法人の火災保険|加入・更新の時に必ず押さえておくべきポイント

企業の重要な財産である社屋や倉庫、工場などが火災や自然災害によって被害を受けると、膨大なダメージをもたらす恐れがあります。それをカバーするために絶対に加入しておいていただきたいのが、火災保険です。

しかし、火災保険に一応入っていても、いざ損害が発生した時にカバーできなかったという例もよくあります。

私たちはこれまで、数多くの法人様の火災保険のご相談をお受けしてきました。その中で、火災保険の設計が不十分だったためにいざという時に十分なお金を受け取れなかったという話をうかがったことがあります。そして、そのたびに、もっと早くにご相談をいただいていたらと悔しい思いをしています。

この記事では、特に法人様・事業者様向けに、火災保険の基本的な補償内容と、検討するときに押さえておくべきポイントについて、分かりやすくお伝えします。是非最後までお読みになってお役立てください。

The following two tabs change content below.
保険の教科書 編集部

保険の教科書 編集部

私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。

はじめに|火災保険はプランニングが重要

火災による会社の被害で記憶に新しいのが、2017年に発生した、オフィス用品通販大手の企業の倉庫の大規模火災です。鎮火に6日以上かかり、倉庫の大部分が燃えてしまいました。

その損害額は、有形固定資産と棚卸資産だけで約120億円で、それ以外にもリース資産20億円等もありました。ところが、これに対して、火災保険の保険金の支払いは合計25億円だったとのことです。

これではとうてい損害をカバーしきれません。つまり、火災保険の設計が不十分だった可能性がきわめて高いと考えられるのです。

そして、火災保険の設計が不十分だった原因は、以下のいずれかが考えられます。もちろん、全てが重なった可能性もあります。

  • 火災保険の補償内容を十分理解しないまま担当者任せで加入してしまった
  • 加入時の状況把握が不十分だった
  • 加入後に倉庫の中の物や保管状況、設備等が変わったにもかかわらず、更新時に十分にチェックしなかった

このことからすれば、火災保険に法人加入する際は、まず、火災保険がどんなものなのか、補償内容をしっかりと理解することが大切です。そしてその上で、加入する時に、火災保険でカバーすべき財産やどんなリスクがあるか等について、きちんと把握することが重要なのです。

そこで、以下、

  • 火災保険の基本的な補償内容
  • 加入・更新する時のポイント

に分けて、お伝えしていきます。

1. 火事だけじゃない!火災保険の基本的な補償内容

火災保険をきっちりプランニングするにはまず、第一に火災保険の基本的な補償内容を理解することが大事です。つまり、どこまでカバーされるのか、どこからカバーしてもらえないのか等です。

もちろん、支払件数、支払金額が最も多いのは、火災です。一旦火が出ると燃え広がりやすく、被害が拡大しやすいのです。

しかし、火災保険がカバーしてくれる損害の範囲は、火災だけではなく、かなり広いのです。以下、お伝えします。

1.1. 基本的な補償でカバーしてもらえる損害は意外と広い!

火災保険がカバーしてくれるのは火災だけではありません。以下のように、地震以外の自然災害や偶然の事故、盗難等も広くカバーしてくれます。

【火災保険の基本補償】

  1. 火災、落雷、破裂、爆発による被害
  2. 風災、雹災、雪災による被害
  3. 排水施設事故の水漏れなどによる被害
  4. 紛争や労働争議などによる被害
  5. 車両、航空機などの衝突による被害
  6. 外部からの物体の衝突などによる被害
  7. 水災による被害
  8. 盗難
  9. 電機・機械事故による被害
  10. その他偶然な破損事故

このうち、たとえば、水災は、川の堤防が決壊するなどして、建物や設備が浸水して被害に遭うことです。特に最近は、各地で豪雨の被害の報道が多くなっています。地方によっては、毎年のように水災の被害に遭うことがあります。そういった場合に保険金を受け取れるか否かは、大きな違いです。

1.2. 地震による被害は地震保険を付けないとカバーしてもらえない

上でお伝えしたように、火災保険は、火災だけでなく自然災害まで広くカバーしてもらえるものです。しかし、地震による被害だけは別です。

火災保険に加入しているだけでは、地震が原因での建物の損壊、水災、津波による被害に対しては保険金を受け取れません。地震保険に加入する必要があります。

地震保険は、4つの損害区分(全損・大半損・小半損・一部損)に分け、地震で損害が発生した場合、それぞれの区分に応じた保険金額を受け取れます。

ただし、地震保険は単独で加入できません。火災保険に特約という形で付加する必要があります。「地震危険補償特約」や「地震拡張担保特約」という名前です。

この地震保険の保険料は都道府県別、構造別に決まっています。そして、支払われる保険金の額は損害区分によって決まっています。また、保険料は数年ごとに改定されており、直近では2019年1月に改定が行われました。

日本列島は地震の巣と言われており、大地震の被害がいつどこで発生するか分かりません。火災保険に地震保険を付加することを検討されるようお勧めします。

2. 火災保険のプランニングのポイント

上でお伝えした倉庫火災では、鎮火に6日以上がかかってしまいました。

こんなに時間が掛かってしまった大きな原因は、ズバリ、倉庫の建物の構造と、倉庫内の保管物と、その保管状態だったようです。主な原因を4つにまとめると、以下の通りです。

  • 窓が少なく倉庫に消防隊が入りにくかった
  • 倉庫内の保管物の多くが紙素材で燃えやすかった
  • スプリンクラーが火元近くになかった
  • 太陽光パネル等、後で設置した設備があり消防の妨げとなった

このことからすると、企業火災保険の新規加入や更新は、建物の物件の構造や安全施設、建物内に保管されている物をしっかりと把握して加入しなければなりません。

そして、施設内の土地環境、河川の状況、自然災害の発生率、地震などを十分考慮した上で加入することも大切でしょう。

また、自然災害リスクは国土交通省からでている「重ねるハザードマップ」を利用すると地域リスクがよくわかりますので是非ご参考にしてみてください。

そこで、以下、火災保険をプランニングする上で大切なポイントと、火災保険の組み方を順に追って簡単に説明していきます。

2.1. 補償したい物件を決め、分類する

法人様の場合、対象となる建物等の財産が複数あったり、バラバラに点在していたり、様々なパターンがあると思います。

補償したい事務所や店舗、工場、倉庫など複数ある場合は、どの物件を補償対象とするかを決めます。そして、物件の所在地や、補償したい部分を4つに分類します。

  1. 建物
  2. 設備・什器
  3. 屋外設備装置
  4. 商品・製品

それぞれの施設や倉庫になにがあるかを把握し補償内容と担保する物件を決めます。

2.2. 加入時・更新時は物件をきちんと確認する

もう一度、最近のオフィス大手通販企業の大規模火災事故で、被害が大きくなってしまった原因を挙げます。

  • 窓が少なく倉庫に消防隊が入りにくかった
  • 倉庫内の保管物の多くが紙素材で燃えやすかった
  • スプリンクラーが火元近くになかった
  • 太陽光パネル等、後で設置した設備があり消防の妨げとなった

火災保険を組む時にこれらのことをきちんと踏まえていれば、200億円近い損害額に対して火災保険の保険金額が45億円しか支払われないという事態は防げた可能性が高いと考えられます。

したがって、大切なのは加入時と更新時に細かい調査を行うことです。

たとえば、同じ会社の工場でも、高台にある場合は、水災の被害はあまり考えなくて良いと言えます。したがって、火災の補償は万全にして、水災の補償をある程度低く抑えることも一つの方法でしょう。このように、物件の一つひとつを調査してリスクを把握し、補償内容を決めていくのです。

とくに物件が大規模、複数点在しているある物件はとても重要です。先日、西日本のある法人様から依頼を受けて火災保険を設計した際、保険会社の調査員の方と一緒に現地へ行き、細かい物件調査を行いました。プロの調査員をみて感心したのは、物件の細かいヒアリングと現物目視チェックです。以下の項目について、微に入り細に入り確認していました。

  • 作業工程で使用する機械の能力
  • 使用されている液体物の危険度
  • 高温処理する機械の危険性
  • 消防施設
  • 保守点検記録
  • 社内防火体制
  • 緊急時の対策
  • 落雷対策
  • 風雪・水害対策

また、屋外にある記念のモニュメントなど、価格に変えられないものも、担保するかどうか調査していきます。

このように、現地でありとあらゆる項目を確認し、ヒアリングします。

管理が整えば整うほど保険料が安くなりますし、逆に危険が高いと保険料は高くなります。

また、こういった現地調査は、リスクに見合う保険金額の設定と、安全管理の再確認になります。どういうことかというと、事前に物件調査を行うことで、年月が経ち変更や追加されている建物、材料、設備、強化した安全対策などを再チェックすることもできます。

こうして、災害時に対応できる適切な保険金額を算出し、被害拡大となりそうな要因を事前に把握できます。

2.3. 評価基準を決める

次に、補償する財産の価値の評価をどうするか決めます。財産の価値の評価方法は2つあります。

  • 再調達価額(新価)
  • 時価額

「再調達価額」とは、被害を受けた保険対象を新たに修理、再築、再購入するために必要な金額を言います。

これに対し「時価額」とは、経年劣化を考慮した中古としての価値を基準に評価した額を言います。時価額だと、保険金額は、新たに修理、再築、再購入するのに足りず、火災保険に加入する意味が半減してしまいます。したがって、再調達価額を選択することをおすすめします。

2.4.免責額の設定

最後に、「免責額」についてお伝えしておきます。

つい先日、こんなご相談を受けました。社屋が災害被害にあっても保険金が1円も受け取れなかったとのご相談でした。

保険証券を確認したところ、問題は「免責額」の設定にありました。

免責額とは、被害が起きてもある一定の額までは保険でカバーしてもらえない、つまり、自腹で対処しなさいというものです。たとえば、「免責額100万円」と設定されていると、被害を受けても100万円を超えないと保険金が下りないのです。

免責額を大きくすれば、保険料を抑えられます。しかし、あまりにも免責額を大きくしてしまうと、十分な保険金が受け取れないことがあるのです。

私が相談をお受けした法人様は、なんと、免責額が500万円に設定されていました。工場が複数あり、その中には地域的に台風や水災の被害に遭いやすい場所もありました。それなのに、そのうちの一つが水災に遭っても損害額が500万円を下回っていたため、保険金が支払われなかったのです。

担当者の方によれば、保険金が1円も受け取れなかったことから、社内で「これでは火災保険に加入する意味がない」と問題になり、それがきっかけで弊社にお問い合わせをいただくことになったそうです。

私は、免責額はほどほどに抑えておくべきだと考えています。もしも免責額を低く設定して保険料が年10万円高くなっても、肝心の時にきちんと保険金が出るほうを選ぶことをおすすめします。

まとめ

災害が多い日本国内において、企業の財産でもある火災保険は非常に大切です。災害被害額だけではなく、それに応じた利益損失も莫大になる可能性があります。

火災保険でカバーする財産をしっかりと把握し、火災や自然災害にみまわれた場合の被害額を適正に算出することが重要です。そのために決定的に重要なのは事前調査です。この記事でお伝えしたことをご参考にして、いざという時にあなたの会社の損害をしっかりカバーして会社を守れるよう、火災保険をプランニングしていただきたいと思います。

【無料Ebook】損害保険の保険料を最大50%以上削減できる具体的方法

私たちは、他社にはない独自のノウハウで、数々の会社様の損害保険の保険料を削減してきました。

まず、論より証拠、以下はその事例のほんの一部です。いずれも補償内容はそのままに、保険料の大幅な削減に成功しています。

  • ・不動産業(事業用火災保険) : 112万円⇒52万円(-54%
  • ・建設業(建設工事保険等) : 212万円⇒150万円(-30%
  • ・アパレル業(貨物保険) : 120万円⇒96万円(-20%
  • ・病院(賠償責任保険等) : 173万円⇒144万円(-17%
  • ・運送業(自動車保険) : 5,800万円⇒5,000万円(-14%

この無料Ebookでは、私たちがお手伝いしたコスト削減の事例をご紹介します。

そして、業種別に、むだのない最適な保険の選び方をお伝えします。

ぜひ、今すぐダウンロードしてください。

すぐに知りたい方は、0120-957-713までお問い合わせください。


無料Ebookを今すぐダウンロードする

法人損害保険の人気記事
データ取得中
TOPに戻る