PL保険とは?基本の補償内容と組み方のポイント

PL保険(生産物賠償責任保険)は、作ったモノや仕事の結果に欠陥があったことによってお客様等に損害を与えてしまった場合の賠償責任をカバーしてくれる保険です。

このように書くと、飲食業や製造業、建設業等、とにかく「モノ」を「作る」ことを仕事とする業種に限って必要のように思われるかもしれません。もちろん、それらの業種であれば必要不可欠と言っていいでしょう。

しかし、実際には、モノを作る業種だけではなく、販売などモノを流通させる業種の会社にとっても必要な保険です。

この記事では、PL保険(生産物賠償責任保険)について、基本的な補償内容がどんなものか、どのように組めば会社のリスクをしっかりカバーできるかを、分かりやすくお伝えします。是非、最後までお読みになってお役立てください。

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出岡 大作

出岡 大作

保険の教科書 編集長。2級ファイナンシャルプランナー技能士。行政書士資格保有。保険や税金や法律といった分野から、自然科学の分野まで、幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。

1. PL保険は多くの会社にとって必要!

1.1. PL保険が必要な典型は飲食業、製造業、工事業

PL保険は正しくは「生産物賠償責任保険」と言います。この名前からはっきり分かることは、「モノを生産する業種の会社」にとって必要なものだということです。たとえば、飲食業や製造業、工事業等です。

【具体例】

  • 飲食店で提供した食べ物に細菌が繁殖していてお客様が食中毒になった場合
  • 製造した電気製品に欠陥があったせいでお客様の家が火事になった場合
  • 排水管の工事が不十分で水漏れが起きてしまった場合

これらの業種であれば、まさしくPL保険が必要不可欠と言えます。絶対に加入しておいていただきたいものです。

1.2. 販売業もPL保険に加入しておかないとリスクが大きい

しかし、実際には、PL保険が必要なのは、それらモノを作る業種の会社だけではありません。モノを仕入れて売る業種の会社にも必要なのです。現に、どの保険会社もPL保険の対象業種として以下の2通りの業種を挙げています。

  • 生産物を「製造」または「販売」する業種
  • 工事請負業者

このように、PL保険が対象とする業種には、モノを「製造」したり「工事」したりする業種だけではなく、他から仕入れたモノを「販売」する業種も含まれているのです。それはなぜかというと、お客様=消費者の立場に立ってみればよく分かります。

たとえば、小売店で販売したシャンプーがお客様の頭皮に合わず、炎症を起こしてしまうような場合があります。この場合、お客様の立場からは、「そんな危険なシャンプーを製造した業者が悪い」と考えるのも、「そんな危険なシャンプーを売った業者が悪い」と考えるのも、どちらもごもっともです。

つまり、お客様からすれば、販売業者の責任を追及することも、生産者・製造者の責任を追及することも、いずれも選択肢としてありうるのです。しかも、「製造物責任法(PL法)」があるため、販売業者は賠償責任を追及されるおそれがあります。

このことからすれば、PL保険は、モノ作りだけにかかわる業種ではなく、販売にかかわる業種にとっても必要なものだということがお分かりいただけると思います。

2. PL保険の基本的な補償内容

まず、PL保険がカバーしてくれる期間は、「1年間」と覚えておいていただければと思います。製造業であればモノの製造後1年間、販売業であればモノの販売後1年間、工事業であれば仕事完成・引き渡し後1年間です。

そして、基本的な補償範囲は、保険会社にもよりますが、以下の4つです。

2.1. 損害賠償金の額(法律上の損害賠償責任の額)

まず、メインの補償として、お客様に損害賠償金を支払った場合に、「法律上の損害賠償責任の額」を受け取れます。これは、裁判で確定した場合はもちろん、裁判ではなく和解や示談で金額が決まった場合もその額をカバーしてもらえます。

ただし、以下の2点に注意が必要です。

まず、賠償金額と別に支払う「見舞金」等は対象になりません。

また、保険金が支払われるタイミングは、賠償金額が確定した後です。それまでに被害者の方が治療を受けた場合に費用を肩代わりしてあげたいならば、後ほどお伝えする「被害者治療費用特約」を付ける必要があります。

2.2. 損害を防ぐためにかかった費用(損害防止費用・緊急措置費用)

次に、損害が発生してしまったら、すみやかにさらなる損害の発生や拡大を防ぐ措置をとらないと、損害賠償金もどんどんかさんでいきます。したがって、PL保険では損害自体を防ぐ費用や、損害の拡大を防ぐための費用もカバーしてもらえます(損害防止費用)。

また、場合によっては、損害防止のための措置を一生懸命行った結果、損害賠償をせずに済んだということもあり得ます。そのような時も、かかった費用をカバーしてもらえます(緊急措置費用)。

2.3. 権利保全行使費用

これは字面からはイメージしにくいので、具体的な事例でお伝えするのが良いでしょう。工事業者の場合と、販売業者の場合に分けてお伝えしましょう。

2.3.1. 工事業者の場合

たとえば、建設業を営むA社が仕事を下請業者に依頼したとします。そして、その下請業者の施工ミスによって、工事完成後にお客様に損害を与えてしまった場合を考えてみましょう。

A社は監督責任を問われ、お客様から損害賠償を請求されることになります。しかし究極的に落度があるのは下請業者ですので、お客様に賠償金を支払った後で下請業者に対し、その分を請求することになります。「権利保全行使費用」というのは、その手続のためにかかる費用を言います。

2.3.2. 販売業者の場合

たとえば、コスメの小売業を営むB社が販売した化粧品が原因で、お客様の皮膚に炎症が起きたとします。

この場合、お客様に損害賠償金を支払うことになりますが、後で、化粧品の製造業者に対して相当額を請求することになります。その手続のためにかかる費用が「権利保全行使費用」です。

2.4. 裁判・和解等にかかった費用(争訟費用)

製品の欠陥等によってお客様に損害を与えた場合、そのお客様から裁判を起こされることがあります。この場合、敗訴すれば、損害賠償金を支払うだけでなく、訴訟にかかった費用も持たなければならなくなります。また、弁護士も雇わなければなりません。

裁判にならなくても、和解や調停の場合にも費用がかかりますし、弁護士を雇うこともあります。

PL保険では、これらの費用もカバーしてもらえます。

ただし、これだけだと、意見書等を作成したり、証人を依頼したり、専門家に鑑定を依頼したりした場合の費用はカバーされません。後ほどお伝えする「争訟対応費用特約」を付ければ万全です。

3.絶対に付けるべき3つの特約

PL保険をはじめとする賠償責任保険には、損害賠償金以外に必ずと言っていいほどかかる諸費用があります。それらは基本の補償のみではカバーしてもらえません。なので、以下の3つの「費用特約」を必ず付けてください。

  1. 初期対応費用特約
  2. 争訟対応費用特約
  3. 被害者治療費用特約

3.1.初期対応費用特約

事故の初期対応等にかかる費用をカバーする特約です。事故が発生すると、ほとんどの場合、事故現場の保存、事故状況の調査、事故現場の後片付け等の費用がかかります。初期対応費用特約を付けておくことで、これらの費用もカバーできます。

3.2.争訟対応費用特約

PL保険の基本の補償には裁判・和解交渉・調停等の費用や弁護士費用等が含まれています。

しかし、実際にはそれ以外にも、意見書等を作成したり、証人を依頼したり、専門家に鑑定を依頼したりする費用が発生します。

そこで、争訟対応費用特約を付けておくと、そういった費用をカバーすることができます。

3.3.被害者治療費用特約

PL保険の保険金は、損害賠償金の額が確定して初めて支払われます。しかし、それまでの間、被害者の方は病院で治療を受け、治療費がかかります。

そういう場合、道義的責任として、治療費を肩代わりしなければなりません。「まだ賠償金額が固まっていないから」と言ってお金を払わないわけにはいきません。

被害者治療費用特約は、損害賠償金の額が確定していなくても、保険会社が被害者の方の治療費を支払ってもらえるという特約です。

なお、被害者治療費用特約によって支払われた治療費等の額は、後で損害賠償金の額が確定したら、そこから差し引かれることになります。

4. 業種によってはぜひプラスしたい補償

以上がPL保険の基本的な補償内容と必要な特約ですが、あくまで最低限のものとお考えください。これだけで、製品の欠陥等によってお客様に損害が生じた場合のリスクを完全にカバーしきれるわけではありません。

そこで、補償内容を更に充実させるための特約のうち、重要な2つに絞ってお伝えします。

  1. モノ自体の損害(使用不能損害補償特約
  2. モノの回収・検査・修理・交換等にかかった費用(リコール費用特約

なお、これらは保険会社によってはPL保険に備えられておらず別の保険に加入しなければならない場合もあります。

また逆に、基本的な補償に自動的にセットしてもらえる場合もあります。

4.1. モノ自体の損害の補償(使用不能損害補償特約)

まず、「モノの欠陥による損害」ではなくモノ自体の損害です。モノに欠陥があると、ほとんどの場合、お客様がそのモノを使えなくなってしまいます。そして、代わりのものを買ったり借りたりすることになります。これも立派な損害であり、お客様から請求があれば賠償しなければなりません。

しかし、PL保険の基本補償でカバーされているのはあくまで、「モノの欠陥によってお客様が被った損害」で、モノ自体の損害は別です。

そこで、「使用不能損害補償特約」を付けていると、そのモノ自体の損害賠償費用もカバーしてもらえます。

4.2. モノの回収・検査・修理・交換等にかかった費用の補償(リコール費用特約)

これはモノを大量に生産する場合には絶対に備えておいていただきたい補償です。ただし、PL保険で特約として準備していないこともありますので、その場合は別途「リコール保険」への加入が必要です。

大量生産する製品に欠陥があった場合、市場に大量に出回っていますので、その旨を公表して、無料で修理・交換しなければならなくなります。これを「リコール」と言います。たとえば、以下のようなニュースをご覧になったことがあると思います。

  • 自動車のブレーキの設計ミスで事故のリスクがあった
  • エレベーターの設計ミスでドアが開いたまま閉まらない状態になることがあった
  • 衣料品に金属片が混入していた
  • 食料品に異物が混入していた

こういった場合に、リコール費用の特約や、リコール保険に加入していれば、回収・修理・交換等にかかった費用までカバーしてもらえます。

ただし、注意が必要なのは、PL保険でリコールの費用をカバーしてもらえるのは、あくまで、お客様等に損害が発生した場合だけだということです。

5. PL保険3つの注意点

PL保険には以下のような注意点があります。重要なポイントを3つだけピックアップしてお伝えします。

  • ミスが重大すぎる場合は補償の対象外
  • 危険すぎるモノから生じる損害は補償の対象外
  • リスク区分の選択を誤ると保険金を受け取れないおそれがある

5.1. ミスが重大すぎる場合は補償の対象外

ミスが重大すぎる場合は、「重過失」と言って、「故意」と同じと扱いになり、補償してもらえません。

5.2. 危険すぎるモノから生じる損害は補償の対象外

扱うモノが危険すぎる場合、たとえば、放射性物質、爆発物、アスベスト、汚染物質といったものを扱う場合、補償の対象外です。

なぜなら、危険すぎるモノは、そこから発生する損害が計り知れないので、保険でカバーしきれる限界をはるかに超えているからです。

5.3. リスク区分の選択を誤ると保険金を受け取れないおそれがある

最後に、PL保険を組む時に絶対に間違えてはならないのが、「リスク区分」の選択です。

PL保険の保険料は、基本的に、業種・取り扱い商品等によるリスク区分と、前年度の売上高の額(新規事業の場合は事業計画で設定されている目標売上高)で決まります。

このうち、リスク区分の選択を誤ると、最悪の場合、事故が発生して損害賠償責任が発生しても保険金を受け取れないことがあります。

「工事業」の場合は工事の種類によってリスク区分が異なります。建物建設工事、土木工事、設備工事、管工事のそれぞれで異なる料率が適用されます。

特に注意が必要なのが同じ製品に関する「製造」「販売」の区別です。「製造」の方が「販売」よりもリスクが高いものと扱われます。

たとえば、「化粧品製造」のリスク区分の保険料はなんと「化粧品販売」の10倍以上です。

間違いやすいのが、海外から輸入した製品を販売する場合です。このリスク区分は「販売」ではなく「製造」です。なぜなら、製造物責任法(PL法)で、輸入した製品を販売する場合は製造者と同じ責任を問われることになっているからです。

最近は海外から製品を輸入して販売するケースが急増しており、間違えて加入してしまっているケースをよく見かけます。リスク区分の選択にはくれぐれも注意してください。

まとめ

PL保険(生産物賠償責任保険)は、製造・工事等の「モノ作り」をする業種だけでなく、モノを販売する業種にとっても必要な保険です。なぜなら、お客様の立場からすると、モノの欠陥で損害を受けた場合、欠陥あるモノの製造をした業者も、そのモノを販売した業者も、それほど責任に変わりはないからです。したがって、PL保険は多くの業種の会社にとって必要な保険であると言えます。

補償範囲は、損害賠償金の他、損害を防ぐためにかかった費用や裁判等にかかる費用といったものです。

ただし、事故が発生した場合の対応費用、被害者の治療費用、裁判等で証拠を揃えたりするのにかかる費用をカバーしてもらうには、「費用特約」を付けなければなりません。

また、業種によっては、モノが使えなくなったこと自体の損害や、生産物の回収・検査・修理・交換にかかる費用(リコール費用)もカバーする特約を付けることをおすすめします。

さらに、加入する際には「リスク区分」を正しく選択しなければなりません。特に、海外から輸入した商品を販売する場合のリスク区分は「販売」ではなく「製造」です。

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