緩和型医療保険は必要?メリット・デメリットと賢い入り方

緩和型医療保険は、持病がある方や、過去に大病を患ったことのある方でも入りやすい保険です。

持病の悪化や過去の症状の再発が心配で、緩和型医療保険を検討したいというご相談はたいへん多いです。ほとんどの方が、ご自身とご家族の生活が脅かされるリスクを切実に感じていらっしゃいます。

ただし、緩和型医療保険が、持病・既往症のある全ての方に向いているわけではありません。

なぜなら、一般の医療保険よりも保険料も割高であるなど、多くの注意点があるからです。そこで、メリットとデメリットの両方を理解した上で加入を検討する必要があります。

この記事では、緩和型医療保険への加入をお考えの方のために、緩和型医療保険の内容とメリット・デメリットをご説明いたします。

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保険の教科書編集部

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1.緩和型医療保険とは

まず、緩和型医療保険とはどんなものか、一般の医療保険と比較しながらお伝えします。

緩和型医療保険の基本的な保障内容は、一般の医療保険と同じように、入院した時と手術を受けた時に給付金を受け取れるというものです(※)。

ただし、保障内容は一般の医療保険よりも限られていてシンプルです。後ほど詳しくお伝えしますが、たとえば特約はバリエーションが少なく、選択肢が狭くなっています。

緩和型医療保険に加入するのであれば、こういった一般の医療保険との違いを理解した上で、メリットとデメリットの両方を考慮することが不可欠です。

その観点から考えると、「持病の悪化や過去の病気の再発による入院・手術のリスクに備えたい」というだけでなく、以下の条件を満たす必要があります。

  • 貯蓄が少なく、高額療養費制度があることを考えても医療費が心配
  • 一般の医療保険にトライしたが入れなかった、もしくは不利な条件が付いた
  • 割高な保険料を支払う余裕がある

どういうことでしょうか。まず、緩和型医療保険のメリット・デメリットについてお伝えしましょう。

※医療保険のしくみについては詳細は『誰でも簡単に理解できる!医療保険の仕組みについて解説』をご覧ください。

2.緩和型医療保険のメリット・デメリット

2.1.緩和型医療保険の2つのメリット

緩和型医療保険のメリットは以下の2つです。

  1. 持病の悪化・過去の病気の再発も、一定範囲で保障される
  2. 診査は告知書の質問項目が少なく「はい」「いいえ」で答えるだけ

メリット1|持病の悪化・過去の病気の再発も原則として保障される

緩和型医療保険は、持病が悪化した場合や、過去の病気が再発した場合も原則として保障されます。保障されないのは、加入の時点で医師に入院・手術等をすすめられていた場合です。

メリット2|診査は告知書の質問項目が少なく「はい」「いいえ」で答えるだけ

緩和型医療保険に限りませんが、保険加入には健康状態などに関する診査があります。通常は医師の審査などは不要で、告知書を提出します。

緩和型医療保険の告知事項は、一般の医療保険よりも少なく非常にシンプルです。保険会社によりますが質問項目は3~5項目だけで、「はい」「いいえ」のみで回答し、詳細に申告する必要はありません。

以下は、ある保険会社の緩和型医療保険の告知書の告知事項です。4つの項目が全て「いいえ」ならば加入できます。

なお、これはあくまで一例で、保険会社によってはこれよりもさらに告知事項が限られているものもあります。

  • 過去2年以内に、病気やケガで入院をしたこと、または手術を受けたことがありますか?
  • 過去5年以内に、がん・悪性新生物(肉腫・白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫を含む)および上皮内新生物(上皮内がん)で、入院をしたこと、または手術を受けたことがありますか?
  • 現在、がん・悪性新生物(肉腫・白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫を含む)および上皮内新生物(上皮内がん)、慢性肝炎、肝硬変で、医師の診察・検査・治療・投薬を受けていますか?
  • 最近3ヶ月以内に、医師の診察または検査により入院または手術をすすめられたことがありますか?

緩和型医療保険では、これらの質問に対する答えが全て「いいえ」ならば加入することができます。

2.2.緩和型医療保険の4つのデメリット

次は緩和型医療保険のデメリットを確認していきましょう。

デメリット1|保険料が割高

緩和型医療保険の1番のデメリットは、保険料が割高ということです。どれくらい割高かというと、だいたい一般の医療保険の1.5倍~2倍程度に設定されています。

これは、健康な人と比べて入院・手術が必要になるリスクが高いからです。

この割高な保険料は、費用対効果を考える上でネックになってきます。

デメリット2|診査で細かな事情を一切考慮してもらえない

緩和型医療保険の診査は、上述のとおり、告知項目が限られていてしかも全ての項目に「いいえ」がつくかどうかで判断されます。

ただし、持病や既往症が軽いか重いか?完治後何年経っているか?といった事情は一切考慮してもらえません。加入しやすいという意味ではメリットですが、裏を返せばデメリットでもあります。

もう少し詳しくご説明いたします。

一般の医療保険だと、告知項目が多く、場合によっては詳細に申告しなければならないことがあります。特に、持病や既往症については、症状の程度や治療歴、直近に医者にかかった経緯等を申告する必要があります。

「なんだか面倒くさいな…」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

詳細に告知をすることで、具体的な事情をきめ細かく考慮して、無条件で引き受けるか、条件付きで引き受けるかが決定されるのです。

しかし、緩和型医療保険は診査の過程でそういった事情は一切考慮されません。後で改めてお伝えしますが、「まずは一般の医療保険を検討すべき」と言われるのはそのためです。

デメリット3|最初の1年間はどんな病気・ケガでも保障が半分しか受けられない

これは、診査で細かな事情を一切考慮してもらえないということと関係しますが、緩和型医療保険は、最初の1年間は保障が半分しか受けられません。持病・既往歴と全く関係のない病気でもケガでも、保障は半分になってしまいます。

先ほどお伝えしたように、緩和型医療保険は告知書の告知項目が限られています。そのため、保険会社が加入者の持病・既往歴のリスクを把握できないだけでなく、それ以外の健康状態や病気のリスクも把握しにくいのが現状です。

持病・既往歴がある方は、加入後の早い時期に持病での治療が必要になったり、既往歴が再発したり、最初の1年間に給付が発生する「保険会社側のリスク」が高いため、最初は保障が半額になるのです。

ただし最近では、契約したときから全額保障される保険会社も登場しています。

デメリット4|付加できる特約が限られている

4つめのデメリットは特約のバリエーションの少なさです。一般の医療保険では、付加できる特約は以下のようなものがあります。

  • 先進医療特約(※)
  • 通院特約
  • 死亡・高度障害時の特約
  • 三大疾病「がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳梗塞」で所定の状態になった場合の保険料支払免除特約
  • がん、三大疾病で所定の状態になったらまとまった額の一時金を受け取れる特約

緩和型医療保険は、先進医療特約は付けられますが、それ以外の特約の種類が少なく選択肢が限られています。また、ほとんどの緩和型医療保険は、三大疾病の保険料支払免除特約がありません。がんや三大疾病の一時金特約を付けられる商品も限られています。

しかも、特約の保険料も割高に設定されています。

特にがんに関する特約を検討する際は、一般のがん保険を討することをおすすめします。医療保険は緩和型しか加入できなくても、がんのリスクとの関連性が薄い持病の場合、がん保険には問題なく加入できるからです。

つまり、緩和型医療保険にがんの特約を付けるよりも、普通のがん保険に加入した方が、保障が充実し保険料も割安で済む可能性があります。

※先進医療特約に関する詳細は『医療保険の先進医療特約は必要か判断するポイント』をご覧ください。

3.緩和型医療保険が向いている人、3つの条件

以上のメリット・デメリットを考えると、緩和型医療保険は、以下の4つの条件をみたす方に向いていると考えられます。

  1. 現時点で貯蓄が少なく、高額療養費制度があることを考えても、医療費が心配
  2. 一般の医療保険にトライしたが、引き受けられなかったか、「部位不担保」等の不利な条件が付いた
  3. 割高な保険料を支払う余裕がある

以下、具体的にお伝えします。

条件1|現時点で貯蓄が少なく、高額療養費制度があることを考えても、医療費が心配

一般的な医療保険にも言えることですが、医療保険に加入するかどうかを検討する際には、高額療養費制度があるので、月々の医療費の自己負担に上限があることを考慮に入れる必要があります。

したがって、貯蓄が少なく、高額療養費制度を計算に入れても医療費の負担が心配な方には、緩和型医療保険は有力な選択肢になります。

高額療養費制度における自己負担額の上限はその人の収入、年齢等に応じて決まります。詳しくは『高額療養費制度とは?医療保険より前に知っておきたい活用のポイント』をご覧ください。

条件2|一般の医療保険に加入できなかったor不利な条件が付いた

健康状態によって一般の医療保険に入れる可能性がある

もしも、あなたが持病・既往症があることだけを理由に「緩和型医療保険しかない」とお考えであれば、まずは、一般の医療保険に加入できないかトライしてみた後で緩和型を検討することをおすすめします。

なぜかというと「持病」の病名や症状によっては、一般の医療保険に無条件で引き受けてもらえる可能性がゼロではないからです。

一般の医療保険の告知書は、緩和型と違って詳細な記載が必要なため、個々人の具体的な事情を考慮してきめ細かな診査が行われます。

その結果、持病や既往症のある方でも、その症状の程度、完治からの経過年数、現在の健康状態等によっては、無条件で加入できる場合もあります。

たとえば、がんを患ったことのある方が、一般の医療保険に無条件で加入できた例もあります(※)。

最初から諦めてしまわず、ダメ元でも、まずは一般の医療保険にトライしてみる価値があると思います。

※詳細については『癌でも入れる保険の3つのパターンと具体的な告知事項と注意点』をご覧ください。

部位不担保の条件が付くならば緩和型医療保険の方が良いこともある

そうは言っても、診査の結果、残念ながら引き受けてもらえない可能性もかなりあります。正直、可能性は半々というとことでしょうか。

引き受けてもらえるとしても”条件付き”、つまり「保険料割増」の条件や、持病や既往症の部位について保障を受けられなくなる「部位不担保」等の条件が付いてしまう可能性の方が高いと思います。

一般の医療保険に加入できても、持病の悪化や既往症の再発が保障されないのでは、加入の意味も半減してしまいます。

条件3|割高な保険料を支払う経済的余裕がある

緩和型医療保険は一般の医療保険と比べて保障内容が弱く、保険料が割高です。

加入するかどうかを決めるにあたっては、割高な保険料を支払い続ける経済的余裕があるのか、保険料の額とそれを支払うことで得られる保障内容・安心とが見合っているか、といったことを検討する必要があります。

まとめ

緩和型医療保険は、持病・既往症のある全ての人に向いているわけではありません。まずは、高額療養費制度で医療費の自己負担が限られていることを考慮し、医療保険が必要かどうか、ということを考えなければなりません。

加入後、最初の1年は保障が半額になる等の条件があり、さらに保険料は割高なので、一般の医療保険に無条件、あるいは有利な条件で加入できるならばそれに越したことはありません。

そして、割高な保険料を支払い続ける経済的余裕と、それによって得られる保障内容と安心に見合っているのか、ということを慎重に検討する必要があります。

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