遺産相続などで受け継ぐことになり、土地を所有することになった、という人もいると思います。
土地を含めた不動産は、所有していると固定資産として計上され、固定資産税が発生します。
所有している不動産を活用する気がない場合、固定資産税の支払いが煩わしくなって、売却を検討する方もいるでしょう。
実は不動産を売却する際、税金が発生する可能性があります。
不動産売却時に課せられる税金には
の3種類です。
今回は不動産を売却する際に発生する税金について、特に譲渡所得税に重点を置いて解説していきます。
急な出費に驚かないよう、しっかりと理解しておきましょう。
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1.不動産売却時に課せられる3種類の税金
先に述べたように、家や土地を売る際には、以下の3種類の税金が課せられます。
この内譲渡所得税と住民税については、「所得にかかる税金」として扱っていきます。
これらの税金を考慮に入れておかないと、手取り金額が予想より大幅に下がってしまいます。
「ただ土地を持っていたくない」「資産整理のため」といった理由で売却したのならまだしも、新居購入のための資金調達の為など、急に現金が必要になって売却した場合、痛い目を見ることになってしまいます。
それぞれの税金について詳しく見ていきましょう。
2.印紙税
まずは印紙税です。
要は不動産売買契約書に貼付する収入印紙にかかるお金なのですが、不動産のような金額の大きな資産のやりとりとなると、その金額は馬鹿にできません。
一般的には売主と買主がそれぞれ不動産売買契約書を保有することになり、それぞれが印紙代を負担することになります。
売買契約金額に対する印紙税の税額は以下の通りです。
3.所得にかかる税金
所得にかかる税金として扱われる譲渡所得税と住民税は、個人の場合と法人の場合で、扱いに大きな違いがあります。それぞれについてみていきましょう。
3.1.個人の場合(譲渡所得税・住民税)
まず個人の場合は、冒頭で述べたように譲渡所得税と住民税として扱われます。
譲渡所得税はその名の通り譲渡所得に課せられる税金であり、不動産売却の際に課せられる税金の中では最も複雑かつ金額が大きいものになります。
不動産売却における住民税は譲渡所得から算出され、支払い時期も近いためにまとめて考えられることが多いです。
譲渡所得税を算出するためには、譲渡所得と課税譲渡所得を求める必要があります。
3.1.1.譲渡所得について
譲渡所得とは、個人が資産を売却(譲渡)した際に得られる所得のことを指します。
個人から法人に対して資産を売却した際も譲渡所得として計上されますが、個人が事業の一環で売却した場合は事業所得として計上されます。
基本的なイメージとしては、不動産等の資産を購入した後、その価値が上昇した際の上澄みが譲渡所得となります。
譲渡所得は資産の種類によって計算方法が変化するのですが、今回はあくまで不動産を売却する場合に絞って話を進めていきます。
土地や建物等の不動産に発生する譲渡所得の算出方法は、以下のようになります。
それぞれの項目にも算出方法が存在するため、一つずつ見ていきましょう。
①譲渡収入金額
譲渡収入金額は、不動産の売却額と固定資産税等の精算額を合計したものです。
固定資産を売買する際、売買契約が成立した年の固定資産税を双方が負担することが通例となっています。
具体的には、起算日(1月1日や4月1日が多い)から不動産の引き渡し日の前日までが売主の負担となり、受け渡し日から翌年の起算日前日までが買主の負担となります。
売主側としては、買主が負担する分の固定子資産税額分を売却費と共に受け取ることとなり、それが売却費と共に譲渡収入金額として計上されるということです。
②取得費
取得費は資産を手に入れた際に支払った金額や資産に手を加えた場合の改良費の合計額を指します。
資産が建物のように減価償却されるものの場合は、さらにそこから減価償却費相当額を差し引いたものが計上されます。
計算式で表すと、
となります。
建物に対する減価償却費については「不動産の減価償却で知っておきたい3つのポイント」をご覧ください。
なお、取得費には、譲渡収入金額の5%に相当する概算取得額というものが存在し、どちらかを計算に使うか選択することができます。
譲渡所得を低く計上することができれば税金が安くなるので、より金額の多い方を選ぶと良いでしょう。
③譲渡費用
売買契約を行った際に生じた、仲介手数料などや印紙代などが該当します。
つまり印紙税が高いほど、譲渡所得では控除が受けられるということです。
3.1.2.課税譲渡所得額について
譲渡所得が算出できたら、次は課税譲渡所得額を算出します。
課税譲渡所得額は下記の計算式で算出できます。
この段階で譲渡所得税には特別控除が発生します。
譲渡所得税に適用される特別控除は以下の通りです。
- 公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
- マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
- 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
- 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
- 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
- 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
譲渡所得税の特別控除には5,000万円の限度額が設けられており、控除は上記の1番から順に適用されていきます。
3.1.3.譲渡所得税の算出
課税譲渡所得額が算出できたら、あとは税率を乗じれば譲渡所得税が算出できます。
譲渡所得は資産の種類によって、総合課税と分離課税のどちらかに分類されます。
不動産等や土地に関しては分離課税として扱われるので覚えておきましょう。
また、譲渡所得は売却する資産の所有期間によって細かく区分されます。
その中でも不動産については下記の2つに区分され、それぞれ税率に違いが生じます。
①短期譲渡所得
売却した年の1月1日における所有期間が5年以内の場合は、短期譲渡所得に区分されます。
短期譲渡所得の場合、平成25年〜49年までの税率は下記のようになります。
②長期譲渡所得
売却した年の1月1日における所有期間が5年を超えている場合は、長期譲渡所得に区分されます。
短期譲渡所得の場合、平成25年〜49年までの税率は下記のようになります。
3.1.4.みなし譲渡所得税について
基本的に不動産等の売却(譲渡)に対して発生する譲渡所得税は、相続等の「贈与」では課税されません。
しかし以下の3つの場合は例外として、時価相当額を受け取ったとみなされて課税されてしまいます。
- 会社等(法人)にただで財産をあげた場合(贈与)
- 時価の1/2未満で売った場合
- 相続人・遺言で財産を受け取った人が「限定承認」をした場合
詳しくは「みなし譲渡所得|利益がないのに税金を取られる理由と注意点」をご覧ください。
3.2.法人の場合(法人税・法人住民税・法人事業税)
個人の場合、不動産売却による収入は譲渡所得として扱われ、分離課税であることが分かりました。
では法人の場合はどうなのでしょうか。
実は法人の場合、不動産売却による利益はすべて益金として計上されます。
つまり、他の利益と合わせて、法人の所得として課税されることになるのです。
その為、法人が不動産を売却した際に影響があるのは、法人税・法人住民税・法人事業税となります。
他の益金と合わせた上で計算されている段階で、法人での不動産売却は個人で言う「総合課税」として扱われることが分かりますね。
不用意な不動産売却によって多額の税金が課税されることのないよう、取り扱いには十分注意しましょう。
参考:「法人税とは何なのか|もっとも分かりやすい法人税入門」
まとめ
いかがでしたか?譲渡所得は資産の種類によって総合課税と分離課税に分かれたりと、ここで説明したこと以外にも複雑なルールが存在します。
今回は不動産の売却に焦点を当てて解説してきましたが、自身が所有している資産に合わせ、譲渡所得税の算出方法をしっかりと把握しておきましょう。
法人の場合は所得は関係なく益金に計上されるため、法人税が課税されます。
計算方法の違いにより、譲渡所得税より多額の課税がなされるため、オフィスを引き払う際などは十分に注意しましょう。