うつ病で医療保険へ加入する際に知っておきたいことまとめ

世界保健機関(WHO)の発表(※)によれば、日本には約506万人ものうつ病患者がいるとのことです。これは全人口の約4%にも相当します。うつ病のリスクは他人事ではありません。

そんな中、うつ病の方が病気や怪我に備え医療保険に加入しようとしても、難しい場合があるのは事実です。

一方で、そもそも医療保険へ加入する必要性がどのくらいあるのか、といった面もあります。

この記事では、うつ病の方、あるいは過去にうつ病を経験した方が医療保険への加入を検討する際に知っておきたいことをまとめて紹介しています。

※日本経済新聞「うつ病患者、10年で18%増 早急な対策必要とWHO

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保険の教科書 編集部

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1.うつ病を患っていたら普通の医療保険にはまず加入できない

結論から言うと、残念ながら現在うつ病を患っている方は、一般的な医療保険に加入することはまずできません。

申し込んでも、加入の可否を決める診査の段階で断られることになります。なぜならば、保険金が支払われるリスクが高いと判断されているためです。

1-1.完治してから5年以上経過していれば加入できる可能性あり

これに対し、過去にうつ病を患った経験があった方は、完治して5年以上経過していれば一般的な医療保険にも加入できる可能性があります。

なぜなら、医療保険の加入診査で問われる病歴は、過去5年以内のものまでに限られるからです。

2.「引受基準緩和型」であれば、うつ病でも加入できるが…

このように、うつ病を患っていると一般的な医療保険に加入するのは困難です。しかし、「引受基準緩和型」と呼ばれるタイプであれば加入できる可能性が高くなっています。

引受基準緩和型とは保険の加入条件を緩く設定したタイプの保険のことです。

健康告知の項目が少なくなっており、持病のある方でも加入しやすくなっています。

以下、参考までにA生命の引受基準緩和型医療保険の告知項目を紹介します。全ての項目の答えが「いいえ」であれば加入できます。

最近3ヵ月以内に受けた医師による検査、検診または診察により、以下の①または②をすすめられたことはありますか。

①入院または手術
②ガン(悪性新生物または上皮内新生物)の疑いでの再検査・精密検査

過去1年以内に、病気やケガで入院や手術を受けたことがありますか。
過去5年以内に、以下①~③の病気と新たに診断されたこと(再発や転移を含みます)、あるいは以下①~③の病気により入院や手術を受けたことがありますか。

① ガン(悪性新生物または上皮内新生物)
② 肝硬変
③ 統合失調症、アルコール依存症、認知症

ご覧の通り、うつ病に関連する項目はありません。そのため、引受基準緩和型医療保険であれば、うつ病の方でも加入できるのです。

しかし、加入できることと、加入すべきかどうかは別の問題です。以下、説明します。

2-1.引受基準緩和型は一般的な医療保険と比べて割高

引受基準緩和型はうつ病を含め持病を持つ人でも加入しやすい反面、一般的な医療保険と比べ保障内容が同じでも保険料が割高となっています。

実際どのくらい割高になるかの例として、まずB生命の引受基準緩和型医療保険の契約例をみてみましょう。

【引受基準緩和型医療保険の契約例(40歳男性)】

  • 保険期間・保険料払込期間:終身
  • 入院日額:5,000円/月
  • 手術費用:(入院)5万円、(外来)2.5万円
  • 先進医療特約:あり

同じ契約内容で、一般的なB生命の医療保険であれば保険料が1,850円/月であるところ、引受基準緩和型医療保険では1.5倍以上の3,089円/月です。

2-2.公的な保障もあるので、そもそも加入する必要があるか検討も必要

次に考慮しなければならないのは、日本では医療に関する公的な保障が手厚いということです。

仮に高額な医療費がかかったとしても、高額療養費制度によってその大部分が以下の通りカバーされるため、自己負担する分は、それほど多くありません。

所得区分 自己負担限度額 多数該当
区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
区分イ
(標準報酬月額53万円~79万円の方)
(報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)
(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
(報酬月額27万円未満の方)
57,600円 44,400円
区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円 24,600円
所得区分 自己負担限度額 多数該当
区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)

(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
区分イ
(標準報酬月額53万円~79万円の方)

(報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)

(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)

(報酬月額27万円未満の方)
57,600円 44,400円
区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円 24,600円

(参照元:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」)

たとえば、標準報酬月額が28~50万円の方だと、1ヵ月の治療費は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」に抑えられるのです。総医療費が100万円であれば、1ヵ月の医療費の自己負担額は87,430円にまで抑えられるということです。

加えて、従来の医療保険が日本の医療事情に必ずしもそぐわなくなっているという面もあります。

前述の医療保険の契約例もそうでしたが、医療保険の保障内容は「入院日額●円」、「手術1回●円」といった保障がメインとなっています。

しかし、昨今では入院期間が短くなってきています。医療技術が進歩していることと、国や医療機関が入院より通院・在宅での治療を推奨する方針をとっていることが挙げられます。

そういった中で、医療保険の保障内容の優先順位は、他の保険と比べて低くなってきているのです。

特に引受基準緩和型医療保険は前述の通り保険料が割高になることから、より慎重に検討した方がよいでしょう。

なお医療保険の必要性については、「医療保険の必要性を保障内容と医療の現実から考える」でより詳しく解説しておりますので、よろしければあわせてご覧ください。。

2-2.入院のリスクが高いのであれば緩和型に加入する価値あり

ただし、うつ病を含む気分(感情)障害の入院期間は平均より長くなる傾向にあることが見受けられます。

厚生労働省がまとめた「平成29年 患者調査(退院患者の平均在院日数等)」によれば、入院日数は平均29.3日であるところ、うつ病を含む「気分(感情)障害」の場合は平均113.9日と平均の3倍以上となっています。

うつ病の治療は基本的には通院して受けることが多いのですが、仮に入院することになった場合は、入院期間が長引く恐れもあります。

そのため、入院のリスクが心配であれば、保険料が割高になってしまうとはいえ、引受基準緩和型医療保険に加入する意味はあるでしょう。

3.【補足】医療保険より優先すべきがん保険はうつ病でも加入できる

国立がん研究センターの「最新がん統計」をみると、生涯のなかで2人に1人はがんにり患するとのことです。

がん治療では、通院・在宅での抗がん剤・放射線治療が長期化する恐れがあり、高額療養費制度を活用しても、患者の経済的な負担が大きくなるリスクがあります。

しかし、医療保険は入院・手術の保障がメインなので、通院・在宅での治療が長引いたら役に立たない可能性があります。

したがって、医療保険よりがん保険の方が優先順位が高いと考えられます。しかも、現在うつ病を患っている方でも、がん保険には問題なく加入することができます。

なぜなら、がん保険の告知項目には、「うつ病であるか否か」がないからです。

以下、参考までにC生命のがん保険における告知事項をみてみましょう。

今まで、がんまたは上皮内新生物にかかったことがありますか。
最近3か月以内に別表1の病気または病状で、医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかを受けたことがありますか?
過去2年以内に、健康診断・人間ドックを受けて、別表2の検査結果の異常(再要検査・要精密検査・要治療)を指摘されたことはありますか?

【別表1】

【病気】

●ポリープ・しゅよう等
ポリープ・しゅよう(腫瘍)・結節・しゅりゅう(腫瘤)・異形成・多発性ポリープ(ポリポーシス)

●消化器系の病気
かいよう性大腸炎(入院や内服治療を伴うもの)・肝機能障害・クローン病・肝硬変・慢性すい炎・慢性肝炎・食道静脈りゅう

●腎臓の病気
慢性腎炎・慢性腎不全

●呼吸器の病気
慢性閉塞性肺疾患(COPD)・肺線維症・じん肺・間質性肺炎・けい肺・肺気腫

●その他
糖尿病(インスリン治療中・合併症をともなっている場合)・白板症

【症状】
出血(便潜血・不正出血・喀血・吐血・下血・血尿)、貧血(鉄欠乏性貧血を除く)・黄疸・びらん・しこり・消化管のかいようや狭窄(良性か悪性か不明の場合)・B型肝炎ウイルスキャリア・C型肝炎ウイルスキャリア

【別表2】

胸部レントゲン検査・上部消化管レントゲン検査(または内視鏡検査)・腹部超音波検査・便潜血検査・マンモグラフィ検査・乳房超音波検査・肝炎ウイルス検査(HBs抗原・HCV抗体)・CT検査・MRI検査・PET検査・子宮がん検診・乳がん検診・しゅようマーカー(CEA・AFP・CA19-9・PSA等)

ご覧の通り、がんに直接関連しそうな疾病や症状については聞かれていますが、うつ病に関する項目はありません。

そのため、がんが心配な方は、まず医療保険よりもがん保険の加入を検討することをおすすめします。

まとめ

うつ病を患っていることがある方でも、完治してから5年が経過していれば医療保険へ加入できる可能性が高いです。

これに対し、現在うつ病の方は、残念ながら一般的な医療保険に加入することができません。ただし、引受基準緩和型医療保険であれば加入できる可能性があります。

ただし、だからと言って、必ずしも引受基準緩和型医療保険がおすすめできるわけではありません。一般的な医療保険よりも保険料が割高なのに加え、そもそも医療保険へ加入する必要性がどのくらいあるのかも考えておきたいところです。

その上で、長期入院のリスクが心配であれば、引受基準緩和型医療保険への加入を検討しても良いかもしれません。

なお、がん保険に関しては、うつ病でも問題なく加入できます。がんが心配であれば、医療保険より先にがん保険を検討することをおすすめします。

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