不動産投資は節税になるというセールストークで不動産をおすすめされたことはありませんか。
不動産投資を行うことで、個人所有では所得税・住民税、法人所有では法人税の節税につながることもあります。
それは、不動産には「減価償却」という実際には価値が目減りしているかどうかには関わらず、一定の割合で価値が目減りしていると仮定して、必要経費あるいは損金として認められることがあるからです。
しかし、不動産投資には多くのリスクとデメリットがあり、容易に購入してしまうと大きな損失につながりかねません。
よって、この記事では不動産投資による節税を安易な気持ちで始めて、失敗をする人が現れないように、メリット・デメリットをお伝え致します。
不動産投資での節税をお伝えしますので、是非最後までご覧いただければと思います。
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1. 不動産投資の節税のメリット5つ
1.1.不動産の減価償却によって、所得税・住民税あるいは法人税が軽減される
不動産(建物部分)を所有すると、その不動産は時間の経過と共に価値が落ちていくと仮定し、一定の方法によって価値の目減り分を必要経費(損金)にで算入できます。
その物件の耐用年数と償却率によって、いくら損金(必要経費)にできる金額がわかります。
例えば、築23年の木造アパートを購入した場合、建物部分の価格が4,000万円のとき、4年間毎年1,000万円の減価償却が可能です。
個人で不動産を所有している場合は、個人の給与所得などから不動産の損失を引くことが出来ます。
もし、不動産の減価償却がそのまま不動産所得のマイナスになっていた場合、確定申告にて給与所得などからそのまま1,000万円引けることになりますので、実際にお金が手元には入っていますが、所得を0にすることが可能です。その結果、所得税・住民税を0円にすることができます。
法人で不動産を所有している場合は、法人の所得から不動産の損失を引くことが出来ます。
もし、不動産の減価償却がそのまま不動産所得のマイナスになっていた場合、営業利益の計算の中で1,000万円を引けることになりますので、実際に減価償却での支払いは発生していないのですが、所得を0にすることが可能です。その結果、所得税・住民税を0円にすることも可能です。
1.2. 不動産投資は保育料まで節約できる
小さなお子様がいる場合、保育園に預けている方も多いとは思います。
その保育料の計算は所得割額で決まります。
所得割額とは、所得に応じて定められる住民税のことで、以下が計算式となっています。
所得割額=(前年の所得額 - 所得控除額) × 10% - 税額控除額
個人で不動産投資を行うと、所得税・住民税を下げることができるというお話をしましたが、住民税が下がることによって、この所得割額も下がっています。
よって、結果的に保育料の負担を軽減し、節約になります。
例えば、年収1,000万円世帯の場合は、所得割額は概ね30~33万円になります。
所得割額33万円で三歳未満の子供を保育園に預ける場合は、54,300円/月の保育料がかかります。
よって、年収1,000万円でも不動産投資により所得割額を0円にできれば、保育料を54,300円/月、651,600円/年を節約することができます。
この節約を3年間できれば200万円近くのお金を蓄えることができます。
1.3.不動産投資≒不動産経営なので、経営に関わる経費を計上できる
不動産投資は、投資という名前がついてはいるものの、経営に近い要素があります。
不動産業者、入居者との交渉なども業務と考えていいでしょう。
すると、不動産経営を行っているとみなして、不動産業者や入居者との交渉に伴う交通費、交際費などは経費として認められることになります。
もちろん、固定資産税や不動産取得税、管理・修繕費なども経費として考えることが出来ます。
よって、様々な項目で経費を入れられることによって。減価償却だけではなく、経費を入れられることになります。
1.4. 個人では5年以上、法人では経常利益が800万円未満であれば利益が出ても低い税率しか取られない
不動産を売却した場合、その利益には税金がかかります。
個人の場合には、譲渡所得(課税長期譲渡所得)がかかります。
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控 の計算式で金額を求めます。
この譲渡所得に所得税は15%、住民税は5%、復興特別所得税2.1%がかかります。
法人の場合には、所得として利益に対して法人税がかかります。
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控 の計算式で不動産売却での利益を求めます。
この利益は法人の損益と通算されますが、他の損益が0円だとするとこの利益に法人税がかかります。
法人税は実効税率ベースで、経常利益400万円未満で19%程度、800万円未満で25%程度、800万円以上で33%程度です。
5年以上不動産を所有していれば、個人も法人も20%程度の税金しかかからないようになっているため、売却の面でも優れています。
1.5. 相続税の節税もできる
不動産投資での1つの大きなメリットは、「相続税対策」もできるところです。
不動産の相続時の評価は、実際に売却できる値段ではなく、路線価から不動産評価を導きます。
その評価額は相続のとき、一定の条件を満たすとその評価額は、居住用では80%オフ、投資用で他人に貸す場合は50%オフされます。
これを「小規模宅地の特例」といいます。具体的には、「小規模宅地等の特例とは?土地の相続税を最大80%下げる方法の特例」をご覧ください。
例えば、1億円の路線価での評価のある不動産が小規模宅地の条件に当てはまっていれば、投資用の場合は5,000万円まで評価を下げることができます。
このような相続財産の評価下げにより、相続税の対策としては非常に大きなメリットがあります。
2. 不動産投資の節税のデメリット5つ
ここまでは不動産投資によるメリットをご紹介いたしましたが、ここからはデメリットについてもご紹介したいと思います。
2.1. 固定資産税・不動産取得税が発生する
不動産投資では、所得税・住民税を軽減できるというお話をしましたが、一方で固定資産税や不動産取得税などの税金がかかってしまいます。
固定資産税は、固定資産税評価額(国土交通省が定める土地の公的価格や家屋の時価のおよそ70%)に1.4%を乗じた金額です。
例えば、都内の3,000万円のマンションを購入すると固定資産税評価額は概ね800万円程度ですので、
- 中古の場合:800万円×1.4%=11.2万円/年
- 新築の場合:800万円×1.4%×0.5=5.6万円/年
程度の固定資産税がかかることとなります。
また、不動産を取得した場合は、取得する年に不動産取得税もかかってしまします。
よって、個人の税金は軽減できても、不動産に関わる税金は増えてしまうということは理解しておきましょう。
2.2. 数年後に収益が損失を上回って、増税になる可能性が高い
不動産投資では、始めてから10年目くらいまでは、キャッシュが豊富にありますが、10年を超えるとキャッシュが減ってしまうという現象が起きやすいと言われています。
これを不動産投資家の間では「不動産のデットクロス」と呼んでいます。
不動産は減価償却などで実際にはお金を払っていないのに、多くを経費にできるのですが、一定の期間が過ぎると減価償却できなくなり、銀行からのローンの利息もなくなってくることから経費に入れるものが少なくなります。
よって、実際にはローンなどを支払っているのに、経費にできるものがすくないため、税金は多く収めることになり、手元のキャッシュは減少していくという現象が起きてしまいます。
こうなると、不動産投資を節税でしていたつもりが、逆に収益が発生して、多くの税金を支払うことになってしまいます。しかもキャッシュはどんどん無くなっていくので、資金繰りにもこまってしまうという事態も起こり得ます。
2.3. 管理費・修繕費・保険料などの維持費用がかかる
不動産投資は、リート(不動産投資信託)などとは異なり、現物を所有していることから、その物件の管理や修繕にお金がかかってしまいます。
また、建物ですので、火災保険の加入は必須です。この保険料も物件によっては数十万はしてしまいます。
この管理費・修繕費・保険料は、入居者がいなくてもかかってしまいますので、入居者が入らず収入がないだけでなく、出ていくお金は毎月発生するということになります。
よって、実際にこのような費用は経費で節税ができるような形にはなっていますが、違う見方をすれば、物件をもっているせいで維持費がかかり、損をしてしまっているだけということです。
2.4. 売却のときに多くの税金を支払う可能性がある
不動産投資のメリットでは、5年以上所有した不動産に関してはたくさんは税金はかからない仕組みになっていますが、5年未満しか所有していない不動産に関しては多くの税金を支払う可能性があります。
個人の場合には、譲渡所得(課税短期譲渡所得)がかかります。
課税短期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控徐 の計算式で金額を求めます。
この譲渡所得に所得税は30%、住民税は9%、復興特別所得税2.1%がかかりますので、合計で41.1%程度もの税金がかかってしまいます。
法人の場合には、所得として利益に対して法人税がかかります。
課税短期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控徐 の計算式で不動産売却での利益を求めます。
この利益は法人の損益と通算されますが、他の損益が0円だとするとこの利益に法人税がかかります。
ただ、法人の場合では、短期も長期もかかる税率は変わりません。
法人税は実効税率ベースで、経常利益400万円未満で19%程度、800万円未満で25%程度、800万円以上で33%程度です。
2.5. 節税ではなく、ただ損をしてしまう可能性がある
不動産投資の経費には、ローンの利息なども入れることができるのですが、このローンの利息はよく考えてみれば、ただの利息ですので、本来必要のない経費です。
確かに、不動産投資はお金を借りて運用ができるので、自分の資金を持ち出さなくてもいいという点では優れていますが、節税という観点から考えますと、この経費はやはりただの損失です。
他にも不動産には様々なリスクがあります。これから不動産投資のリスクについても記述しますが、損をしてそれを確定申告することで税金が軽減されても意味がありません。
不動産投資で収益が出ているのにも関わらず、税金を押さえられているという状況でなくては意味がありません。
しっかりとお金を増やしているのに、税金は軽減されるという状況を目標として、不動産の節税は行いましょう。
3. 不動産投資の5つのリスク
ここからは不動産投資自体のリスクに触れていきたいと思います。
3.1. 入居者が現れない、家賃が下がる
不動産投資の基本は、自分の所有する物件に人が入っていることから始まります。いくらいろいろな考慮をしても、借りてくれる人がいなければ、その支出はいつまでたっても赤字です。
また、人がなかなか借りてくれなければ家賃を下げざるを得ない状況も想定できます。入居者をしっかり確保しつつ、家賃は下げないことを継続して行うことが大切なことです。
3.2. 維持費が膨らみ、収益が出なくなる
不動産投資を一般的な分譲マンションや戸数の多い一棟マンションで備えられているのであればリスクは少ないのですが、投資用マンションでワンルームや1Kのマンションを購入された場合はいくつかデメリットがございます。
それは、投資用のマンションの所有者は、実際にそのマンションに住むことはありません。
よって、組合がしっかりと機能していないため、不動産管理会社の営業をそのままうけてしまい、どんどん修繕をおこなってしまったせいで、修繕積立金が不足してしまうという事態も起こり得ます。
そうなると半年ごとに20万円などのように一時金で数年間徴収される場合もあり、そうなると入居者がいても収益が出なくなってしまいます。
3.3. 不動産を売却できない、できても損をする
不動産はいつでも換金できるというものではありません。
不動産はタイミングが大切ですので、うまく販売ができなければいつまでも売り残ってしまいます。
また、どうにか急いで売却しようとすると物件の価格を落とさざるを得ませんので、売却できても損をしてしまうこともよくあります。
不動産はすぐに売却ができないので、出口で苦労をしないように計画的に売却まで考えなくてはなりません。
3.4. 震災によって不動産がなくなる
不動産投資のリスクでもっともわかりやすいものは、震災のリスクです。
不動産は現物で所有をしていますので、震災で建物が跡形もなく消えてしまえば、収益を生むことはできません。
それどころか、借金だけ残すことになって今います。地震保険を掛けても全額を保障してくれるわけでもないので、やはり火災保険に地震保険を付帯しておいても全てをカバーできるわけではありません。
3.5. 金融機関から有利な条件で借り入れがしにくくなる
不動産投資をするために、物件を借り入れで購入した場合、借入をしていることには変わりませんので、他にローンを組もうとすると好条件で組みにくくなってしまうということも考えられます。
私の場合は、不動産投資で多くの借り入れをしていましたので、居住用の不動産を購入するときに、引き受けられる銀行が少なくなってしまいました。
特に私のように居住用の不動産を購入する可能性がある方は、まずはご自宅からご購入されておくことをおすすめします。
まとめ
この記事では、不動産投資による節税に関して取り上げてみました。不動産投資では、節税というよりも損失が出ているため、税金の支払いが軽減するという傾向があります。
ただし、これでは損をしているだけです。
不動産の強みである「減価償却」を上手に活用して、収益が出ているけれども、税金が軽減するという状況にしていただきたいと思います。
また、不動産の売却は5年以上所有していなければ多くの税金がかかってしまいますので、出口の部分での税金にも気を付けて計画的に売却まで行いましょう。