農地を相続する後継者の税金を軽くしトラブルを防ぐ4つの条件

公開 2016年1月28日更新 2021年9月7日
農地を相続する後継者の税金を軽くしトラブルを防ぐ4つの条件
農地を相続する後継者の税金を軽くしトラブルを防ぐ4つの条件

農家の方の多くは資産の大部分を農地が占めていることが多く、その場合、2つの大きな問題があります。

第1に「後継者に農地を相続させると相続税の負担が大きくなりすぎてしまうのではないか?」ということ、第2に「後継者と他の相続人との間でトラブルが起こらないためにはどうしたらいいのか?」ということです。

実は、わが国では、それらの問題に対処するための制度が用意されています。たとえば、後継者の相続税の大部分が、事実上免除してもらえるのと同じ効果がある制度があります。

この記事では、農地の相続の場合に後継者の相続税の負担を抑えるための2つの条件、後継者と他の相続人の争いを防ぐための2つの条件、合計4つの条件について、分かりやすくお伝えします。

はじめに

農地の相続の場合に後継者の相続税の負担を抑えるために必要なこと、後継者と他の相続人の争いを防ぐために必要なことは、それぞれ以下の通りです。

〈後継者の相続税の負担を抑える条件〉

  • 後継者が確実に農業を引き継ぐこと
  • 後継者が農業を長く営み続けるか、志半ばで亡くなること

〈後継者と他の相続人の争いを防ぐ条件〉

  • 農地を後継者が単独相続するよう遺言を残しておくこと
  • 後継者以外の法定相続人の遺留分をなるべく侵害しないようにすること

1.「免除」につながる「納税猶予」

後継者に農地を遺言で相続させた場合でも、生前贈与した場合でも、条件をみたせば、「納税猶予」の制度が利用できます。

通常、土地の評価額は「路線価」ですが、納税猶予を受けると、相続の時点では、「路線価」よりも大幅に低い「農業投資価格」を基準とした額を納税すれば良いということになります。

この「農業投資価格」とは、農業用地としてだけ評価した額だと思っていただければけっこうです。

「農業投資価格」がどれほど低いかというと、イメージとしては、「路線価」の1/10を大きく下回ることもあります。

そして、納税猶予の特例を受けると、その農地については、「路線価」と「農業投資価格」との差額についての贈与税、つまり、通常の90%を超える額の相続税が「猶予」されることもあるということなのです。

ただ、「猶予」と言っても単なる猶予ではありません。そこからさらに必要な条件をみたすと、最終的に「免除」が受けられるのです。

このような税法上の特典が用意されているのは、農地が分散されるのを防ぐとともに、後継者が農業を安心して引き継げるようにするためです。そして、ひいては農業という産業自体を何とか守ろうという政策的意図があります。

詳しくは国税庁HPをご覧いただくとして、これから、「納税猶予」⇒「免除」のそれぞれに必要な条件について分かりやすく説明していきます。

1.1.「納税猶予」の条件|後継者が確実に農業を引き継ぐこと

あなたが後継者に農地を相続させるにあたり、納税猶予の制度が適用される条件は、以下の通りです。

  • あなたが後継者に生前贈与するか、後継者が相続するまで、その農地で農業を営んでいたこと
  • 後継者が相続税の申告期限(※)までに農業を始めたこと
  • 後継者がその後も農業を営んでいく意思が客観的に明らかになっていること

※相続税の申告期限…後継者があなたの死を知った翌日から10ヶ月後

つまり、あなたと後継者の間で、その後継者が農業を継ぐという共通認識ができているのは当然で、「+α」が必要ということです。

後継者がその後もきちんと農業を営んでいくことが客観的にみても確実と評価されなければならないのです。

それが認められるためには、実際に土地の耕作、あるいは、農業のための設備投資に着手する必要があるでしょう。

1.2.「免除」の条件|後継者が農業を長く営み続けるか、志半ばで亡くなること

後継者が農業を着実に営み続けた場合には、「納税猶予」だけでなく、最終的に、「免除」という特典が受けられます。

免除を受けられるのは、以下のいずれかです。

  • 後継者が死亡した場合
  • 後継者が農地を承継して農業を営み続け20年経過した場合
  • 後継者がそのまた後継者に一括して生前贈与して「納税猶予」を受けた場合

これらのいずれかをみたさないうちに農地を譲渡したり、農業を廃業したりすると、「納税猶予」がストップします。

「納税猶予」されていた額、つまり「路線価」と「農業投資価格」との差額について相続税を支払わなければならなくなります。

つまり、あなたの後継者は、「納税猶予」を受けた額について最終的に「免除」を受けるためには、農業を長く営み続けることか、それができなかったならば「志半ばで亡くなる」ことが必要だということです。

2.相続人間のトラブルを予防するために必要な2つの条件

2.1.農地を後継者が単独相続するよう遺言を残しておくこと

あなたの遺産の大部分を農地が占めている場合、遺言で、後継者一人にその農地を相続させることをはっきりと決めておく必要があります。

そうしないと、後継者は、他の法定相続人から「自分の法定相続分をよこせ」と請求されるリスクが大きいからです。

遺言の方式は、確実に証拠として残る「公正証書遺言」をおすすめします。

2.2.後継者以外の法定相続人の遺留分をなるべく侵害しないようにすること

ただ、遺言を残す場合、注意しなければならないのは、後継者以外の法定相続人の「遺留分」です。

遺留分というのは、法定相続人の最低限の取り分です。言ってみれば「遺族の最後の命綱」です。

この遺留分を侵害してしまったとなると、後継者は、その分のお金を支払ってあげなければなりません。このお金は「代償交付金」とか「賠償金」とか言われるものですが、いずれも実質は同じものと思っていただければ結構です。

したがって、他の法定相続人の遺留分をなるべく侵害しないような配慮が必要です。

ただ、農地以外の資産が少なく、どうしても他の法定相続人の遺留分を侵害してしまうような場合もあるでしょう。そのような場合はどうすれば良いでしょうか。

遺留分対策について、詳しくは、「遺留分にご用心!|絶対に知っておきたい3つの対策」をお読みいただくとして、ここでは、他の法定相続人の遺留分を侵害してしまうリスクが高い場合のための2つの対処法に絞って、概要だけを説明します。

生命保険を活用して相続財産の総額を下げ、後継者の「代償交付金」を準備する方法

後継者に「代償交付金」「賠償金」の資金を準備してあげるために、生命保険(一時払終身保険が有効)に加入して死亡保険金の受取人を後継者に指定する方法があります。

なぜなら、後継者が受け取った死亡保険金は相続財産には含まれないことになるので、後継者固有の財産になるため、後継者はそのお金を代償交付金として活用できるからです。

ただ、この方法は、現金がそもそも少なすぎる場合には活用できません。その意味で、限界があります。

後継者以外の法定相続人に「遺留分の放棄」の手続をとってもらう方法

そこで、あなたが生きている間に、後継者以外の法定相続人(遺留分権利者)に遺留分を放棄してもらう手続があるにはあります。

この「遺留分の放棄」が認められるには、遺留分権利者自身が本心から放棄の意思を示すのはもちろん、それにプラスして、家庭裁判所が、その放棄が合理的だと認めてくれる必要があります。

このような厳格な条件が課されているのは、遺留分が「遺族の最後の命綱」だからです。

ただし、農地の細分化を避けたい、後継者に農業を引き継いでほしい、というのは合理的な理由と認められやすいでしょう。したがって、決め手は、後継者以外の遺留分権利者の理解を得た上で放棄の意思表示をしてもらえるかにかかっていると言えます。

言うまでもないことですが、遺留分の放棄をすんなりと承諾してもらえるためには、日頃から、関係を良好に保っておく努力が必要でしょう。

まとめ

農地の相続の場合に後継者の相続税の負担を抑える方法、後継者と他の相続人の争いを防ぐ方法について、お伝えしてきました。

後継者の相続税の負担を抑えるには、生前贈与・相続に際しては「納税猶予」を利用すれば、最終的に「免除」まで受けられる可能性が高くなります。

また、後継者と他の相続人とのトラブルを避けるためには、遺言書を作成しておくこと、なるべく他の相続人の遺留分を侵害しないようにすること、どうしても遺留分の侵害が避けられそうになければそれなりに対策を講じておくことが必要です。

そのために、この記事でお伝えしたことを理解して、今からできる範囲で対策を立てておいていただきたいと思います。

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