事業活動総合保険は、店舗や事務所・工場などで火災や事故が起きた場合に発生する損害のほか、お客様や第三者に損害賠償責任を負った場合など、事業活動で起こりうるリスクを幅広くカバーしてくれる保険です。
火災保険の一種ですが、一般の火災保険よりも補償範囲が広くなっています。まず、台風やゲリラ豪雨などの自然災害に対しても補償され、それ以外の偶然な事故までカバーすることができます。
また、建物の補償だけでなく、休業時の補償や、予期せぬ事故での損害賠償責任などが補償の対象となります。
たとえば、事務所や店舗が事故に遭ってしまった場合、当然のことながら社員は出勤することができませんし、業務は全てストップしてしまいます。結果、会社の売上はダウンしてしまい、被害の規模によっては大きな損害を被る可能性もあります。
事業活動総合保険は、そういったあらゆる損害から会社を守ることのできる保険です。
この記事では、このような損害を補償する事業活動総合保険の補償内容について解説させていただきます。
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私は10年以上にわたり、生命保険業界で働いております。マイホームの次に高い買い物と言われることもある保険ですから、本当に必要な商品を無駄なく加入してもらうことが大切だと考えています。お一人お一人のご希望やライフプランをおうかがいし、少しでも豊かな人生を送るお手伝いが出来ればと思っております。
はじめに|事業活動総合保険は3種類の損害をカバーする
まずは事業活動総合保険の概要についてです。保険会社により、セットで販売されているプランは異なるのですが、ここでは大まかな仕組みについてご説明いたします。
事業活動総合保険がカバーする損害は以下の3種類です。
「物損損害」は簡単に言えば火災保険がカバーするものです。「休業損害」は詳細については「3.休業損害の保障」でお伝えしますが、事故によって臨時休業に追い込まれた時の売上の減少を補償するものです。
また、この2つに加えて、お客様が店舗の火事に巻き込まれてしまった場合などに発生する「賠償責任を負う損害」も加えることができます。
これから、それぞれについて説明していきます。
1.物損損害|火災保険よりも広くカバーする
事業活動総合保険は火災保険の一種ではありますが、実際には様々なシーンで補償の対象となります。まず、その代表的なものをあげていきます。
- 「火災、落雷、破裂または爆発」:(例)事務所で火災が発生、什器が焼失した
- 「風災・雹災・雪災」:(例)台風で倉庫が破損、商品が吹き飛ばされた。
- 「外部からの物体の衝突」・飛来など:(例)お店に車が突っ込み、設備が壊された。
- 「水ぬれ」:(例)給水管が破裂し、商品が濡れてしまった。
- 「騒擾・労働争議等」:(例)ストライキで店や商品が壊された。
- 「盗難」:(例)会社にドロボウが入り、品物を盗まれた。
- 「水災」:(例)大雨による洪水で事務所が水浸しになり、設備が壊れた。
- 「その他の不測かつ突発的な事故」
この例をご覧になって、事業活動総合保険がどんな場合に補償の対象となるかを大まかにイメージしていただければと思います。
以下、建物とそれ以外の物とに分けて説明します。
1.1.建物
火事で店舗や工場が被害にあった時、事業活動総合保険に加入していれば建物が補償となります。
事業活動総合保険でいう「建物」は、土地に定着し屋根・柱・壁がある建物のことを表します。この条件を満たさない物置やサイロは建物と認められず、動産として扱われます。
1.1.1.建物の種類
補償の対象となる建物の種類は大まかに以下の2つに分けることができます。
■一般物件
自宅と店舗を兼ね備えた建物です。
例えば家族経営で小売業を営んでいる方や、自宅を事務所にしている方が対象となります。小規模の作業場なども該当します。
■工場物件
いわゆる工場などを指します。規模としては、使用する電力が100キロワット以上、稼働人員が常時50人以上などの決まりがあります。保険金額が10億円以上など、一部引受ができない場合もあります。
1.1.2.地震保険の契約もセットできる
事業活動総合保険は火災保険の一種なので、地震保険をセットで契約することができます。
地震保険をセットすれば、「地震もしくは噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害」までを幅広くカバーすることができます。
補償の対象となる建物が、住宅と店舗・事務所を併用している一般物件の場合、地震保険とセットで契約することで、会社と自宅を同時に守ることができます。地震保険の補償内容について詳細は「地震保険の仕組み|加入前に知っておくべき基礎知識」をご覧ください。
次からは、事業活動総合保険の具体的な補償内容について順に確認していきましょう。
1.2.建物以外の物
事業活動総合保険は建物以外の物もカバーします。ここでは、補償の対象となる物について確認していきましょう。
1.2.1.建物の中にある物
工場内の機械が火災などで壊れたり地震で壊れたりしたときも補償されます。
「什器」という見慣れない漢字がありますが、これは商品ディスプレイ、テーブル、ラックなどの器具を指します。もちろん商品そのものも対象です。自宅と店舗を併用している経営者の方であれば、家電製品やタンス等の家財も補償することができます。
1.2.2.建物の外にある物
- 門・塀・垣
- 物置、車庫、その他の付属建物
- 屋外設備・装備など
例えば、工場の敷地内にある門や塀、物置や車庫は建物とみなされませんが、こういったものも会社の財産であることに変わりはありません。この記事では細かい規定は割愛いたしますが、これら付属品も対象となります。
2.休業損害
思いもよらぬ事故で、休業による損害が発生してしまった時に、本来なら得られるはずの粗利益が補償されるものです。次から順に解説していきます。
2.1.保険金の種類
受け取れる保険金は、大きく以下の3つに分かれます。
- 休業損害保険金:1日あたりの補償日額 × 補償日数
- 営業継続保険金:仮店舗などで営業を続けるために必要な費用
- 営業再開時臨時費用保険金:業務を再開し30日以内にかかった臨時費用を補償
保険金についてごくごく簡単に申し上げますと、本来であれば発生するはずだった粗利の金額を1日あたりいくら、という計算式で算出します。そして、契約の際には、1日あたりの補償日額や補償される最長期間について取り決めを行います。
プランによっては、以下のようなケースも補償の対象となります。
- 食中毒の発生で営業停止となり、利益が減少した
- 事故で電気の供給がストップし、営業ができなくなった
2.2.実際に休業損害保険金が支払われた具体例
実際に保険会社が支払った休業損害の例について、ご紹介いたします。
- タバコの不始末で店舗が全焼し休業 → 休業日数130日間、保険金額1,530万円
- ホテルで落雷、エレベーターが動かなくなり休業 → 休業日数27日、保険金額1,090万円
- 隣の店が火事、消火活動で店舗が水浸しになり休業 → 休業日数89日、保険金額450万円
3.損害賠償の補償
最後に、簡単ではありますが損害賠償に関する補償についてご説明いたします。
賠償責任保険は、他の契約で既に補償されている場合、補償が重複すると保険料がムダになってしまう場合もあります。ご検討の際は、保険会社や代理店の担当者までご確認されることをおすすめします。
3.1.保険金の種類
- 損害賠償金
- 被害者に対する治療費等
- 訴訟費用や弁護士報酬等
賠償責任は、突然の事故によってお客様や他者に対して被害を与えてしまい、それに対して費用が発生した場合に補償されるものです。
事業活動総合保険の基本は火災保険なのですが、この賠償責任を選べるオプションとして販売している保険会社がほとんどです。ですから、火災とは全く関係のない賠償責任が補償になります。
3.2.具体例
具体例としては、以下のようなものがあります。
- 床のタイルがはがれており、お客様がつまずいてケガをした
- 自転車で出前をしている最中に、通行人とぶつかりケガをさせてしまった
- お客様に出す熱いお茶をこぼし、お客様にヤケドを負わせてしまった。
まとめ
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
事業活動総合保険は、火事や台風、大雪などの自然天災による、店舗や事務所の損害を補償する保険ですが、それ以外の偶然な事故までも幅広く補償されています。
実際に補償の対象となるものは、店舗や事務所の建物だけでなく、工場内の設備機器、商品や、社内にある備品までが対象となります。
火災保険の一種ですので、地震保険を組み合わせることも可能です。地震保険は単体で契約できませんので、自宅と店舗を併用しているような場合であれば、セットで契約するのをご検討いただくのも、よろしいかと思います。
損害保険では、様々な補償が複雑に組み合わさっており、似たような補償が重複していたりするので注意が必要です。事業活動総合保険でも、既に他の保険でカバーできているケースもありますので、ご検討の際は加入中の火災保険などについて、ご確認してくださいますよう、お願いいたします。