終身保険とは?今だから知っておきたい本当の活用法と選び方

終身保険とは、保険料が掛け捨てではなく、貯蓄性があるタイプの生命保険です。

死亡保障が一生涯続く上に、長く加入した後で適切なタイミングで解約すれば、解約返戻金という形で、保険料総額を超えるお金が戻ってくるというしくみになっています。

ただし、終身保険には大きく分けて3つの種類があり、それぞれ活用上のポイントが異なります。

この記事では、まず、終身保険の2つの活用法を解説します。その上で、3種類の終身保険(低解約返戻金型終身保険、米ドル建て終身保険、変額終身保険)について、それぞれの特徴と活用上の注意点をお伝えします。

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保険の教科書 編集部

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私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。

1.終身保険は保障より貯蓄性重視

終身保険は、自分の身に万が一のことがあった際、遺族が死亡保険金を受け取れる生命保険の1つですが、保険料が掛け捨てではなく、貯蓄の機能があります。

長期間加入した後で適切なタイミングで解約すると、それまで支払った保険料総額より多くの解約返戻金を受け取れるものが多くなっています。

ただし、生命保険としての保障の役割は弱いと言わざるを得ません。自分の身に万一があった時に遺族が受け取れる死亡保険金の額は、一般的に数百万円程度にとどまります。これでは、遺族の生活費等をまかなうのには全然足りません。

終身保険は、生命保険としてはせいぜい整理費用(葬儀代など)を賄うことしかできません。

もしも、生命保険の役割を重視して選ぶならば、定期保険や収入保障保険といった掛け捨ての保険をおすすめします。

これらの保険は、終身保険よりはるかに安価な保険料で数千万円単位の死亡保険金を確保することもできます。なので、万一の場合の遺族の生活費等を確保したいのであれば、こちらをおすすめします。

詳しくは「定期保険と終身保険|2つの保険を徹底比較」をご覧ください。

このことからすれば、終身保険は、死亡保障よりも貯蓄をメインの目的として利用する生命保険といえます。

2.終身保険の主な活用法2つ

終身保険を貯蓄に利用する目的としては、主に以下2つが挙げられます。

  • 老後の生活費を積み立てる
  • 子どもの学資を積み立てる

以下、それぞれの内容について簡単に紹介します。

2-1.老後の生活費を積み立てる

終身保険を加入する目的として、最も多いのはこちらです。

金融庁の「老後の資金が2,000万円足りない」という内容の報告書が問題になったことは記憶に新しいところです。

その是非はさておき、公的年金だけに頼らず、老後に備えてお金を貯める必要があることは誰にも異論はないと思います。

その点、終身保険は、働き盛りの年代から20~30年程度加入し、定年を迎える時期以降に解約して解約返戻金を受け取るという活用法があります。

2-2.子どもの学資を積み立てる

次に、子どもの将来の学資を積み立てるために活用する方法があります。

以前は、最も活用されていたのは学資保険でした。しかし、最近の日本政府のマイナス金利政策の影響で、学資保険の利率は大きく低下してしまっています。

そこで、学資保険の代わりに活用されるようになったのが、終身保険です。

「10年」等の比較的短い期間で保険料を支払い終え、子どもが大学等へ入学する頃まで寝かせておいてから解約すれば、保険料総額よりも多くの解約返戻金を受け取れるのです。

2-2-1.途中で貯蓄の目的を切り替えることもできる

終身保険は、学資保険よりも柔軟な活用ができます。なぜなら、後で積み立てたお金の使い道を変更することもできるからです。

たとえば、大学の受験費用や入学費用を確保する目的で、終身保険に加入したとしましょう。

しかし、実際に子どもが高校や大学へ入学する時点では、手元に十分な貯蓄があり、終身保険を使う必要がなくなるということも考えられます。

そんな場合には、あえて解約せずにそのまま寝かせ続ければ、お金をさらに増やすことができます。

それを、子どもの結婚資金や自分たちの老後資金に充てることができます。

3.終身保険の3つの種類それぞれの特徴と選び方

終身保険には大きく分けて3つの種類があり、それぞれ、特徴や積立の効率が異なります。

ここでは参考までに、主な終身保険の種類とそれぞれの特徴と選び方を、契約例と合わせて紹介します。

なお、ここでは、老後資金の積立を目的として加入することを想定していますが、子どもの学資を積み立てる場合も基本的な考え方は同じだと思っていただいて結構です。

3-1.低解約返戻金型終身保険(円建て)|貯蓄の効率が低下も根強い人気

低解約返戻金型終身保険は、保険料の払込が完了するまでの期間、解約返戻金の額を低く抑えることによって、保険料を安くするとともに積立の効率を高めたタイプの終身保険です。

まず、保険料の払込が完了するまで、解約返戻金の金額が支払った保険料総額を大きく下回り、返戻率が低くなります。イメージとしては最高でも70%程度です。

一方で、払込完了後にいきなり返戻率が高くなります。返戻率が100%を超え、保険料総額より多くの解約返戻金を受け取れるようになるものがあります。

低解約返戻金型終身保険は、加入時に解約返戻金の返戻率が決まっています。たとえば、30年後の返戻率が105%であれば、後でそれより減額されることはありません。

その代わり、貯蓄の効率は、後述する2つの終身保険より高くないという特徴があります。

「利率がそれほど高くなくてもいいから元本割れを避けたい」といった場合には適しています。ただし、円の価値が大幅に下がってしまった場合、実質的な意味での元本割れになるリスクは否定できません。

その辺りのことについては詳しくは「低解約返戻金型終身保険の活用法とメリット・デメリットの検証」をご覧ください。

3-1-1.低解約返戻金型終身保険(円建て)の契約例

それでは、どのくらいお金が貯まるか、A生命の低解約返戻金型終身保険の契約例で見てみましょう。

  • 契約者:35歳男性
  • 保険料払込期間:60歳払込
  • 死亡保険金:500万円
  • 保険料:月額13,565円

この場合の解約返戻金の返戻率の推移は以下の通りです。

経過年数 保険料累計(円) 解約返戻金(円) 返戻率
5年 813,900 544,000 66.80%
10年 1,627,800 1,158,000 71.10%
15年 2,441,700 1,765,500 72.30%
20年 3,255,600 2,394,500 73.60%
25年(60歳) 4,069,500 3,052,000 75.00%
26年(61歳) 4,069,500 4,381,500 107.70%
27年 4,069,500 4,402,500 108.20%
28年 4,069,500 4,423,500 108.70%
29年 4,069,500 4,444,500 109.20%
30年(65歳) 4,069,500 4,465,000 109.70%
31年 4,069,500 4,486,000 110.20%
32年 4,069,500 4,507,000 110.80%
33年 4,069,500 4,527,500 111.30%
34年 4,069,500 4,548,000 111.80%
35年 4,069,500 4,568,500 112.30%

ご覧の通り、払込が完了した翌年(26年後・61歳時)に返戻率が一気に107.70%まで上がっています。

30年後(65歳の時)まで待つと、返戻率が109.70%となっています。

110%近くにまで増えますが、長年加入し続けなければならないことと、払込期間中で解約したらせいぜい70%程度しか戻ってこないことを考慮すると、積立の効率が優れているとまでは言えません。

このように、低解約返戻金型終身保険は、現在では積立の効率が大幅に低下していることは、覚えておく必要があります。その上で、保険料を払い込み続けられる自信があり、かつ、返戻率が曲がりなりにも100%を超えることを重視するのであれば、選ぶ余地があると言えます。

3-2.利率のよい米ドルで貯蓄を行う「米ドル建て終身保険」

次に、米ドル建て終身保険です。

米ドル建て終身保険は、保険料、保険金、解約返戻金の額が米ドルで設定されている終身保険です。

アメリカの金利は日本よりもはるかに高いので、低解約返戻金型終身保険(円建て)より積立の効率が良くなっています。

これから、実際の契約例を紹介し、米ドル建て保険の最も心配かつ重要なリスクである「為替リスク」の内容と対処法について、簡単にお伝えします。

なお、詳細については「米ドル建て終身保険とは?2つの有効活用法と注意点」をご覧ください。

3-2-1.米ドル建て終身保険の契約例

紹介するのはB生命の米ドル建て終身保険の契約例です。

  • 契約者:35歳男性
  • 保険料払込期間:60歳払込
  • 死亡保険金:5万米ドル(1米ドル=110円で550万円)
  • 保険料:月額117.00米ドル(1米ドル=110円で12,870円)

この場合の解約返戻金の返戻率の推移は以下の通りです。

経過年数 保険料累計(ドル)   解約返戻金(ドル) 返戻率 
5年 7,020.00 4,549.40 64.8%
10年 14,040.00 12,005.89 85.5%
15年 21,060.00 20,514.59 97.4%
20年 28,080.00 30,191.55 107.5%
25年(60歳) 35,100.00 41,247.61 117.5%
30年(65歳) 35,100.00 46,865.73 133.5%
31年 35,100.00 48,089.82 137.0%
32年 35,100.00 49,353.13 140.6%
33年 35,100.00 50,656.02 144.3%
34年 35,100.00 51,992.37 148.1%
35年 35,100.00 53,363.46 152.0%

解約返戻金の返戻率は25年後(60歳の時)に117.5%、30年後(65歳の時)に133.5%にも達します。

低解約返戻金型終身保険(円建て)が26年後(61歳の時)に107.7%、30年後(65歳の時)でさえ109.7%にとどまっていることからすると、米ドル建て終身保険の方が圧倒的に積立の効率が良いと言えます。

3-2-2.米ドル建て終身保険のリスクとリスクの軽減方法

ただし、米ドル建て終身保険にもリスクがあります。特に重要で知っておかなければならないのが「為替リスク」と呼ばれる、為替相場の変動によるリスクです。

まず、為替リスクがどのようなものか、イメージしやすいように説明します。

以下は、1,000万円を米ドルに換金し、その後再び円に換金し直す時のイメージです。

日本円・米ドル・為替のイメージ

米ドルを「円安ドル高」になってから円に換金すると円の金額が多くなるのに対して、「円高ドル安」になってから換金すると金額が少なくなります。

この円高ドル安のリスク、つまり、

「円をドルに換金⇒円高ドル安になる⇒ドルを円に換金」

という過程で払い込んだお金(円)が目減りしてしまうリスクを、「為替リスク」と言います。

ただし、この為替リスクには対処法があります。以下、3つ紹介します。

・保険料を払い込むタイミングを細分化してリスクを平準化する

米ドル建て終身保険の保険料は、米ドルで一定の額に定められています。それを、年払いであれば毎年、月払いであれば毎月、その都度、その時の為替レートで円に換算した額を払い込み続けていきます。

払い込む額(円)は、円高ドル安の時は少なく、円安ドル高の時は多くなります。

したがって、長い目でみれば、リスクが平準化されていきます。

(イメージ)

・長期間加入し続けて返戻率を高める

しかも、終身保険は長く加入し続けるほど返戻率が高まります。

特に米ドル建て終身保険は、ドルで計算した積立の効率が高いため、長く加入し続けることで、増えた分によって円高ドル安による損失をカバーできる可能性が高くなっていきます。

・為替の状況が落ち着くまで寝かせておく

このように、為替リスクは、

  • 保険料の払込のタイミングを細分化してリスクを平準化すること
  • 長期間加入し続けけて返戻率を高めること

によって、かなりカバーできる可能性が高いものです。

しかし、そうは言っても、解約して解約返戻金を受け取る時になって、いきなり極端な円高ドル安に振れてしまう可能性も、絶対にないとは言い切れません。

その場合は、すぐにお金が必要ないのであれば、為替の状況が好転するまで待つことによって、為替リスクを軽減することができます。

ただし、これだと、本当に差し迫ってお金が必要な時に解約できない可能性があります。

私は、これこそが、本当の意味で覚悟しておくべき為替リスクだと考えています。

3-2-3.【補足】米ドル資金の所有で円の価値が下がるリスクに備えられる

一般的な意味での「為替リスク」は、円高ドル安のリスクだと言えます。

しかし、「円安ドル高」のリスクも知っておく必要があります。円安ドル高は日本円の価値が低くなることを意味します。

そうなると、物資の多くを輸入に頼っている日本では、物価の高騰を招くおそれがあります。これも、逆の意味での「為替リスク」だと言うことができます。

その点、米ドル建て終身保険では、円安ドル高になると、解約返戻金として受け取れる日本円の金額が高くなります。その結果、円安ドル高のリスクを軽減できるという効果が期待できます。

3-3.保険会社による運用実績で受け取れる保険金額が決まる「変額終身保険」

最後に、変額終身保険です。

変額終身保険は、契約者が支払った保険料の一部が国内外の株式・債券などで運用されるタイプの商品です。

資金の運用先に関しては、保険会社が用意した複数のメニュー(特別勘定)の中から、任意のものを選ぶことができます。

特別勘定は1つだけに絞ることも、複数組み合わせることも、途中で入れ替えることもできます。

死亡保険金や解約返戻金の金額は、特別勘定の運用実績によって決まります。運用実績が良ければ、返戻率が100%を大きく上回る可能性があります。

ただし、死亡保険金は最低額が保障されますが、解約返戻金の返戻率は、運用実績によってマイナスになるリスクもあります。

変額終身保険のリスクとその対処法

このように、変額終身保険は、特別勘定の運用実績によって受け取れる解約返戻金・死亡保険金の額が変動します。そして、解約返戻金の額については元本割れしてしまうリスクがないわけではありません。

しかし、そのリスクには対処法があります。以下、主なリスク軽減のための方法を4つ紹介します。

・過去20年間で高い実績を挙げている商品と運用方法を選ぶ

まず、加入時に、過去20年間の特別勘定の運用実績をチェックすることです。

運用実績については、保険会社のホームページやパンフレットなどで確認することができます。

特に、リーマンショックがあった2008年前後の動きが重要です。いったん運用実績が落ち込んでいても、その後に大幅な回復を実現し、全体として実績が良好であれば、将来も高い実績を見込めると考えて良いでしょう。

それに加え、資産の運用方法の方向性が分かりやすく、合理的であることも重要です。

・長期間加入し続けるによりリスクを分散する

変額終身保険は20年・30年という長期にわたって運用される商品です。

その間には、世界的な経済状況が悪くなったり回復したりもします。

重要なのは、経済状況が良くない時も一定額を払い込み続けることです。

というのも、株式が暴落している時は、同じ額でいつもより効率よく投資することができるため、後で経済が好転すれば、運用実績がさらに良くなっていく可能性が高くなります。

したがって、変額終身保険は、長期間加入することでリスクを抑え、メリットを最大化することができる可能性が高いものと言えます。

・短期的な騰落に一喜一憂しない

このように、変額終身保険は、短期的には一時の暴落で実績が大きく悪化することもありえます。

しかし、その時に慌てて解約してしまうと、後で経済が経済が好転した時のメリットを受けられません。

短期的な騰落に一喜一憂せず長期間加入し続けることが重要です。

・保険会社の情報をチェックしたり担当者のアドバイスを聞いたりする

変額終身保険の運用実績は、保険会社のホームページなどから随時チェックすることができます。

運用実績を時々確認して、必要に応じ、特別勘定の組み替え等をするべきか否かについて担当者にアドバイスを求めることもできます。

おまけ|相続税対策としての終身保険の活用(一時払い終身保険)

終身保険を相続税対策に活用する方法があります。これは「一時払い終身保険」という特殊なタイプを使うものです。

「終身保険」と名前はついていますが、決して「終身保険の保険料の払い込み方法を『一時払い』にしたもの」ではありません。紛らわしいのですが、「一時払い終身保険」は、ふつうの終身保険とは完全に別モノの金融商品です。

極論すれば、「終身保険」に名を借りた相続対策のための金融商品と言っても過言ではありません。

一時払い終身保険では、保険料の額と死亡保険金の額がほぼ同額くらいに設定されています。これを、相続税対策に活用法するのです。

どういうことかというと、生命保険による保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となりますが、相続人が受け取る生命保険金には「500万円×法定相続人数」の非課税枠が設けられています。

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人だと、死亡保険金額のうち、

500万円×3名=1,500万円

が非課税となります。

したがって、もし「保険料1,500万円、保険金1,500万円」の一時払い終身保険に加入して、保険料1,500万円を払い込めば、その1,500万円を相続税の対象となる財産から外すことができます。

このように、一時払い終身保険は、まとまった額を「生命保険の保険料」という形で保険会社に預けておくことで、相続財産を減らす効果があります。

なお、この一時払い終身保険も、マイナス金利政策が長引く中で、日本の「円建て」のものは多くが販売停止になるか、利率が著しく低くなっています。そこで、「米ドル建て」の一時払い終身保険が選ばれるようになってきています。

詳しくは、「一時払い終身保険の2つの活用法と、円建て・外貨建ての比較」をご覧ください。

まとめ

終身保険は、生命保険の1つですが、保険料が掛け捨てではなく、貯蓄の機能があります。

老後の資金の積立や、子どもの学資の積立(学資保険代わり)に活用されます。

終身保険のうち、これまで最も活用されてきたのは円建ての「低解約返戻金型終身保険」ですが、長引くマイナス金利の影響で、積立の効率は優れているとは言えなくなっています。そこで活用されるようになってきているのが、米ドル建て終身保険と変額終身保険です。

これらはいずれもリスクがあるものの、それぞれのリスクの内容と対処法を知った上で加入すれば、お金を効率よく増やせる可能性が高いものです。

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