老後のお金はいくら必要か?準備のために知っておきたいポイント


少子高齢化が進み、老後にお金で困らないか不安を抱えている方が増加しています。
とはいえ、いざ老後のための資金を貯めようと思っても、いくら準備する必要があるのか、どうやって貯めれば良いのか、なかなかイメージしにくいものです。
そのためには、まず、年金がいくらもらえるのか、どのような生活を送りたいのか、ということを考える必要があります。
この記事では、老後生活のための資金の準備を考える上で、必要となるポイントをまとめて解説します。
1.老後のお金はどのくらい必要か?
まず、老後のお金に関するアンケート結果と、実際にかかった費用の統計結果をもとに、老後にどのくらいのお金が必要になるか考察していきます。
1.1.アンケート結果にみる「老後に必要なお金」
生命保険文化センターのアンケート調査「令和元年(2019年)度 生活保障に関する調査」によれば、夫婦2人が老後に必要と考える最低限の生活費は22.1万円/月だったとのことです(P.39)。
また同じ調査によれば、夫婦2人がゆとりある生活をするのに必要と考えるお金は、最低限必要となる生活費に追加して14.0万円必要との結果が出ています(P.40)。つまり、最低限の生活費と合わせると36.1万円/月ということになります。
もちろん、以上は平均的な数字なので全ての人にあてはまるわけではありません。とはいえ、1つの目安にはなります。
1.2.統計の結果にみる「老後に必要なお金」
次に、総務省が公開している「家計調査」をベースとして、実際に老後の生活費として実際どのくらいの金額が消費されているかを見ていきましょう。
「夫婦2人世帯の場合」「単身暮らしの場合」の2種類を紹介します。
1.2.1.夫婦2人世帯の場合
総務省の「家計調査(二人以上の世帯)(2020年7月分)」によれば、無職世帯(老夫婦を多く含む)の1ヵ月の平均の消費支出は以下の通りだったとのことです。
水光熱費の季節ごとの差、住居費の差(地域差、持ち家と借家の違い)等が想定されるものの、夫婦2人の老後に必要となる額を考える目安となります。
■消費支出総額:228,722円
<内訳>
- 食費:73,567円
- 住居: 17,406円
- 水道光熱:17,081円
- 家具、家事用品:7,976円
- 被服及び履物:5,637円
- 保健医療:16,165円
- 交通・通信:24,922円
- 教育:510円
- 教養娯楽:19,891円
- その他(※):39,576円
※「その他」には、交際費や理容費、お小遣いなどが含まれます。
なお、上で紹介した「生活保障に関する調査」において、夫婦2人で老後に「最低限必要と考える生活費」の平均が22.1万円でした。それと比べると大きな差はないと言えます。
1.2.2.単身世帯の場合
総務省の「家計調査(単身世帯)(2018年)」によれば、無職の単身世帯(1人暮らしの老人を多く含む)の1ヵ月の平均支出は以下の通りだったとのことです。
■支出総額:139,599円
<内訳>
- 食費:35,730円
- 住居:13,301円
- 水道光熱:12,896円
- 家具、家事用品:2,105円
- 被服及び履物:3,782円
- 保健医療:8,379円
- 交通・通信:13,750円
- 教育:43円
- 教養娯楽:16,291円
- その他(※):29,796円
※「その他」には、交際費や理容費、お小遣いなどが含まれます。
支出の総額は、夫婦2人、無職世帯の約6割となっています。
こちらもあくまで平均なので、全ての人に当てはまるわけでありませんが、老後に1人で暮らす方の参考にはなります。
2.公的年金はいくら受け取れるか?
老後の生活費として、まず挙げられるのは、国民全員が加入している公的年金(国民年金・厚生年金)です。
公的年金は、人によって受け取れる額が異なりますが、厚生労働省の「平成30年(2018年)度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老後に受け取れる公的年金(老齢年金)の平均的な支給額は以下のとおりです。
- 厚生年金(男性):163,840円/月
- 厚生年金(女性):102,558円/月
- 国民年金(男性):58,775円/月
- 国民年金(女性):53,342円/月
厚生年金の支給額の男女差が顕著な理由は、会社等で働く期間(厚生年金加入期間)や報酬額に男女差があるためと考えられます。
これをもとに、世帯ごとにもらえる平均的な年金額を計算すると、以下のようになります。
- 夫が会社員、妻が専業主婦:163,840円/月+53,342円/月=217,182円/月
- 夫・妻ともに会社員:163,840円/月+102,558円/月=266,398円/月
- 夫が自営業、妻が専業主婦:58,775円+53,342円=112,117円/月
- 男性(元会社員)の一人暮らし:163,840円/月
- 女性(元会社員)の一人暮らし:102,558円/月
なお、これらはあくまで平均額なので、全ての人にあてはまるわけではありません。参考程度とお考えください。
自分自身が老後に実際にどのくらいの年金が受け取れるかは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」などを基に計算することができます。
3.公的年金だけだといくら足りないか?
前述の「生活保障に関する調査」の結果を基に考えると、たとえば「夫が自営業、妻が専業主婦」の場合、最低限必要な生活費が22.1万円/月であるのに対して、公的年金は112,117円/月なので、公的年金だけだと約11万円/月が足りないことになります。
もちろん、これはあくまで参考例なので、実際に必要となる額は人によってそれぞれです。
たとえば、自営業者でも一定期間会社員だった時期があれば、厚生年金も受け取れるので、不足額は少なくなります。
また「最低限の生活費」だけでなく、年に1回くらいは旅行に行きたいと考えれば、不足額は多くなります。
このように考えて、公的年金だけだといくら不足するのかを計算して初めて、その不足分をどうやって準備するかを具体的に考えられるようになります。
4.会社の福利厚生でどのくらいのお金が受け取れるか?
公的年金の他にも、勤務先によっては退職金を受け取れる可能性があります。
退職金とは、勤務先が従業員の長年の働きをねぎらうために支給するお金で、福利厚生の1つです。支給するかしないか、いくら支給するか、といったことは、勤務先ごとの就業規則によって異なります。
したがって、勤務先でどのくらいの退職金が受け取れるのかチェックすることをおすすめします。
なお、退職金以外にも、会社の福利厚生で老後の資金として期待できるものに、財形貯蓄制度もあります。
これは、毎月の給料の中から会社を通じて一定額ずつ貯めていくという福利厚生の制度です。
もしも勤務先にこのような制度があるならば、退職時にどのくらいのお金が受け取れそうなのか、確認しておくことをおすすめします。
5.公的に優遇されている制度を利用できるか?
次に、老後の資金を積立を促進するという政策の下、税金等の優遇を受けられる制度があります。
代表的なのが、以下の2つです。
5.1.個人型確定拠出年金(iDeCo)
公的年金に上乗せして年金を給付する制度のことを「私的年金制度」と言います。個人が任意で加入するものです。
iDeCoも私的年金制度の1つで、国民年金基金連合会により運営されています。
iDeCoの主な特徴は2つあります。
まず1つ目は、掛金の運用先を自分で選べることです。
株式投資信託など、投資性が強い運用先を選ぶと、リスクを取りながら、大きく増やせる可能性があります。
また、定期預金など、受け取れる年金額はほとんど増えない一方で、減るリスクもない運用方法の選択肢もあります。
2つ目の特徴は、掛金が全額所得控除となる点です。これによって大幅な節税を実現することができます。
iDeCoの詳細については「iDeCoの基礎知識~3つの節税メリットと注意点~」をご覧ください。
5.2.小規模企業共済
小規模企業共済とは、中小企業の経営者や役員、個人事業主が自身の退職金を積み立てる制度です。
30年ほど加入し続けると、最大で掛金総額の120%程度の共済金を受け取ることができ、老後のための資金として有効に使えます。
またiDeCoと同じように、掛金全額が所得控除になるという税制優遇を受けられます。
この所得控除による節税効果を加味すると、実質的に、ただ銀行に預けておくよりももっと増えることになります。
小規模企業共済の詳細については「小規模企業共済とは?4つのメリットと活用のポイント」をご覧ください。
4.個人年金保険を利用する
個人年金保険もまた、公的年金に追加して年金を給付する私的年金制度の1つで、民間の保険会社が保険商品として販売しています。
保険料を払い込むと、「個人年金保険料控除」または「一般生命保険料控除」の対象となり、所得税・住民税の節税になります。
また、銀行の定期預金などと比べて積立効率が高い商品が多くなっています。
個人年金の種類は、大きく分けて以下の3つです。
- 円建て個人年金保険
- 外貨建て個人年金保険
- 変額個人年金保険
それぞれの商品について、詳しくは「利率のいい保険の種類と選び方のまとめ」で解説しておりますので、ここでは簡単な概要だけ紹介します。
円建て個人年金保険
保険料の支払いや年金の受取りを円で行うタイプの個人年金です。
ほかの2つと比較すると貯蓄性は低い一方で、安定性が高いのが特徴です。
外貨建て個人年金保険
円よりも利率の高い外貨によって、資金の運用や年金の支払いなどが行われるタイプの個人年金です。
受け取れる年金額は、保険料を払い込む時と、年金を受け取る時の為替レートの状況によって変動します。
為替レートの影響によりどのようなリスクがあるかと、そのリスクに対する対処方法については、詳しくは「為替リスクとは?運用方法で異なるリスクの中身と対処法」をご覧ください。
変額個人年金保険
国内外の株式や債券などによる保険会社の資金運用によって、受け取れる年金額が変動するタイプの個人年金保険です。
3つの個人年金保険のなかで、もっとも投資性が高い商品です。
運用先は「特別勘定」と呼ばれ、「日本株式」「世界株式」「日本債券」「世界債券」等、複数種類の中から自分で選ぶことができ、一つだけ選ぶことも、複数組み合わせることもできます。また、途中で変更したり組み替えたりできます。
運用先の特別勘定の運用実績によって、大きく増えることも、逆に大きく減ってしまうこともあるので、ハイリスクハイリターンのものと言えます。
活用する場合は、リスクをなるべく回避し、リターンを最大化することが大切です。
運用先の特別勘定の選び方は、過去20年間の運用実績が良好で、運用の方向性が合理的かつ分かりやすいものを選びましょう。
運用期間が短いとその間に急な大暴落等があった時に損してしまいますので、運用期間を長期間見ておくことが必要です。また、短期的な騰落に一喜一憂しないことです。
変額個人年金保険については詳しくは「変額保険とは?活用のメリット、リスクと対処法・選び方のポイント」をご覧ください。
まとめ
老後の資金を準備するには、まず、いくら必要なのかを計算する必要があります。
その上で、公的年金や会社によって提供される退職金などの福利厚生で、どのくらいお金が受け取れるかを確認します。
これについては、国の統計等を見れば一応の目安が分かります。ただし、人それぞれですので、具体的なシミュレーションを行いたいならば、信頼できるFP等の専門家に相談してみることをおすすめします。
その上で、もし足りないようであれば、個人で任意に加入できるiDeCoや小規模企業共済、個人年金保険などの利用を検討します。



