会社に勤め上げた従業員に対して支払う退職金。
東京都産業労働局の平成30年度の調査によると、中小企業の71.3%が退職金を支払っているということです。
退職金には明確なルールが存在しないため、会社によって様々な算出方法で金額を打ち出しています。
しかし、ルールを明文化しておかないと、会社・従業員間で思わぬトラブルが発生するかもしれません。
それを避けるため、退職金を支払う会社では、「退職金規程」を定めていることが多いです。
今回は退職金規程について、何のために必要なのか、定める場合は何をしなければならないのかを解説していきます。
経営者の方は特に、しっかりと把握しておきましょう。
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1.退職金規程の必要性
まず、退職金規程は何のために必要なのかを説明していきます。
前提として、退職金は従業員にとって期待の大きいものです。
退職金がどんな計算方法で、どんな条件で支払われるのかをあらかじめ明文化しておくことで、「この会社でこれだけ働けば退職金がこのくらいもらえる」という指標になるため、従業員への大きなアピールになります。
何年働けば退職金がこれだけもらえるとわかっていることが、従業員の仕事へのモチベーションに影響を及ぼすことは、容易に想像できますね。
また、最初から支給する金額について明文化しておくことで、支払い時に起こり得る会社・従業員間のトラブルを回避することも可能です。
従業員へのアピールとトラブル回避のために、退職金規定は大きな役割を持ちます。
2,退職金規程がある場合の申請について
退職金規程を定めた場合、会社側は申請が必要になります。
2.1.労基署への届け出
退職金についての規定を定めた場合、就業規則の一部として労基署に届け出をする必要があります。
就業規則、就業規則変更届、意見書をそれぞれ2部ずつ作成して、労働基準監督署の窓口に提出し、受理印を受け、一部を会社の控えとして持ち帰るという流れで、届け出は終了です。
この届け出を行うことで、会社側としては退職金の支払いが法的に義務化されます。
会社は従業員に、必ず退職金規程にしたがって算定された額を、規程通りに支払わなければなりません。
3.退職金規程の例
最後に退職金規程の例を紹介します。
退職金規程は以下のように記述していきましょう。
退職金規程
第1条(適用範囲)
- この規程は、就業規則の規程に基づき社員の退職金について定めたものである。
- この規程による退職金制度は、会社に雇用され勤務する正社員に適用する。パートタイマー、嘱託など就業形態が特殊な者についてはこの限りではない。
第2条(退職金の算定方法)
- 退職金は別表で定めるところにより、退職時における基本給の月額に社員各人の勤続年数に応じた退職金支給率を乗じて得た額とする。
- 前項の算定するにあたって、その者の退職事由が次の第1号から第4号までのいずれかに該当する場合には退職金支給率の甲欄を、第5号および第6号のいずれかに該当する場合には乙欄をそれぞれ適用する。
①定年
②事業の縮小など業務上の都合による解雇
③業務上の事由による傷病
④死亡
⑤自己都合
⑥業務外の事由による傷病
第3条(計算期間)
- 計算の対象となる勤続年数は、入社日から起算し、退職の日までとする。これには試用期間を通算するが、就業規則に定める休職期間についてはこれを通算しない。
- 計算上1年未満の端数月が生じた場合は、15日以上を1ケ月とし、月割計算を行う。
第4条(特別功労金)
在職中、特に功労があったと認められる社員に対して、退職金に特別功労金を加算して支給することがある。支給額は、その都度その功労の程度を勘案して定める。
(中略)
第7条(支払の時期および方法)
退職金は、退職または解雇の日から30日以内に通貨で直接、支給対象者にその全額を支払う。
ただし、その者の同意がある場合は、その指定する金融機関口座への振込みまたは金融機関振出小切手などの方法により支払う。
第8条(遺族の範囲および順位)
本人死亡のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、労働基準法施行規則第42条から第45条までに定めるところによる。
第9条(退職金の不支給)
- 以下の各号の一に該当する者には、退職金を支給しない。ただし、事情により第2条に規定する自己都合退職金支給額に相当する退職金を支給することがある。
①就業規則に定める懲戒規定に基づき懲戒解雇された者
②退職後、支給日までの間において在職中の行為につき懲戒解雇に相当する事由が発見された者
- 退職金の支給後に前項第2号に該当する事実が発見された場合は、会社は支給した退職金の返還を当該社員であった者または前条の遺族に求めることができる。
第10条(社外業務に従事した場合の併給の調整)
出向等社命により社員が社外業務に従事し、他社より退職金に相当する給付を受けた場合には、その者の退職金は、この規程により算定された退職金から当該給付に相当する額を控除して支給する。
第11条(外部積立による退職金の支給)
会社が、中小企業退職金共済制度など外部機関において積み立てを行っている場合は、当該外部機関から支給される退職金は、会社が直接本人に支給したものとみなし、第2条に規定する算定方法により会社から直接支給する退職金は、当該外部機関から支給される退職金の額を控除した額とする。
第12条(改定)
この規程は会社の経営状況および社会情勢の変化等により必要と認めたときは、支給条件・支給水準を見直すことがある。
まとめ
退職金規程について説明してきました。
退職金規程は従業員との無用なトラブルを避けるためにも、ぜひ作成することをおすすめします。
従業員としても、退職金がいくら貰えるか分かるというのは、仕事をする上で大きなモチベーションになるでしょう。
退職金規程を定めて、健全な会社経営を行いましょう。
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