生命保険契約照会制度がスタートしました


生命保険協会による「生命保険契約照会制度」の運用が本日(2021年7月1日)より開始します(公式ページ)。
これは、保険契約者の家族等が加入状況を知るのが困難な場合に、生命保険協会に照会できる制度です。
その背景には、高齢化社会が進行し、高齢者が独居のまま亡くなったり、認知症になったりして、生命保険等の加入状況が不明のままになってしまうケースが増加しているという事情があります。
もともと、災害による死亡または行方不明の場合の照会制度がありましたが、生命保険契約照会制度は、照会できるケースを「平時」にまで拡張したものです。
今回は、この生命保険契約照会制度について、制度を利用できる条件、照会権者、紹介の手続等を解説します。
1.生命保険契約照会制度とは
生命保険契約照会制度とは、契約者が亡くなった場合や、認知症で判断力が低下した場合に、一定の親族等が、契約者の保険の加入状況を、生命保険協会に対して照会できる制度です。
これまで、保険契約者が災害で被災した場合に限り、家族(配偶者、親、子、兄弟姉妹)が本人の保険加入状況を照会できる「災害地域生保契約照会制度」がありました。
今回スタートした生命保険契約照会制度は、それをさらに発展させ、平時の場合でも、家族が照会できるようにするものです。それに伴い、「災害地域生保契約照会制度」も生命保険契約照会制度に一本化されています。
2.制度の目的|保険金が適正に支払われるため
生命保険契約照会制度は、一定の場合に、保険契約者の家族等が、生命保険協会に保険加入状況を照会できる制度です。
この制度が創設された目的は、保険金が適正に支払われるためです。
そもそも、生命保険に加入する際、保険金の受取人の同意を得る必要がありません。
また、医療保険や介護保険等の場合、契約者も受取人も本人であるため、そもそも本人以外、家族も含め、知らないケースが多くなっています。
そんな中で、契約者が亡くなったり、認知症になって判断力が低下したりした場合、本来保険金が支払われるべきなのに、支払われないという状況が出来してしまうことになります。
生命保険契約照会制度は、そのような事態を防ぎ、保険金が受取人にきちんと支払われるようにするための制度です。
3.制度を利用できる条件
生命保険契約照会制度は、本人(保険契約者)が以下の状態になり、生命保険の加入状況が分からない場合に、生命保険協会に保険の加入状況(加入の有無、内容)を照会できます。
- 平時死亡
- 認知判断能力低下
- 災害死亡または行方不明
それぞれについて説明します。
3.1.平時死亡
まず、本人が災害以外の原因により亡くなった場合です。
以下の人が生命保険協会に生命保険の加入状況を照会できます。
- 法定相続人
- 法定相続人の法定代理人
- 法定相続人の委託を受けた弁護士等(※)
- 遺言執行人
※弁護士、司法書士等、生命保険協会がふさわしいと認めた者
3.2.認知判断能力低下
次に、本人の認知判断能力が低下した場合です。
「認知判断能力が低下した」と認められるためには、生命保険協会所定の診断書によって医師の診断を受けることが必要です。
そして、加入状況を照会できる権限があるのは以下の人です。
- 本人の法定代理人
- 本人から委託を受けた弁護士等
- 任意後見制度に基づく任意代理人
- 「3親等内」の親族
- 「3親等内」の親族から委託を受けた弁護士等(※)
※弁護士、司法書士等、生命保険協会がふさわしいと認めた者
3.3.災害死亡または行方不明
最後に、本人が災害により亡くなったか、行方不明になった場合です。
災害救助法が適用された地域等で被災し、家屋等が流失したり焼失したりして、生命保険契約に関する資料が失われ、請求が困難になってしまったケースに、照会が認められます。
照会できるのは以下の人です。
- 配偶者、親、子、兄弟姉妹
- 配偶者、親、子、兄弟姉妹の法定代理人
- 配偶者、親、子、兄弟姉妹から委託を受けた弁護士等
4.手続
手続は以下の通りです。
- 平時死亡:インターネットまたは郵送
- 認知判断能力低下:インターネットまたは郵送
- 災害死亡または行方不明:電話(03-3286-2624)
災害死亡または行方不明の場合、緊急性がきわめて高いため、特別に、電話での照会が認められているということです。
「1.平時死亡」と「2.認知判断能力低下」の場合、必要な書類を揃えなければなりません。
請求する人によって微妙に異なるので、それぞれについて説明します。
4.1.平時死亡の場合の必要書類
4.1.1.法定相続人
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 法定相続情報一覧図または戸籍等
- 死亡診断書
法定相続情報一覧図http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html
4.1.2.法定相続人の法定代理人
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 法定相続情報一覧図または相続人と被相続人の関係を示す戸籍等
- 死亡診断書
- 法定代理権を確認できる書類(登記事項証明書等)
4.1.3.法定相続人の委託を受けた弁護士等
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 法定相続情報一覧図または相続人と被相続人の関係を示す戸籍等
- 死亡診断書
- 弁護士等の代理権を確認できる書類(委任状)
4.1.4.遺言執行人
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 印鑑証明書
- 遺言書
- 遺言者の除籍謄本
4.2.認知判断能力低下の場合の必要書類
4.2.1.本人の法定代理人
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 法定代理権を確認できる書類(登記事項証明書等)
4.2.2.本人から委託を受けた弁護士等
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 弁護士等の代理権を確認できる書類(委任状)
- 所定の診断書
4.2.3.任意後見制度に基づく任意代理人
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 任意後見契約に基づく任意代理権を確認できる書類(登記事項証明書等)
4.2.4.「3親等内」の親族
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 本人との続柄が分かる書類(住民票等)
- 本人の同意書(本人が意思表示できる場合のみ)
- 所定の診断書
4.2.5.「3親等内」の親族から委託を受けた弁護士等
- 照会者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 親族と本人の続柄が分かる書類(住民票等)
- 本人の同意書(本人が意思表示できる場合のみ)
- 弁護士等の代理権を確認できる書類(委任状)
- 所定の診断書
おまけ|家族のために保険会社の家族情報登録制度の利用を
近年、多くの保険会社が、家族情報の登録制度を設けています。
これは、保険契約者が、保険会社に対し、受取人等の情報を届け出て登録するものです。そうすることによって、生命保険契約照会制度を利用しなくても、万一の場合や本人に何かあった場合に、生命保険会社の方から直接、家族とコンタクトをとり、スムーズに手続を進めることができます。
生命保険会社各社は積極的に広報や契約者への周知を行っています。ぜひ、利用していただきたいと思います。
まとめ
生命保険契約照会制度は、保険契約者が独居のまま亡くなったり(平時死亡)、認知症になったりして(認知判断能力低下)、家族等が加入状況を知るのが困難な場合に、生命保険協会に照会できる制度です。
従来あった、災害による死亡や行方不明の場合の照会制度(災害地域生保契約照会制度)と一本化されており、平時死亡・認知判断能力低下の場合は、必要な書類を揃え、郵送またはインターネットで手続を行う必要があります。
近年、それとは別に、生命保険会社各社が、家族情報の登録制度を設け、登録を積極的に促しています。現在加入中の方、あるいはこれから加入される方は、ぜひ、利用することをおすすめします。



