法人化するならどのタイプ?法人4タイプの種類別活用法

公開 2024年10月24日
法人化するならどのタイプ?法人4タイプの種類別活用法
法人化するならどのタイプ?法人4タイプの種類別活用法

個人事業主の方が法人化(法人成り)する場合、「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」のどのタイプを選ぶのかという問題が出てきます。

どうやったら事業資金を集めやすくなるか?発言力はどの程度維持できるのか?ということが、法人の種類を選ぶ時に重要なポイントです。

この記事では、法人成りを考えている個人事業主の方のために、4種類の会社のタイプのそれぞれの違い、メリットとデメリットについて、分かりやすく説明します。

なお、株式会社については、社長(取締役・代表取締役)が唯一の株主となっている会社か、株式の大部分を握っている小規模の株式会社を念頭におくものとします。

はじめに|法人の種類は4つある

株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の区別は、2つの観点から整理できます。

  1. 個々のメンバーが会社の取引先等の債権者に対してどこまで責任を負うのか
  2. 意思決定は出資の口数の多数決か、頭数の多数決か

ここで「メンバー」とは、会社に出資する人のことを指していると思ってください。

なお、会社法上は「社員」と呼ばれます。この言葉は、一般的な使い方と違って、「従業員」は含みませんのでご注意ください。以下では、一般的な使い方と混乱するのを避けるため、会社に出資する人のことを、敢えて「メンバー」と呼びます。

そして、4つの会社の特徴をまとめると、下の表のようになります。

なお、株式会社については、株式譲渡に制限があるかどうかで2つに分かれます。

これらの特徴は、どのような会社にしたいかということによって、メリットにもなりうるし、デメリットにもなりうるということです。

はじめに

どういうことなのか、これから説明していきます。

1.個々のメンバーの責任の範囲

まず、「個々のメンバーが会社の取引先等の債権者に対してどこまで責任を負うのか」ということです。

これは、逆に言えば、会社の債権者が会社の個々のメンバーに対してどこまで責任を追及できるかということです。

会社のメンバー、つまり出資者が会社の債務について全財産をはたいてでも責任を負わなければならないリスクがある場合を、「無限責任」と言います。一方、メンバーが自分の出資した額の限度で責任を負えばいい場合を「有限責任」と言います。

下の図をご覧ください。

〈メンバーの責任の範囲による分類〉

メンバーの責任による分類

無限責任を負うメンバーを「無限責任社員」、有限責任しか負わないメンバーを「有限責任社員」と言います。そして、

  • 「株式会社」と「合同会社」は有限責任社員だけがいる会社
  • 「合資会社」は有限責任社員と無限責任社員の両方がいる会社
  • 「合名会社」は無限責任社員だけがいる会社

ということになっています。

なお、株式会社以外の会社は、後で説明しますが意思決定の手続が同じで、「持分会社」という名前でくくられます。

また、合資会社は少なくとも有限責任社員と無限責任社員が1名ずついなければ設立できませんが、他の株式会社、合同会社、合名会社は、メンバーが1名しかいなくても設立できるという点も覚えておいでください。

メンバーの責任の範囲による上の区別は、資金をどれだけ集めやすいかということに関わっています。

どういうことか、株式会社・合同会社と、合名会社とに分けて説明しましょう(合資会社はこれらの中間のタイプなので説明は省略します)。

1.1.株式会社のメリットと注意点|「有限責任」だと一般人はわりと安心してお金を出せるが・・・

1.1.1.株式会社の「有限責任」のメリット

株式会社の場合は、会社が倒産した場合でも、自分が出資した分だけ責任を負えばいいということです。なので、一般の人からお金を集めやすい傾向があると言えます。

株式会社の「有限責任社員」のことを株主と言いますが、株主は、たとえば1株5万円の株式を10株買えば、50万円出資したことになります。そして、会社が1億円の負債を抱えて倒産しても50万円分だけ責任を負えばいいということになります。つまり、最悪の場合でも株式の価値がゼロになるだけで済むということです。

ただ、くれぐれも気をつけていただきたいのですが、「有限責任」と言っても、社長は事実上「無限責任」です。

たとえば、会社が銀行等から大きな借り入れをするような場合には、社長は保証人になったり、自宅の土地建物を抵当に入れたりしなければならないことが多いのです。

「有限責任」ということは、経営者の責任の範囲が狭くなるということではなく、あくまでも、「資金を集めやすいかどうか」ということの一つの目安なのです。

1.1.2.注意点|イヤな奴が株主になるのを防ぐには定款で株式の譲渡を制限する

株式会社はメンバー、つまり株主の責任が「有限責任」である結果、会社には最低限、株主が出資した金額の分の財産を確保しておかなければなりません。

そのため、会社は株主に出資分を払い戻してはならないことになっています。その結果、株主は、出資した額を取り戻して株主をやめたくなったら、誰かに株式を譲渡するしかありません。

そこで、株式の譲渡は原則として自由とされています。裏を返せば、会社は原則として、株式が誰の手に渡っても文句を言えないということです。

そうすると、会社にとって好ましくない人間が株主になってしまうおそれがあります。

これを避けるためには、予め定款で、株式の譲渡について会社の承諾がなければならないことと、どうしても譲渡したいならば会社がその株式の買取人を指定できること等を、定款で定めておくことが有効です。これを、株式譲渡制限と言います。

株式譲渡制限を付けることで、取締役会・監査役を設置しなくてもよくなるということもあります。

ただし、株式譲渡制限をすると、その分、株主が出資分を引き上げにくくなるため、多少、資金が集まりにくくなる可能性があることも承知しておいてください。

1.2.合同会社の「有限責任」のメリット|一般人はわりと安心してお金を出せる

合同会社の「有限責任社員」は、たとえば、10万円出資している状態で会社が1億円の負債を抱えて倒産したら、その10万円が戻ってこないだけで済むということになります。

なので、一般人はわりと安心してお金をだすことができます。

なお、合同会社は、株式会社と違い、会社の他のメンバー以外への持分の譲渡の自由が認められていません。そのため、持分の譲渡によって会社にとって好ましくない人間がメンバーに入ってくることはありません(メンバーの出資分の払い戻しは、債権者保護手続を得ることを条件として、ある程度認められています)。

1.3.合名会社のデメリット|「無限責任」だと一般人は怖くてなかなか出資したがらない

「無限責任」というのは、会社に出資したら、もしその会社が倒産した場合には自分の全財産をはたいてまで責任を負わされるということです。

「合資会社」と「合名会社」の「無限責任社員」は、例えば、極端な話、10万円しか出資していなくても、会社が1億円の負債を抱えて倒産したら、他の「無限責任社員」と連帯してとんでもない額を支払わなければならないことになります。

これでは、一般の人は怖くてなかなか会社に出資してメンバーになる気にはなれませんね。そのため、一般の人からお金を集めにくい傾向があります。

2.意思決定の方法|「出資の額」が基準か「頭数」が基準か

次に、最終的な意思決定は「出資の額」が基準なのか「頭数」が基準なのかという問題があります。

下の図をご覧ください。

意思決定の方法による分類

「合同会社」「合資会社」「合名会社」は、意思決定の手続のルールが基本的に同じなので、「持分会社」とひとくくりにして扱われます。

2.1.株式会社の意思決定|「1株1議決権」はメリットともデメリットとも言えない

株式会社だけは、出資の額に応じて、つまり、「株式」の数に応じて多数決で決めます。「1株1議決権の原則」と言います。

1株1議決権

つまり、カネをたくさん出した分だけ口を出せるということです。株式会社は、広く一般の人に出資してもらいやすいのですが、その分、口を出されることにもなるわけです。

あくまでも社長が強い決定権を持つようにしたいのであれば、自分の株式の数を圧倒的に多くするか、あるいは、自分が株式を独占することができます。

その場合は、一般の人から広く出資してもらうことは難しくなりますが、社長がそれでいいのであれば、問題はありません。

つまり、株式会社にとって、「1株1議決権」はメリットともデメリットとも言えません。

2.2.持分会社の意思決定|「1人1議決権」にはそれなりのメリットがある

「持分会社」、つまり「合同会社」「合資会社」「合名会社」は、メンバーの出資の額ではなく、頭数の多数決で決めます。たくさん出資したメンバーも少ししか出資していないメンバーも「1人1議決権」です。

1人1議決権

これだと、たくさん出資した人は損だとお思いになるかも知れません。しかし、これはこれでメリットがあるのです。

小規模な家族経営の会社や、気心の知れた仲間で設立した会社であれば、誰がいくら出資したかということよりも、メンバーの個性を尊重することに重点がおかれていることがあります。

このような場合、意思決定の時に出資額の大小を問題にしない方がむしろうまくいく可能性が高いと言えます。

なお、定款で各人の発言権についてきめ細かに定めることもできます。

 

ただし、「合同会社」というのは2005年に施行された新会社法で初めて「会社」のラインナップに加わったタイプなので、「株式会社」と比べて知名度が低いというのが、難点と言えば難点でしょうか。あくまでもイメージの問題だけですが…

合同会社については、詳しくは『起業するなら知っておきたい合同会社のメリットとデメリット』をご覧ください。

3.株式会社だけ設立費用が14万円高い

株式会社の場合、定款を公証役場で認証してもらうことが必要なので、その分の費用(5万円)がかかってしまいます。また、設立登記にかかる登録免許税も、他の会社ならば6万円で済むところを15万円払わなければなりません。

つまり、株式会社は、他の会社よりも設立費用が合計14万円余計にかかることになります。

4.株式会社だけ決算公告の義務がある

株式会社の場合は、決算公告の義務がありますが、他の会社にはありません。

ただ、中小企業の場合は、公告義務が限られています。

5.会社の種類は後で変更できる

会社の種類は後で変更することができます。

「持分会社」から「持分会社」への変更はメンバーの全員一致による定款の変更をすれば可能です。なお、合資会社の場合、「有限責任社員」が1人もいなくなった時点で自動的に合名会社になります。

一方、「持分会社」から「株式会社」への変更と、「株式会社」から「持分会社」への変更は、「組織変更」といって、メンバー全員の同意と、債権者保護手続が必要です。

組織変更①

組織変更②

まとめ

この記事では、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」のそれぞれについて、個人事業主が法人成りするにあたってどれを選ぶかを判断する上で重要な点に絞って、メリットとデメリットを説明してきました。ご自身の事業を今後どのようにしたいのか、広くお金を集めたいのか、経営の決定権をどうしたいのか、といったことをよくよく考えて判断していただきたいと思います。

はじめに

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