雇用慣行賠償責任保険|事例からみる必要性と補償内容

雇用慣行賠償責任保険とは、会社が従業員からセクハラやパワハラ、差別、不当解雇などを理由として損害賠償責任を追及された場合の賠償金等を補償してくれる保険です。

経営者の皆さまにおかれましては、社員の職場環境を良好なものにするための企業努力をされていることと思います。

しかし、それでも、企業側や上司が無意識にとった言動が原因となって損害賠償問題が発生することも多々あるのです。

また、近年では雇用形態が複雑化しており、正社員や派遣社員、新卒や中途社員など、働く従業員の立場や待遇は様々です。

ですから、ほとんどの企業にとって雇用に関する問題は他人事ではすまされないのです。

この記事では、雇用慣行賠償責任保険の基本的な内容と、実際にあった雇用に関するトラブルについてご案内してまいります。

会社経営にたずさわる役員の方だけでなく、部下をお持ちの管理職の方にもお役に立てる内容となっております。ぜひ、最後までお付き合いください。

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保険の教科書編集部

保険の教科書編集部

私は10年以上にわたり、生命保険業界で働いております。マイホームの次に高い買い物と言われることもある保険ですから、本当に必要な商品を無駄なく加入してもらうことが大切だと考えています。お一人お一人のご希望やライフプランをおうかがいし、少しでも豊かな人生を送るお手伝いが出来ればと思っております。

1.雇用慣行賠償責任保険の対象となる「不当行為」とは

雇用慣行賠償責任保険は「不当行為」が原因で損害賠償責任が発生した時にかかる費用を補償する保険です。

ただ、「不当行為」と一言で言っても、さまざまな問題があり、なかなかイメージしにくいと思います。

そこでまず、補償の対象となる「不当行為」とはどのようなものかについてお伝えします。少々長くなりますが、おつきあいください。

1.1.「不当行為」の種類

雇用慣行賠償責任保険の対象となるのは企業側の「不当行為」です。

これは、従業員を守るべき会社側が、社員を精神的に傷つけたり、肉体的な影響が出るような働かせ方をしたり、差別をしたりすることをさします。具体的には以下の通りです。

ハラスメント

いわゆるセクハラ、パワハラなど、従業員の就業環境を害すること。

不当解雇

就業規則などに違反するような解雇、退職の推奨、雇用契約の一方的な終了など。

差別的行為

年齢や性別、国籍や宗教を理由として雇用や労働条件に差別をすること。

人格権の侵害

職場でのいわれなき誹謗・中傷・名誉毀損・プライバシーの侵害など。

不当な評価

不当な昇進拒否や降格、不採用、職種の変更、配置転換など。

説明義務違反

労働条件などの説明を求められた時に、適切な回答を行わないこと。

その他

その他の雇用に関する不適切な行為や義務違反等

いかがでしょうか?ここにお示しした内容は、どれも言語道断なことばかりで、「そんなことするわけないじゃないか」とお感じになられた方も多いことでしょう。

しかし、悪気なく意図せずに行った行動や発言でも、被害者側となる社員に訴えを起こさせるほどの苦痛を与えてしまうこともあるのです。

1.2.実際の職場であった雇用トラブル

ここからは、損害賠償問題の実際に起こった事例についてご紹介いたします。

あってはならないことですが、皆さまの会社で雇用トラブルが起きてしまった時のことを想像してお読みください。

事例1|パワハラに関するトラブル

【事例】

X社の管理職Aは、Bの直属の上司ではないものの、グループ会社内の役員に就任する予定で会社内で重要な立場にあり、Bより優越的な地位にあった。その地位を利用して、他の社員のいる前で、Bに対し「能力がない」「自己愛が強い」など激しく叱咤した。BはX社に対し、Aのパワハラによる精神的苦痛を受けたとし、慰謝料を請求した。

会社内で目上の立場に立つ人は、その地位を利用しているかのような誤解を招くような発言や行動は、慎まなければなりません。

相手の態度が表面的には親しげであったとしても、場合によっては自分の言動が相手にとって精神的苦痛を与えている可能性があることを踏まえ、言動には注意しなければなりません。

この例では、結果としてBに慰謝料200万円が支払われました。

事例2|性別を理由にした差別に関するトラブル

【事例】

Y社は、入社したばかりの男性従業員Cを昇進させた。Cと同じ部署で勤続年数の長い女性従業員Dは、Y社に対し、Cが自分と雇用形態と業務内容が全く同じであるにもかかわらずCを昇進させたのは、男女差別であり、性別による昇進・昇格の差別を禁止した「男女雇用機会均等法」に違反しているとして損害賠償請求をした。

男女雇用機会均等法」は1985年に制定された法律です。その後、内容の一部改正が行われ、この度新たに「妊娠・出産等に関するハラスメント防止措置義務」が新設され、2017年1月から施行されています。

共働きが当たり前となっている現代では、女性の社会進出が進んではいるものの、男性と比べ給料等でもまだまだ遅れをとっているのが現実です。

女性は妊娠・出産により働き方を変えざるを得なかったり、キャリアアップを諦めたりすることもありますが、世間的に「仕事は男性、家庭は女性」という風潮が根強く残っているとも考えられます。

私自身も働く女性の一人として、このような事例が無くなる社会を望みます。

また、ここでは女性が対象の事例を取り上げましたが、性別を理由とした差別は男性に対するものでもあってはならないことです。

特に、「男(女)のくせに」といった固定的な性的概念に基づいた嫌がらせ(ジェンダーハラスメント)は根が深いもので、意図せずに行ってしまいがちです。また、他にも、LGBTの方に対する差別の問題があります。

事例3|パートタイム労働者に対する待遇の差別に関するトラブル

【事例】

Z社の内部規程では、正社員への転換要件を「正社員としての能力を有する者」と定めており、不明確なものであるため、これまでパートから正社員へ転換した者がいない。パート社員EはZ社に対し、実効性のある転換措置を講じることを求めたが、一向に改善されないので慰謝料を請求した。

「非正規雇用」と言われる契約社員や派遣社員、パートやアルバイトなどの数は増加の一途をたどっています。

1990年に881万人だった非正規雇用者数は、2014年に1962万人と2倍以上になりました。逆に、正規雇用者、いわゆる正社員の数は、1990年代半ば以降ほとんどの年で減少しています。

経営者の皆さまにおかれましては、会社の経費を抑える手段の一貫として、正社員と比べ安い賃金で労働力を確保できる非正規雇用の数を増やしている方も多いことでしょう。

こちらの事例以外でも、正社員と同じ働きをしているパートタイム労働者に対する差別問題、福利厚生施設の利用の機会の配慮不足、といったトラブルも発生しています。

正社員でもパートでも、その方たちは会社のために一生懸命働いてくれる大切な財産であることに変わりはありません。

社員の能力を正当に評価できる体制作りや、差別のない環境作りにとりくむことが、結果として会社の発展につながります。不要なトラブルはムダな費用と時間を浪費するだけになってしまいます。

1.3.「不当行為」は社会全体の問題でも責任を負うのは会社

ここまで、雇用慣行賠償責任の対象となる「不当行為」の具体例について見てきました。

これらから分かることは、「不当行為」は本来、社会全体に根ざした問題であるということです。

その意味では、本来、一つの会社で解決できる問題ではないのかも知れません。

しかし、「不当行為」の問題が起こった時に直接の責任を問われるのは、会社なのです。

そして、実際に損害賠償責任を問われた場合に役に立つのが、雇用慣行賠償責任保険なのです。

2.雇用慣行賠償責任保険の補償内容

そこで、雇用慣行賠償責任保険の補償内容や保険金について、順に確認していきましょう。

2.1.雇用に関するトラブルは正社員からアルバイト、採用応募者まで

企業側にとって、雇用に関する損害賠償責任問題は、正社員だけに限らず業務にたずさわる全ての方からからの訴えを起こされるリスクを含んでいます。

雇用慣行賠償責任保険では、このリスクに対応するため、会社が給料を支払い雇用している正社員・契約社員・派遣社員、パート・アルバイトの方など、ほとんど全ての雇用形態の方からの訴えが補償の対象となります。

また、保険期間中に退職した方、採用応募者もここに含まれます。

さらに、対象となる「不当行為」も、役員や管理職だけでなく、いわゆる「ヒラ社員」によるものも含まれます。

たとえば、ヒラ社員の派遣社員・パート社員に対する言動も対象になります。

2.2.支払われる保険金の種類

雇用慣行賠償責任保険では、もし上述した「不当行為」があったとされ、会社の損害賠償責任が認められた場合、支払われる保険金は、主に以下の2種類です。 

  • 損害賠償金:法律上の損害賠償責任を求められた時に支払う賠償金や和解金など
  • 争訟費用:調停や和解で必要な弁護士費用や報酬金、印紙代や調査費用など

おそらく、「法律上の損害賠償責任」という言葉からイメージされるのは裁判になって損害賠償を命じられるケースでしょう。

しかし、実際は「和解・調停・示談等」により賠償金が発生したケースも含まれます。

ただし、和解や示談で決めた賠償金を補償してもらうには、あらかじめ保険会社の同意を得る必要があります。

これ以外にも、賠償責任問題までは発展していなくても、労働組合から雇用に関して不服申し立てを受け、弁護士に相談を行った場合にかかる初期費用を補償するような場合もございます。

3.加入の判断基準

ここまでお読みいただき、どんな業種に関しても雇用に関するトラブルは付き物であることがお分かりいただけたのではないでしょうか?

とはいえ、損害賠償責任に関する保険は多くの種類が存在しますから、ご自身の会社にとって雇用慣行賠償責任保険が本当に必要かどうか、迷われてしまう経営者の皆さまも多いと思います。

最後になりましたが、雇用慣行賠償責任保険の加入を検討いただく時の注意点やポイントについてご案内いたします。

3.1.備えるべき損害賠償責任リスクは業種で変わる

雇用慣行賠償責任保険は、それ単独としても存在はしているのですが、多くの損害保険会社では「●●損害賠償責任保険」の特約としてセットで補償を備えることをオススメしています。

なぜならば、損害賠償責任に対するリスクは業種によってその内容が異なるからです。

例えば、建設業では現場で起きてしまった事故を原因とする第三者への損害賠償責任リスクを第一に備える必要があります。

美容室ではカットなどの施術中に、誤ってお客様にケガをさせてしまった時のリスクが最も備えるべき補償になるでしょう。

また、歯科医院では医療行為を原因とする事故で患者さんへの損害賠償責任リスクを専門の保険で備えることになります。

これらのことから、ご自身の会社にとって最優先に備えるべき補償は何なのか、をご検討ください。

そして、その中で損害賠償責任保険が必要となった時に、雇用慣行賠償責任保険を付加するべきかどうか、お考えいただければと思います。

ご判断に迷う場合は、信頼できる保険会社や代理店の担当者とじっくりご相談されると良いでしょう。

3.2.ハラスメントが起こりやすい職場の環境

厚生労働省の調査(平成24年「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」)によると、パワハラに関連する相談が多い職場に共通する特徴として、以下のような内容があげられています。

  • 上司と部下のコミュニケーションが少ない…51.1%
  • 正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている…21.9%
  • 残業が多い/休みが取り難い…19.9%
  • 失敗が許されない/失敗への許容度が低い…19.8%

また、法務省が発行する資料(「企業における人権研修シリーズ セクシュアル・ハラスメント」)によれば、平成20年度の機会均等調停会議に申請された調停のほとんどが女性労働者からのもので、そのうち78%はセクハラに関する内容だったとのことです。

ハラスメントや不当解雇、差別行為は絶対にあってはならないことです。職場で働く社員の方も、悪意を持って問題を起こす方はいないはずです。

ですが、職場環境から知らぬ間に不当行為に発展してしまうこともございます。

もし皆さまの会社における職場環境がこれらに類似している場合、まずは基本的な働き方の見直しから取り組むことが大切です。

その上で、保険でリスクヘッジをする場合には、雇用慣行賠償責任保険を1つの選択肢としてご検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。この記事では、不当解雇やハラスメントに起因する会社の損害賠償責任リスクに備える雇用慣行賠償責任保険についてご案内いたしました。

会社には、社員が働きやすい環境づくりを行う義務があります。「義務」というと会社に負担がかかるイメージもありますが、実際には会社の損失を最小限として利益を大きくするものです。

雇用に関する問題がある会社では、職場の雰囲気が悪くなり、社員の働くモチベーションは下がり、結果として会社に売り上げはダウンします。

損害賠償責任問題にまで発展すれば、訴訟を起こされた事実が社会に知れ渡ることで企業イメージはダウンし、賠償責任金など直接的な被害も発生します。

雇用慣行賠償責任保険は、このような賠償責任金などの費用をカバーする保険です。

ただし、その必要性や備えるべき優先順位は会社の業務内容や環境によって異なっているのが現状です。

この記事をお読みいただいた皆さまが、雇用慣行賠償責任保険の基本的な内容と、働きやすい職場環境の重要性について理解を深めていただけたのならば幸いです。

参考資料:厚生労働省HPより
・パワハラについて「あかるい職場応援団
・男女雇用機会均等法「職場でつらい思いしていませんか?
・紛争解決援助制度「職場のトラブルで悩んでいませんか?」

参考資料:法務省HPより
・企業における人権研修シリーズ「パワーハラスメント
・企業における人権研修シリーズ「セクシャルハラスメント

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