使用者賠償責任保険(EL保険)とは?補償内容と必要性


従業員が業務災害で身体に傷害を負った場合への備えとして、「使用者賠償責任保険」という保険があります。しかし、果たしてご自身の会社に必要かどうか、悩むところだと思います。
使用者賠償責任保険は、従業員が業務上の災害によって心身に障害を負い、会社側に責任があるとして損害賠償を求めてきた時に、賠償金等の費用を補償してくれる保険です。
ひょっとしたら、「うちは労災があるから大丈夫ではないか?」とお考えかもしれません。
もちろん、労災で賄えれば、それに越したことはありません。しかし、近年、従業員に対する賠償金の額は年々増加傾向にあります。最悪の場合、賠償金が億単位になり、その額を支払えず倒産してしまうリスクがあります。
そのような場合に備えられる最も有効な手段が「使用者賠償責任保険」です。迅速な対応で従業員に対する責任を果たすことが、今後の会社経営を守ることに繋がるのです。
この記事では、「使用者賠償責任保険」の補償内容と必要性についてお伝えしていきます。わかりやすく説明してますので是非参考にいただければ幸いです。
1. 使用者賠償責任保険とは
従業員が業務上の災害によって心身に障害を受けると、労災認定されます。そして、その認定において、会社側の安全責任に問題があるとされれば、会社は従業員に対して法律上の損害賠償責任を負います。そんな時に役立つのが「使用者賠償責任保険」です。
労災保険を上回る補償金の支払いの他、和解金、訴訟費用なども支払い対象とすることが出来ます。
2. 使用者賠償責任保険の基本的なしくみ
使用者賠償責任保険は、損害賠償の金額が以下の合計額を超えた場合、その超えた分の額が支払われます。
- 労災保険等から支払われる額
- 会社で独自に定める規定(災害補償規定等)に基づいて支払われる額
まず、労災保険は、国の制度です。労働災害について、最低限の補償をするものです。自動車保険で言えば「自賠責保険」に似ています。使用者賠償責任保険はさしずめ「任意保険」のようなものです。
したがって、使用者賠償責任保険がカバーするのは、損害賠償金額から、労災保険等によってカバーされる額を差し引いた額の部分です。
ただし、会社が独自に「災害補償規程」等の定めを置いている場合は、その額がさらに差し引かれます。なぜなら、この「災害補償規程」は支給条件や支給金額、支給対象者等を定めておくものです。会社がそういう規程を自分で定めている以上、それくらいの額は当然会社が負担できるだろうということで、保険でカバーするまでもないとみなされます。したがって、使用者賠償責任は、この額を超えてしまった額をカバーすることになります。

例えば、従業員が自殺して業務上災害と認定された場合で考えてみましょう。
- 損害賠償金総額1億円
- 従業員自身の過失割合20%(会社の過失割合80%)
- 労災保険からの給付金2000万円
会社独自の災害補償規定からの給付金1000万円

この場合、使用者賠償責任保険から支払われるのは
(1億円×80%)-2,000万円-1,000万円=5,000万円 です。
3. なぜ今、使用者賠償責任保険が必要とされているのか?
3.1. 労働災害に伴う経済的ダメージを抑えるのに最も効率が良い
なんと言っても、賠償金の負担は会社にとって大きなダメージになります。場合によっては何千万円、何億円という額にのぼることがあります。
賠償金の額は、尊い人命に関わる問題ですから、多額になるのもやむを得ない面があります。それは中小企業か大企業かは関係ありません。これらの多額の賠償費用を会社のお金から捻出するためには、大変な額の売上が必要になります。効率よく賄うためには、使用者賠償責任保険に加入する以外ありません。
3.2. 迅速な対応ができ、イメージダウンを食い止めるのに役立つ
何事においても初期対応が肝要です。起きてしまった事故に誠意を持った迅速な対応が出来るよう、金銭的な補償があった方が良いでしょう。
近年では、企業の対応に対する批判や悪評がインターネットを通してあっという間に広がります。特に金銭的な対応が遅れると、騒ぎが大きくなってしまいがちです。使用者賠償責任保険に加入しておくことで、少なくとも賠償という金銭面については迅速な対応ができ、会社を守ることに繋がります。そのメリットは、お金では測れないほど大きいものです。
まとめ
使用者賠償責任保険の内容と必要性についてご紹介しました。業務災害が起きてしまったときに、被災した従業員には迅速かつ誠実な対応をすることができ、そしてそれが企業防衛に繋がります。
これからの時代、会社として業務災害に伴う損害賠償のリスクに備える必要はますます高まっていくでしょう。会社を守るために、また、従業員に安心して働いてもらうために、使用者賠償責任保険は非常に有効な手段だと言えます。



