合同会社の代表とは、どういうものでしょうか。
株式会社の代表取締役には、会社の業務執行権や会社の代表として対外的な契約を結ぶ権限を持っています。
これに対し、合同会社の場合、原則、全ての「出資者=社員」に、株式会社の代表取締役と同じような「業務執行権」と「代表権」があります。
しかし、定款で定めることで、業務執行権のある社員(業務執行社員)と業務執行権のない社員に分けることが可能です。
また、業務執行社員の中から、会社を代表する代表社員を定めることもできます。
今回はこの代表社員について、
にフォーカスしてお話ししていきます。
合同会社での起業を考えている方は、しっかり把握した上で、代表社員を立てるか考えましょう。
The following two tabs change content below.
私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。
1.代表社員とは
合同会社では、「出資者=社員」であるため、出資していない人が経営に参加することはありません。
逆に言えば、出資者は全員経営に参加する権利を持ちます。
合同会社では、すべての社員が会社を代表して、株式会社の代表取締役のように業務執行権や対外的な契約を行う権利を持っています。
しかし、すべての社員が代表権を持っている状態では、取引相手などを混乱させてしまう可能性がありますよね。
また、社員それぞれがいろいろな契約を各所で行っていたら、知らぬ間にトラブルが起きかねません。
そこで、合同会社では会社を代表する社員を代表社員として選出します。
その名の通り、業務執行社員の代表であるというわけです。
代表社員や業務執行社員は登記が必要になります。
代表社員がいる場合は、代表社員の氏名・住所と、業務執行社員の氏名が謄本に記載されます。
もし代表社員がいない場合、業務執行社員全員の氏名・住所の記載が必要です。
1.1.代表社員は複数置くことも可能
業務執行役員を全員代表社員にするなど、合同会社で複数の代表社員を置くこともできます。
実際に、代表社員が2名いるなど、複数代表制をとる合同会社も珍しくありません。
複数の社員が経営のノウハウを持っている場合などは、代表社員を複数置くケースが多いようです。
しかし、代表社員が複数いるということは、先に述べた契約上のトラブルが起こる可能性があったり、意思決定のスピード感が削がれてしまう可能性もあります。
また、それぞれの部署に代表社員を置くことで、業務の進行をスムーズにしている場合もあります。
2.代表社員になるための条件
代表社員には、社員であれば誰でもなることができます。
これは、株式会社では定められている欠格事由(社員になることができない人の規定)が、合同会社では定められていないためです。
なので、欠格事由に当てはまり、株式会社の取締役としてはふさわしくない人であっても、合同会社の代表社員になることができます。
また、合同会社の代表社員には、「法人(会社など)」でもなることが可能です。
よって、複数の企業が共同で出資を行い会社を設立したい場合や、完全子会社を設立したい場合などに、合同会社が選ばれます。
もちろん「法人」が会社の業務を行うことはできませんので、実際には業務を執行するための「職務執行者」を選ぶことになります。
この「職務執行者」はもちろん「個人」です。
代表社員はあくまでも法人ですが、職務執行者に合同会社の経営を任せることになります。
職務執行者は、代表社員である法人の代表者や役員でも構いませんし、まったく関係のない第三者でも構いません。
代表社員と同じく、職務執行者も誰でもなることができます。
よって、合同会社の実情に合わせて適任者を選ぶことになるでしょう。
法務局へ登記申請を行う際には、職務執行者を選任したことを証明する書類と職務執行者がその就任を承諾したことを証明する書類が必要です。
なお、職務執行者も代表社員と同じく、住所及び氏名が登記事項となっています。
3.代表社員の権限について
代表社員が持つ権利は「業務執行権」と「代表権」です。
重要になってくるのは「代表権」で、もし複数人代表社員を置く場合、それぞれが「代表権」を持っている事によって、とある問題が起こる場合があります。
それが「独断専行」です。
つまり、1人の代表社員が、他の代表社員に相談することなく、取引先と契約を結んでしまった場合などにあたります。
もしも取引先がそういった事情を知らなかった場合、問題ですよね。
実はこういった独断での契約は法律上では止めることが出来ず、仮に契約が完了してしまった場合、取引相手に契約破棄の申し入れをしても、相手がそれを拒否した場合は破棄できません。
(最高裁昭和38年9月5日判決参照(株式会社の事例))
その上で、取引相手に不利益が起こるようなことがおきた場合は、その損害を連帯責任で負わなければならないのです。
内部から見ると、代表社員の独断専行は相当困る事案なのがよくわかりますね。
こういったことの無いよう、事前に定款でルールを定めておくなどして、対策しておきましょう。
まとめ
合同会社の場合、原則、全ての「出資者=社員」に、株式会社の代表取締役と同じような「業務執行権」と「代表権」があります。
それを取りまとめる意味で代表社員を立てる会社は多く、場合によっては複数任命しているという所も珍しくありません。
代表社員は社員であれば誰でもなることができます。
個人だけでなく法人でも代表社員になることができ、複数の企業が共同で出資を行い会社を設立したい場合や、完全子会社を設立したい場合などに利用されます。
その場合は「職務執行者」を任命することとなり、法人に変わって業務執行を行います。
代表社員を複数置いた場合に最も問題になりやすいのが、「独断専行」です。
代表が独断で契約等を結んでしまった場合は、取引先の承認がなければ契約破棄が出来ません、
また、契約上で取引相手に不利益があった場合、責任は社員全体の連帯責任になっていしまいますので、代表社員を複数置く場合は、定款でしっかりルールを定めるなどして、対策しておきましょう。
やはり株式会社と比べ、様々な面で融通が効くのが合同会社の特徴です。
代表社員の仕組みをしっかり理解しつつ、有意義な会社経営を行いましょう。