会社を守り発展させる!法人向け医療保険の徹底活用法4つ

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医療保険には「法人向け」の商品があります。しかし、経営者の皆様から、「個人向け」とどう違うのか、具体的にどんな活用法があるのか、よく分からないといった相談を受けます。

実は、法人向けの医療保険は、保険の内容自体は個人向けの商品とほとんど変わりません。しかし、保険料を損金に算入できる上、上手に活用すれば、経営者にとっても、従業員にとっても大きなメリットがあり、会社を守り発展させていくのに大いに役立つ可能性があるものです。

ただし、経営者と従業員のどちらにかけるか、保険期間をどのように設定するかによって、そこにかかるコストや活用法が変わってきます。

この記事では、医療保険の契約のパターンを4つに分類したうえで、会社を守り発展させていくのに役立つ4通りの活用法について説明します。

はじめに|法人向け医療保険とは

基本的な構造は個人向けの商品と同じ

医療保険は、病気やけがの場合の入院費・治療費等を一定の範囲で保障する保険です。

オーソドックスな保険内容としては、「入院給付金」の額を決めておき、それを基準に「手術給付金」を計算するタイプのものが多いです。

たとえば、「入院給付金」の額を「1口1万円」等と設定し、「手術給付金」は手術の種類に応じて「入院給付金」の5倍とか20倍とかに設定します。

なお、保険会社によっては、日本を代表する各専門分野の名医に現在の診断に関する見解や今後の治療方針等の意見を聞くことができる「セカンドオピニオンサービス」を利用できます。また、24時間対応の電話でのカウンセリングサービスが利用できる商品もあります。

このような医療保険の基本的な構造は、個人向けと法人向けとでは変わりません。

法人向け医療保険は4パターンに分けて考える必要がある

加入パターンは「プラン」2種類×「払込期間」2タイプ=4パターン

法人向け医療保険の場合、保障を受ける人(経営者・役員か従業員か)、保障期間(定期タイプか終身タイプか)によって、活用方法や使い勝手が違ってきます。なので、それぞれ分けて考える必要があります。

まず、保障対象については、経営者を対象とする「経営者向けプラン」と、従業員を対象とする「福利厚生プラン」とがあります。

また、保険期間については、長さが決まっているもの(定期タイプ)と一生涯のもの(終身タイプ)があります。

つまり、以下の4パターンがあるということになります。

  • 経営者向けプラン・定期タイプ
  • 経営者向けプラン・終身タイプ
  • 福利厚生プラン・定期タイプ
  • 福利厚生プラン・終身タイプ

「終身タイプ」は保険料が割高な分、活用方法のバリエーションが多い

それぞれの活用方法は、以下の表の通りです。

〈医療保険のプラン・タイプと活用法の一覧表〉

◎:有用性がきわめて高い、又は最も多く利用されている

○:有用性が高い、又はある程度多く利用されている

△:利用できないことはないが有用性が低い、又は利用が少ない

医療保険活用法整理

法人が終身タイプに加入する場合、払い込む保険料の累計は定期保険よりもかなり割高になります。

その理由は、法人加入の場合、払込期間を定年に合わせて設定することになるからです。

たとえば保険料の払込期間を60歳までとすると、定期タイプは保障も60歳でストップしますが、終身タイプの場合は60歳以降も保障が続くので、その分も合わせて保険料が設定されるからです。

ただし、その代わり、終身タイプの方が活用法のバリエーションは多くなるわけです。

保険料の全額を損金に算入しながら保障が受けられる

一般的な医療保険は解約返戻金がない「掛け捨て」のものであるため、保険料は全額が損金に算入されます。

これはつまり、税負担を軽減しながら契約内容通りの保障が受けられるということです。

1. 経営者のための医療保険の活用法

「経営者向けプラン」の場合、経営者・役員が在職中にがんやその他の病気になれば、給付金で事業資金や医療費をカバーすることができます。

また、「終身タイプ」であれば、退職金の代わりに経営者・役員個人に現物支給することができます。

医療保険経営者向け整理

経営者向けプランの契約例は、以下の通りです。保障を厚くすることで、事業保障の役割も持たせることができます。

〈医療保険(経営者向けプラン)の契約例①〉 ※三大疾病入院一時給付金特約・がん特約を付けた場合

  • 50歳 男性
  • 保険期間:終身
  • 保険料:407,077円/年
  • 保険料払込期間:10年(60歳まで)
  • 入院給付金日額:1万円(支払限度:120日)
  • 手術給付金:入院10万円、外来5万円
  • 先進医療特約:2,000万円(通算)
  • 三大疾病入院一時給付金:100万円
  • がん診断給付金:100万円
  • がん治療通院給付金日額:1万円

なお、介護の保障を付けることができる商品もあります。その場合は、保険料はさらに高額になります。

〈医療保険(経営者向けプラン)の契約例②〉※契約例①に「終身介護保障特約」を加えた場合の契約例

  • 50歳 男性
  • 保険期間:終身
  • 保険料:1,166,777円/年
  • 保険料払込期間:10年(60歳まで)
  • 入院給付金日額:1万円(支払限度:120日)
  • 手術給付金:入院10万円、外来5万円
  • 先進医療特約:2,000万円(通算)
  • 三大疾病入院一時給付金:100万円
  • がん診断給付金:100万円
  • がん治療通院給付金日額:1万円
  • 終身介護保障特約(要介護2等の条件あり):介護障害年金200万円、介護障害一時金800万円

これから、活用法を具体的に説明します。

活用法1|いざという時の事業保障と医療費の準備

医療保険・経営者事業保障

これは、「定期タイプ」と「終身タイプ」に共通の活用法です。

在職中にがんやその他の病気になれば、給付金で事業資金や医療費をカバーすることができます。契約内容によっては、事業保障の役割を強くすることができます。

給付金の中から医療費を経営者・役員個人に支給する場合には、常識的な額を「見舞金」として支給することになります。

「見舞金」の額が常識的な範囲を超えると、その分は「給与」として扱われ、受け取った経営者・役員の側で所得税の課税対象になるので、注意が必要です。

活用法2|「終身タイプ」の保険を退職金代わりに「名義変更」する(「+α」の活用法)

医療保険・経営者退職金

「終身タイプ」には、事業保障だけでなく、「+α」の活用法があります。

経営者・役員が退職する時に退職金代わりに現物で支給する方法です。こうすれば、経営者・役員は退職後、一生涯にわたり医療の保障を受けられるようになります。これは、「終身タイプ」ならではの、大変メリットの大きい活用法です。

やり方は、まず、終身タイプの医療保険に加入し、保険料の支払いが終わる時期を経営者・役員の退職時期に合わせて設定しておきます。

在職中は経営者・役員の病気や事故に備えます(「活用法1」参照)。もちろん、その間、保険料は全額会社の損金に算入されます。

そして、退職のタイミングで保険自体を退職金代わりに支給するのです。これは、保険の契約者名義を会社から個人に変更するという形で行われます。

保険料の払込は済んでいるので、経営者・役員は、以後は保険料を支払わずに一生涯の保障を受けることができます。

医療保険退職金イメージ

この医療保険の「名義変更プラン」には、大きなメリットが2つあります。

  • 会社にも経営者・役員個人にも経済的負担がほとんど発生しない
  • 税務当局に否認されるリスクがない

つまり、解約返戻金がない医療保険の契約者の権利というのは、資産そのものではなく「仮に大きな病気や怪我をしてしまったら所定の給付を受ける権利」にすぎません。そのため、資産価値がゼロと扱われ、名義変更をしても会社にも個人にも経済的な負担はほとんど発生しません。

また、税務当局もこの「名義変更プラン」を適法・正当な方法と認めており、「否認」されるおそれもありません。

これが解約返戻金のあるタイプの保険、たとえば「逓増定期保険」等の「名義変更プラン」の場合、はっきりと「資産」を移転させることになりますので、「利益相反行為」や「税務当局による否認」のリスクがあるため、こうはいきません(くわしくはこちらの記事をご覧ください)。

身を削る思いをして会社を発展させ、従業員の生活を守るのに尽力している経営者の方にとって、最後にこのような保障が受けられるということは、何よりの慰労になると思います。

また、今後、わが国の財政が厳しくなっていくことが予想され、現在の水準の公的医療保障が受けられなくなる可能性があります。このことを考えると、魅力的な活用法の一つです。

2.従業員の福利厚生のための医療保険の活用法

医療保険は、従業員の福利厚生のために利用することができます。

福利厚生制度は、従業員の意欲を引き出し、コストパフォーマンスを高める意味合いがあります。つまり、福利厚生を充実させて従業員の待遇を改善することは、「従業員の生活を守る」という意思の現れだといえます。これによって従業員の意欲を引き出し、会社がよりいっそう多くのキャッシュを稼ぎ出す原動力になるということです(福利厚生全般についてはこちらをご覧ください)。

「福利厚生」であるからには、全ての従業員が公平・平等に受けられるようにしなければなりません。したがって、たとえば勤続期間等、一定の条件をみたす全ての従業員を被保険者にする必要があります。

福利厚生目的で医療保険を活用する方法を整理すると、以下の通りです。

医療保険福利厚生整理

これらについて、以下の契約例をもとに説明します。

なお、説明を簡単にするため、従業員全員が同じ性別・年齢(男性・35歳)で、全員同じタイミングで「定期タイプ」の医療保険に加入したということにしています。

〈契約者のデータ〉

  • 売上:年2億円
  • 税引前利益:1,000万円
  • 従業員数:45名

〈契約内容〉 ※1名あたり

  • 被保険者:全従業員
  • 保険期間:5年
  • 保険料:17,381円/年
  • 入院給付金:日額1万円 支払限度:120日
  • 手術給付金:5万円・10万円・20万円・40万円(内容による)
  • 先進医療特約:2,000万円(通算)

この保険の保険料は、「定期タイプ」と「終身タイプ」でそれぞれ以下の通りになっています。

(定期タイプの年払保険料と60歳までの保険料累計)

医療保険定期タイプ保険料

(終身タイプの年払保険料と60歳までの保険料累計)  ※保険料払込期間を60歳満了とした場合

医療保険終身タイプ保険料

上でも説明しましたが、このように、全く同じ保障内容でも、「終身タイプ」の方が「定期タイプ」よりも保険料の額がかなり割高になっています。したがって、福利厚生の一環として医療費のサポートをすることだけが目的であれば、割安な定期タイプを活用するケースが多いです。

ただし、終身タイプにも、経営者向け商品と同様、退職金代わりに名義変更するという活用法がないわけではありません。

以下、具体的に説明します。

活用法3.従業員の医療費をサポートする

医療保険福利厚生医療費

損金を計上しながら福利厚生を充実させ、従業員の意欲を引き出す

この契約では、従業員全員が被保険者となり、年払保険料1人あたり17,381円、45名で合計78,2145万円全額が「福利厚生費」として損金に算入されることになります。

従業員が病気になり入院・手術等を受けた場合、会社が給付金を受け取れば、益金に算入されます。そして、会社が給付金の中からその従業員に「見舞金」を支給することになり、これが損金に算入されます。なお、この「見舞金」の額は、常識の範囲内であれば、従業員の側で所得税がかかることはありません。

商品によっては、名医による「セカンドオピニオンサービス」があり、従業員に質の高い医療を受けさせることができます。また、24時間対応の電話でのカウンセリングサービスが付いている場合は、従業員のメンタルヘルスケアにも役立ちます。

こういった形で、従業員の医療費をサポートする体制を整えて福利厚生を充実させれば、従業員の意欲を引き出し、結果的に会社がより多くの利益を上げて発展していくことにつながります。

「福利厚生規定」は絶対に作成すること

福利厚生の制度は、従業員の意欲を引き出し、コストパフォーマンスを高めることが目的です。なので、せっかく制度を整えても、従業員に認知してもらえない、利用してもらえないのでは、保険料が無駄になってしまいます。保障内容や制度の導入目的を全従業員に周知徹底するため、「福利厚生規定」を作成しなければなりません。

また、この「福利厚生規定」は、税務調査が入った場合に、福利厚生目的であることの重要な証拠になります。

「福利厚生規定」の具体例については、こちらをご覧ください。

活用法4.「終身タイプ」の保険を退職金代わりに「名義変更」する(「+α」の活用法)

医療保険福利厚生退職金

「終身タイプ」には「定期タイプ」にない「+α」の活用法があります。

それは、「経営者プラン」と同じように、退職金代わりに従業員個人に「名義変更」するという形で現物支給するという利用法です。

つまり、保険料の支払いが終わる時期を従業員の退職時期に合わせて設定しておき、そのタイミングで退職金代わりに「名義変更」として支給するのです。こうすれば、払込が完了した契約を従業員個人へと名義変更することになるので、その従業員は、退職後は保険料を支払わずに一生涯の保障を受けることができます。当然、退職金そのものではないため従業員の側でも「退職所得」として扱われず、所得税がかかりません。

医療保険退職金代わり

従業員は経営者・役員と違い、定年までずっとその会社で働いてくれるとは限らず、途中で退職・転職することもあります。また、「終身タイプ」の保険料がかなり割高なことも合わせて考えると、多くの会社にとってはなかなか採用しにくい方法だと思います。

しかし、たとえば小規模な家族経営の会社等、従業員の大多数が基本的に定年まで働くことが予定されているような場合には、ありうる選択肢だと言えます。

補足|加入手続について

医療保険の「福利厚生プラン」の場合、加入手続については、通常、告知書の記入が必要であり、各従業員に自己申告で「告知書」に記入してもらうことになっています。

ただし、法人契約の場合の告知書は、予め用意された質問項目に○×をつければよいものなど、書式が簡略化されているものが多いです。

また、この告知書には健康診断結果通知書を添付して提出することができ、こちらをおすすめします。というのは、既往症や健康診断で指摘がある人が、健康診断書を追加で提出することで美点評価により、審査が有利になることがあるからです。その方が会社の事務が楽だし、保険会社の側でも正確な情報に基づいて総合的に判断できるからです。

まとめ

法人向けの医療保険について、4つのパターンに分け、4通りの活用法を整理して説明してきました。

医療保険は、保険料の全額を損金に算入できるだけでなく、事業保障、退職金代わり、福利厚生などと使い勝手が良く、会社が発展していくうえで、コストだけで単純に説明できないプラスの影響を与えてくれる可能性があります。会社の発展段階や経営状態、従業員の定着率に応じて、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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