個人年金の終身年金とは?積立効率の試算と他の積立方法との比較

老後の資金の積立に活用される個人年金保険には、一生お金を受け取り続けることができる「終身年金」と、一定の年数お金を受け取れる「確定年金」があります。

このうち、終身年金は、いつまで長生きしてもお金を受け取り続けることができるので、安心できるイメージがあります。

しかし、実際には、条件にもよりますが、個人年金保険の確定年金やその他の積立方法と比べて効率が必ずしも良いとは言えません。

この記事では、個人年金の終身年金タイプはどのようなものか説明した上で、積立の効率等について他の方法との比較も行います。

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保険の教科書 編集部

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1.個人年金保険とは?

1-1.老後の生活費を確保するために有効

個人年金保険とは、民間の生命保険会社が運営する、老後の資金を積み立てるための金融商品です。

2019年に「老後の資金は公的年金だけだと2,000万円足りない」とした金融庁の報告書を巡り、国会で大きな議論となったことは記憶に新しいところです。

その内容の是非はともかく、少子高齢化が進む昨今において、老後も日本に住み続けたいならばある程度のお金を貯蓄しなければならないというのは間違いありません。

その点、個人年金保険は、支払った保険料の総額を上回る額の年金を受け取れる可能性が高いものです。

また、もし積立の期間中に本人が亡くなった場合、それまでに支払った保険料と同額の死亡保険金を、遺族が受け取ることができます。したがって、本人が自分から中途解約しない限り、損はありません。

国のマイナス金利政策により、銀行の定期預金の一般的な利率が0.01%~0.02%程度(価格.com「定期預金比較」参照)と非常に低い中、個人年金保険は老後のためのお金を効率よく貯めるのに役立つ選択肢の1つといえます。

1-2.所得控除の対象で節税にもなる

個人年金保険は、所得税と住民税の節税にもつながります。

たとえば、円建て・外貨建ての個人年金保険の保険料は「個人年金保険料控除」の対象であり、毎年、所得税の控除を最大40,000円、住民税の控除を最大28,000円(合計最大68,000円)まで受けることができます。

なお、所得控除の対象となるのは、年金の受取期間が10年以上の場合です。もちろん終身年金も対象となります。

個人年金保険保険料控除については詳しくは「生命保険料控除制度|控除のしくみと対象となる保険と注意点」をご覧ください。

2.選ぶなら終身年金よりも確定年金を

個人年金保険の中には「終身年金」と「確定年金」があり、終身年金は、年金の支給を一生涯受け続けられるタイプです。

どれだけ長生きしてもずっと年金を受け取り続けることができるので、その部分だけ着目すればよい保険のように見えます。

しかし、実際には、個人年金保険の終身年金タイプはおすすめできません。選ぶならば確定年金タイプの方が良いと考えられます。以下、その理由をお伝えします。

2-1.終身年金は相当長生きしないと元本割れとなる

個人年金保険の終身年金タイプは、保険料が割高で、相当長生きして年金を受け取り続けないと元本割れになってしまいます。

実際にA生命の個人年金保険(終身年金)の例(※)を見てみましょう。

※2021年3月現在、販売停止中です。

【契約例(35歳男性)】

  • 年金受取期間:終身(10年保証期間付)
  • 保険料払込期間:65歳まで
  • 年金受取開始:65歳から
  • 年金額:40万円/年
  • 保険料:23,152円/月

この契約例では、65歳から毎年40万円の年金を一生涯受け取れます。なお、「10年保証期間付」とは、もし年受取開始から10年経たずに本人が亡くなっても、10年目まで遺族が年金を受け取り続けることができるということです。

一方、保険料は23,152円/月で、35歳~65歳の30年間で総額8,334,720円の保険料を支払うことになります。

受け取れる保険金額は前述の通り40万円なので、21年間、86歳まで年金を受け取り続けてようやく年金総額が保険料総額を上回る計算です。

日本人の平均寿命は、厚生労働省の「平成30年(2018年)簡易生命表の概況」によれば、男性が81.25歳、女性が87.32歳です。なので、このプランだと平均寿命より約5年も長生きしないと元本割れになるということです。

なお、「10年保証期間付」で本人が最初の10年以内に亡くなっても年金総額400万円を受け取れることになっていますが、これは支払った保険料総額の半分に満たない計算です。

このように、実は終身年金は元本割れのリスクが無視できないほどあるので、よほど長生きできる自信がない限り、おすすめできません。

2-2.個人年金保険なら「確定年金(10年)」の方がおすすめ

同じ個人年金保険でも、おすすめできるのは「終身年金」ではなく「確定年金(10年)」です。

確定年金は終身年金と比較して保険料が割安であり、保険料を最後まで払い込むことができれば、元本割れのリスクはありません。

同じA生命の個人年金保険の確定年金タイプ(10年)の契約例(※)をご覧ください。

※2021年3月現在、販売停止中です。

【契約例(35歳男性)】

  • 年金受取期間:10年(確定年金)
  • 保険料払込期間:65歳まで
  • 年金支払開始:65歳から
  • 年金額:40万円/年
  • 保険料:10,544円/月

この契約例では、年間40万円、10年間総額400万円の年金を受け取れることになります。

一方、支払う保険料は35~65歳の30年間で総額3,795,840円です。

保険料総額より5.4%多い額の年金を受け取ることができます。

ちなみに、確定年金タイプだと、もし本人が年金受取期間中に亡くなったとしても、残りの期間、引き続き遺族が年金を受け取り続けることができます。契約者が早く亡くなったとしても、損をするこということはありません。

したがって、個人年金保険を選ぶならば確定年金タイプをおすすめします。

なお、個人年金保険には大きく分けて「円建て」「外貨建て(主に米ドル建て)」「変額」の3タイプがあります。詳しくは「個人年金保険に入るなという意見は正しいか」をご覧ください。

3.その他にも利率のよい貯蓄方法がある

このように、個人年金保険の終身年金タイプは、相当長生きして年金を受け取り続けないと元本割れになってしまうため、確定年金タイプやその他の方法を選ぶことをおすすめします。

そこで最後に、個人年金保険以外の方法についてもピックアップしてお伝えしておきます。

いずれも高い貯蓄効率があるものです。個人年金保険ならば確定年金タイプを選び、さらに効率のよい貯蓄方法をいくつか組み合わせ、分散して積み立てる方が有意義です。

なお、株やFX投資など、投資に関する専門的知識が必要なものについては割愛しています。

3.1.個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は個人年金保険同様に私的年金制度の1つです。

支払った掛金の運用方法を自分で選び、老後はその運用益に基づいた金額の年金を受け取れます。

また、支払った掛金の全額が所得控除の対象となるため、所得税・住民税の節税の効果があります。

詳細については「会社員にもおすすめ!今最も節税できる個人型確定拠出年金iDeCoの全知識」でお伝えしています。

3.2.米ドル建て終身保険

次に、米ドル建て終身保険です。

終身保険は貯蓄性がある生命保険です。保険料の払込期間が決まっていて、払込期間が終わった後で解約すると、保険料総額より多くの解約返戻金を受け取ることができます。

「米ドル建て終身保険」は保険金、解約返戻金、保険料の額が米ドルで定められている終身保険で、とりわけ貯蓄性が高いものです。ただし、為替レートの変動の影響を受けますので、元本割れのリスクが全くないわけではありません。活用を考える際には、リスクの中身と対処法を知っておくことが重要です。

米ドル建て終身保険の内容、リスクと対処法等の詳細については「米ドル建て終身保険とは?2つの有効活用法と注意点」をご覧ください。

3.3.小規模企業共済

小規模企業共済は、個人事業主や会社の経営者・役員の方限定の、退職金を積み立てるための共済です。

払い込んだ掛金は運用され、退職金として受け取る頃には支払った掛金の総額より増えています。

また、iDeCo同様、支払った掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の節税の効果があります。

詳細は「小規模企業共済で退職金を準備する5つのメリットと3つの注意点」をご覧ください。

まとめ

個人年金保険の終身年金タイプは、平均寿命よりかなり長生きしてようやくプラスになるものなので、必ずしもおすすめできるものではありません。

個人年金保険であれば、保険期間が区切られた確定年金(10年)の方が保険料が割安で、かつ積立の効率が高いので、おすすめできます。

その他の方法としてiDeCoや米ドル建て終身保険などがあり、いろいろな方法を組み合わせて積立を行うことでリスク分散にもなります。

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