自社に福利厚生を導入しようとして、いざどんなものがあるか探してみると、その種類の多さに驚かれる方も少なくはないでしょう。
ここでは、福利厚生をえらびやすくなるように、数ある福利厚生のなかでもどんな種類の人気が高く、重要度が高いのかをピックアップして紹介しています。
また、おすすめを紹介するにあたり、導入する福利厚生を決定するときに重要なポイントを解説します。
このポイントを抑えた上で、まずはおすすめの福利厚生を検討することで、自社でどんな福利厚生を導入すればよいか決めやすくなるでしょう。
なお、おすすめに限らず福利厚生にどんな種類があるかの全体像については「福利厚生の分類と代表的な種類まとめ」で紹介しているので、よろしければあわせてご覧ください。
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はじめに:会社ごとに優先順位をつけることが重要
一口に福利厚生といっても数多くの種類があり、その全てを満遍なく導入するというのは現実的ではありません。
また、これから人気の高いおすすめの福利厚生について紹介しますが、必ずしもそれらを優先的に導入すればよい、ということでない点も注意が必要です。
福利厚生のなかには従業員が認識していなくても、いざ「こういうのもあるよ」と正しく周知すれば「そっちの方が大切だ」と考え直すような必要性の高い福利厚生もあります。
また自社の従業員の年齢層や既婚率、男女比、趣向などによって、ニーズが高いと想定される福利厚生もがらりとかわるのも理由です。
そのためどういった福利厚生が自社にとって優先度が高いかは、会社により全く異なります。
結論として、人気の高い福利厚生や従業員にとって必要性が高いと想定される福利厚生を天びんにかけながら、会社ごとに優先順位をきめて導入することが重要です。
そのため福利厚生を導入する際は、自社の社員の声を聞きながらすすめていくことをおすすめします。
1.特に人気の高いおすすめの福利厚生
一般的に広くみて「導入してほしい」と声があがるような、人気の高い福利厚生にはどういったものがあるでしょうか。
世間的に人気が高い福利厚生は、自社の従業員に求められる可能性も高くなります。
参考になるアンケート調査として、人材派遣・人材紹介で知られるマンパワーグループが行ったアンケート調査(2015年4月)の結果を紹介します。
このアンケート調査において、「会社の福利厚生として良いと思うもの」を聞いたところ、上位は以下のとおりでした。
- 1位:住宅手当・家賃補助(48.3%)
- 2位:食堂・昼食補助(33.9%)
- 3位:人間ドックなど法定外の健康診断(33.0%)
これ以下、4位:育児休業・介護休業(法定以上)、5位:バースデー・リフレッシュ休暇、6位:資格取得手当、7位:余暇施設・宿泊施設・レジャー施設などの割引制度と続きます。
アンケートでダントツのトップとなっている住宅手当・家賃補助を含め、ここで紹介した7つは、一般的にみて人気の高い福利厚生といってよいでしょう。
以下1つずつ簡単に紹介します。
1-1.住宅手当・家賃補助
家賃や住宅ローンといった従業員の負担を軽減する福利厚生です。
従業員が家賃・住宅ローンを支払っている場合に、毎月●万円かの手当を給料と一緒に支給します。
従業員からすると長い目でみて会社に負担してもらう金額も大きくなるため、特に人気が高いようです。
住宅手当の一つとして、会社が従業員向けに社宅を用意する例もあります。
1-2.食堂・昼食補助
社員が安い料金で食事ができる社員食堂を運営するのが、食堂、昼食補助の福利厚生の例です。
会社で食事をする際は、たいてい社員食堂を利用するという従業員も多いことでしょう。
食堂・昼食補助についても、特に人気の高い福利厚生です。
とはいえ、社員食堂を運営するとなると、調理場も含めた十分なスペースの確保からいろいろな準備が必要となり、なかなか導入が難しい企業も多いことでしょう。
そんな場合は、社員食堂のかわりに、以下にあげるような外部のサービスを利用し、仕出し弁当や食品を販売する自販機を導入するのもこの分類の福利厚生といえます。
●玉子屋
450円という低価格で、栄養バランスにこだわった日替わり弁当を届けてくれるサービスです。
●シャショクル
低価格な弁当から有名店の弁当まで幅広いメニューのなかからえらんで届けてくれるサービスです。
テーブル1台分のスペースがあれば、スタッフを派遣して対面販売もしてくれます。
なお上記のような仕出し弁当のサービスは、各地域でさまざまな事業者が展開していると想定されます。
●オフィスおかん
添加物控えめで健康によいお惣菜やごはんを、全品100円で販売する自販機のサービスです。
ごはん・主菜1品・副菜2品を購入しても合計400円です。
●自販機コンビニ
大手コンビニエンスストア「ファミリーマート」が提供するサービスです。
おにぎり・サンドイッチ・パン・スイーツ・お菓子・飲料など、コンビニにあるような商品を自販機で販売します。
1-3.人間ドックなど法定外の健康診断
会社では、必ず定期的に健康診断を行う必要があります。
ただ近年の健康意識の高まりから、健康診断ではみつけられないような病気の有無を確認できる人間ドックの人気も高いようです。
福利厚生として、人間ドックなどの費用を負担することも従業員には喜ばれることでしょう。
1-4.休暇関連(法定外の育児休業・介護休業、リフレッシュ休暇など)
法律的に、従業員は有給休暇のほか、育児・介護の際に一定期間休暇を取得できる権利があります。
しかし従業員のなかには、それ以外に会社独自の制度として休暇を認めてほしいという要望も多いようです。
ちなみにリフレッシュ休暇とは、リフレッシュを目的に従業員が幅広く取得できる休暇をさします。
一般的には勤続●年ごとに●日間といった規定がつくられます。
なお有給休暇同様に有給になるか無給なのかは、特に定めはありません。
リフレッシュ休暇を導入する企業によって異なります。
1-5.資格取得手当
従業員が何らかの資格を取得する際の費用か、取得後の奨励金を支給する福利厚生の種類です。
企業によってはその両方を支給する場合もあります。
仕事に関連性の高い資格を取得して、従業員の能力が向上することは会社にとってもプラスになります。
また資格取得手当があることによって、従業員が資格の取得にチャレンジするモチベーションも高まるでしょう。
1-6.余暇施設・宿泊施設・レジャー施設などの割引制度
会社が独自で従業員のための保養所を用意したり、取引先の会社のサービスを割引価格で提供したりするといった例もあります。
ただ、これから福利厚生を導入しようとする会社にとって、保養所のような施設を新しくつくるのもハードルが高い場合が多いでしょう。
取引先のサービスを割引で提供するにしても、それほど豊富な種類を用意できる会社は少ないと考えらます。
かわりに外部の福利厚生サービスを利用すれば、手軽にこの福利厚生を従業員に提供できます。
そのサービスの1つとしてあげられるのが、福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」です。
ベネフィット・ステーションでは、ホテルなどの宿泊施設や各種レジャー施設から飲食店、さらには託児所など140万以上にもわたる割引が用意されています。
この内容で費用は従業員1人あたり月額数百円程度~と安価なので、負担が少ないのもメリットです。
2.あまり知られていないが必要性の高いおすすめの福利厚生
福利厚生のなかには、従業員が暮らしていくにあたって必要性が高くなると想定される種類のものもあります。
住宅手当や昼食補助などは、仮になかったとしても従業員やその家族が暮らしていけなくなる、といったことはありません。
一方で、これからあげる福利厚生に関しては、それがあることで従業員の家族が暮らしていけると言うほどに必要性の高いものです。
具体的には、従業員が死亡したときの遺族向けの福利厚生や、従業員が働けなくなったときの補償となる福利厚生、従業員の老後の生活費となる退職金です。
これらの福利厚生は、従業員が「こういう複利厚生もある」ということを知れば、欲しいと思ってもらいやすい潜在的なニーズがあります。
以下、1つずつ解説します。
2-1.従業員に万が一のことがあったときの福利厚生
従業員に万が一のことがあったときは、厚生年金によって遺された家族へ遺族年金が支払われます。
しかし遺族年金は最低限の補償となり、これだけでは遺族が不自由なく暮らしていくにあたり十分とは言えません。
遺族年金は従業員の収入額が高くなるほど多くなりますが、一例として月額45万円程度の従業員の場合で、最低額が年額72万円~(2019年3月時点)です。
そこで会社の福利厚生として、従業員が亡くなった際の死亡退職金を確保するわけです。
遺族の生活の支えになる重要なお金ですから、これが福利厚生として用意されることがわかれば特に家族をもつ従業員は喜ぶでしょう。
従業員の死亡保険金を確保する方法の1つとして、総合福祉団体定期保険への加入があげられます。
総合福祉団体定期保険は、会社が全ての従業員向けに加入する団体生命保険で、労災以外で亡くなった際にも保険金が支払われるなどメリットも多くなっています。
ちなみに上述したマンパワーグループのアンケートにおいて、「会社の福利厚生として良いと思うもの」では「生命保険の団体割引」が12位でしたが、「実際にあってよかった福利厚生」では7位にランクアップしていました。
このように自分が亡くなったときの遺族の生活に関わるような必要性の高い福利厚生は、実際にあればその重要性に従業員が気づくわけです。
総合複利団体定期保険についてもっと詳しい内容を知りたい方は、あわせて「総合福祉団体定期保険とは?加入の4つのメリット」をご覧ください。
2-2.従業員が就労不能の状態になったときの福利厚生
病気や怪我などによって従業員が働けない状態になった場合、社員は傷病手当金や障害年金を受給することができます。
しかしこれらも必要最低限の補償となり、従業員の日々の生活に決して十分とは言えません。
まず傷病手当金は収入の約2/3が働けなくなってから1年半の間受け取れるものですが、治療費などによってさらに支出が増えることを考えると、従業員としては貯蓄を切り崩しながら生活をしていくことになる可能性も高いでしょう。
1年半経過したあとは、従業員は障害年金が受け取れるものの、この年金も最低保障額が年間584,500円など、やはり足りない可能性が高いです。
そこで従業員が働けなくなったときの補償を会社が用意する福利厚生が重宝されます。
そして、そのために会社として加入できる保険としてGTLD(団体長期障害所得補償保険)があります。
GTLDは、従業員が病気などで働けなくなった場合に、最長で定年になるまでの収入減を補償してくれる団体保険です。
個人契約の同様の保険(就労不能保険)なとど比較してはるかに保険料が安かったり、復職後も補償が続いたりといったメリットがあります。
GTLDの詳細について知りたい場合は、あわせて「GLTDを従業員の福利厚生として導入する4つのメリット」をご覧ください。
2-3.老後の生活費となる退職金
退職金も福利厚生の1つです。
少子高齢化により、今後受け取れる年金の額が減っていく可能性もあり、老後の生活に不安を抱える従業員も多いと想定されます。
そこで従業員の老後の生活の糧となる退職金を用意するのも、重要な福利厚生の1つです。
退職金を用意する方法としては、中小企業であれば「中小企業退職金共済」を利用する方法があげられます。
中小企業退職金共済は、名前の通り中小企業が退職金を用意するための共済で、掛金を全て損金にできたり掛金の一部を国から補助してもらえたり、さらに掛金を納め続けて3年7ヵ月経過すると掛金総額より多い退職金が受け取れたりするなどのメリットがあります。
まとめ
福利厚生にもさまざまな種類がありますが、ここで紹介したように特に人気の高いものや必要性の高いものを把握しておくと、どんな福利厚生を用意すれば従業員の満足度をあげられるか検討しやすくなるでしょう。
ほかの福利厚生について知りたい場合は、あわせて「福利厚生の分類と代表的な種類まとめ」をご覧ください。
その上で従業員の声を聞きつつ、どれを優先するか検討いただくのがよいでしょう。