会社が利益を上げると、その分、多額の税金を納めなければなりません。
しかし、本来払わなくてもいい税金まで払うのは、避けたいものです。
そこで重要なのが、会社の税金、特に法人税の基本的なしくみを知り、法令で認められている有効な節税対策を知っておくことです。
この記事は、経営者の方に知っておいていただきたい節税に関するポイントをまとめてあります。すでに節税対策を実行されている方も、これから対策を考えたい方も、すべて経営者の方にお読みいただければ幸いです。
なお、具体的な節税の方法については『法人税の節税の全てが理解できる20のテクニック解説【2021年度改訂版】』をご覧ください。
The following two tabs change content below.
私は10年以上にわたり、生命保険業界で働いております。マイホームの次に高い買い物と言われることもある保険ですから、本当に必要な商品を無駄なく加入してもらうことが大切だと考えています。お一人お一人のご希望やライフプランをおうかがいし、少しでも豊かな人生を送るお手伝いが出来ればと思っております。
1. 節税の前に知っておいてほしいこと
節税を考える前にお伝えしたいことがあります。全て基本中の基本ですが、振り返りの意味も含めてご確認頂ければと思います。
1.1. 節税は会社を順調に経営するための「手段」
経営者が節税を行う目的は、ズバリ、会社のキャッシュを最大限活かすためです。つまり、節税は手段であって目的ではありません。この部分を勘違いしてはいけません。
キャッシュを最大限活かせば新規事業に対する投資や事業の拡大を行うことができ、成功すれば会社は益々繁栄していけるでしょう。また、経営状態が不測の事態に陥ったとしても、持ちこたえるだけのキャッシュがあれば、突然の倒産というようなことにはなりませんし、従業員も安心して長く働くことができます。
節税、つまり税金の額を減らすことだけが目的になってしまうと、本来は事業活動へ使うべきだった資金を無駄にしてしまうことになりかねません。本末転倒にならないように、節税は会社経営における一つの手段ということを忘れないようお願いいたします。
1.2. 法人税とは
次に、法人税について解説していきます。法人税はどのような計算式で算出されるのでしょうか?
すでにご存知の方も多いと思いますが、
法人税=「法人所得(益金:会社に入ってくるお金)-(損金:会社から出ていくお金)×税率」
となっています。
また「利益と所得」「収益と益金」「費用と損金」は違うものですが、ほとんど同じと考えてもよいでしょう。法律の違いで、会社法上では費用になるのに、税法上では費用(損金)として認められないと言ったことがあったり、費用(損金)となる限度額が決められていたり、など違う部分があります。
法人税の詳しい内容については、「法人税とは何なのか|もっとも分かりやすい法人税入門」をご覧ください。
1.3. 法人税率、実効税率
法人税の税率は、法人の種類、資本金の規模、所得金額などにより異なります。こちらでは、細かい説明は省かせていただきますが、おおまかな内容は以下のようになります。
税率=法人税+地方法人税+住民税+事業税
これに、事業税の損金算入を考慮した税率が実効税率となります。実際には、この実効税率が法人にとっての負担率となります。
法人実効税率は、2021年10月時点で、資本金の額が1億円超の「普通法人」だと29.74%となっています。
これに対し、資本金の額が1億円以下の「中小法人」の場合には、1年度の利益のうち400万円以下は21.37%、400万円超~800万円以下は23.17%となっております。
その結果、「中小法人」は税負担が軽くなります。
つまり、会社で出た利益の3割近くを税金として収めなくてはならないわけです。
2. お金をかけない節税方法
このように、法人税の負担は会社にとって決して小さなものではありません。ここからは、お金をかけずにできる節税の方法についてご案内します。実際に行える節税対策を全て記載するのは難しいので、代表的な方法についてご紹介しようと思います。
こちらの内容は、節税方法の一部を抜粋したものです。詳しい内容をお知りになりたい方は、中小企業庁のパンフレットをご覧ください。
2.1. 中小企業投資促進税制|設備投資を行った場合
資本金が1億円以下の中小企業の場合、会社で新しい設備を購入した場合は、7%の税額控除または30%の特別償却を受けることができます。
対象となるものは、1台の価格が160万円以上の機械、車両総重量3.5トン以上の普通貨物自動車などです。例えば製造業で新しい機械を購入した時や、運輸業者がトラックの購入を行ったときが対象となります。
2.2. 在庫を少なくする
在庫を抱えるビジネスモデルの企業の場合、在庫の整理整頓をすることが節税につながります。在庫を「見切り品」として割引価格で販売することで、わずかでも現金が増えキャッシュフローの改善につながります。
もし、販売することが難しいほど劣化した在庫商品であれば、廃棄してしまうことをおすすめします。場合によっては廃棄損を計上できます。倉庫へしまいこんでいるだけでも倉庫の保管費用がかかりますので、廃棄は有効な選択肢の一つです。
2.3. 不要・不良な資産を売却する
ゴルフ会員権、リゾート会員権については、それらを活用して大きな営業活動につなげており、新しい案件を獲得できているなら資産と考えましょう。また投資用不動産も、プラスのキャッシュフローを生み出しているのなら資産です。
しかし、会計上は「資産」に分類されていても、それが全く活かされていない場合は、会社のキャッシュにとってはマイナスです。そのような場合は売却を検討することが必要です。
場合によっては、売却損を出すこともできます。
3. 生命保険で税負担を軽減させる方法
※(2020年10月17日追記)この記事における法人保険の保険料の税務上の扱い、契約例に関する記載内容は、旧ルールを前提としております。最新のルールについては「法人保険の損金算入ルールを分かりやすく解説します」をご覧ください。また、新ルールを踏まえた法人保険の最新の活用法については「法人保険とは?会社の様々な問題解決に有益な最新6つの活用法」をご覧ください。
ここまでは、お金をかけない節税方法についてご案内しました。ここからは、会社のキャッシュを利用して生命保険に加入する方法についてご案内していきます。
よく生命保険は「節税商品」と言われていますが、それは、保険料の全部または一部が損金に算入されるものが多いからです(終身保険のように保険料全額が資産計上されるものもありますが、おすすめできません)。
実際に「節税」になるかは、最終的に解約してお金が戻ってきて、そのお金を支出するところまで引っくるめて考える必要があります。
既に法人保険を活用している経営者の方も多いと思いますが、ご自身が加入している保険と照らし合わせてお読みいただければと思います。
なお、詳細な活用法については「法人保険とは?会社の様々な問題解決に有益な最新6つの活用法」をご覧ください。
3.1. 保険料を損金として計上できる
法人で保険に契約すると、毎年支払った保険料の全部、または一部を損金として計上することができます。その結果として、その年度は会社の利益を減らすことができ、税負担が軽くなるというわけです。
しかし、それはあくまで一時的なことです。注意しなくてはいけないのは、保険料を払い終えた後、それまで損金として計上できていた分が、一気に益金として流れ込んでくることです。
そのタイミングで、何かしらの支出(損金に算入できるもの)を予定していないと、結果として節税にならなかった、という残念な事態になってしまいます。
なお、保険料の損金算入割合は、「全額損金」「1/2損金」「1/3損金」があります。それぞれの活用法については「法人保険の損金算入ルールを分かりやすく解説します」をご覧ください。
3.2.税負担軽減以外のメリット
生命保険では、保険料を払い込んでいる間の税負担軽減の効果と同時に「経営者の退職金準備」「従業員の福利厚生」「事業承継の対策」などを行うこともできます。
また、保険本来の機能である事業保障も備えられます。
3.3.法人保険を活用する上での注意点
ただし、会社の経営状況は千差万別ですから、必ず節税と保障の機能を同時に備えられるわけではありません。
会社の大切なキャッシュを使って「節税のための節税」、つまり保険料の全部・一部を損金算入するためだけに保険に入るのは、リスクが大きいです。
生命保険の加入の時は、信頼できる担当者からメリット・デメリットをしっかり説明してもらいましょう。間違った保険に加入すると、保険料の支払いが会社の経営を苦しめてしまうことになりかねません。
4.中小企業倒産防止共済などの活用
国に準じた団体である「独立行政法人中小基盤整備機構(通称、「中小機構」)が運営している「中小企業倒産防止共済」の活用はオススメです。年間240万円・累計800万円までの保険料を全額損金に算入できます。40ヶ月以上の加入で、解約返戻金は掛け金の100%となり、掛け金の全額が戻ってくるのも優れた点です。
5. 節税を考えるタイミング
ここまでお読みいただいた皆さんは、もしかしたら早急に節税に関する知識が必要で、この記事に辿りついた方もいらっしゃることでしょう。しかしながら、法人の節税については利益が出てからでは遅いこともあります。
5.1. 決算前は早めの対策が重要
決算前に節税を考える場合、決算月の2~3ヶ月前から対策を考えていくようにしてください。効果的な節税対策は、ある程度の時間がかかるのを覚悟してもらうことが必要です。実際に経営者の方とお話する中で、決算直前に、その場しのぎ的な対応をしてしまい、後から後悔したという話も耳にしています。
決算対策の方法について、『中小企業の決算対策|厳選重要10のテクニックと5つの落とし穴【2021年~2022年最新改訂版】』で分かりやすく解説しておりますので、ご覧ください。
5.2. 日常的に行える節税
節税というのは、毎日の業務の中でも行えることがたくさんあります。例えば、従業員の給料、事務所の家賃や光熱費、取引先との交際費、などについてです。これらについては、日々の業務において領収書の整理をきっちりと行い、申告漏れがないようにしておきたいものです。
遠方への出張で発生する出張手当なども、全額損金で計上することができます。ただし、主張手当を損金として計上するためには、出張旅費規定の作成が必要になります。
6. 節税で気をつけたいこと
最後に、節税を行なう際に注意していただきたい点についてお伝えします。しごく当然のことでばかりではありますが、大切なことばかりですので必ずお目通しいただきますようお願いいたします。
6.1. 脱税は違法行為
そもそもの話ですが、節税は法律にのっとった方法によって行われる行為のことです。法律に背いた方法で節税をしても、なんの意味もありません。意図的な脱税行為は当然のことながら、「このくらいなら大丈夫だろう」という認識不足による脱税行為もあるようです。具体的な例について、いくつか上げていきます。
- 架空の経費を計上、領収書を改ざんする行為
- 売上を計上せずに、ポケットマネーとする行為
- 働いていない家族に対して給料を支払う行為 など
脱税行為は絶対にしてはいけません。一度そのような行為が発覚すれば、取引先や社員からの信頼も失われ、会社の存続自体が危うくなります。会社を続けられたとしても、翌年の税務調査の目も厳しくなり、良いことはひとつもありません。
6.2. 租税回避はグレーゾーン
租税回避とは、法律的には違法でないものの、行為そのものが税金の額を少なくする目的だったり、支払いを逃れるための行為を指します。言い換えれば、普通では考えられないような方法、とても不自然な行為によって、節税行為を行なうことを指します。
租税回避に関する解釈はとても難しく、その時の状況や減額された税金の金額など、様々な要素を踏まえて、違法か合法かは税務署の判断となります。
まとめ
最後まで、お付き合いいただき誠にありがとうございました。
今まで特に節税対策を行っていなかったけれど、これから節税を検討しようとお考えの経営者にとって、少しでもご参考になれば幸いです。
節税の方法は沢山ありますが、どんな方法が最適なのかは会社の規模や経営状況、役員の年齢などによって異なります。
この記事の内容は、節税に関するホンの一部分に過ぎません。詳しくは「法人税の節税の全てが理解できる20のテクニック解説【2021年度改訂版】」をご覧ください。
私たちは、特に中小企業の経営者のお悩みごとについて、お力になれればと思っております。ご相談などございましたら、いつでもお気軽にお問い合せくださいませ。