運送保険は、正式名称を「運送業者貨物賠償責任保険」と言い、運送業者がお客様から預かった荷物を運送・保管中に、事故でその荷物に損害を与えてしまった場合の賠償責任をカバーしてくれる保険です。
運送業を営む業者の方にとって大変重要なものです。なぜなら、事故で荷物が損害を受けた場合に、全く落度がなかったとしても、お客様に弁償しなければならないからです。しかし、いざ加入するとなると、補償内容をどう設定すればいいのか、なかなか分かりにくいと思います。
この記事では、運送業者にとって必ず加入しておくべき運送保険「運送業者貨物賠償責任保険」について、補償内容を整理して説明します。
どんな補償内容なのか、どこまでの損害・費用がカバーされるのか分かりやすくお伝えしますので、今の保険の保障内容があなたの会社にフィットしているか確かめてみるのにお役立てください。
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保険の教科書 編集長。2級ファイナンシャルプランナー技能士。行政書士資格保有。保険や税金や法律といった分野から、自然科学の分野まで、幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
1. 運送業者貨物賠償責任保険とは
運送業者の方は、お客様から預かった荷物を運送中・保管中に事故でその荷物が損害を受けた場合は原則としてお客様に弁償(損害賠償)をしなければなりません。弁償しなくていいのは、後で述べますが、天変地異等のよほどの事情がある場合くらいです。そして、荷物の価値によってはその額はあなたの会社にとって大変な負担になります。そんな時、運送業者貨物賠償責任保険に加入していると、弁償額その他の費用をカバーしてもらえるのです。
ただし、どこまでの事故をカバーしてもらえるかは契約のタイプ(あなたの会社が支払う保険料の額に応じて決まります)によって違います。また、荷物にも様々なものがあり、保険金を受け取れるのに条件があったり、全部をカバーしてもらえなかったりすることもあります。
したがって、まず大切なのは、契約のタイプを適切に設定することと、荷物に応じた扱いを理解しておくことです。
2. カバーしてもらえるリスクの範囲は2タイプから選べる
損害保険会社によって多少の差はありますが、運送業者貨物賠償責任保険は、カバーしてくれる範囲を2通りのタイプから選べることになっています。以下の通りです。
2.1. 原則として全てのケースをカバーしてくれるタイプ
カバーしてもらえる範囲が最も広いタイプは、天変地異等による事故や、ほとんど故意に近いような重大な過失等の場合をのぞいて、原則として全てのケースをカバーしてくれるタイプです。たとえば、雨等にさらされて濡れてしまった場合や、生鮮食品の温度管理等のミスによる損害等もカバーされます。
ただし、保険料もその分高めに設定されています。したがって、あなたは、「そこまでカバーしてもらわなくても、運送中の交通事故とか、保管中の盗難とかだけカバーしてもらえればいい」とお思いになるかもしれません。
そういう場合は、次にお伝えするように、運送業務中の典型的なリスクに限って保障するタイプがあります。
2.2. 運送の業務に伴う典型的なリスクだけカバーしてもらえるタイプ
運送業者貨物賠償責任保険では、カバーしてもらえる範囲を、運送の業務の中で発生する典型的な事故に絞っているものがあります。たとえば、運送中の衝突事故や保管中の火災や爆発や盗難といったものです。
「運送中」と言った場合、イメージするのはもっぱら交通事故だと思います。また、運送中に保管する場合、ふつうは屋根のある倉庫等の中で保管するのをイメージすることでしょう。よほどオンボロの倉庫でないと水濡れというのはあまり考えられませんし、食品の保管中の温度管理は、「運送」という言葉からはストレートには結びつきにくいです。
したがって、「運送」と聞いて典型的な事故に絞ってカバーしてもらえるタイプのニーズがあるのです。そして、このタイプを選ぶと保険料も抑えられます。
2.3. お金、骨董品、美術品、宝石、貴金属等は10万円まで
お金、骨董品、美術品、宝石、貴金属等の「軽くて運びやすいがものすごく高価な物」は、支払われる保険金が「1梱包あたり最大10万円まで」などと限られています。これらについてはそもそも運送業者だけがリスクを負うというのが理不尽だからです。ではどうするかというと、お客様に品目と価格を申告していただいた上で、お客様の費用で別途、お客様用の運送保険をかけていただくことになります。
3. 補償してもらえる損害・費用の種類
では、どこまでの損害・費用が補償してもらえるでしょうか。基本的な補償と、特約を付けることでプラスしてもらえる補償とがあります。
3.1. 基本的な補償内容はお客様への弁償額
基本的な補償範囲は、お客様に弁償するのにかかった実費です。ただし、契約で支払限度額を設定することができます。また、一定額までは自己負担とすることができ、これを「免責金額」と言います。
支払限度額が低ければその分保険料が安くなります。また、免責金額が高いとその分保険料が安くなります。
3.2. 特約でプラスできる補償
運送業をしていて弁償しなければならなくなるケースは、預かった荷物を破損してしまった場合だけではありません。また、弁償費用以外にもさまざまな費用がかかることがあります。そこで、運送業者貨物賠償責任保険では、特約を付けることによって、それらの費用をカバーしてもらうことができます。以下、それぞれについて説明します。
3.2.1. 無関係な他人への弁償費用をカバーしてもらえる特約
運送作業を行う中で損害を与える可能性があるのは、お客様の荷物だけではありません。たとえば、荷降ろし中に荷物を落としてしまい、無関係な通行人に怪我をさせてしまうことがあります。また、無関係な他人の荷物を破損してしまうこともあります。
このような場合はいずれも弁償しなければなりません。したがって、この場合の弁償費用を補償してもらえる特約を付けることができます。「第三者賠償責任担保特約」と言います。
3.2.2. 後片付けの費用をカバーしてもらえる特約
たとえば、交通事故を起こして積荷を破損させてしまっただけでなく、路上に散乱させてしまったような場合、後片付けの費用がかかります。そういった費用も、特約を付けることでカバーしてもらえます。「残存物取片付け費用特約」と言います。
3.2.3. 余計にかかった運送費用をカバーしてもらえる特約
たとえば、運送中にトラックが事故で動かなくなって代わりのトラックを手配しなければならなかったような場合、余計に費用がかかります。これも特約を付ければカバーしてもらえます。「継搬費用特約」と言います。
3.2.4. 損害がなかった場合でも検査の費用をカバーしてもらえる特約
事故が起こった場合でも損害が発生するとは限りません。そもそも損害が発生しているかどうかを確認するために検査が必要な場合があります。たとえば梱包を解いて中身を確認したり、異常がないのを確認した上で再梱包したりすることなどです。
そういった検査にも費用がかかることがあるので、特約でカバーしてもらうことができます。「検査費用特約」と言います。
4. 事業全体をカバーする契約と1台ごとにカバーする契約がある
最後に、契約の形式についてお伝えします。事業全体をカバーする契約と、トラック1台ごとにカバーする契約があります。どちらも一長一短ですが、以下では大ざっぱな向き・不向きをお伝えしておきます。
4.1. 事業全体をカバーする契約方式
事業全体をカバーする契約は前年度の売上高等を基準として保険料を計算します。この契約方法だと、事務処理が簡単というメリットがあります。ただし、前年度の事故率等の不利なデータも会社全体について見ることになるので、前年度にそういった不利なデータがある場合は保険料がそのぶん高く設定されてしまいます。
4.2. トラック1台ごとにカバーする契約方式
一方、トラック1台ごとにカバーする契約は、そのトラックごとに稼働状況を見て保険料を計算します。事務処理は面倒ですが、不利なデータもトラック1台ごとにきめ細かに判断されるので、前年度に会社全体で事故率がかんばしくなかった場合でも、保険料の値上がりがそれなりに抑えられる可能性があります。
まとめ
運送業者であれば必ず加入しておくべき運送業者貨物賠償責任保険の基本的な補償内容についてお伝えしました。
全てのリスクを補償してもらおうとすれば保険料が高くなり、運送業務中の典型的なリスクだけに絞って補償を受けようとすれば保険料は低くなります。
また、基本的な保障内容は運送中の事故によるお客様の荷物の損害を弁償するための費用ですが、特約を付ければ、無関係な人に与えてしまった損害の弁償費用や、後片付けの費用や、代わりの車を手配した費用や、損害の有無を検査するのにかかった費用までカバーしてもらうことができます。
そして、事業全体をカバーしてもらう契約方式と、トラック1台ごとにカバーしてもらう契約方式のお得な方を選ぶこともできます。
この記事をお読みになって、ご自身の会社に最もフィットした補償内容を選んで加入されることを願ってやみません。
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