため、つまり、満期前に被保険者が死亡した場合の遺族の生活保障と、満期に被保険者が退職した場合の老後の生活保障に特化したものです。事業保障の機能はなく、いわば、法人が、実質的に被保険者養老保険の保険料を肩代わりしてあげるものと言えます。

仮に「純粋福利厚生プラン」と名前をつけておきます(一般的な呼び方ではないので注意してください)。

ただし、実際には多くの保険会社はこの「純粋福利厚生プラン」を取り扱っていません。次に説明しますが、従業員に給料を保険料の分だけ上乗せして支払って個人契約してもらえば、全く同じ効果が得られるからです。つまり、法人契約する意味があまりないということです。

2-2.「純粋福利厚生プラン」の税法上の扱い

2-2

※一時金ならば一時所得、年金形式ならば雑所得

2-2-1.保険料の扱い

法人が支払う保険料は、本来被保険者が自前で支払うべき保険料を、法人が給料から天引きして代わりに支払っているのと同じことです。したがって、保険料は全額が被保険者に対する「給与」として扱われ損金に算入されます。そして、「給与」を受け取った被保険者にとっては「給与所得」になるため、所得税が課税されることになります。

ただ、これは、被保険者が給料の中から自分で保険料を支払うのと全く同じです。

2-2-2.被保険者の遺族が受け取った死亡保険金の扱い

満期を迎える前に被保険者が死亡した場合、遺族には死亡保険金が支払われます。この場合、死亡保険金を受け取った遺族の側では相続税が課税されます。ただし、死亡保険金については、相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。そのため、たとえば、遺族が妻と子ども1人であった場合に、1,000万円の死亡保険金を受け取れば、500万円×2人分=1,000万円が非課税となり、相続税を支払う必要性はありません。

なお、被保険者が個人契約で養老保険に加入した場合も、扱いは全く同じです。

2-2-3.被保険者が受け取った満期保険金の扱い

被保険者が死亡することなく満期保険金を受け取った場合は、所得税が課税されます。一時金であれば「一時所得」、年金形式であれば「雑所得」になります。

これも、被保険者自身が個人契約で養老保険に加入した場合と全く同じです。

3.「死亡保険金受取人:被保険者の遺族/満期保険金受取人:法人」のタイプ|福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)

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3-1.利用目的|被保険者の遺族の生活を保障するとともに被保険者の退職金を準備する

このタイプは、「被保険者が死亡した場合にその遺族の生活を保障する目的のために善意で加入してあげる」→「何事もなかったら、お金を返してもらって被保険者の退職金に充てる」というものです。

3-2.「福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)」の税法上の扱い

保険料・保険金の扱い

3-2-1.保険料の扱い

法人が支払う保険料は、まず、1/2は法人自身が受け取る満期保険金のための保険積立金として資産に計上されます。そして、残りの1/2は被保険者の遺族が受け取る死亡保険金のための積立と言えるので、「福利厚生費」として、損金に算入されます。

その結果、保険料の1/2の分の額だけ税負担が軽減されることになります。このことをさして「ハーフタックスプラン」と言われます。

「福利厚生プラン」=「ハーフタックスプラン」は、福利厚生をしながら税負担が軽減されるタイプとして有用だと言えます。

3-2-2.被保険者の遺族が受け取った死亡保険金の扱い

「福利厚生プラン」で満期前に被保険者が死亡した場合の扱いは「純粋福利厚生プラン」と全く同じで、被保険者の遺族には死亡保険金が支払われます。そして、そこに相続税が課税されます。ただし、被保険者が受け取った死亡保険金については、相続人1人あたり500万円の非課税枠があるため、実際には相続税がかからないケースがかなり多いです。

3-2-3.被保険者が受け取った満期保険金の扱い

法人が満期保険金を受け取った場合、「解約返戻金-保険積立金(既払保険料)」の額が「雑収入」として益金に算入されます。

4.「死亡保険金受取人:法人/満期保険金受取人:被保険者」のタイプ|純粋節税プラン(逆ハーフタックスプラン)

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4-1.利用目的

死亡保険金の受取人が法人で満期保険金の受取人が被保険者になっているタイプは、はっきり言って合理性が見出しにくいと言わざるをえません。

どういうことかというと、もしも「被保険者が死亡した場合の事業保障目的で加入する」→「何事もなかったらお金を返してもらって、福利厚生の一環として被保険者の老後の資金に充てる」というのであれば、「事業保障+福利厚生プラン」、つまり、満期保険金の受取人を法人にしておいて、法人がそれを退職金として被保険者に支給するのが筋です。ところが、この「死亡保険金の受取人:法人/満期保険金の受取人:被保険者」のプランは、そのような「何事もなかったらお金を返してもらって」という論理的なつながりがつけられないのです。満期前の「事業保障目的」と満期後の「被保険者の生活保障」のつながりがないならば、それぞれの目的について別々の保険に加入するべきです。

それでは、なぜこのようなプランが存在するのでしょうか。

実は、次に説明しますが、結局のところこのプランは、節税対策として非常に有効だと言われているのです。そこで、今のところは、仮に「純粋節税プラン」という名前をつけておきます(これも一般的な呼び方ではありません)。

4-2.「純粋節税プラン」(逆ハーフタックスプラン)の税法上の扱い

逆ハーフ

※一時金ならば一時所得、年金形式ならば雑所得

「純粋節税プラン」はよく「節税対策に有利」と言われていますが。それは保険料の扱いが全てだと言っても過言ではありません。なので、ここでは保険料の扱いについてだけ説明します。

「純粋節税プラン」については、よく、保険料の1/2は「法人が受け取る死亡保険金のための費用」として損金に算入され、残りの1/2は「被保険者への給与」として損金に算入されるという説明がされます。つまり、どちらの「1/2」も損金に算入され、結局は保険料の全額が損金になるという話です。この点をさして、よく「逆ハーフタックスプラン」と言われます。

しかし、この説明はよく考えてみるとおかしいのです。

「事業保障+福利厚生プラン」の保険料の扱いを思い出してください。もう一度下に表を掲載しますが、「事業保障+福利厚生プラン」の場合、「法人が死亡保険金を受け取ることになっているから、保険料は法人の資産に計上される」と説明しました。

資産計上プラン

そうであれば、「純粋節税プラン」の場合も、同じように、「死亡保険金のための」1/2は、保険積立金として資産に計上されなければならないはずです。

したがって、「逆ハーフタックスプラン」の保険料の扱いは根拠がありません。また、実際にこの扱いを国税庁が問題視していると言われていて、近いうちに認められなくなってしまうリスクが非常に大きいものです。したがって、現在ではあまりおすすめできませんし、実際にも多くの保険会社が取り扱いをやめています。

この期に及んで「逆ハーフタックスプラン」を勧めてくる保険代理店もあるようですが、要注意です。

まとめ

法人向け養老保険の4タイプについて、それぞれ、利用目的と税法上の扱いについて説明してきました。実際に有用なのは「死亡保険金受取人:法人/満期保険金受取人:法人」のタイプ(事業保障+福利厚生プラン)と「死亡保険金受取人:被保険者の遺族/満期保険金受取人:法人」のタイプ(福利厚生プラン(ハーフタックスプラン))の2つであることがお分かりいただけたと思います。

まとめ

それぞれの利用目的、有用性・実用性、税負担の軽減の観点から有利かどうかという点について一覧表にしましたので、ご確認いただき、養老保険への加入を検討する際には是非とも参考にしていただきたいと思います。

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出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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