定額個人年金保険で老後の資産形成を行うためのポイントと選び方

定額個人年金保険は、リスクを取らずに確実な貯蓄をしたい方のための保険です。

支払った保険料を保険会社が運用し、将来は支払った保険料よりも受け取る年金額が増えて戻ってきます。

現在の日本社会では、少子化と超高齢化が凄まじいスピードで進んでいます。

そんな中、公的年金に対する不安を感じている方も多く、また銀行の普通預金にもほとんど金利がつかないのは、皆さんもご存知のことと思います。

そのような背景から、若い世代から老後の備えについて、個人年金保険などを活用している方も多くいらっしゃいます。

この記事では、定額個人年金保険について、契約例も挙げつつ説明します。

米ドル建てのタイプについてもごく簡単に解説しておりますので、ぜひ最後までお読みください。

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保険の教科書編集部

保険の教科書編集部

私は10年以上にわたり、生命保険業界で働いております。マイホームの次に高い買い物と言われることもある保険ですから、本当に必要な商品を無駄なく加入してもらうことが大切だと考えています。お一人お一人のご希望やライフプランをおうかがいし、少しでも豊かな人生を送るお手伝いが出来ればと思っております。

1. 定額個人年金保険とは?

定額個人年金保険とは、個人年金保険の一種です。

個人年金保険には「変額個人年金保険」という、リスクがある代わりに大きく増やせる可能性があるものもあります。

(詳しくは、「変額個人年金保険とは?活用のメリットと注意点」をご覧ください。)

定額個人年金保険では、実際に、どれくらい大きくなって受け取ることができるのか、次からご説明いたします。

1.1.具体的な保障内容

まず、定額個人年金保険(以下、個人年金保険)の保障内容について、A生命の商品の例(※)をご覧ください。

※現在は販売されていない商品です。

【例】30歳 男性 月払保険料7,905円
保険料払込期間・年金支払開始年齢ともに60歳 10年確定年金

保障内容について解説していきます。

  • 払込保険料総額:2,845,800(月額7,905円×30年間)
  • 受取年金総額:3,000,000円(年間300,000円×10年)返戻率:105.4%

さらに年金支払開始年齢を5年間繰り延べて、65歳で受け取るようにするともう少し返戻率が高くなります。

契約時の年金額は約束されており、将来変わることはありません。払込期間と受取までの期間が長いほど、返戻率は大きくなっていきます。

なお払込期間の繰り延べは保険会社によって出来る場合と出来ない場合があるので、注意が必要です。

私が調べてみたところ、2019年1月時点での普通預金の金利は、ゆうちょ銀行や三大メガバンクで0.001%、ネット銀行で0.02%程度です。

これらのことから比較すると、個人年金保険の返戻率は高い数字となっているので、資産運用の活用方法として選択肢の1つになるかと思います。

1.2.保険料はまとめ払い(年払い)の方が得

まとめ払いとは、1年間の保険料をまとめて払うことを指します。

医療保険やガン保険などでも、保険料をまとめて払うと、お得になることがあります。

これは個人年金保険でも同様です。先程と同じ条件で、保険料の支払いを年払にした場合をみてみましょう。

  • 払込保険料総額:2,824,470円(年払い94,149円×30年間)
  • 受取年金総額:3,000,000円(年間300,000円×10年)返戻率:106.2%

年払いは月払よりも、60歳の受取時点で0.7%多くなって戻ってきます。

年払の他に「一時払い」や「前納」という払込方法もあります。

資金に余裕のある場合は、このような方法を選択することにより、さらに返戻率は大きくなります。

1.3.万が一の時は死亡保険金を受け取れる

個人年金保険の保険料の支払い期間中、契約者に万が一のことがあった場合、それまで支払った保険料と、ほぼ同額の保険料を死亡給付金としてご家族に残すことができます。

また、年金受取の最中に不測の事態が起こった場合でも、年金を受け取るために支払った保険料の現価が死亡給付金となります。

個人年金保険の中で、保障機能があるのは、こういった部分になります。

2.個人年金保険を選ぶ時のポイント

個人年金保険を検討する時は、どのような点に注意すればよいでしょうか。ポイントをまとめます。

2.1.保険料の払込期間を選ぶ

まずは保険料を何歳まで支払うか決めましょう。退職後は収入が減ってしまうことを考えて、できるかぎり、仕事をしている間に保険料を払い終えるほうがおすすめです。

保険会社や契約年齢にもよりますが、払込期間は短いもので55歳、長いもので70歳くらいまでとなっています。

個人年金保険は、保険料の払込期間中に何らかの理由で解約をしてしまうと、解約返戻金はそれまで支払った保険料よりも少なってしまう可能性があります。

必ず最後まで支払いができる保険期間を設定していただくよう、お願いいたします。

2.2.受取期間を選ぶ

個人年金保険の加入の目的は「公的年金ではまかないきれない部分をカバーするため」という方が大半です。

ですから、年金の受取期間はとても大切になります。受取期間は、主に次の2つに分かれます。

2.2.1.確定年金

「確定年金」は、「5年」「10年」「15年」などの決まった期間について、確実に年金を受取る方法です。パンフレットには「5年確定年金」「10年確定年金」というように表示されています。

60歳や65歳から受取開始の「10年確定年金」を選ぶ方が多いです。

2.2.2.終身年金(保証期間付)

「終身年金」は、生きている限り年金を受け取り続けることができるものです。

長生きすれば、その分多くの年金を受け取れるので、保険料は確定年金よりも高くなります。

終身年金には「保証期間」が設定されていることが多いです。これは、年金受取開始から「10年」や「5年」などの期間を設け、その期間中に本人が死亡した場合でも、遺族が年金を受け取れるというものです。保証期間を経過後に死亡したらその時点で年金の支払いは終了します。

2.3.保険料または保険金から選ぶ

2.3.1.保険料から選ぶ

支払う保険料から年金額が決まるタイプは、1,000円きざみで設定することができます。

個人年金保険は貯金のような保険ですので、毎月(または毎年)いくら貯金できるのか?という視点から検討したい方に向いています。

2.3.2.保険金から選ぶ

受け取る保険金(年金)から、保険料が決まるタイプです。最初に例として挙げたのはこちらのタイプです。多くの商品で、最低保険金額は30万円に設定されています。

退職後の公的な年金額と、現在の生活費から将来の生活費を想定し、不足分のカバーをするという面から保険金をいくらにするか、検討します。

2.4.告知について

個人年金保険は貯金のような保険の性質上、健康状態がかなり悪くても加入できる商品があります。

告知事項は2項目程度の簡単な内容となっています。

3.米ドル建ての定額個人年金保険

日本はマイナス金利政策が続いていますが、アメリカ合州国の金利は高い水準で推移しています。

その影響で、個人年金保険についても、米ドル建てのほうが返戻率は高くなります(為替相場の変動の影響はとりあえずは考えないものとします)。

3.1.具体的な保障内容

保険料を円で支払い、米ドルや豪ドルなどの為替レートに応じて保険料が換算され、その積立金を外貨で運用する、というのが外貨建ての個人年金保険です。具体的には以下の通りです。

【例】30歳 男性 月払保険料15,000円

  • 保険料払込期間・年金支払開始年齢ともに65歳 10年確定年金
  • 払込保険料総額:6,300,000円
  • ドルに換算した払込保険料総額:58,611ドル(為替レート:1ドル=107.49円とする)
  • 受取年金総額:67,333.81ドル 返戻率:120.59%

為替相場の変動を計算に入れなければ、上で紹介した円建ての個人年金保険の返戻率105.4%と比べ、高い返戻率になっています。

また、積立利率も年金額に反映されます。積立利率が毎月、市場金利の動向によって変動するので、金利が上昇すれば受け取れる年金額も大きくなります。

積立利率は最低利率が設定されている場合が多く、上記の例では最低利率の1.5%で算出してあります。

3.2.年金の受取方法

年金の受取は、年金受取開始のタイミングで「米ドルか円か」を選択することができます。

円安ドル高の場合なら円で受け取ったほうが得ですし、逆のパターンも考えられます。主な受取方法は以下の通りです。

  • A:毎年米ドルで年金を受け取る
  • B:毎年米ドルで年金を受け取って円に換金する
  • C:米ドルの全額を円に換金してから、年金で受け取る
  • D:米ドルまたは円で一括で受け取る

3.3. 外貨建のリスクと費用

米ドル建ての個人年金保険は、為替相場の変動による影響を受けることになります。

たとえば、年金を受け取る時点で極端な円高ドル安になり、死亡給付金や年金受取額が支払った保険料総額よりも少なくなってしまう可能性がないわけではありません。

また、解約時や年金・死亡給付金を受け取る際には、一定の手数料がかかることがあります。

4.個人年金保険料控除の対象となる条件

4.1.控除を受けられる4つの条件

個人年金に加入して保険料を払い込むと、個人年金保険料控除を受けられることがあります。

詳細は「これだけでOK!生命保険料控除で知っておきたいこと」をご覧いただくとして、条件は以下の4つです。

  • 年金受取人が契約者または配偶者
  • 年金受取人が被保険者
  • 保険料の払込期間が10年以上
  • 年金支払開始日に被保険者が60歳以上で、かつ年金支払期間が10年以上

これらの条件をみたさない場合は、一般生命保険料控除の対象になることがあります。

4.2.個人年金税制適格特約を必ず付加する

個人年金保険の契約申込書の中には「個人年金税制適格特約」について、付加するかどうかを確認する項目があります。

間違えて「付加しない」を選んでしまうと、せっかくの控除枠が利用できなくなってしまいます。

また、個人年金税制適格特約は、契約の途中で付加することはできません。

5.まとめ

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年(2019年)度)」によると、夫婦2人が豊かな生活を送るために必要な金額は、平均36.1万円/月と考えられています。

多くの高齢者を少ない若者が支えていかなければならないため、若い世代になればなるほど、不安感は大きくなる傾向にあります。

そんな中、定額個人年金保険は、自助努力で資産形成を行う選択肢の1つです。

単なる貯蓄とは異なり、生命保険料の個人年金保険料控除の対象になるので、節税効果も期待できます。

払込期間や受取開始期間を工夫することによって、返戻率が変わってきます。また、保険会社によっては、年金受取期間を繰り延べしてさらに返戻率を高めることも可能です。

なお、最近、円建ての個人年金保険が各社で次々と販売停止になっています。マイナス金利の影響などから、契約者に約束した返戻率の確保が難しくなったためのようです。

定額個人年金保険をお考えの方は、米ドル建ての個人年金保険、あるいは変額個人年金保険も有力な選択肢となっています。

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