個人年金保険とはどんなもの?契約前に知っておきたい内容まとめ

少子高齢化がすすみ老後の不安が大きくなるなか、注目されている資金運用の方法の1つが個人年金保険です。

この記事では、個人年金保険がどういった保険商品かという概要から、よく比較されるiDeCoとの違いなど、契約前に知っておきたいことをまとめて解説しています。

個人年金保険の加入を検討し始めるときに参考になる記事です。

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保険の教科書 編集部

保険の教科書 編集部

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1.個人年金保険とは?

個人年金保険とは、公的な年金(厚生年金・国民年金)に追加して老後に年金を給付する私的年金制度の1つです。

民間の保険会社が、保険商品として販売しています。

商品や運用によっては、支払った保険料総額より多くの年金が受け取れるため、老後に備えた貯蓄方法としても注目されています。

1-1.個人年金保険でどのくらいお金が増えるか

以下、A社の個人年金保険の契約例(2019年4月時点)を参考に、実際にどのくらいの利回りがあるかみてみましょう。

契約の条件を以下の通りとします。

  • 契約者:30歳男性
  • 払込期間:65歳まで
  • 年金支払開始:65歳から
  • 年金種類:確定年金(10年)
  • 年金額:60万円
  • 保険料:(月払い)13,386円

このなかで「確定年金(10年)」とは、支払い開始から10年間の間、年金を受け取れるタイプをさします。

この例では、年間60万円の年金を10年間受け取れるということです。

この保険商品における保険料累計額・個人年金保険受取累計額・返戻率は以下の通りです。

この商品例では、支払った保険料の総額(5,622,120円)より約38万円多い600万円の年金を受け取ることができます。

返戻率は106.7%にのぼっています。

定期預金の年利が0.01%~0.02%(価格.com – 定期預金比較)程度であることを考えると、ずっと利回りがよい貯蓄方法と言えるでしょう。

1-2.個人年金保険には節税の効果もある

個人年金保険は「個人年金保険料控除」の対象であり、年間で支払った保険料の総額によって、所得税・住民税の控除を受けることが可能です。

具体的には個人年金保険料控除で、所得税は年間所得から最大40,000円まで、住民税は最大28,000円まで控除され、所得税・住民税の節税となります。

個人年金保険の貯蓄性について考えるときは、保険料累計額や累計年金額から導かれる返戻率だけでなく、この節税効果も考慮すべきです。

実際にどのくらいの額の節税が実現できるかは、保険料の総額をはじめ収入額や家族構成などによっても変わります。

詳しい計算方法に関しては「個人年金保険は税金がお得!?知っておきたい控除に関する5つのポイント」をご覧ください。

ここでは参考までに一例をあげます。

以下条件の会社員の場合は所得税を年間4,000円、住民税を年間2,800円(合計6,800円)(2019年4月現在)節税が可能です。

  • 30歳男性・会社員
  • 年収600万円
  • 家族:妻・5歳の子
  • 個人年金保険(円建て)保険料:月々13,386円

※上記A社の個人年金保険に加入するものと仮定します。

これをふまえ、A社の個人年金保険において、この節税効果まで含めた利回りがどのくらいになるかシミュレーションしてみましょう。

実際には控除額などのルールは時期によって変わりますが、ここでは年収含めて全て変わらないものと想定して計算します。

この条件の場合、65歳までの35年間継続して年間6,800円ずつ節税できるわけですから、節税額の合計は238,000円です。

そのうえでA社の個人年金保険の利回りがどのくらいになるか算出します。

(600万円【受取年金総額】+238,000円【総節税額】)÷5,622,120円【支払保険料総額】≒約111%

いかがでしょうか?

今回紹介した例では、約111%までお金を増やせていることになります。

このように節税額まで含めて考えると、個人年金保険の利回りはさらによくなるのです。

1-3.円建ての利率は以前より悪くなっている

長く続く国内の低金利政策の影響により、円建ての個人年金保険の利率は以前と比べて悪くなってしまっています。

かわりに最近注目されているのは、ハイリスクハイリターンなドル建てや変額の個人年金保険です。

詳細は後述します。

2.個人年金保険とiDeCoの比較(なにが違う?)

iDeCo(個人型確定拠出年金)もまた個人年金保険と同様に、公的年金に追加して年金を給付する私的年金制度です。

iDeCoでは掛金の運用先を投資信託・国際・定期預金などのなかから自分で選び、その運用成果によって将来的に受け取れる年金額が変わります。

個人年金保険とよく比較される制度なので、どちらに加入すればよいか迷っている方もいることでしょう。

ここでは個人年金保険と、iDeCoの主な違いは以下の通りです。

以下、なかでも特に比較すべきポイントを紹介します。

2-1.年金額はどちらが多いか

個人年金保険・iDeCoいずれの場合も、お金が増えるかどうかは運用先次第となります。

なお個人年金保険で安定性の高い円建てを選んだり、iDeCoで投資先に定期預金を選んだりすることで、元本割れはしにくくなります。

※その代わり返戻率は低くなります。

2-2.節税の効果はどちらが高いか

所得控除の取り扱いについては個人年金保険とiDeCoで大きな違いがあります。

個人年金保険は保険料の一部が控除となるのに対し、iDeCoでは掛金全額が控除の対象となります。

そのため、より税制的に優遇されているのはiDeCoです。

2-3.途中解約は可能か

個人年金保険は途中で解約すること自体は自由で、解約すると解約返戻金が給付されます。

解約返戻金の額は選択した商品や加入期間などによって決まりますが、支払った保険料総額より少なくなることが多いです。

対して、iDeCoは途中で加入者が亡くなるなどの例外を除き、原則として途中解約ができません。

そのため途中で解約する可能性があるのであれば、個人年金保険の方が安全といえます。

2-4.結局どちらに加入すべき

できるのであれば、両方とも加入するのがおすすめです。

その分だけ多く税制優遇を受けることもできますし、リスク分散にもなります。

2つのうち1つを選択するなら、以下2つの基準をもとに選ぶとよいでしょう。

  • 個人年金保険・iDeCoそれぞれの商品・運用先をみて気に入ったものを選ぶ
  • 税制優遇を重視して、途中解約できなくてもよいのであればiDeCoを選ぶ

運用実績による利回りではなく税制優遇を重視するなら、iDeCoを選びます。

また個人年金保険の商品やiDeCoの運用先それぞれで利回りなどが違いますから、商品や運用先ごとの内容をみて選ぶのもよいでしょう。

3.円建てよりハイリスクハイリターンな個人年金保険もある

これまで個人年金保険のなかでも円建てのタイプを紹介しましたが、個人年金保険には、ほかに以下の2つのタイプもあります。

3-1.外貨を利用する「外貨建て個人年金保険」

保険料の支払いや保険金の受け取り、積み立てに利率の外貨を使うタイプの個人年金保険です。

国内の低金利が続き利率の低い日本円と比較して外貨の方が利率が高いことから、個人年金保険のなかでも利率のよい商品として注目されています。

ただし、為替の変動によって利回りが悪くなる点は、注意する必要があります。

3-1-1.外貨建ての為替リスクとは?

外貨建ては、為替の状況に影響を受けることになります。

参考例として、以下をご覧ください。

これはドル建ての年金を日本円にして契約者が受け取る際のイメージです。

円安ドル高がすすむと、受け取れる日本円が増えるのに対し、円高ドル安が進むと少なくなっています。

このように外貨建ては、為替の影響を受ける点は覚えておいてください。

保険料に関しても、円高ドル安のときには安くなり、円安ドル高のときは高くなります。

しかし支払期間を分散する(長くする)ことで、このリスクは軽減ができます。

保険料支払いの際に、その時々のレートに見合った額を支払っているため、長い目でみればこのリスクが軽減するからです。

為替リスクの中身とその対処法については、詳しくは「為替リスクとは?運用方法で異なるリスクの中身と対処法」で説明していますので、ご覧ください。

3-2.保険会社の運用によって年金額がかわる「変額個人年金保険」

保険会社が国内外の株式や投資信託、債券などを運用し、その実績によって受け取れる年金額が変動する保険商品です。

運用の対象は、契約者自身で選ぶことができます。

運用実績によっては、円建てと比べはるかにお金を増やせる場合がある一方で、元本割れをする可能性もあります。

ただし、そのリスクは以下にあげるポイントをおさえておくことにより大幅に軽減することが可能です。

3-2-1.変額のリスクを軽減するためのポイント

変額個人年金保険は、最低でも15年から20年という長期にわたって運用される商品です。

その間には経済状況が悪いこともあれば良いこともあり、変額個人年金保険はその影響を受けることになります。

そのため以下にあげるリスク軽減のポイントを覚えておきましょう。

  • 過去20年間に高い実績をあげている商品を選ぶ
  • 長期運用によってリスクを分散する(一度暴落しても、長い目でみれば回復していることが多い)
  • 保険会社の情報をチェックしたり、担当者のアドバイスを聞いたりする
  • 短期的な暴落に一喜一憂して慌てない

なお外貨建て個人年金や変額個人年金保険の詳細は、具体的な契約例とともに「利率のいい保険の種類と選び方のまとめ」で紹介しておりますので、よろしければあわせてご覧ください。

3-3.個人年金保険料控除の対象となるか要注意

前述した通り円建ての個人年金保険は、個人年金保険料控除の対象となり、所得税は年間最大40,000円、住民税は年間最大28,000円の控除が可能でした。

たいして外貨建てや変額タイプも所得控除自体は可能ですが、一部の外貨建てタイプをのぞいて「個人年金保険料控除」ではなく「生命保険料控除」の対象となっています。

そのうえで生命保険料控除は、より加入者が多い定期保険や終身保険、収入保障保険も対象となっているため、それらで控除枠を使いきってしまっている可能性もあります。

その場合、追加して外貨建て・変額タイプの個人年金に加入したとしても控除額は増えないことがあります。

まとめ

個人年金保険を利用することで、老後の生活費を蓄えることができます。

貯蓄性があり、商品によっては支払った保険料総額より多くの年金を受け取ることも可能です。

また個人年金保険料控除により、住民税・所得税の節税にもなります。

老後の生活費を貯蓄したい際は、ぜひ検討したい選択肢の1つです。

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