終身保険は危険!法人が加入するデメリット4つと活用の鉄則2つ

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終身保険

この記事をお読みの経営者の方は、保険の営業マンから終身保険への法人加入を勧められたことがあると思います。その時、「保険料を支払い終わった後で解約返戻金を受け取れば銀行預金よりも率が良い上に、いざという場合には死亡保険金を受け取って保障も受けられる」という売り文句をお聞きになったかも知れません。

確かにこの言葉自体は、あながち嘘とまでは言い切れません。実際、個人で加入する場合は、保険料について所得控除が受けられたり、保険金の受取人を指定することで保険金を相続財産から除外することができたりと、メリットが大きいものです。しかし、法人加入の場合、個人加入と同じように考えてはいけません。保険料や解約返戻金の会計上の扱いを考えると、実は終身保険はむしろデメリット、リスクが非常に大きいのです。強いて言えば、終身保険を敢えて活用するメリットがあるのは、死亡保険金で事業承継対策をする場合だけです。私は、終身保険を法人に対して敢えて勧めてくる営業マンの多くが、終身保険のリスクをどの程度理解しているのか、疑問だと思っています。

この記事では、終身保険のメリットとデメリット、特にデメリット4つにスポットを当てて説明した上で、メリットが生きる活用法と、活用のための鉄則2つをお話します。

1.終身保険に法人加入する場合の唯一のメリットと4つのデメリット

終身保険は、保障が一生涯にわたる生命保険です。

保障が一生涯続くということは、つまり、人はいつかは必ず死ぬため、加入している限り必ず保険金が支払われるということです。また、特に「有期払い」(60歳までなど)の場合、解約した時に受け取れる「解約返戻金」が年を追うごとに貯まっていき、タイミングによっては保険料の累計を上回る額が受け取れるため、貯蓄性があります。

「加入し続けていれば必ず保険金を受け取ることができる上、貯蓄性が高い」・・・このように書くと、いかにも法人にとって魅力的な商品のように見えます。

しかし、法人加入する場合のメリット・デメリットを分析すると、目立ったメリットは1つだけであり、4つの大きなデメリットがあるので、注意が必要です。

〈終身保険の法人加入のメリット〉

  1. 加入していればいつかは必ず死亡保険金が支払われる

〈終身保険の法人加入のデメリット〉

  1. 保険料が高額なので会社のキャッシュフローを圧迫するリスクがある
  2. 保険料は全額が資産に計上され、税負担が一切軽減されない
  3. 払込期間終了前に解約すると、支払ってきた保険料が目減りする
  4. 解約返戻金を受け取って支出すると多額の赤字を出してしまうリスクが大きい

1-1.終身保険の法人加入のメリット(唯一)

メリット(唯一).加入していればいつかは必ず死亡保険金が支払われる

終身保険は保障が一生涯続くため、どんなに長生きしても、いつかは必ず死亡保険金が支払われます。したがって、その一点だけを目当てにして加入するのであれば、メリットになりえます。

具体的には、後で説明するように、死亡保険金で事業承継対策をする場合です。

1-2.終身保険の法人加入のデメリット

デメリット1|保険料が割高なので会社のキャッシュフローを圧迫するリスクがある

終身保険は、加入し続けているかぎり保険金がいつか必ず支払われることと、貯蓄性があることから、保険料は割高に設定されています。

特に、保険料の払込期間が有期払い(60歳まで等)になっている場合、払込期間終了後のタイミングで解約すると、それまで支払ってきた保険料総額よりも多額の解約返戻金を受け取れることになっています。そのため、保険料の額が高くなっています。

したがって、適正な保険料を設定しないと、キャッシュフローを圧迫するリスクがあります。

デメリット2|保険料は全額が資産に計上され、税負担が一切軽減されない

加入している限りいつかは必ず保険金が受け取れること、解約返戻金が積み立てられて貯蓄性があることから、保険料は全額が「保険積立金」として資産に計上され、損金には一切算入されません。

つまり、保険料の支払段階で、税負担は一切軽減されないということです。

これは、他の「逓増定期保険」や「長期平準定期保険」や「生活障害保障型定期保険」といった貯蓄性のあるタイプの保険については保険料の一部または全部が損金に算入されることと対照的です。

デメリット3|払込期間終了前に解約すると、支払ってきた保険料が目減りする

「60歳まで」などの「有期払い」の場合、保険料の払込終了後にならないと、解約返戻金は保険料累計の100%を超えません。したがって、それより前に解約すると、支払ってきた保険料が目減りしてしまうことになります。つまり、保険料の払込が終わる前に急に資金が必要になったような時に中途解約すると、保険料が目減りして損をしてしまうことになります。そのため、中途解約した場合に目減りした分については、それまでの間、経営者の身に何かあった時に備えられた代償ということで納得するしかありません。ただし、そう考えたとしても、保険料の高さを考えると、割に合ったものかどうかは微妙です。

これに対し、銀行預金で積み立てておけば、いつでも、いざという時には引き出せる上、わずかながら利息も付くので、少なくとも損は絶対にありません。

したがって、たとえば、営業マンから「終身保険は預金よりも戻りがいいですよ。銀行積立を1本終身保険に変えませんか?」とか言われたような場合には、その営業マンは、中途解約することになってしまった場合のリスクについてきちんと理解できていない可能性があるので、要注意です。

デメリット4|解約返戻金を受け取って支出すると多額の赤字を出すリスクが大きい

終身保険の保険料は全額が会社の資産に計上されます。したがって、会社が保険を解約して解約返戻金を受け取った場合、そこから、保険料の合計額を差し引いた額だけが益金に算入されます。

たとえば、保険料の合計が3,000万円、解約返戻金が3,060万円(返戻率102%)で、うち3,000万円を経営者の退職金に充てる場合を考えてみましょう。

この場合、解約返戻金3,060万円のうち益金に算入されるのは60万円(保険料合計額の2%)だけです。そして、3,000万円を退職金として支出するとこれが損金に算入されるため、2,940万円の赤字が出てしまいます。

つまり、終身保険は、積み立てた解約返戻金を何らかの資金に充てて支出してしまうと、その額のほとんどが損金に算入される結果、多額の赤字を出してしまうリスクが大きいということです。

2.終身保険のメリットがあるのは死亡保険金目当てでの事業承継対策をする場合のみ

以上の終身保険のメリット1つとデメリット4つを踏まえたうえで、死亡保険金と解約返戻金について、どのような活用があるか検討してみましょう。

それぞれの向き不向きを一覧にしたものです。結論から言えば、終身保険を敢えて活用するメリットがあるのは、死亡保険金で事業承継対策をする場合だけです。

終身保険活用

どういうことなのか、検証を加えながら説明していきます。

2-1.死亡保険金は「相続による事業承継」の資金準備のために活用できる

「相続による事業承継」の際の自社株式の買取資金の準備

相続による事業承継を考える場合に確実性が高い終身保険

終身保険は、経営者が相続による事業承継を考えている場合に、株式を相続する後継者(相続人)の経済的負担を和らげるのに活用できます。つまり、後継者は株式を相続したら相続税を支払わなければなりませんが、株式を会社に買い取ってもらうことで納税資金を準備する方法があります。その時に会社側で後継者から株式を買い取るための資金が必要なので、それに死亡保険金を充てるのです(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

経営者がどれほど長生きしても必ず保険金が支払われるので、この方法は確実性が高いです。

なお、後継者に必要な資金を準備してあげる方法としては、この他に経営者が個人契約で終身保険に加入して、後継者(法定相続人に限る)を死亡保険金の受取人に指定する方法もあります。

長期平準定期保険との使い分け

終身保険と長期平準定期保険の使い分け

終身保険と同じように、相続による事業承継の対策に活用法できる保険として、長期平準定期保険があります。

この長期平準定期保険は、保険期間が最長で100歳までなので、経営者がそれより長生きしてしまった場合には保険金が支払われません。そのため、確実性という意味では終身保険よりもほんの少し劣るかも知れません。ただ、100歳を超えて長生きし、しかも引退せず現役で経営者として活躍する可能性はごくわずかでしょう。

また、長期平準定期保険は、相続による事業承継だけでなく、生前に株式を贈与する形での事業承継にも活用できます。そのため、終身保険よりも使い勝手が格段に良いのです。

どういうことかというと、長期平準定期保険は保険料の1/2が損金に算入されるので(残りの1/2は資産計上)、会社の資産を引き下げ、株式の価格を引き下げることができます。これによって、後継者の贈与税の負担を軽くすることができます。そして、解約返戻金を受け取れば益金に算入されるため(益金=解約返戻金額-保険料総額の1/2(資産計上分))、そこから経営者の退職金を支払って損金に算入しても大赤字が計上されることはありません。つまり、長期平準定期保険は、株価を下げることによって、株式の生前贈与を受ける後継者の贈与税の負担を軽くするとともに、引退する経営者の退職金を準備するという活用もできるのです。

このことからすれば、長期平準定期保険は、たとえば、「相続による事業承継」と「生前贈与による事業承継」とどちらにしようか決めかねている場合、あるいは状況に応じて両睨みで考えているような場合に向いているといえます。

したがって、法人が敢えて終身保険を活用するメリットがあるのは、「生前贈与による事業承継」をしないことが確実で「相続による事業承継」だけを考えていると断言できる場合に限られると言えるでしょう。

事業保障の資金

死亡保険金を、経営者の身に万一のことがあった場合の事業保障に活用することは、可能です。

つまり、死亡保険金を受け取り、信用不安による業績不振等の穴埋めに充てるのです。

ただし、敢えて終身保険を選ぶメリットはありません。つまり、上で説明した4つのデメリットのうち、「1.保険料が割高なので会社のキャッシュフローを圧迫するリスクがある」「2.保険料は全額が資産に計上され、税負担が一切軽減されない」を考慮すると、他の保険商品、特に長期平準定期保険よりもデメリットが大きいと言えます。唯一、長期平準定期保険を上回るメリットは、どれほど長生きしても必ず保険金が支払われることだけ(長期平準定期保険は100歳まで)です。したがって、上で紹介したように、相続での事業承継」への対策を兼ねて加入することが合理的だと言えます。

2-2.解約返戻金目当てでの加入はデメリットだらけ

終身保険の解約返戻金は、経営者の退職金の資金等に充てることが考えられます。

しかし、これも、保険商品の中で敢えて終身保険を選ぶメリットはありません。それどころか、デメリットばかりが目立ちます。

どういうことか説明しましょう。ここで、先ほど説明したメリット1つとデメリット4つを思い出してください。

〈終身保険の法人加入のメリット〉

  1. 加入していればいつかは必ず死亡保険金が支払われる

〈終身保険の法人加入のデメリット〉

  1. 保険料が高額なので会社のキャッシュフローを圧迫するリスクがある
  2. 保険料は全額が資産に計上され、税負担が一切軽減されない
  3. 払込期間終了前に解約すると、支払ってきた保険料が目減りする
  4. 解約返戻金を受け取って支出すると多額の赤字を出してしまうリスクが大きい

これらのうち、唯一のメリットは「死亡保険金」に関するものなので、「解約返戻金」の活用とは直接関係がありません。

また、保険料を支払って解約返戻金を積み立てる段階、解約返戻金を受け取って支出する段階のいずれをとってみても、デメリットばかりが目立ちます。

したがって、死亡保険金ではなく解約返戻金の活用が目当てで保険に加入するのであれば、敢えて終身保険を選ぶことはおすすめできません。他の長期平準定期保険等の方がリスクが少ないと言えます。

3.終身保険を活用する場合の鉄則

以上を踏まえると、終身保険を活用する場合の鉄則は以下の2つです。

鉄則1|保険料を支払い続けられる十分なキャッシュフローが確保できること

終身保険は、加入している限り必ず死亡保険金が受け取れるし、解約すればタイミングによって保険料総額を上回る解約返戻金が受け取れて貯蓄性があることから、保険料は割高です。

しかも、特に有期払いの場合、保険料が支払えなくなったなどの事情で途中解約してしまうと、それまで支払った保険料の合計額よりも低い額しか受け取れず、損をすることになります。

そのため、保険料を支払い続けることができる程度の十分なキャッシュフローが重要です。

なお、言うまでもないことですが、キャッシュフローを確保するためには、ある程度業績が好調に推移する必要があります。

鉄則2|死亡保険金で「相続による事業承継対策」をするという明確な目的があること

終身保険に法人加入する場合、考えられる最大かつ唯一のメリットは、加入している限り必ず死亡保険金が受け取れることです。そして、このメリットは、他の法人保険にはないものです。

そのため、この終身保険の最大かつ唯一のメリットを活かした最も有効な活用法は、死亡保険金で「相続による事業承継」の場合に後継者から自社株を買い取る資金を準備すること、ただ1つと言えます。

この目的がなく、単に事業保障目的で加入するのであれば、他の保険の方が効率的なので、事業保障目的はあくまで「事業承継対策のついでに」というのが合理的です。

「状況によっては生前に株式を贈与することも考えたい」という場合には長期平準定期保険の方が向いています。

まとめ

終身保険に法人で加入する場合について、デメリットが大きいことと、それでも敢えて活用法を考えるならばどんな方法があるか、そして、活用する場合に守るべき鉄則を説明してきました。

多くの法人保険の中で終身保険を敢えて選んで加入するのであれば、終身保険以外にないメリット、つまり「死亡保険金をいつかは必ず受け取れる」という利点を最大限に活かし、かつ、デメリットがあまり前面に出てこないような活用法をするべきなのです。そして、そう考えると、終身保険の活用法はかなり限られていると言えます。

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出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や企業関係法、民法、行政法といった分野について幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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