がん保険は「節税」に有効?経営者が知っておくべき税制改正ポイント

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※この記事における法人保険の保険料の損金算入割合等に関する税務上の扱いに関する記載内容は、2月14日以前に保険会社が提示していた見解を前提としております。

現在、国税庁が、以下の条件を満たす保険契約において、新たなルールを設けることを検討しているもようです。

  • 被保険者が役員・従業員
  • 保険期間が3年以上の定期の生命保険、第三分野の保険(医療保険・がん保険等)
  • 満期返戻金がなく、保険料が給与とならない
  • 解約返戻金のピーク時の返戻率(解約返戻金額÷保険料総額)が50%超となる

現在、ほとんどの保険会社が、以上の条件をみたす法人保険の販売を順次停止しております。新規加入を検討する場合は、保険料の損金算入が認められないリスクも考えられますので、くれぐれも慎重な判断をお願いいたします。

中小企業の経営者などのあいだで全額損金算入できるということで「節税商品」と言われ人気の高かった、いわゆる「法人向けがん保険」は、2012年4月27日に国税庁より税制改正の発表があり、「2分の1損金」に変更となりました。

本来、この保険は事業主や社員の治療費など福利厚生や事業保障を目的とするものでしたが、条件を満たせば保険料を全額損金扱いできたため、課税対象となる利益を保険料に回して税負担を軽減することができました。

しかし、税制改正で「2分の1損金」扱いとなったことにより、その効果は大きく薄れたといえます。

この記事では、事業保障及び税負担の軽減の観点から、「法人向けがん保険」の有用性について考えてみたいと思います。

1.法人向けがん保険とは?

がん保険はがん限定の医療保険です。がんと診断された場合に、その入院費用、手術費用、通院費用などが保障されます。また、ほとんどの保険会社でがんと診断された場合の一時金の給付があります。

「法人向けがん保険」は社長や役員が加入するケースが多いのですが、この場合事業保障の意味合いが強く、個人向けがん保険と比べて保障内容がかなり手厚くなっています。

また、保険料総額の80~90%程度の解約返戻金が受け取れて、これを退職金の資金にするという活用もできます。

【法人がん保険の保障内容の概要】

かつては全額を損金に算入でき、その分税負担を軽くする効果がありました。表現が適切か否かは別として、「節税商品」としてもてはやされていました。

2.法人向けがん保険の税制改正について

2012年4月27日に国税庁から、以下の通り、「法人向けがん保険」の取り扱いに関する税制改正が発表されました。
法人がん保険の取り扱いに関する税制改正

詳細は国税庁のホームページの通達資料をご覧ください。

この通達を簡単に要約するとそれまで全額損金算入できた法人向けがん保険の保険料は、2012年4月27日の税制改正後は、2分の1のみ損金算入というルールに変更されたということです。

また、通達によると「平成24年4月27日以後の契約に係る『がん保険』の保険料について適用する」と書かれています。2分の1損金算入というルールは2012(平成24)年4月27日以後が契約日となる新規契約分に対して適用されることになります。そのため、2012年4月26日以前に契約されたがん保険に関しては、2012年4月27日以降も全額損金処理が可能となります。

この適用方法は、2008年の2月28日付けで税制改正のあった逓増定期保険と同様に、改正前に契約された方には税制改正による損失が生じないような形となっているといえます。

このような税制改正の実績を覚えておくと、今後、税制改正のリスクの検討が必要な法人保険について、契約するか否かを決めるの際に参考になるかもしれません。

3.「法人向けがん保険」を選ぶとすればどんな理由が考えられるか?

2分の1損金となった「法人向けがん保険」については、保険料の支払による税負担の軽減の効果が小さくなったといっても過言ではないでしょう。

そのため、同じ「2分の1損金」でも、返戻率が高い保険(長期平準定期保険、逓増定期保険等)を選択する傾向があるようです。

現時点で法人ががん保険を契約するとすれば、経営者や役員など会社に大きな収益をもたらす従業員にがんが発症した場合、早い段階で資金準備ができるという点は大きなメリットだと考えられます。

3.1.診断された時点で給付請求できるがん診断給付金

医療技術の進歩や早期発見により、がんで死亡するケースは以前と比べて減少しているとはいえ、職場復帰するまでには相当の期間を要します。
がん保険の保障内容の1つに「がん診断給付金」というものがあります。

この給付金は「がん」と診断された時点で給付請求できるため、治療が終わるのを待たずに給付金を受取ることが可能です。

以下の表を見ると、がんは現在、5年生存率の高い病気となっていることがわかります。

【がん5年生存率(男性2006~2008年診断例)】

(参照元:国立がん研究センター「最新がん統計/5年相対生存率」)

特にがんの中でも可能性の高い、胃がん、大腸がん、前立腺がんの生存率は50%以上で、前立腺がんの5年早退生存率は9割以上となっていて、非常に高い確率で5年以上生きられることがわかります。

この数字を見ても、死亡保障のみの逓増定期保険などと違い、がんと診断された段階で資金を準備できるがん保険は代表者不在時の売上の減少等のリスクヘッジとしても有効だといえます。

法人がん保険は、保障が手厚いだけでなく、がんと診断されて非常に早い段階で資金準備ができるという理由からも事業保障目的で活用できる商品でしょう。

3.2.申し込みが簡単

がん保険は、健康診断を必要とせず、告知で申込みが可能です。逓増定期保険のような死亡保障の保険は、保障額も高額なケースが多いため、申込みには医師の診査もしくは健康診断書のコピーが必要となります。そういった手間がかからずに申込が簡単ということも、ひとつのメリットいえます。

4.がんに罹患する確率は?

独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターのデータによると、涯でがんに罹患する確率、つまりがんだと診断される確率は、男性62%(2人に約1人)、女性47%(2人に約1人)です。

【生涯がん罹患率(2014年データにもとづく)】

(参照元:国立がん研究センター「がん最新統計/がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2014年データに基づく)」)

このデータを見ても、がん保険の活躍する可能性は高いといえます。

まとめ

法人向けがん保険は2012年4月27日に保険料の扱いが全額損金算入から2分の1損金算入に変更となりました。そのため、税負担を軽減させるというメリットは半減したといえます。

しかしながら、現在、成人の多くが、がんにかかる可能性が非常に高い点、また、がんと診断されたのちの5年生存率の高さから考えて、がんと診断されてすぐに最大約1800万円の「がん診断給付金」を準備できるがん保険は魅力的だといえます。さらに、がん手術給付金、がん入院給付金を合わせると最大2000万円程度の資金を比較的短期間で準備できることになります。

また、保険料が2分の1損金扱いということと、解約返戻金の返戻率が90%近いということは、今もなおそれなりのメリットがあります。

法人のニーズによっては、今なお、事業保障と税負担の軽減の観点から検討に値する保険だといえるのではないでしょうか。

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出岡 大作

出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や法律といった分野から、自然科学の分野まで、幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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