生命保険の特約で交通事故に備える必要性はあるか?

生命保険の特約の中には、交通事故にあった際の保障を追加できるものがあります。

過去に加入した生命保険に該当する特約がついていて、改めて見返しみたときに「本当にこの特約が必要なのか」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただし、結論から言うと、これらの特約は必要性が乏しく、おすすめはしません。

この記事では、生命保険でつけられる交通事故向けの特約について紹介するとともに、それらをおすすめしない理由について解説します。

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保険の教科書 編集部

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1.生命保険で交通事故に特化した主な特約

生命保険は、以下の特約で、交通事故で死傷した際の保障を追加することができます。

  • 災害割増特約(⇒死亡の場合)
  • 傷害特約(⇒死亡の場合)
  • 災害入院特約(⇒ケガの場合)
  • 特定損傷特約(⇒ケガの場合)

以下、それぞれの特約の概要を簡単に解説します。

災害割増特約

災害・事故等で被保険者が亡くなった際に、死亡保険金を上乗せするための特約です。

ふつう「災害」と言うと自然災害をイメージするかもしれませんが、この特約の主な対象は、交通事故や火事といった不慮の事故を広く含んでいます。

傷害特約

災害割増特約同様に、交通事故などの不慮の事故で被保険者が亡くなった際に、死亡保険金を追加して受け取るための特約です。

災害割増特約と異なるのは、交通事故等により障害を負った際には、障害の程度(等級)に応じた保険金を受け取れる点です。

災害入院特約

交通事故、火事、自然災害等など不慮の事故や災害が原因で入院したときに、入院給付金を受け取れる特約です。

特定損傷特約

交通事故などの不慮の事故によって特定の損傷(骨折・関節脱臼・腱の断裂)を負った際に、その治療費として、あらかじめ決められた一時金を受け取れる特約です。

これらの特約をつけることで、生命保険で被保険者にもしものことがあった時のリスクに備えつつ、交通事故等の不慮の事故が起きた時に限り、保障の内容を手厚くできます。

いずれの特約も保険料が月々数百円程度と安価なことから、「安いから営業マンに勧められるままに加入した」というケースがよくあります。

2.生命保険の交通事故向けの特約をおすすめしない2つの理由

交通事故による死傷をカバーできる生命保険の特約について、上記でまとめました。

それぞれの保障内容をみると、「確かにあると助かるかもしれない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、結論から言うと、これらは以下の2つの理由からおすすめできません。

  • 事故や災害で亡くなったときだけ保障を追加する合理性は考えにくい
  • 自動車保険の補償でカバーできるものが多い

以下、それぞれ簡単に解説します。

2-1.事故や災害で亡くなったときだけ保障を追加する合理性は考えにくい

生命保険の主となる保障では死因を問わずに保障を受けられます。なので、特約を付けなくても、事故や災害で被保険者が亡くなった際の保障が受けられます。

そうだとすれば、重要なのは、生命保険で十分な保障金額を設定しておくことです。

特別に交通事故など不慮の事故のときにだけ保障を追加することのメリット・合理性は見当たりません。「交通事故で亡くなったから」というだけで、病気で亡くなったときと比べ多くの死亡保険金が必要になるというのは考えにくいです。

また入院費用を保障する災害入院特約に関しても、別途医療保険等に加入していてそちらで入院給付金を受け取れるのであれば、あえて付ける必要性は乏しいと言えます。

なお、医療保険自体の必要性については議論があります。「医療保険の必要性を保障内容と医療の現実から考える」を参考にしていただければと思います。

2-1-1.交通事故で死亡する可能性は高くない

保険は、よりリスクの高いものから優先して備えるべきと言えます。

その点、「交通事故の保障を手厚くする合理性」という観点でみれば、交通事故で亡くなる可能性は決して高くありません。

警察庁公式サイトによれば、2020年中に交通事故で亡くなった人は2,839人だったと発表されています。

これに対し、国立がん研究センターの「最新がん統計(更新日:2021年02月10日)」によれば、2019年にがんで亡くなった人は376,425人だったとのことです。

両者を比較すると、交通事故で亡くなった人の数は、がんで亡くなった人の数の1/100以下です。

もちろんリスクがないとは言えませんが、このことからも交通事故による死亡に特化して保障を追加する必要性は、あまり高くないと言えるでしょう。

2-2.自動車保険の補償でカバーできるものが多い

自動車保険では、運転中に死傷した場合の保障を付けることができます。

詳細は後述しますが、自動車保険に加入している方であれば、もし生命保険の上記特約まで付けてしまうと、保障内容がかぶってしまう可能性があります。そのため、生命保険側で、別途特約をつける必要は乏しいと言えます。

さらに言うと、自動車保険の補償は、生命保険の特約より広い範囲をカバーしていています。

その意味でも、生命保険側で交通事故などの不慮の事故に関する特約をつけるメリットは見当たらないと言ってよいでしょう。

【参考】自動車保険の死傷に関連する保障

なお参考までに、自動車保険で、死傷した際にどのような補償を受けられるのか簡単にお伝えします。

より詳細な内容に関しては「自動車保険の種類とそれぞれの補償内容」をご覧ください。

人身傷害補償保険

人身傷害補償保険は、交通事故で自分自身や同乗者がケガをした場合や亡くなった場合に、治療費・休業損害(亡くなった場合は「逸失利益」)や精神的損害・葬祭費まで幅広く補償する保険です。

設定した保険金額を上限として、全ての損害をカバーしてくれます。

自分自身が交通事故で死傷した場合に関する自動車保険の補償のうち、メインとなるものです。

搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険は、自分自身や同乗者が死傷した際に、治療費用や死亡・後遺障害保険金をカバーするものです。

人身傷害補償保険は保険金額の上限まで損害額を全額カバーしてくれますが、それと比較すると、保険金額が少なくなる一方、損害額が確定していなくても保険金が給付されるのがメリットといえます。

ただし補償の範囲自体は人身傷害補償保険をはじめ、生命保険・医療保険ともかぶるので、必要性は大きくありません。

無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、自動車保険にほとんど自動的にセットされている保険です。

交通事故の相手方が自動車保険(任意保険)に加入していない場合に、本来ならば相手に請求できるはずのお金をカバーしてくれます。

自動車同士の事故により自分や同乗者が死傷した場合、本来であれば過失割合に従い相手に賠償金を請求することができます。たとえば、過失割合が「自分:相手方=2:8」であれば、生じた損害額のうち8割分の賠償金を、相手から請求できるということです。

しかし、相手が保険に加入していなかった場合、相手にお金がなければ賠償金を得ることはできません。無保険車傷害保険は、そういった場合に、相手から受けられなかった賠償分を補償する保険です。

このように、交通事故に関する生命保険の特約は、保障内容が自動車保険とかなり被っています。

そのため、自動車保険に加入しているならば、生命保険の特約までつける必要性は乏しいと言えます。

まとめ

生命保険では、交通事故で死傷したときに保障が追加される特約を付けることができます。

しかし、交通事故が原因の場合だけ保険金の額を大きくする必要性と合理性は乏しいと言えます。

また、自動車保険には同様の保障があり、自動車保険側の契約内容次第では保障が被ってしまうおそれもあります。

その意味からも、生命保険で交通事故に備えるための特約をつける意義は乏しいと言えます。

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